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(4)生徒が多様な感じ方や考え方に接する中で,考えを深め,判断し,表現する力などを育むことができるよう,自分の考えを基に討論したり書いたりするなどの言語活動を充実すること。

 その際,様々な価値観について多面的・多角的な視点から振り返って考える機会を設けるとともに,生徒が多様な見方や考え方に接しながら,更に新しい見方や考え方を生み出していくことができるよう留意すること。

 学校の教育活動全体で言葉を生かした教育の充実が求められている。

 言語は,知的活動だけでなく,コミュニケーションや感性,情緒の基盤である。

 道徳科においても,言葉を生かした教育の充実が図られなければならない。

 道徳科において行われる道徳的諸価値についての理解を基に,自己を見つめ,物事をより広い視野から多面的・多角的に考え,人間としての生き方についての考えを深める学習では,道徳的価値を含んだ教材を基に,生徒が自分の体験や感じ方,考え方を交えながら話合いを深める学習活動を行うことが多い。

 その意味からも,道徳科における言葉の役割は極めて大きいと言える。

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 国語科では言葉に関わる基本的な能力が培われるが,道徳科は,このような能力を基本に,教材や体験などから感じたことや,考えたことをまとめ,発表し合ったり,討論などにより感じ方,考え方の異なる人の考えに接し,協働的に議論したりする。

 例えば,教材の内容や登場人物の気持ちや行為の動機などを自分との関わりで考えたり,友達の考えを聞いたり,自分の考えを伝えたり,話し合ったり,書いたりする。

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 さらに,学校内外での様々な体験を通して考え,感じたことを,道徳科の学習で言葉を用いて表現する。

 これらの中で,言葉の能力が生かされ,一層高められていく。

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 したがって,道徳科においては,このような言語活動を生かして学習を展開することが,ねらいを達成する上で極めて重要であると考えられる。

 
 

 道徳科のねらいに迫るために,個々の生徒や学級の実態に応じて,自分の考えを基に,討論したり書いたりするなど表現する機会を充実することが大切である。

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 生徒は他者と討論することなどを通して,自分の意見と他の生徒の意見を突き合わせて,どこが同じでどこが違うのかなどを確かめることができる。

 また,生徒は書く活動を通して,自分自身のものの見方,考え方,感じ方などを確かめたり,まとめたり,記録に残したりすることができる。

 それらをもとに今までの自分のものの見方,考え方,感じ方などを振り返ることもできる。

 つまり,討論したり書いたりするなどの表現する機会は,道徳科において,生徒が自分自身の感じ方や考え方を言語化することによって,自ら考えたり見直したりしていることを明確にすることにつながるのである。

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 このように生徒が自分自身のものの見方,考え方,感じ方を明らかにすることは,自分の意見がどのようなことを根拠にしているのか,どのような理由によるものなのか,そのよりどころを明らかにする過程でもあり,「なぜ」「どうして」と,更に深く自己や他者と対話することで,自分自身を振り返り,自らの価値観を見つめ,見直すことになる。

 すなわち,道徳科のねらいである道徳的価値の理解を基に人間としての生き方についての自覚を深めることを促すことになる。

 したがって,「討論したり,書いたりするなどを表現する機会」を適切に設け,ねらいの根底にある道徳的価値を自覚する手立ての一つとして生かしていくことが求められる。

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 ただし,「討論したり書いたりするなどの言語活動の充実」が,討論という手立て,方法などの活動だけを意図しているのではない点について留意する必要がある。

 道徳科のねらいである人間としての生き方についての考えを深める学習を通して,内面的資質としての道徳性を主体的に養っていく時間である以上,人生の意味をどこに求め,いかによりよく生きるかといった人間としての生き方に関わって,生徒と生徒及び自分自身との対話が深まるよう,表現する活動の内容や場面の工夫が一層求められる。

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 例えば,終末の段階での書く活動を通して,その時間の学習を振り返ることに充てることが考えられる。

 また,展開の段階などで,討論などを通して,生徒同士が,相手の意見を言い負かしたり,自分の意見を発表したりすることだけに終始するのではなく,教材中に描かれている登場人物等の生き方や他の生徒の意見を手掛かりに,多面的・多角的な視点から自分自身の考えを練り上げていき,自分自身の考えを突き詰めて厳しく吟味していくことが考えられる。

 さらには,生徒が自分の考えをまとめて人に分かりやすいように書いたり発表したりして表現する機会を設けることが,生徒自身の考えを自分自身で確かめたり,自分自身の道徳的成長を実感したりする格好の機会となる可能性がある。

 
 

 道徳科の授業においては,生徒一人一人がしっかりと課題に向き合い,教師や他の生徒との対話や討論なども行いつつ,内省し,熟慮し,自らの考えを深めていくプロセスが極めて重要である。

 言語活動や多様な表現活動等を通じて,道徳科の特質を踏まえた上で,生徒に考えさせる授業を重視する必要がある。

 道徳科における言語活動では,集団の中で生徒がそれぞれの考えを伝え合うことを通じて,いろいろなものの見方や考え方があることに気付き,それぞれの考えの根拠や前提条件の違い,特徴などを捉え,自分の考えを多面的・多角的な視点から振り返って考えることが重要である。

 また,互いの考えの異同を整理して,自分の考えになかったものを受け入れて自分の考えに生かしたり,相手の立場や考えを考慮し,尊重したりすることで,自分や集団の考えを発展させ,新しい見方や考え方を生み出すための機会でもある。

 このように自己を表現し他者を理解しながら,互いに建設的な議論をする経験は,寛容の態度を育み,やがて実生活での複雑な具体的事象に対して,他者と共に適切に判断し,行動する資質や能力を養うことにつながるからである。

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 このように生徒の言語活動を充実させるために,言語環境を整え,生徒の発達の段階や言語能力を踏まえて意図的,計画的に指導する必要がある。

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 生徒の実態によっては,自分に自信がもてず,人間関係に不安を感じていたり,好ましい人間関係を築けず社会性の発達が不十分であったりする状況が見られたりすることから,自由に意見を述べ合える望ましい集団を育成するとともに,その実態に応じた指導の工夫が求められる。

 例えば,大きな集団の中で自分の意見を表すことが苦手な生徒が多い場合は,数人のグループで討論する過程を経て,多人数での討論に移行したり,自分の考えや意見を伝える表現力が未熟な場合には,他の領域との連携により,学級活動の時間等で表現の技能を向上させたりする取組を意図的,計画的に行い,道徳科が,その特質を十分生かせるよう工夫するなどしてもよい。

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 また,授業者は言語活動を通して,互いの存在を認め尊重し,意見を交流し合う経験により,生徒の自尊感情や自己への肯定感を高めることも念頭に置いて指導することが大切である。

 そのためには,学校や学級内の人間関係や環境を整えるとともに,一人一人の生徒が安心して意見を述べ,互いに学べるような場の設定が必要である。

 
 
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