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中学校 学習指導要領 【解説】 |
道徳編 |
第3章 道徳科の内容 |
第2節 内容項目の指導の観点 |
B 主として人との関わりに関すること |
9 相互理解,寛容 |
中学校 学習指導要領 【本文】 |
自分の考えや意見を相手に伝えるとともに,それぞれの個性や立場を尊重し,いろいろなものの見方や考え方があることを理解し,寛容の心をもって謙虚に他に学び,自らを高めていくこと。 |
(小学校) [相互理解,寛容] --------------------------------- 〔第3学年及び第4学年〕 自分の考えや意見を相手に伝えるとともに,相手のことを理解し,自分と異なる意見も大切にすること。 --------------------------------- 〔第5学年及び第6学年〕 自分の考えや意見を相手に伝えるとともに,謙虚な心をもち,広い心で自分と異なる意見や立場を尊重すること。 |
中学校 学習指導要領 【解説】 |
9 相互理解,寛容 |
(1) 内容項目の概要 |
人間相互の理解は,自分の考えや意見を発信することが一つの鍵になる。 様々な物事について,自分の考えや意見を人に伝えることは,人間関係を築き,相互理解を深めるために欠かすことができない。 人間は,大抵の物事についてその全体を知り尽くすことは難しく,自分なりの角度や視点から物事を見ることが多い。 人には,それぞれ自分のものの見方や考え方があり,個性がある。 そこで大切なことは,互いが相手の存在の独自性を認め,相手の考えや立場を尊重することである。 他者と全く同じということはないのであり,他者との関わりの中で具体的な物事について話し合ってみないと,自分の狭さに気付くことができない。 そして,自分自身も他者も,それぞれのものの見方や考え方にとらわれ,過ちを犯しやすい人間であると深く理解することで,自分と異なる他者の立場や考え方を尊重することができる。 寛容の心をもてば,人を許し受け入れてとがめだてしないで,他者のよい面を積極的に認めようとすることができるのである。 -------------------------------- また,自分のものの見方や考え方を広げて確かなものにしていくためには,他者に学ぶことが大切であることに気付くことができ,他者の助言や忠告に謙虚に耳を傾けることができる。 他者から謙虚に学んでいくことは,よりよい人間としての成長を促すために大切なことである。 また,個性は,決して自分一人で伸びるものだけではなく,他者に認められながら伸びるものもある。 時には,自分の考えや意見を他者に伝えることに困難が生じたり,意見や思いを伝えられなかったりすることもある。 よりよい人間関係を築くためには,時には毅(き)然とした言葉や態度も必要となる。 互いのもつ異なる個性を見付け,違うものを違うと認め,時には私心のない寛容の心や他者の意見を認めて素直に取り入れる謙虚さをもって他に学び,自己を高めることが求められる。 |
中学校 学習指導要領 【解説】 |
9 相互理解,寛容 |
(2) 指導の要点 |
小学校の段階では,特に高学年で家族や学校での生活を通して多様な体験を重ね,自分の考えや意見を伝えることや相手の気持ちを考えることの大切さが分かり,行動しようとするようになる。 -------------------------------- 中学校の段階では,入学して間もない時期には,新たな環境で,学級の仲間や先輩との新たな出会いの中で,見方や考え方の多様性を実感することが多くなる。 同時に,自分の考えや意見と相手との差異を理解しつつも,自分の考えや意見を伝えることの大切さを感じる機会が増える。 また,伝えることとともに,相手の立場に立ってその考えや意見を聴くことで,真の相互理解が可能になることも少しずつ経験していく時期である。 学年が上がるにつれて,ものの見方や考え方が確立するとともに,自分の考えや意見に固執する傾向も見えてくる。 また,自分と他者の考えや意見の違いが明らかになることを恐れたり,考え方の違いから仲間だと思っていた関係に摩擦が生じたりして,悩み,孤立する場合がある。 その一方で,過剰に同調する傾向も生じやすく,いじめのような問題に発展することもある。 安易に人の意見に合わせることで,現実から逃避したり,自分さえよければよいという考えをもったりすることもある。 -------------------------------- 指導に当たっては,まず,個性とは何かについて正しく理解するとともに,自らの意志に背いて他に同調するのではなく,自分の考えや意見を伝えること,そして互いの個性や立場を尊重し,広い視野に立っていろいろなものの見方や考え方があることを理解しようとする態度を育てることが大切である。 中学生は,他者の考えや立場を尊重し調和して生活していかなければならないと知っているが,その一方で,寛容に生きていくための処世の術のように理解していないか,問わなくてはならない。 寛容は,他人の過ちを大目に見たり,見て見ぬふりをしたりすることではない。 他人の過ちを許すことは,他人の不正を許すことではないのである。 -------------------------------- さらに,いろいろなものの見方や考え方から学び,自分自身を高め,他者と共に生きるという自制を伴った気持ちで,判断し行動することの大切さを理解できるような指導の工夫が必要になる。 このような指導を通して,例えばいじめや不正を見逃さず,排除しようとする主張や不正を指摘する資質や能力を培うことにつなげることができる。 この内容項目の学習を通して,人間が相互に個性や立場を尊重することが,自分の人生にとってどのような価値をもつのか考えるとともに,誰もが様々な立場に立って個性を発揮することのよさと,相手や場面が変わっても,寛容の心をもち謙虚に他に学ぶことが人間としての成長に役立つことを理解できるようにすることが大切である。 |
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