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(3) 三平方の定理について,数学的活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

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ア 次のような知識及び技能を身に付けること。

(ア) 三平方の定理の意味を理解し,それが証明できることを知ること。

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イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

(ア) 三平方の定理を見いだすこと。

(イ) 三平方の定理を具体的な場面で活用すること。

 三平方の定理は直角三角形の3辺の長さの関係を表しており,数学において重要な定理であり,測量の分野でも用いられるなど活用される範囲が極めて広い定理である。

 指導に当たっては,ただ単に様々な図形の性質を証明することの延長として三平方の定理を扱うのではなく,直角三角形だからこそ成り立つ関係の美しさに触れられるような工夫と配慮が望まれる。

 
 

 三平方の定理は,先にも述べた通り,直角三角形の3辺の長さの関係を表したものであるとともに,直角三角形のそれぞれの辺を1辺とする三つの正方形の面積の間には,常に一定の関係が成り立つということも表している。

 したがって,三平方の定理は,長さの関係とともに,面積の関係とみることもできる。

 つまり,ここでの三平方の定理の学習は,図形と数式を統合的に把握することができる場面の一つといえる。

 
 

 三平方の定理の導入に当たっては,例えば,古代エジプトでの縄張り師の話や,古代ギリシャの数学者ピタゴラスによって定理としてまとめられたとされている話など,この定理にまつわる歴史的な背景や逸話の紹介などを通して,生徒の興味・関心を引き出す工夫をし,三角形の3辺の長さについての観察や操作,実験などの活動を通して,三平方の定理を見いだしていくことが大切である。

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 例えば,方眼用紙のます目を使って直角三角形をかき,その周りにできる正方形の面積の関係に着目し,観察や操作,実験などの活動を通して三平方の定理を見いだすことが考えられる。

 
 

 三平方の定理の証明については,図形による方法,代数的な方法など,様々な方法が知られている。

 しかし,それらの証明の中には,生徒にとって技巧的ととられる向きのものも見受けられる。

 したがって,三平方の定理を証明できることを知る程度とし,生徒の興味・関心に応じて柔軟に取り扱うこととする。

 この場合,生徒の理解を助けるために,コンピュータ,情報通信ネットワークなどを活用して三平方の定理の証明のアイデアや仕組みを視覚的に提示する動画などの資料を学習に用いることも考えられる。

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 また,三平方の定理の逆,つまり

 「三角形の3辺の長さを
  a,b,c とするとき,
  a2+b2=c2 ならば,
  この三角形は直角三角形である。」

 については,その証明に深入りするのではなく,むしろ直角三角形になるかどうかは3辺の長さの関係によって決定されていることに着目できるようにすることが大切である。

 
 

 三平方の定理を活用する場面では,例えば,求めたいものを直接測らなくても,直角三角形に着目して三平方の定理を活用することによって求めることができることを学習する。

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 数学では,座標平面における2点間の距離や,長方形の対角線の長さ,あるいは,円錐(すい)の高さを求めることなど,平面図形や空間図形の計量について考察する際に,多くの場面で三平方の定理が活用される。

 一見して直角三角形が存在しないような場面においても,その中に解決に必要な直角三角形を見つけたり,補助的に作り出したりすることで,必要な線分の長さを求めることができる。

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 日常生活や社会では,三平方の定理を利用する場面として,地図上に表された標高差のある2地点間の距離,あるいは,山の頂上や人工衛星などの地上から離れた地点から見える範囲を求めることがある。

 このように,求めたいものを直接測らなくとも三平方の定理を利用することによって導くことができる。

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 三平方の定理を空間でも用いることや,日常生活や社会の事象で解決したい場面を理想化したり単純化したりして,数学的に表現した問題を三平方の定理を用いて解決する経験をすることが大切である。

 この際,現実の場面を理想化したり単純化したりしたことによって,求めた結果の適用できる範囲に一定の制約が生じることについても理解できるようにする。

 また,解決に必要となる直角三角形に着目できるよう,解決に必要な図を自分でかいてみることも大切である。

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 なお,三平方の定理を活用して距離などを求める場合には,その結果得られる値は平方根を用いて表されることが多い。

 これは,第3学年における平方根の学習の必要性が実感できる一つの場面になる。

 例えば,√2 や√3 など正の整数の平方根を表す線分は,次の図のような正方形と三平方の定理を活用して作図し,これによって数直線上に整数の平方根を定めることができる。

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 さらに,例えば,地図上に表された標高差のある2地点間の距離を求めるときは,平方根をそのまま求める値とするのではなく,その値を近似値で求め,実感を伴った理解につなげることによって,有効数字の学習の必要性を実感することもできる。

 
 
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