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(1) 関数 y=ax2 について,数学的活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

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ア 次のような知識及び技能を身に付けること。

(ア) 関数 y=ax2 について理解すること。

(イ) 事象の中には関数 y=ax2 として捉えられるものがあることを知ること。

(ウ) いろいろな事象の中に,関数関係があることを理解すること。

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イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

(ア) 関数 y=ax2 として捉えられる二つの数量について,変化や対応の特徴を見いだし,表,式,グラフを相互に関連付けて考察し表現すること。

(イ) 関数 y=ax2 を用いて具体的な事象を捉え考察し表現すること。

 第1学年では,比例,反比例を学習し,第2学年では,一次関数を学習している。

 いずれにおいても,関数関係に着目し,その特徴を表,式,グラフを相互に関連付けて考察する力を漸次高めてきている。

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 第3学年では,この学習の上に立って,具体的な事象における二つの数量の変化や対応を調べることを通して,関数 y=ax2 について考察する。

 その際,表,式,グラフを相互に関連付けながら,変化の割合やグラフの特徴など関数の理解を一層深める。

 そして,これらの学習を通して,関数関係に着目し,その特徴を表,式,グラフを相互に関連付けて考察することができるようにする。

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 また,日常の事象や社会の事象には既習の関数では捉えられない関数関係があることを学習することにより,関数の概念の広がりを実感できるようにし,中学校における関数についての学習内容を一層豊かにするとともに,後の学習の素地(そじ)となるようにする。

 
 

 具体的な事象の中から二つの数量x,y を取り出し,それらの変化や対応を調べることを通して,二つの数量x,y の間に,次のような関係があることを知る。

・ x の値がm倍になれば,y の値はm2倍となる。

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 また,表を用いて,x の値に対応するx2 とy の値を考察することでそれらの比(商)が一定であることが分かる。

 このことから,「y はx の2乗に比例する関数である」とみることができる。

 すなわち,2乗に比例する関数が,一般的に,a を定数として,y=ax2 という式で表されることを理解する。

 そして,事象の中には関数 y=ax2 を用いて捉えられるものがあることを知る。

 
 

 第1学年において,既に関数関係の意味について学んでいる。

 第3学年では,これまでの学習の上に立って,比例,反比例,一次関数,関数 y=ax2 とは異なる関数関係について学習する。

 ここでは,更に式に表すことが困難な関数を学ぶことで,関数の概念の広がりを実感できるようにすることが大切である。

 例えば,交通機関や郵便物の料金の仕組みを取り上げ,二つの数量の関係を式で表すことが困難な場合であっても,これまでに学習してきた表やグラフを用いて変化や対応の様子を調べ,その特徴を明らかにすることができる。

 こうした経験を通して,伴って変わる二つの数量の一方の値を決めれば他方の値がただ一つ決まるという関数についての理解を一層深め,身の回りにある事象を関数関係として捉えたり,その事象の考察に生かしたりしようとする態度を養い,後の学習の素地(そじ)となるようにする。

 このように関数の概念については,中学校3年間を通して,繰り返し指導していくことで,着実に理解できるようにすることが大切である。

 
 

 関数 y=ax2 については,これまでの関数の学習と同様に,表においてx やy の値の対応から関数の変化の様子をつかみ,更にグラフによって関数の変化や対応の特徴を理解する。

 また,関数 y=ax2 の特徴を表,式,グラフで捉えるとともに,それらを相互に関連付けることで,関数 y=ax2 についての理解を深めることも,これまでの関数の学習と同じである。

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 式に表すことができる関数でグラフが曲線になるのは,第1学年で学習した反比例に次いで二つ目である。

 関数 y=ax2 では,変化の割合が一定ではないので,グラフが直線にならないことが分かる。

 このように,グラフの特徴を表と相互に関連付けて明らかにすることができる。

 また,グラフの増減が原点を境にして変わるのは,関数の式 y=ax2 で,x が2乗されていることに関連付けて理解することができる。

 同じように,グラフの開く方向と開き具合は,比例定数a の符号と絶対値の大きさに関連付けて理解することができる。

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 このように,関数の指導においては,第1学年や第2学年でも強調したように,第3学年においても,表,式,グラフが,関数の変化と対応の特徴をつかむ手立てとなるように,相互に関連付けて考察し表現することができるように指導することが大切である。

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 また,変化の割合については,単に計算の仕方を覚えてその数値を求められるようになることのみをねらいとしているのではなく,その数値を求めることを通して,比例や一次関数で変化の割合が一定でグラフが直線になったのに対し,関数 y=ax2 では変化の割合が一定でなく,それゆえグラフが曲線になることを理解するとともに,変化の割合の関数の考察における役割や,グラフでの見方を知ることも大切である。

 
 

 関数は,具体的な事象との関わりの中で学習することが大切である。

 関数 y=ax2 に関わる具体的な事象として,例えば,理科で学習する斜面をころがる物の運動や,車の制動距離,また,噴水の水が作る形,パラボラアンテナなど,身近に感じたり目にしたりすることができるものがある。

 こうした事象を関数 y=ax2 を用いて捉え説明することを通して,関数関係を見いだし考察し表現する力を養う。

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 関数 y=ax2 を用いて具体的な事象を捉え考察し表現する際には,第1学年や第2学年と同様に,観察や実験などによって取り出した二つの数量について,事象を理想化したり単純化したりすることによって,それらの関係を関数 y=ax2 とみなし,事象を捉え説明することができる。

 例えば,車のスピードと制動距離の関係を考察する際には,観察や実験によるデータの点がグラフで放物線上にあることから見当を付け,制動距離を車の時速の2乗で割った商がほぼ一定になることなどから,制動距離が車の時速の2乗に比例するとみなして,与えられた速度の停止距離を予測し,その理由を表,式,グラフを適切に用いて説明する活動が考えられる。

 ここでも,第2学年と同様に,実験の結果と予測を比較・検討し,説明し伝え合う活動を通して,その食い違いの原因を探ったり,よりよい予測のための手立てを工夫したりすることも考えられる。

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 また,数学の事象として,面積や体積を扱った具体的な場面で,関数 y=ax2 について学ぶこともできる。

 例えば,円の面積を求める公式S=πr2 を「S はr の2乗に比例する関数」と読み取ることができれば,「半径が2倍になると面積は4倍になる」ということが,数値を求めなくても分かり,相似比と面積比の関係の理解を深めることもできる。

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 このように,関数関係に着目し,その特徴を表,式,グラフを相互に関連付けて考察する力を伸ばすためには,数学的な表現を用いながら他者に説明するような場面を意図的に設けることが必要である。

 その際には,表,式,グラフを適切に選択したり,自分の表現を他者の表現と比較したりすることにより,事象の考察を深めることを体験できるようにすることが重要である。

 
 
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