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(5) 生徒の発達の段階や特性等を考慮し,指導のねらいに即して,問題解決的な学習,道徳的行為に関する体験的な学習等を適切に取り入れるなど,指導方法を工夫すること。

 その際,それらの活動を通じて学んだ内容の意義などについて考えることができるようにすること。

 また,特別活動等における多様な実践活動や体験活動も道徳科の授業に生かすようにすること。

 道徳科においては,道徳的諸価値についての理解を基に,自己を見つめ,物事をより広い視野から多面的・多角的に考え,人間としての生き方についての考えを深める学習を行う。

 こうした道徳科の特質を生かすことに効果があると判断した場合には,多様な方法を活用して授業を構想することが大切である。

 道徳科の特質を生かした授業を行う上で,各教科等と同様に,問題解決的な学習や体験的な学習を有効に活用することが重要である。

 その際,中学校では生徒の発達の段階や特性等を考慮した上で,人間としての生き方について多面的・多角的に考え,話合いや討論することを通して,主体的かつ自発的な学習を展開できるように創意工夫することが求められる。

 
 

 多様な指導方法を活用することは,極めて大切である。

 問題解決的な学習とは,生徒が学習主題として何らかの問題を自覚し,その解決法についても主体的・能動的に取り組み,考えていくことにより学んでいく学習方法である。

 道徳科における問題解決的な学習とは,生徒一人一人が生きる上で出会う様々な道徳上の問題や課題を多面的・多角的に考え,主体的に判断し実行し,よりよく生きていくための資質・能力を養う学習である。

 そうした問題や課題は,多くの場合,道徳的な判断や心情,意欲に誤りがあったり,複数の道徳的価値が衝突したりするために生じるものである。

 指導方法は,ねらいに即して,目標である道徳性を養うことに資するものでなければならない。

 特に中学校では,問題解決的な学習を通して,生徒が人間としてよりよく生きていくために,道徳的諸価値についての理解を基に,自己を見つめ,人間としての生き方について深く考え,適切な行為を主体的に選択し,行為することができる実践意欲と態度を育てるよう指導することが大切である。

 日常生活での問題を道徳上の問題として把握したり,自己の生き方に関する課題に積極的に向き合い,自分の力で考え,よりよいと判断して,行為しようとする意欲を培ったりすることができる。

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 問題解決的な学習は,生徒の学習意欲を喚起するとともに,生徒一人一人が生きる上で出会う様々な問題や課題を主体的に解決し,よりよく生きていくための資質・能力を養うことができる。

 生徒が問題意識をもって学習に臨み,ねらいとする道徳的価値を追求し,多様な感じ方や考え方によって学ぶことができるようにするためには,指導方法の工夫が大切である。

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 例えば,主題に対する生徒の興味や関心を高める導入の工夫,他者の考えと比べ自分の考えを深める展開の工夫,主題を自分との関わりで捉え自己を見つめ直し,発展させていくことへの希望がもてるような終末の工夫などがある。

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 また,問題解決的な学習では,教師と生徒,生徒相互の話合いが十分に行われることが大切であり,教師の発問の仕方の工夫などが重要である。

 さらに,話合いでは学習形態を工夫することもでき,一斉による学習だけでなく,ペアや少人数グループなどでの学習も有効である。

 ただし,この場合,議論する場面を設定すること,ペアや少人数グループなどでの学習を導入することが目的化してしまうことがないよう,ねらいに即して,取り入れられる手法が適切か否かをしっかり吟味する必要がある。

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 道徳科において問題解決的な学習を取り入れた場合には,その課題を自分との関わりや人間としての生き方との関わりで見つめたときに,自分にはどのようなよさがあるのか,どのような改善すべきことがあるのかなど,生徒一人一人が道徳上の課題に対する答えを導き出すことが大切である。

 そのためにも,授業では自分の気持ちや考えを発表するだけでなく,時間を確保してじっくりと自己を見つめ直して書くことなども有効であり,指導方法の工夫は不可欠である。

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 現代的な課題を道徳科の授業で取り上げる際には,問題解決的な学習を活用することができる。

 
 

 道徳的諸価値を理解するためには,例えば,具体的な道徳的行為の場面を想起させ追体験させて,実際に行為することの難しさとその理由を考えさせ,弱さを克服することの大切さを自覚させることなどが考えられる。

 また,道徳的行為の難しさについて語り合ったり,それとは逆に,生徒たちが見聞きしたすばらしい道徳的行為を出し合ったりして,考えを深めることも考えられる。

 さらに,読み物教材等を活用した場合には,その教材に登場する人物等の言動を即興的に演技して考える役割演技など疑似体験的な表現活動を取り入れた学習も考えられる。

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 これらの方法を活用する場合は,単に体験的行為や活動そのものを目的として行うのではなく,授業の中に適切に取り入れ,体験的行為や活動を通じて学んだ内容から道徳的価値の意義などについて考えを深めるようにすることが重要である。

 道徳科の授業に体験的な学習を取り入れる際には,単に活動を行って終わるのではなく,生徒が体験を通じて学んだことを振り返り,その意義について考えることが大切である。

 体験的な学習を通して道徳的価値の理解を深め,様々な課題や問題を主体的に解決するための資質・能力の育成に資するように十分に留意する必要がある。

 
 

 道徳科において実践活動や体験活動を生かす方法は多様に考えられ,各学校で生徒の発達の段階等を考慮して年間指導計画に位置付け,実施できるようにすることが大切である。

 例えば,ある体験活動の中で感じたことや考えたことを道徳科の話合いに生かすことで,生徒の関心を高め,道徳的実践を主体的に行う意欲と態度を育む方法などが考えられる。

 特に特別活動において,道徳的価値を意図した実践活動や体験活動が計画的に行われている場合は,そこでの生徒の体験を基に道徳科において考えを深めることが有効である。

 例えば,体育祭や修学旅行などの学校行事において,生徒一人一人が学校や学級の一員として活動した経験を基に,自分の役割と責任について自覚を深めた体験を道徳科の授業の導入や展開で振り返ることができる。

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 学校が計画的に実施する体験活動は,生徒が共有することができ,学級の全生徒が共通の関心などを基に問題意識を高めて学習に取り組むことが可能になるため,それぞれの指導相互の効果を高めることが期待できる。

 
 
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