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 今回の外国語科の改訂に当たっては,中央教育審議会答申を踏まえ,次のような,これまでの成果と課題等を踏まえた改善を図った。

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・ グローバル化が急速に進展する中で,外国語によるコミュニケーション能力は,これまでのように一部の業種や職種だけでなく,生涯にわたる様々な場面で必要とされることが想定され,その能力の向上が課題となっている。

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・ 平成20年改訂の学習指導要領は,小・中・高等学校で一貫した外国語教育を実施することにより,外国語を通じて,言語や文化に対する理解を深め,積極的に外国語を用いてコミュニケーションを図ろうとする態度や,情報や考えなどを的確に理解したり適切に伝えたりする力を身に付けさせることを目標として掲げ,「聞くこと」,「話すこと」,「読むこと」,「書くこと」などを総合的に育成することをねらいとして改訂され,様々な取組を通じて指導の充実が図られてきた。

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・ しかし,学年が上がるにつれて児童生徒の学習意欲に課題が生じるといった状況や,学校種間の接続が十分とは言えず,進級や進学をした後に,それまでの学習内容や指導方法等を発展的に生かすことができないといった状況も見られている。

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・ 中学校においては,小学校における外国語活動の成果として,英語で積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度が育成され,「聞くこと」及び「話すこと」の活動を行うことに慣れているといった変容が生徒に見られること等も踏まえ,授業における教師の英語使用や生徒の英語による言語活動の割合などが改善されてきている。

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・ 一方,授業では依然として,文法・語彙等の知識がどれだけ身に付いたかという点に重点が置かれ,外国語によるコミュニケーション能力の育成を意識した取組,特に「話すこと」及び「書くこと」などの言語活動が適切に行われていないことや「やり取り」・「即興性」を意識した言語活動が十分ではないこと,読んだことについて意見を述べ合うなど,複数の領域を統合した言語活動が十分に行われていないことなどの課題がある。

 また,生徒の英語力の面では,習得した知識や経験を生かし,コミュニケーションを行う目的や場面,状況等に応じて自分の考えや気持ちなどを適切に表現することなどに課題がある。

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・ これらの課題を踏まえ,外国語教育を通じて育成を目指す資質・能力全体を貫く軸として,特に,他者とのコミュニケーションの基盤を形成する観点を重視しつつ,他の側面(創造的思考,感性・情緒等)からも育成を目指す資質・能力が明確となるよう整理した。

 

 このため,
 外国語の目標として,
 後述するとおり,

 外国語教育の特質に応じた,
 生徒が物事を捉え,思考する
 「外国語によるコミュニケーション
  における見方・考え方」
 を働かせ,

 外国語による
 「聞くこと」,「読むこと」,「話すこと」
 及び「書くこと」の言語活動
 を通して

 簡単な情報や考えなどを
 理解したり表現したり伝え合ったりする
 コミュニケーション

 を図るために必要な
 「知識及び技能」,
 「思考力,判断力,表現力等」,
 「学びに向かう力,人間性等」
 の資質・能力を
 更に育成すること
 を目指して改善を図った。

 

 あわせて,

@ 各学校段階の学びを接続させる

とともに,

A 「外国語を使って
   何ができるようになるか」
  を明確にする

 という観点から,
 小学校の学びとの接続を意識しながら
 各言語の目標として
 英語の目標を設定した。

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・このような目標の下に,関心のある事柄から日常的な話題や社会的な話題まで取り上げ,そういった事柄や話題について,一層幅広いコミュニケーションを図ることができるようにするため,内容においては,互いの考えや気持ちなどを外国語で伝え合う対話的な言語活動を重視するとともに,具体的な課題等を設定するなどして学習した語彙や表現等を実際に活用する活動を充実させ,言語活動の実質化を図っている。

 
 

 中央教育審議会答申を踏まえ,目標及び内容等に関して,次のような改善を図った。

 外国語科の目標は,前述のような課題を踏まえ,「知識及び技能」,「思考力,判断力,表現力等」,「学びに向かう力,人間性等」の三つの資質・能力を明確にした上で,

@ 各学校段階の学びを接続させるとともに,

A 「外国語を使って
   何ができるようになるか」
  を明確にする

という観点から改善・充実を図っている。

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 外国語の学習においては,語彙や文法等の個別の知識がどれだけ身に付いたかに主眼が置かれるのではなく,児童生徒の学びの過程全体を通じて,知識・技能が,実際のコミュニケーションにおいて活用され,思考・判断・表現することを繰り返すことを通じて獲得され,学習内容の理解が深まるなど,資質・能力が相互に関係し合いながら育成されることが必要である。

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 このため,それらの育成を目指す力について,前述のような課題を踏まえつつ,外国語学習の特性を踏まえて「知識及び技能」と「思考力,判断力,表現力等」を一体的に育成するとともに,その過程を通して,「学びに向かう力,人間性等」に示す資質・能力を育成し,小・中・高等学校で一貫した目標を実現するため,そこに至る段階を示すものとして国際的な基準であるCEFR1を参考に,「聞くこと」,「読むこと」,「話すこと[やり取り]」,「話すこと[発表]」,「書くこと」の五つの領域で英語の目標を設定している。その目標を実現するために行う後述の言語活動についても,CEFRを参照しながらその内容を設定している。

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 今回の改訂では,小学校中学年に新たに外国語活動を導入し,三つの資質・能力の下で,英語の目標として「聞くこと」,「話すこと[やり取り]」,「話すこと[発表]」の三つの領域を設定し,音声面を中心とした外国語を用いたコミュニケーションを図る素地を育成した上で,高学年において「読むこと」,「書くこと」を加えた教科として外国語を導入し,五つの領域の言語活動を通して,コミュニケーションを図る基礎となる資質・能力を育成することとしている。

 中学校段階では,こうした小学校での学びを踏まえ,五つの領域の言語活動を通してコミュニケーションを図る資質・能力を育成することとしている。

 
 

 外国語教育において育成を目指す三つの資質・能力を確実に身に付けられるように,小・中・高等学校を通じた領域別の目標の下で,内容等について以下のとおり体系的に構成を整理した。

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 前述の外国語科の目標及び英語の目標を実現するため,

(@) 「知識及び技能」として「英語の特徴やきまりに関する事項」(第2の2(1))

(A) 「思考力,判断力,表現力等」として「情報を整理しながら考えなどを形成し,英語で表現したり,伝え合ったりすることに関する事項」(第2の2(2))

を整理した上で,

(B) 言語活動及び言語の働きに関する事項(第2の2(3))として,「知識及び技能」を活用して「思考力,判断力,表現力等」を身に付けるための具体的な言語活動,言語の働き等

を整理した。

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 また,

(C) 指導計画の作成と内容の取扱い(第2の3)においては,小学校や高等学校における指導との接続に留意しながら指導すべき留意点等

を整理し,具体的な指導や評価において活用されるよう内容の構成全体を改善した。

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 各学校においては,このような内容構成を理解し,言語材料と言語活動,言語の働き等を効果的に関連付け,総合的に組み合わせて指導するとともに,この構成の中で,主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善を推進するため,学習過程を繰り返し経るような指導の改善・充実が図られる必要がある。

 
 

 外国語科の英語における内容については,小学校や高等学校における学習内容との接続の観点も踏まえ,次のような改善を図った。

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・ 互いの考えや気持ちなどを伝え合う対話的な言語活動を一層重視する観点から,「話すこと[やり取り]」の領域を設定するとともに,言語の使用場面や言語の働きを適切に取り上げ,語,文法事項などの言語材料と言語活動とを効果的に関連付けて指導することとするなどの改善・充実を図った。

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・ 取り扱う語数について,小学校で学習する600〜700語に加え,現行の「1200語程度」の語から五つの領域別の目標を達成するための言語活動に必要な「1600〜1800語程度」の語に改訂した。

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・ 文,文構造及び文法事項について,表現をより適切でより豊かにするなどの目的で,「感嘆文のうち基本的なもの」や「現在完了進行形」など数項目を追加した。

 
 

 外国語科の英語における指導計画の作成と内容の取扱いについては,次のような改善を図った。

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・ 小・中学校の接続を重視するとともに,学びの連続性を意識した指導をするために,指導計画の作成に当たっては,語彙,表現などを異なる場面の中で繰り返し活用することによって,生徒が自分の考えなどを表現する力を高めることなどを明記した。

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・ 言語材料については,発達の段階に応じて,生徒が受容するものと発信するものとがあることに留意して指導することを明記した。

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・ 授業は英語で行うことを基本とすることを新たに規定した。

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・ 教科書の改善に向けて,教材の中で五つの領域別の目標と言語材料や言語活動との関係を単元ごとに示すよう明記した。

 
 
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