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(3) 教材については,次の事項に留意するものとする。

ア 教材は,聞くこと,読むこと,話すこと[やり取り],話すこと[発表],書くことなどのコミュニケーションを図る資質・能力を総合的に育成するため,1に示す五つの領域別の目標と2に示す内容との関係について,単元など内容や時間のまとまりごとに各教材の中で明確に示すとともに,実際の言語の使用場面や言語の働きに十分配慮した題材を取り上げること

 教材の選定に当たっては,英語の学習において教材が重要な役割を果たすものであることを踏まえ,十分な配慮が必要である。

 ここでは,教材の選定や題材の選択上の配慮について示している。

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 まず,教材は,教科の目標である「簡単な情報や考えなどを理解したり表現したり伝え合ったりするコミュニケーションを図る資質・能力」を育成するために,適切なものを選定する必要がある。

 その際に,言語の使用場面の例や言語の働きの例などに十分配慮したものを取り上げることが大切である。

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 「1に示す五つの領域別の目標と2に示す内容との関係について,単元など内容や時間のまとまりごとに各教材の中で明確に示す」とは,「英語を用いて何ができるようになるか」という視点から,ある単元において,どの領域のどの目標に焦点を当てた指導をするとよいかを明らかにした上で,その目標を実現するためにどのような言語活動を行うのか,その際どういった言語材料を活用するのか,を適切に関連付けた上で,各教材の中で明示するということである。

 さらに,題材については,第2の2(3)Aで例示したような「言語の使用場面や言語の働き」を生かしたものとすることが重要である。

 
 

イ 英語を使用している人々を中心とする世界の人々や日本人の日常生活,風俗習慣,物語,地理,歴史,伝統文化,自然科学などに関するものの中から,生徒の発達の段階や興味・関心に即して適切な題材を効果的に取り上げるものとし,次の観点に配慮すること。

 「日常生活,風俗習慣」とは,家庭や学校,社会における日常の生活や風俗習慣などを示している。学年が進むにつれて,これらのことについての人々の考え方などを含めて取り扱うことになる。

 英語の学習を通して,人々の生活や風俗習慣の相違に一層の関心をもたせ,文化の多様性に着目させることが必要である。

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 「物語」は,世界各国に様々なものがあるが,選択に当たっては,生徒の発達の段階や興味・関心に応じたもの,様々な考え方などが含まれているものなどを適切に取り上げることが考えられる。

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 「地理,歴史」については,世界の様々な地域の様子,自然の景観,歴史上の人物や出来事など,生徒の興味・関心に応じて,学習意欲を起こさせるような題材を選択することが大切である。

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 「伝統文化」とは,昔から伝えられてきた風習・制度・思想・技術・芸術などを示している。

 国際社会で活躍する日本人の育成を図る上で,外国の伝統文化について知ることは,幅広い国際的な視野を身に付ける観点から大切なことである。

 また同時に,自国の伝統文化について外国の人々に発信できる素養を培うことも必要であり,そのための適切な題材を選択することが求められる。

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 「自然科学」については,発明や発見などの科学技術に関すること,あるいは自然現象や生物に関することなど,生徒の興味・関心を喚起するような題材を用意することが大切である。

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 これ以外の分野についても,生徒の発達の段階を考慮しつつ,生徒の興味・関心に応じて適切な題材を選択することが考えられる。

 中央教育審議会答申においては,「真に思考力,判断力,表現力等を育成するような言語活動の比重が低い現状から,学習指導要領の内容の実現のために言語活動の改善・充実に資する生徒が発信したいと思える題材とする視点が必要である」と提言されている。

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 このように,教材の選定に当たっては,生徒の発達の段階,興味・関心について十分に配慮しつつ,英語の目標に照らして適切であり,学習段階に応じた言語材料で構成されているような適切な題材を変化をもたせて取り上げるように配慮する必要がある。

 以下に題材の選択に関する三つの観点が示されている。
 
 

(ア) 多様な考え方に対する理解を深めさせ,公正な判断力を養い豊かな心情を育てるのに役立つこと。

 公正な判断力や豊かな心情を身に付ける上で,様々な人々の考え方に接することのできる適切な題材を選ぶことが必要であることを示したものである。

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 広く他の国の人々の考え方などを知ることにより,それらに対して寛容になるとともに,公平に正しく判断する力を養うことにもなる。

 また,様々な人々を理解することを通して豊かな人間性を育てることにもなる。

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 題材については,英語を使用している人々をはじめ世界の様々な人々の多様な考え方や行動の仕方について知ることができるようなものを選択することが大切になる。

 
 

(イ) 我が国の文化や,英語の背景にある文化に対する関心を高め,理解を深めようとする態度を養うのに役立つこと。

 英語の学習を通して,我が国の文化と,英語の背景にある文化との共通点や相違点を知るようになるとともに,そうしたことに関心をもち,理解を深めようとする態度を育成することが大切である。

 複数の文化に触れることが,我が国の伝統文化についての理解を深め,文化の多様性に対してより寛容になることに資するとともに,英語によるコミュニケーションの中で我が国の文化を発信することにもつながっていくことが考えられる。

 そのような観点から適切な題材を選ぶことが必要であることを示したものである。

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 ここで言う「文化」とは,日本語や英語を用いる人々の日常生活に密着した衣食住に関わる生活文化をはじめ,文学・科学技術・学問・芸術等に関わることなども含む幅広い分野にわたる文化のことである。

 この場合,生徒の発達の段階にふさわしいものの中から,生徒の興味・関心を踏まえ,特定のものに偏ることなく,文化に対する関心や理解を高めるのに役立つ題材を取り上げる必要がある。

 
 

(ウ) 広い視野から国際理解を深め,国際社会と向き合うことが求められている我が国の一員としての自覚を高めるとともに,国際協調の精神を養うのに役立つこと。

 中央教育審議会答申では,グローバル化が急速に進展する中で,外国語によるコミュニケーション能力は,これまでのように一部の業種や職種だけでなく,生涯にわたる様々な場面で必要とされることを想定し,その能力の向上を課題として掲げている。

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 そこで,外国の文化や考え方などについて受け身的に学ぶだけでなく,日本の文化や日本人の考え方を積極的に外国の人々に知らせるという観点から,ふさわしい題材の選択が必要になってくる。

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 題材の選択に当たっては,広い視野から国際理解を深め,国際協調の精神を養うのに役立つもので,生徒の興味・関心を引き出し育てることのできるような適切なものを選択するなどして,正しい理解が図れるように配慮することが大切である。

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 その際,文化の多様性や価値の多様性に気付かせ,異文化を受容する態度を育てる。さらに,世界の国々の相互依存関係を正しく認識させるなど,生徒に世界の中の日本人であることの自覚を高めるとともに,国際協調の精神を養うように配慮することが大切である。

 
 
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