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 単元とは,課題の解決や探究的な学習活動が発展的に繰り返される一連の学習 活動のまとまりという意味である。

 単元計画の作成とは,教師が意図やねらいをもって,このまとまりを適切に生み出そうとする作業にほかならない。

 単元づくりは,教師の自律的で創造的な営みである。

 学校として既に十分な実践経験が蓄積され,毎年実施する価値のある単元計画が存在する場合でも,改めて目の前の生徒の実態に即して,単元づくりを行う必要がある。

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 単元計画を立てるに当たっては,今回の改訂により,第3の1の(1)において「年間や,単元など内容や時間のまとまりを見通して,その中で育む資質・能力の育成に向けて,生徒の主体的・対話的で深い学びの実現を図るようにすること。

 その際,生徒や学校,地域の実態等に応じて,生徒が探究的な見方・考え方を働かせ,教科等の枠を超えた横断的・総合的な学習や生徒の興味・関心等に基づく学習を行うなど創意工夫を生かした教育活動の充実を図ること。」とされたことを踏まえることが重要である。

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 総合的な学習の時間の学習活動については,探究的な学習であることを重要な要件の一つとしている。

 したがって,総合的な学習の時間では,生徒にとって意味のある課題の解決や探究的な学習活動のまとまりとなるように単元を計画することが大切である。

 生徒は,自分を取り巻く人,もの,ことについて,様々な興味・関心を抱いている。

 教師は,その中から教育的に見て価値のあるものを捉え,それを適切に生かして学習活動を組織する。

 学習活動の展開においては,育成を目指す資質・能力が育成されるように,生徒が自ら課題を解決する過程を想定して単元の計画を立てる。

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 このようにして生み出された単元は,生徒の興味・関心をよりどころとするため,生徒の活動への意欲は高い。

 また,そこでの学習も真剣なものとなりやすく,学んだ内容も生きて働くものとなることが多い。

 その一方で,生徒が主体的に進める活動の展開においては,教師が意図した内容を生徒が自ら学んでいくように単元を構成する点に難しさがある。

 この点がうまくいかないと,単なる体験や活動に終始してしまう場合もある。

 いわゆる「活動あって学びなし」とは,このような状況に陥った実践を批判した表現である。

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 総合的な学習の時間の単元計画に際しては,次の二つの重要なポイントがある。

 一つは,生徒による主体的で粘り強い課題の解決や探究的な学習活動を生み出すには,生徒の興味や疑問を重視し,適切に取り扱うことである。

 もう一つは,課題の解決や探究的な学習活動の展開において,いかにして教師が意図した学習を効果的に生み出していくかである。

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 以下,この二つのポイントに沿って単元計画を作成する際の要点を解説する。

 
 

 総合的な学習の時間では,生徒の関心や疑問が単元の源であり,単元計画を作成する際の出発点でもある。

 では,生徒の関心や疑問をどのように捉え,単元計画につなげていけばよいか。

 そこには,三つの留意すべき点がある。

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  第1に,生徒の関心や疑問は,その全てを本人が意識しているとは限らず,無意識の中に存在している部分も多いと捉えることである。

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 主体的で粘り強い課題の解決や探究的な学習活動を生み出すには,その出発点である生徒の関心や疑問が本人にとって切実なものであることが重要である。

 しかし,何が自分にとっての関心や疑問であるか,生徒が十分に自覚できていなかったり,適切に言語化できていなかったりすることも多い。

 興味・関心をもっていること,取り組んでみたいことなどについて,生徒が話したことや書いたことのみを頼りに単元を計画してもうまくいかないのは,このためである。

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 単元の計画に際しては,生徒の関心や疑問は何かを丁寧に見取り,把握することが求められる。

 具体的には,他教科等での学習や日常生活の中での語りやつぶやき,ノートや生活の記録,保護者から寄せられた生徒の様子など,生徒の関心や疑問がうかがえる各種の資料を収集し,精査することが考えられる。

 あるいは,休み時間や給食の時間など,日常の何げない機会を捉え,生徒と丁寧に会話する機会を設ける工夫なども有効である。

 会話の中で自分の考えや思いを語り,無自覚だった関心や疑問を生徒自身が自覚することもある。

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 第2に,生徒の関心や疑問とは,生徒の内に閉ざされた固定的なものではなく,環境との相互作用の中で生まれ,変化するものと捉えることである。

 今現在,生徒が抱いている関心や疑問は,過去や現在における生徒を取り巻く環境との相互作用の中で生まれてきたものである。そして,今後も様々な相互作用を通して変化していく。

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 このように考えると,事前に生徒が抱いている関心や疑問だけで単元計画を構想する必要はない。

 教師の働きかけなどにより,新たな関心や疑問が芽生える可能性も十分あるからである。

 そうやって新たに生まれた関心や疑問をよりどころに活動を組織し,単元を生み出すことも含めて考えることで,単元計画の選択肢は広がる。

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 例えば,体験を通して生徒に新たな関心や疑問が生じることは十分考えられるし,それを意図して特定の体験を設定することは,教師の意図的で計画的な指導の一環である。

 あるいは,もっと直接的に「こんなことをしてはどうだろう」と具体的な活動を提案してもよい。

 生徒だけでは思い付かないが,教師に提案されれば是非ともやってみたいと思う活動もあり得る。

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 第3に,生徒にとって切実な関心や疑問であれば何を取り上げてもよいというわけではなく,総合的な学習の時間において価値ある学習に結び付く見込みのあるものを取り上げ,単元を計画することである。

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 教師が選択して取り上げるという点について,生徒の関心や疑問に十分に応えることにならないのではないか,との疑念をもつかもしれない。

 しかし,総合的な学習の時間において,生徒の関心や疑問を大切にし,それをよりどころとして学習活動を生み出すのは,その先で価値ある学習を実現するためである。

 そのためには,何でもよいというわけにはいかない。

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 また,生徒の興味・関心は一つではない。

 第2の留意点で述べた通り,尋ねれば生徒は一つの関心事を挙げるかもしれないが,それが唯一の関心でも,興味の全てでもない。

 今現在,生徒が興味をもつことや関心を寄せるものなどはたくさんあり,さらに周囲の環境との相互作用の中で新たな関心や疑問は生まれてくるものである。

 大切なのは,教師が教育的な意図で選択して取り上げたものが,生徒にとっての関心や疑問につながっていることである。

 
 

 生徒の関心や疑問を源とする生徒主体の学習活動の中で,いかにすれば教師が意図する学習を効果的に生み出し,資質・能力を育成することができるかについて,以下に述べる。

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 まず,その関心や疑問から,生徒はどのような活動を求め,展開していくだろうか,と考える。

 そして,活動の展開において出会う様々な問題場面と,その解決を目指して生徒が行う課題の解決や探究的な学習活動の様相,さらにそれぞれの学習活動を通して生徒が学ぶであろう事柄について,考えられる可能性をできるだけ多面的,網羅的に予測する。

 もちろんその際には,各学校で定めた目標や内容との照らし合わせを行う。

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 例えば,
 「今と昔,地域の環境の変化を
  見つめることから,
  地球の環境問題の改善に向けて
  取り組もう」
 という単元であれば,
 生徒は身近な環境の変化を
 確かめようとする。

 この場面では,
 生徒は,
 これまでの生活経験などを基に,
 何が変化したのかについて,
 エネルギーや自然環境に関する変化,
 景観
 などに整理し,仮説を立てる。

 そして,
 仮説を検証するために,
 実際に地域に出て
 調査活動を行おうとする。

 ここで生徒は,
 市史や昔の写真と現在を比較しながら
 調査を進める中で,
 エアコンの室外機が増えていることや,
 信号機の数が増えていること,
 自動車の台数が増えていること,
 照明がLEDに変わっていること,
 森林面積が減少していること,
 美しい自然の景観が減少していること
 など,
 生活が便利になっていく反面,
 失われているものがあるということ
 に気付く。

 更に関心が高まると,
 地域のお年寄りや
 環境に関する関係機関に
 今と昔の違いについて
 インタビューを通じて,
 様々な人と適切に
 コミュニケーションを図ろうと
 考えるようになる。

 ここでは,
 国語科で身に付けた
 聞くこと,話すことに関する技能
 を活用・発揮し,
 またそれらを一層高めながら
 活動することが重要である。

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 そして,
 活動を通して,

 日常生活におけるエネルギー消費量や
 生活環境の変化について,
 暮らしの豊かさと自然の豊かさの
 バランスの大切さ
 に気付き,

 「気候変動問題」,
 「水不足問題」,
 「食糧問題」,
 「エネルギー問題」,
 「人口問題」
 などが,
 持続可能な社会を脅かす
 喫緊の問題であること
 を改めて認識する。

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 持続可能な社会を脅かす
 これらの問題から,
 例えば
 「気候変動問題」を取り上げた生徒は,

 二酸化炭素を中心とする
 温室効果ガスの排出
 による地球温暖化が
 影響している

 という事実的な知識
 の獲得のみならず,

 地球環境は
 今後どのようになっていくのか,
 なぜ地球温暖化を食い止めることが
 困難なのか,
 どうすべきなのか
 といった課題に直面することになる。

 

 この本質的な課題に対して,
 教師は類似したテーマで
 グループを編成し,
 生徒同士で存分に話合いをさせる。

 ただ話し合うのではなく,
 既存の知識や
 専門家や関係機関等から得た情報
 を基に,
 因果関係を踏まえること
 が重要である。

 話合いが深まるにつれ,
 「気候変動問題」が
 他の
 「エネルギー問題」や
 「人口問題」,
 「食糧問題」
 とも関連があること
 に気付き,

 他のグループの取組にも
 関心をもちながら
 更に探究を進めていくことになる。

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 生徒は,
 図書やインターネット等から
 IPCC
 (国連気候変動に関する政府間パネル)
 やCOP(締約国会議)の情報を
 得た場合,
 必要に応じて英文を読み解いたり,
 統計やデータを解析したりする
 必要性が出てくる。

 読み解く中で,
 地球温暖化問題が解決しない背景に
 各国の政治や文化,産業などが
 関係していることが
 明らかになってくる。

 

 例えば,
 先進国が,
 これまで無秩序に
 温室効果ガスを排出し,
 産業の発展や経済成長を
 もたらしてきたこと。

 一方で新興国や開発途上国は,
 自国の経済成長を目指し,
 先進国に肩を並べようと
 開発を推し進めており,
 先進国が,
 新興国や開発途上国に対して
 温室効果ガスの排出規制を適用させる
 難しさは
 そこにあること。

 

 また,
 多くの人口を抱える国では,
 雇用を生むために石炭を採掘し,
 その輸出によって
 外貨を獲得しているということ。

 このような事実を知っていく中で,
 どうしたら国境を越えた解決策を
 生み出すことができるか,
 様々な国の立場に立って,
 互いの説得や打開の根拠となるデータ
 を駆使し,
 議論を繰り広げ,
 自らの考えを深めていく。

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 このように,
 地域の環境問題から
 国際的視点に立った議論を行うことで,

 持続可能な社会づくりの概念的知識
 となり,
 探究的な見方・考え方を働かせながら,
 資質・能力を獲得していくような
 深い学びを
 実現させていくことができる。

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 このように
 生徒の目線で
 丁寧に単元を構想する中で,
 各学校が設定した目標及び内容が,
 確かに実現するかどうかを
 判断していかなければならない。

 特に,
 教師はどこでどのような
 意図的な働きかけをする
 必要があるのか,

 また
 その際に留意すべき事柄は何か
 なども,
 具体的に明らかにすべきである。

 なお,
 先の例からも分かるように,
 単元を構成するに当たっては,
 次の2点に留意することが大切である。

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 一つは,
 学習の展開における
 生徒の意識や活動の向かう方向を
 的確に予測することである。

 そのための方策としては,
 まず,
 生徒の立場で考えること。

 次に,
 複数の教師で予測を行い,
 意見が異なった点については
 慎重に検討すること。

 また,
 タイプの異なる生徒を想定し,
 「この生徒であれば
  この場面では
  こう考えるのではないか」
 などと,
 可能な限り具体に即して
 丁寧に予測すること,
 などが考えられる。

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 もう一つは,
 十分な教材研究である。

 先の例で言えば,
 気候変動のメカニズムや国際的動向
 の知識,
 生徒の活動を支援してくれそうな
 専門家や関連機関
 などについて
 教師が十分に把握していなければ,
 活動場面における学習の可能性に
 気付くことは難しい。

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 なお,
 総合的な学習の時間においては,
 生徒にとって意味のある問題の解決や
 探究的な学習活動のまとまり
 を基に単元を構成するため,
 その活動の過程において
 取り扱う探究課題は
 一つとは限らない。

 一つの単元の中で
 複数の探究課題が見込まれることも
 考えられる。

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 したがって,
 教材研究においても,
 できるだけ幅広く,拡散的に
 思考を巡らせていくこと
 が重要である。

 
 
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