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 人間には自らの弱さや醜さを克服する強さや気高く生きようとする心があることを理解し,人間として生きることに喜びを見いだすこと。

(小学校)

[よりよく生きる喜び]

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〔第5学年及び第6学年〕

 よりよく生きようとする人間の強さや気高さを理解し,人間として生きる喜びを感じること。

 
 

 誰でも,自分に自信がもてなかったり,劣等感に悩んだり,誰かを妬んだり,恨んだりすることがある。欠点や弱点がない人間はいない。

 ありのままの人間は,決して完全なものではない。

 誰の心の中にも弱さや醜さがある。自分を律することができず,ついつい怠けてしまうことがある。してはいけないと知りつつ,意地悪なことをしてしまうこともある。

 自分の利益を最優先にして,他人の不利益を無視して行動してしまうこともある。

 人間の存在自体,「人間はひとくきの葦(あし)にすぎない。

 自然の中で最も弱いものである。」というパスカルの言葉のとおり,風にそよぐ葦(あし)のようにはかなく弱いものである。

 しかしながら,同時に,人間はその弱さや醜さを克服したいと願う心をもっている。

 パスカルは,「だが,それは考える葦(あし)である。」と続け,思考が人間の偉大さをつくると考えた。

 人間は,総体として弱さはもっているが,それを乗り越え,次に向かっていくところにすばらしさがある。

 時として様々な誘惑に負け,やすきに流れることもあるが,誰もがもつ良心によって悩み,苦しみ,良心の責めと戦いながら,呵責(かしゃく)に耐えきれない自分の存在を深く意識するようになる。

 こうした苦しみに打ち勝って,恥とは何か,誇りとは何かを知り,自分に誇りをもつことができたとき,人間として生きる喜びに気付くことができる。

 そして,人間として生きることへの喜びや人間の行為の美しさに気付いたとき,人間は強く,また,気高い存在になり得るのである。

 「気高く生きようとする心」とは,自己の良心に従って人間性に外れずに生きようとする心である。

 良心とは,自己の行為や性格の善悪を自覚し,善を行うことを命じ,悪を退けることを求める心の動きである。

 義務の観念と深く関わり,義務を遂行できなかったとき深い後悔の念を抱き,義務を遂行でき他者との絆(きずな)を守れたとき本来の自己を取り戻せたとして喜びを感じる。

 このことは,自己の弱さや醜さに向き合うことがなければ,気付くことができない自己の強さであり,気高さである。

 人間の強さと気高さは,弱さと醜さと決して離れているわけではなく,言わば,表裏の関係ということになろう。

 ここで言う人間としての生きる喜びとは,自己満足ではなく,人間としての誇りや深い人間愛でもあり,崇高な人生を目指し,同じ人間として共に生きていくことへの深い喜びでもある。

 
 

 小学校の段階では,高学年に,今回初めてこの内容項目が置かれた。

 そのため,近隣の小・中学校が連携協力し,発達の段階に応じた指導内容と方法について工夫を重ねることが必要である。

 自分を高め,身近な仲間とよい関係を築き,人間としての強さや気高さを身に付けて生きようとする項目であり,いじめの防止等にもつながる内容項目である。

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 中学校の段階では,入学して間もない時期には,人間が内に弱さや醜さをもつと同時に,強さや気高さを併せてもつことを理解することができるようになってくる。

 しかし,なかなか自分に自信がもてずに,劣等感にさいなまれたり,人を妬み,恨み,うらやましく思ったりすることもある。

 学年が上がるにつれて,崇高な人生を送りたいという人間のもつ気高さを追い求める心が強くなる。

 自分を含め,人は誰でも人間らしいよさをもっていることを認めるとともに,決して人間に絶望することなく,誰に対しても人間としてのよさを見いだしていこうとする態度が次第に育ってくる。

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 指導に当たっては,まず,自分だけが弱いのではないということに気付かせることが大切である。

 弱さや醜さだけを強調したり,弱い自分と気高さの対比に終わったりすることなく,自分を奮い立たせることで目指す生き方や誇りある生き方に近付けるということに目を向けられるようにする必要がある。

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 さらに,人間がもつ強さや気高さについて十分に理解できるようにすることが大切である。

 先人の気高い生き方などから,内なる自分に恥じない,誇りある生き方,夢や希望など喜びのある生き方を見いだすことができるようになる。

 生徒が,自分の弱さを強さに,醜さを気高さに変えられるという確かな自信をもち自己肯定でき,よりよく生きる喜びを見いだせるような指導が求められる。

 
 
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