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 学校教育が組織的,継続的に実施されるためには,学校教育の目的や目標を設定し,その達成を図るための教育課程が編成されなければならない。

 小学校は義務教育であり,また,公の性質を有する(教育基本法第6条第1項)ものであるから,全国的に一定の教育水準を確保し,全国どこにおいても同水準の教育を受けることのできる機会を国民に保障することが要請される。このため,小学校教育の目的や目標を達成するために各学校において編成,実施される教育課程について,国として一定の基準を設けて,ある限度において国全体としての統一性を保つことが必要となる。

 一方,教育は,その本質からして児童の心身の発達の段階や特性及び地域や学校の実態に応じて効果的に行われることが大切であり,また,各学校において教育活動を効果的に展開するためには,学校や教師の創意工夫に負うところが大きい。

 このような観点から,学習指導要領は,法規としての性格を有するものとして,教育の内容等について必要かつ合理的な事項を大綱的に示しており,各学校における指導の具体化については,学校や教師の裁量に基づく多様な創意工夫を前提としている。

 前文において,「学習指導要領とは,こうした理念の実現に向けて必要となる教育課程の基準を大綱的に定めるものである。

 学習指導要領が果たす役割の一つは,公の性質を有する学校における教育水準を全国的に確保することである。

 また,各学校がその特色を生かして創意工夫を重ね,長年にわたり積み重ねられてきた教育実践や学術研究の蓄積を生かしながら,児童や地域の実態や課題を捉え,家庭や地域社会と協力して,学習指導要領を踏まえた教育活動の更なる充実を図っていくことも重要である」としているのも,こうした観点を反映したものである。

 具体的には,学習指導要領に示している内容は,全ての児童に対して確実に指導しなければならないものであると同時に,児童の学習状況などその実態等に応じて必要がある場合には,各学校の判断により,学習指導要領に示していない内容を加えて指導することも可能である(学習指導要領の「基準性」)。

 各学校においては,国として統一性を保つために必要な限度で定められた基準に従いながら,創意工夫を加えて,児童や学校,地域の実態に即した教育課程を責任をもって編成,実施することが必要である。

 また,教育委員会は,それらの学校の主体的な取組を支援していくことに重点を置くことが大切である。

 
 

 我が国の学校制度は,日本国憲法の精神にのっとり,学校教育の目的や目標及び教育課程について,法令で種々の定めがなされている。

 教育の目的(第1条),教育の目標(第2条),生涯学習の理念(第3条),教育の機会均等(第4条),義務教育(第5条),学校教育(第6条),私立学校(第8条),教員(第9条),幼児期の教育(第11条),学校,家庭及び地域住民等の相互の連携協力(第13条),政治教育(第14条),宗教教育(第15条),教育行政(第16条),教育振興基本計画(第17条)などについて定めている。

 学校教育法では,教育基本法における教育の目的及び目標並びに義務教育の目的に関する規定を踏まえ,義務教育の目標を10号にわたって規定している(第21条)。

 その上で,小学校の目的について「心身の発達に応じて,義務教育として行われる普通教育のうち基礎的なものを施す」(第29条)とするとともに,小学校教育の目標として,小学校の「目的を実現するために必要な程度において第21条各号に掲げる目標を達成するよう行われるものとする」(第30条第1項)と定めている。

 また,同条第2項は,「前項の場合においては,生涯にわたり学習する基盤が培われるよう,基礎的な知識及び技能を習得させるとともに,これらを活用して課題を解決するために必要な思考力,判断力,表現力その他の能力をはぐくみ,主体的に学習に取り組む態度を養うことに,特に意を用いなければならない」と規定している。

 さらに,これらの規定に従い,文部科学大臣が小学校の教育課程の基準を定めることになっている(第33条)。

 なお,教育基本法第2条(教育の目標),学校教育法第21条(義務教育の目標)及び第30条(小学校教育の目標)は,いずれも「目標を達成するよう行われるものとする」と規定している。

 これらは,児童が目標を達成することを義務付けるものではないが,教育を行う者は「目標を達成するよう」に教育を行う必要があることに留意する必要がある。

 この学校教育法の規定に基づいて,文部科学大臣は,学校教育法施行規則において,小学校の教育課程に関するいくつかの基準を定めている。

 すなわち,小学校の教育課程は,国語,社会,算数,理科,生活,音楽,図画工作,家庭,体育及び外国語の各教科,特別の教科である道徳,外国語活動,総合的な学習の時間並びに特別活動によって編成すること(第50条第1項)や,各学年における各教科,道徳科,外国語活動,総合的な学習の時間及び特別活動のそれぞれの年間の標準授業時数並びに各学年における年間の標準総授業時数(第51条の別表第1)などを定めている。

 これらの定めのほか,小学校の教育課程については,教育課程の基準として文部科学大臣が別に公示する小学校学習指導要領によらなければならないこと(第52条)を定めている。

 
 

 学校教育法第33条及び学校教育法施行規則第52条の規定に基づいて,文部科学大臣は小学校学習指導要領を告示という形式で定めている。

 学校教育法施行規則第52条が「小学校の教育課程については,この節に定めるもののほか,教育課程の基準として文部科学大臣が別に公示する小学校学習指導要領によるものとする」と示しているように,学習指導要領は,小学校教育について一定の水準を確保するために法令に基づいて国が定めた教育課程の基準であるので,各学校の教育課程の編成及び実施に当たっては,これに従わなければならないものである。

 前述のとおり,学習指導要領は「基準性」を有することから,学習指導要領に示している内容は,全ての児童に対して確実に指導しなければならないものであると同時に,児童の学習状況などその実態等に応じて必要がある場合には,各学校の判断により,学習指導要領に示していない内容を加えて指導することも可能である(第1章総則第2の3(1)ア及びイ)。

 また,
各教科等の指導の順序について適切な工夫を行うこと(第1章総則第2の3(1)ウ)や,
教科等の特質に応じ複数学年まとめて示された内容について児童等の実態に応じた指導を行うこと(第1章総則第2の3(1)エ),
授業の1単位時間の設定や時間割の編成を弾力的に行うこと(第1章総則第2の3(2)ウ),
総合的な学習の時間において目標や内容を各学校で定めること
など,学校や教職員の創意工夫が重視されているところである。

 今回の改訂においては,後述するとおり,各教科等の目標や内容について,第1章総則第1の3(1)から(3)までに示す,資質・能力の三つの柱に沿って再整理している。

 この再整理は,各教科等において示す目標,内容等の範囲に影響を及ぼすものではなく,それらを資質・能力の観点から改めて整理し直したものである。

 したがって各教科等の目標,内容等が中核的な事項にとどめられていること,各学校の創意工夫を加えた指導の展開を前提とした大綱的なものとなっていることは従前と同様である。

 
 

 公立の小学校においては,以上のほか,地方教育行政の組織及び運営に関する法律による定めがある。

 すなわち,教育委員会は,学校の教育課程に関する事務を管理,執行し(第21条第5号),法令又は条例に違反しない限度において教育課程について必要な教育委員会規則を定めるものとする(第33条第1項)とされている。

 この規定に基づいて,教育委員会が教育課程について規則などを設けている場合には,学校はそれに従って教育課程を編成しなければならない。

 私立の小学校においては,学校教育法(第44条)及び私立学校法(第4条)の規定により,都道府県知事が所轄庁であり,教育課程を改める際には都道府県知事に対して学則変更の届出を行うこととなっている(学校教育法施行令第27条の2)。

 また,地方教育行政の組織及び運営に関する法律(第27条の5)の規定により,都道府県知事が私立学校に関する事務を管理,執行するに当たり,必要と認めるときは,当該都道府県の教育委員会に対し,学校教育に関する専門的事項について助言又は援助を求めることができる。

 各学校においては,以上の法体系の全体を理解して教育課程の編成及び実施に当たっていくことが求められる。

 
 
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