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 我が国の教育は,教育基本法第1条に示されているとおり
「人格の完成を目指し,平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われ」るものである。

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 人格の完成及び国民の育成の基盤となるものが道徳性であり,その道徳性を育てることが学校教育における道徳教育の使命である。

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 平成25年12月の「道徳教育の充実に関する懇談会」報告では,道徳教育について「自立した一人の人間として人生を他者とともにより良く生きる人格を形成することを目指すもの」と述べられている。

 道徳教育においては,人間尊重の精神と生命に対する畏敬の念を前提に,人が互いに尊重し協働して社会を形づくっていく上で共通に求められるルールやマナーを学び,規範意識などを育むとともに,人としてよりよく生きる上で大切なものとは何か,自分はどのように生きるべきかなどについて,時には悩み,葛藤しつつ,考えを深め,自らの生き方を育んでいくことが求められる。

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 さらに,今後グローバル化が進展する中で,様々な文化や価値観を背景とする人々と相互に尊重し合いながら生きることや,科学技術の発展や社会・経済の変化の中で,人間の幸福と社会の発展の調和的な実現を図ることが一層重要な課題となる。

 こうした課題に対応していくためには,社会を構成する主体である一人一人が,高い倫理観をもち,人としての生き方や社会の在り方について,時に対立がある場合を含めて,多様な価値観の存在を認識しつつ,自ら感じ,考え,他者と対話し協働しながら,よりよい方向を目指す資質・能力を備えることがこれまで以上に重要であり,こうした資質・能力の育成に向け,道徳教育は,大きな役割を果たす必要がある。

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 このように,

 道徳教育は,
 人が一生を通じて追求すべき人格形成
 の根幹に関わるものであり,
 同時に,
 民主的な国家・社会の持続的発展を
 根底で支えるものでもある。

 また,

 道徳教育を通じて育成される道徳性,
 とりわけ,
 内省しつつ物事の本質を考える力や
 何事にも主体性をもって
 誠実に向き合う意志や態度,
 豊かな情操などは,
 「豊かな心」だけでなく,
 「確かな学力」や「健やかな体」の
 基盤ともなり,
 「生きる力」を育むために
 極めて重要なものである。

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 我が国の学校教育において道徳教育は,道徳の時間を要として学校の教育活動全体を通じて行うものとされてきた。

 これまで,学校や生徒の実態などに基づき道徳教育の重点目標を設定し充実した指導を重ね,確固たる成果を上げている学校がある一方で,例えば,歴史的経緯に影響され,いまだに道徳教育そのものを忌避しがちな風潮があること,他教科等に比べて軽んじられていること,読み物の登場人物の心情理解のみに偏った形式的な指導が行われる例があることなど,多くの課題が指摘されている。

 道徳教育は,生徒の人格の基盤となる道徳性を養う重要な役割があることに鑑みれば,これらの実態も真摯に受け止めつつ,その改善・充実に取り組んでいく必要がある。

 
 

 このため,平成26年2月には,文部科学大臣から,道徳教育の充実を図る観点から,教育課程における道徳教育の位置付けや道徳教育の目標,内容,指導方法,評価について検討するよう,中央教育審議会に対して諮問がなされ,同年3月から道徳教育専門部会を設置し10回に及ぶ審議を行い,教育課程部会,総会での審議を経て,同年10月に「道徳に係る教育課程の改善等について」答申を行った。

この答申では,

@ 道徳の時間を「特別の教科 道徳」(仮称)として位置付けること

A 目標を明確で理解しやすいものに改善すること

B 道徳教育の目標と「特別の教科 道徳」(仮称)の目標の関係を明確にすること

C 道徳の内容をより発達の段階を踏まえた体系的なものに改善すること

D 多様で効果的な道徳教育の指導方法へと改善すること

E 「特別の教科 道徳」(仮称)に検定教科書を導入すること

F 一人一人のよさを伸ばし,成長を促すための評価を充実すること

などを基本的な考え方として,道徳教育について学習指導要領の改善の方向性が示された。

 
 

この答申を踏まえ,平成27年3月27日に学校教育法施行規則を改正し,「道徳」を「特別の教科である道徳」とするとともに,小学校学習指導要領,中学校学習指導要領及び特別支援学校小学部・中学部学習指導要領の一部改正の告示を公示した。

 今回の改正は,いじめの問題への対応の充実や発達の段階をより一層踏まえた体系的なものとする観点からの内容の改善,問題解決的な学習を取り入れるなどの指導方法の工夫を図ることなどを示したものである。

 このことにより,

「特定の価値観を押し付けたり,主体性をもたず言われるままに行動するよう指導したりすることは,道徳教育が目指す方向の対極にあるものと言わなければならない」,

「多様な価値観の,時に対立がある場合を含めて,誠実にそれらの価値に向き合い,道徳としての問題を考え続ける姿勢こそ道徳教育で養うべき基本的資質である」

との答申を踏まえ,
発達の段階に応じ,
答えが一つではない道徳的な課題を
一人一人の生徒が
自分自身の問題と捉え,向き合う
「考える道徳」,
「議論する道徳」
へと転換を図るものである。

 改正中学校学習指導要領は,平成27年4月1日から移行措置として,その一部又は全部を実施することが可能となっており,平成31年4月1日から全面実施することとしている。

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 なお,平成29年3月に告示された全面改訂後の中学校学習指導要領は平成33年度から全面実施されるが,第1章総則については,道徳科の実施に係る部分以外の規定については,平成30年度から先行実施することとされている。

 このため,本解説においては,第1章総則については,平成29年3月31日告示による改訂後のものを示している。

 
 
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