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(3) 指導計画の作成等に当たっての配慮事項

 各学校においては,次の事項に配慮しながら,学校の創意工夫を生かし,全体として,調和のとれた具体的な指導計画を作成するものとする。

 教育課程は,各教科,道徳科,外国語活動,総合的な学習の時間及び特別活動について,それらの目標やねらいを実現するように,教育の内容を学年段階に応じ授業時数との関連において総合的に組織した学校の教育計画であり,それを具体化した計画が指導計画であると考えることができる。

 学校における実際の作成の過程においては両者を区別しにくい面もあるが,指導方法や使用教材も含めて具体的な指導により重点を置いて作成したものが指導計画であると言うことができる。

 すなわち,指導計画は,各教科,道徳科,外国語活動,総合的な学習の時間及び特別活動のそれぞれについて,学年ごとあるいは学級ごとなどに,指導目標,指導内容,指導の順序,指導方法,使用教材,指導の時間配当等を定めたより具体的な計画である。

 指導計画には,年間指導計画や2年間にわたる長期の指導計画から,学期ごと,月ごと,週ごと,単位時間ごと,あるいは単元,題材,主題ごとの指導案に至るまで各種のものがある。

 各学校においては,第1章総則及び第2章以下の各章に示された指導計画の作成に関する配慮事項などに十分配慮し,地域や学校の実態を考慮して,創意工夫を生かし,全体として調和のとれた具体的な指導計画を作成しなければならない。

 指導計画の作成に当たっては,第1章総則第2の3(3)に特に配慮する必要がある事項を次の4項目にわたり示しているので,これらの事項に留意する必要がある。

 
 

ア 各教科等の指導内容については,(1)のアを踏まえつつ,単元や題材など内容や時間のまとまりを見通しながら,そのまとめ方や重点の置き方に適切な工夫を加え,第3の1に示す主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善を通して資質・能力を育む効果的な指導ができるようにすること。

 本項は,各学校において指導計画を作成するに当たり,各教科等の目標と指導内容の関連を十分研究し,単元や題材など内容や時間のまとまりを見通しながら,まとめ方などを工夫したり,内容の重要度や児童の学習の実態に応じてその取扱いに軽重を加えたりして,主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善を通して資質・能力を育む効果的な指導を行うことができるように配慮することを示している。

 第2章の各教科の目標及び内容に関する事項は,各学年において全ての児童に対して指導すべき事項を類型や系統性を考慮し,整理して示したものである。

 これらの指導事項は,第1章総則第2の3(1)アに示しているように「特に示す場合を除き,いずれの学校においても取り扱わなければならない」ものである。

 しかし,第1章総則第2の3(1)ウに示しているように,各教科の学年別の内容に掲げる事項の順序は,「特に示す場合を除き,指導の順序を示すものではないので,学校においては,その取扱いについて適切な工夫を加えるものとする。」としている。

 こうした工夫は,単元や題材など内容や時間のまとまりを見通し,その中でどのような資質・能力の育成を目指すのかを踏まえて行われるものであり,教える場面と考えさせる場面を関連付けながら適切に内容を組み立てていくことも重要となる。

 その際,教材・教具の工夫や,児童の理解度の把握なども重要になる。

 なお,前回の改訂において,従前本項に規定されていた「教材等の精選を図」る旨の記述は削除された。

 同改訂においては授業時数の増加が図られたが,これは指導内容の量的な増加だけに伴うものではなく,反復学習等による基礎的・基本的な知識及び技能の確実な習得や,観察・実験,レポートの作成といった知識及び技能の活用を図る学習活動の質的な充実のために必要な時間も併せて確保するためのものであった。

 今回の改訂においても,こうした質・量両面からの学習の充実を図るという前回改訂の考え方を受け継いでおり,そのためには,教科書や各種教材等についても,質・量両面からの充実が必要であるとの考え方に立っているところである。

 
 

イ 各教科等及び各学年相互間の関連を図り,系統的,発展的な指導ができるようにすること。

 指導計画は,各教科,道徳科,外国語活動,総合的な学習の時間及び特別活動のそれぞれについて作成されるものである。

 小学校教育の目標はこれらの全ての教育活動の成果が統合されてはじめて達成されるものである。

 したがって,個々の指導計画は,各教科,道徳科,外国語活動,総合的な学習の時間及び特別活動それぞれの固有の目標やねらいの実現を目指すと同時に,他の教育活動との関連や学年間の関連を十分図るように作成される必要がある。

 そのためには,各教科,道徳科,外国語活動及び特別活動それぞれの目標,指導内容の関連を検討し,指導内容が不必要に重複したり,重要な指導内容が欠落したりしないように配慮するとともに,指導の時期,時間配分,指導方法などに関しても相互の関連を考慮した上で計画が立てられることが大切である。

 総合的な学習の時間についても第5章総合的な学習の時間に示された目標などについて,各教科,道徳科,外国語活動及び特別活動の目標や内容との関連を検討し,各学校の実態に応じた目標及び内容を定めるとともに,指導計画を作成する必要がある。

 各教科等において,系統的,発展的な指導を行うことは,児童の発達の段階に応じ,その目標やねらいを効果的に実現するために必要である。

 各教科,道徳科,外国語活動及び特別活動の内容は,学年間の系統性,発展性について十分配慮されているので,各学校においては,それを十分研究し,それらの指導計画を作成する際,学年相互の関連を図り,指導の効果を高めるよう配慮する必要がある。

 また,各教科,道徳科,外国語活動及び特別活動の各学年の内容として示している指導事項は,特に示す場合を除き,指導の順序を示しているものではないので,学校においては,創意工夫を加え,児童の発達の段階や特性及び学校や地域の実態を考慮し,系統的,発展的な指導が進められるよう指導内容を具体的に組織,配列することが必要である。

 総合的な学習の時間の指導計画作成に際しても,横断的・総合的な課題,児童の興味・関心に基づく課題,地域や学校の特色に応じた課題などについて,発達の段階にふさわしい学習活動が進められるように創意工夫を図る必要がある。

 このように,指導内容の組織や配列に当たっては,当該学年全体や全学年を見通した上で行うことが大切である。

 学校においては,学校の教育目標との関連を図りながら,指導計画の作成者相互で必要な連絡を適宜行い,学校全体として組織的に進めることが大切である。

 
 

ウ 学年の内容を2学年まとめて示した教科及び外国語活動については,当該学年間を見通して,児童や学校,地域の実態に応じ,児童の発達の段階を考慮しつつ,効果的,段階的に指導するようにすること。

 国語,生活,音楽,図画工作,家庭,体育及び外国語の各教科並びに外国語活動については,学年の目標及び内容を2学年まとめて示している。

 第1章総則第2の3(1)エにおいては,これらの教科等の内容は,2学年間かけて指導する事項を示したものであり,各学校においては,これらの事項を児童や学校,地域の実態に応じ,2学年間を見通して計画的に指導することとしている。

 したがって,特に示されている場合を除き,いずれかの学年に分けて指導したり,いずれかの学年においても指導したりするものとしている。

 この趣旨を受けて,これらの教科等については,2学年間を見通した指導計画を作成し,児童や学校,地域の実態に応じ,児童の発達の段階を考慮し,創意工夫を生かした学習を展開することによって,これらの教科等の目標を効果的,段階的に実現するようにすることとしたものである。

 内容を2学年まとめて示しているのは,2学年の幅の中で内容の取り上げ方に創意工夫が必要になるということである。

 例えば,いずれの学年でも素材や題材を変えて繰り返し指導されるもの,児童や地域の実態等から扱う学年を一方の学年にするもの,飼育や栽培活動のように長い期間をかけて学習活動を展開するもの等,教科等や指導内容の特質等を生かした多様な取り上げ方が考えられる。

 その際,2学年間を見通して児童の発達の段階や教育課題を考慮しながら,例えば平易なものから,あるいは身近なものから段階的に内容を配列するなど工夫をすることが大切である。

 また,低学年と中学年,中学年と高学年それぞれの発達の段階に応じた指導においても,全体として段階的にその目標やねらいの実現を目指して効果的に指導が行われるように内容を位置付け,指導計画を作成することも大切である。

 
 

エ 児童の実態等を考慮し,指導の効果を高めるため,児童の発達の段階や指導内容の関連性等を踏まえつつ,合科的・関連的な指導を進めること。

 本項は,教育課程全体を見渡して教科等間の連携を図った指導を行い,教科等横断的な指導を推進していくための具体的な工夫として,合科的・関連的な指導を進めることを示している。

 学校教育において目指している全人的な「生きる力」を児童に育んでいくためには,各教科等の特質に応じた資質・能力の育成を図っていくことと同時に,各教科等で身に付けた資質・能力を様々な場面で統合的に働かせることができるよう,知識と生活との結び付きや教科等横断的な視点を重視した教育を行っていくことが必要である。

 そのためには,教科等の目標や内容の一部についてこれらを併せて指導を行ったり,関連させて指導を進めたりすることが効果的である場合も考えられる。

 学習指導要領における「合科的・関連的な指導」については,次のように理解する必要がある。

 すなわち,合科的な指導は,教科のねらいをより効果的に実現するための指導方法の一つである。

 単元又は1コマの時間の中で,複数の教科の目標や内容を組み合わせて,学習活動を展開するものである。

 また,関連的な指導は,教科等別に指導するに当たって,各教科等の指導内容の関連を検討し,指導の時期や指導の方法などについて相互の関連を考慮して指導するものである。

 低学年においては,第1章総則第2の4(1)に示すとおり,幼児期の教育との円滑な接続を図る観点からも,合科的・関連的な指導の工夫を進め,指導の効果を一層高めるようにする必要があり,各教科等の章における指導計画の作成と内容の取扱いにおいても,合科的・関連的な指導の工夫についてそれぞれ示されている。

 特に,小学校入学当初においては,スタートカリキュラムとして,生活科を中心とした合科的・関連的な指導や,1コマを45分ではなく短い時間に区切って設定するなど,工夫が重要である旨を規定している。

 中学年以上においても,児童の興味・関心が広がり,思考が次第に総合的になる発達の段階を考慮し,各教科等間の目標や内容の関連をより幅広く押さえ,指導計画を弾力的に作成し,合科的・関連的な指導を進めるなど創意工夫した指導を行うことが大切である。

 また,総合的な学習の時間における学習活動が,各教科等の目標や内容と関連をもつとき,指導の時期を考慮したり,題材の取り上げ方を工夫したりして関連的に指導することもできる。

 合科的・関連的な指導についての指導計画の作成に当たっては,各教科等の目標,内容等を検討し,各教科等の指導の年間の見通しに立って,その教材や学習活動の関連性を具体的に確認するとともに,指導内容が広がり過ぎて焦点が定まらず十分な成果が上がらなかったり,児童に過重になったりすることのないように留意する必要がある。

 合科的・関連的な指導を行うに当たっては,児童が自然な形で意欲的に学習に取り組めるような学習課題を設定するとともに,課題選択の場を設けたり,教科書を工夫して使用したり,その指導に適した教材を作成したりして,指導の効果を高めるようにすることが必要である。

 なお,合科的な指導に要する授業時数は,原則としてそれに関連する教科の授業時数から充当することになる。

 指導に要する授業時数をあらかじめ算定し,関連する教科を教科ごとに指導する場合の授業時数の合計とおおむね一致するように計画する必要がある。

 
 
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