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 学習指導要領第1章総則には,教育課程実施上の配慮事項として,「生徒のよい点や進歩の状況などを積極的に評価し,学習したことの意義や価値を実感できるようにすること。

 また,各教科等の目標の実現に向けた学習状況を把握する観点から,単元や題材など内容や時間のまとまりを見通しながら評価の場面や方法を工夫して,学習の過程や成果を評価し,指導の改善や学習意欲の向上を図り,資質・能力の育成に生かすようにすること。」として学習評価を指導の改善につなげることについての記述がある。

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 道徳科においても,教師が自らの指導を振り返り,指導の改善に生かしていくことが大切であり,授業の評価を改善につなげる過程を一層重視する必要がある。

 
 

 生徒の学習状況の把握を基に授業に関する評価と改善を行う上で,学習指導過程や指導方法を振り返ることは重要である。

 教師自らの指導を評価し,その評価を授業の中で更なる指導に生かすことが,道徳性を養う指導の改善につながる。

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 明確な意図をもって指導の計画を立て,授業の中で予想される具体的な生徒の学習状況を想定し,授業の振り返りの観点を立てることが重要である。

 こうした観点をもつことで,指導と評価の一体化が実現することになる。

 道徳科の学習指導過程や指導方法に関する評価の観点はそれぞれの授業によって,より具体的なものとなるが,その観点としては,例えば,次のようなものが考えられる。

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ア 学習指導過程は,道徳科の特質を生かし,道徳的諸価値の理解を基に自己を見つめ,人間としての生き方について考えを深められるよう適切に構成されていたか。

 また,指導の手立てはねらいに即した適切なものとなっていたか。

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イ 発問は,生徒が広い視野から多面的・多角的に考えることができる問い,道徳的価値を自分のこととして捉えることができる問いなど,指導の意図に基づいて的確になされていたか。

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ウ 生徒の発言を傾聴して受け止め,発問に対する生徒の発言などの反応を,適切に指導に生かしていたか。

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エ 自分自身との関わりで,物事を広い視野から多面的・多角的に考えさせるための,教材や教具の活用は適切であったか。

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オ ねらいとする道徳的価値についての理解を深めるための指導方法は,生徒の実態や発達の段階にふさわしいものであったか。

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カ 特に配慮を要する生徒に適切に対応していたか。

 
 

 授業者自らが記憶や授業中のメモ,板書の写真,録音,録画などによって学習指導過程や指導方法を振り返ることも大切である。

 録音や録画で授業を振り返ることは,今まで気付かなかった傾向や状況に応じた適切な対応の仕方などに気付くことにもなる。

 生徒一人一人の学習状況を確かめる手立てを用意しておき,それに基づく評価を行うことも考えられる。

 道徳科の授業を公開して参観した教師から指摘を受けたり,ティーム・ティーチングの協力者などから評価を得たりする機会を得ることも重要である。

 その際,あらかじめ重点とする評価項目を設けておくと,具体的なフィードバックが得られやすい。

 
 

 道徳科の指導は,道徳性の性格上,1単位時間の指導だけでその成長を見取ることが困難である。

 そのため,指導による生徒の学習状況を把握して評価することを通して,改めて学習指導過程や指導方法について検討し,今後の指導に生かすことができるようにしなければならない。

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 生徒の道徳性を養い得る質の高い授業を創造するためには,授業改善に資する学習指導過程や指導方法の改善に役立つ多面的・多角的な評価を心掛ける必要がある。

 また,道徳科の授業で生徒が伸びやかに自分の感じ方や考え方を述べたり,他の生徒の感じ方や考え方を聞いたり,様々な表現ができたりするのは,日々の学級経営と密接に関わっている。

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 道徳科における生徒の道徳性に係る成長の様子に関する評価においては,慎重かつ計画的に取り組む必要がある。

 道徳科は,生徒の人格そのものに働きかけるものであるため,その評価は安易なものであってはならない。

 生徒のよい点や成長の様子などを積極的に捉え,それらを日常の指導や個別指導に生かしていくよう努めなくてはならない。

 
 
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