cosnavi.jp

 (1) 第1の3の(1)から(3)までに示すことが偏りなく実現されるよう,単元や題材など内容や時間のまとまりを見通しながら,児童の主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善を行うこと。

 特に,各教科等において身に付けた知識及び技能を活用したり,思考力,判断力,表現力等や学びに向かう力,人間性等を発揮させたりして,学習の対象となる物事を捉え思考することにより,各教科等の特質に応じた物事を捉える視点や考え方(以下「見方・考え方」という。)が鍛えられていくことに留意し,児童が各教科等の特質に応じた見方・考え方を働かせながら,知識を相互に関連付けてより深く理解したり,情報を精査して考えを形成したり,問題を見いだして解決策を考えたり,思いや考えを基に創造したりすることに向かう過程を重視した学習の充実を図ること。

 本項は,各教科等の指導に当たって,

(1) 知識及び技能が習得されるようにすること,
(2) 思考力,判断力,表現力等を育成すること,
(3) 学びに向かう力,人間性等を涵(かん)養すること

が偏りなく実現されるよう,
単元や題材など内容や時間のまとまりを見通しながら,児童の主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善を行うこと,
その際,各教科等の「見方・考え方」を働かせ,各教科等の学習の過程を重視して充実を図ること
を示している。

 平成26年11月20日の中央教育審議会への諮問「初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について」において,具体的な審議事項として,
育成すべき資質・能力を確実に育むための学習・指導方法はどうあるべきか,
特に今後の「アクティブ・ラーニング」の具体的な在り方についてどのように考えるか
を示した。

 これを受けて,中央教育審議会では,我が国の学校教育の様々な実践や各種の調査結果,学術的な研究成果等を踏まえて検討が行われ,児童に必要な資質・能力を育むための学びの質に着目し,授業改善の取組を活性化していく視点として「主体的・対話的で深い学び」を位置付けた。

 「主体的な学び」,「対話的な学び」,「深い学び」の視点は,各教科等における優れた授業改善等の取組に共通し,かつ普遍的な要素である。

 児童に求められる資質・能力を育成することを目指した授業改善の取組は,これまでも多くの実践が重ねられており,
主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善を行うことが,
そうした着実に取り組まれてきた実践を否定し,全く異なる指導方法を導入しなければならないことであると捉える必要はない。

 また,授業の方法や技術の改善のみを意図するものではなく,児童に求められる資質・能力を育むために,児童や学校の実態,指導の内容に応じ,「主体的な学び」,「対話的な学び」,「深い学び」の視点から授業改善を図ることが重要である。

 主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善の具体的な内容については,中央教育審議会答申において,以下の三つの視点に立った授業改善を行うことが示されている。

 教科等の特質を踏まえ,具体的な学習内容や児童の状況等に応じて,これらの視点の具体的な内容を手掛かりに,質の高い学びを実現し,学習内容を深く理解し,資質・能力を身に付け,生涯にわたって能動的(アクティブ)に学び続けるようにすることが求められている。

@ 学ぶことに興味や関心を持ち,自己のキャリア形成の方向性と関連付けながら,見通しをもって粘り強く取り組み,自己の学習活動を振り返って次につなげる「主体的な学び」が実現できているかという視点。

A 子供同士の協働,教職員や地域の人との対話,先哲の考え方を手掛かりに考えること等を通じ,自己の考えを広げ深める「対話的な学び」が実現できているかという視点。

B 習得・活用・探究という学びの過程の中で,各教科等の特質に応じた「見方・考え方」を働かせながら,知識を相互に関連付けてより深く理解したり,情報を精査して考えを形成したり,問題を見いだして解決策を考えたり,思いや考えを基に創造したりすることに向かう「深い学び」が実現できているかという視点。

 また,主体的・対話的で深い学びは,必ずしも1単位時間の授業の中で全てが実現されるものではなく,単元や題材など内容や時間のまとまりを見通して,例えば,

主体的に学習に取り組めるよう学習の見通しを立てたり学習したことを振り返ったりして自身の学びや変容を自覚できる場面をどこに設定するか,

対話によって自分の考えなどを広げたり深めたりする場面をどこに設定するか,

学びの深まりをつくりだすために,児童が考える場面と教師が教える場面をどのように組み立てるか,

といった観点で授業改善を進めることが重要となる。

 すなわち,主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善を考えることは単元や題材など内容や時間のまとまりをどのように構成するかというデザインを考えることに他ならない。

 主体的・対話的で深い学びの実現を目指して授業改善を進めるに当たり,特に「深い学び」の視点に関して,各教科等の学びの深まりの鍵となるのが「見方・考え方」である。

 各教科等の特質に応じた物事を捉える視点や考え方である「見方・考え方」は,新しい知識及び技能を既にもっている知識及び技能と結び付けながら社会の中で生きて働くものとして習得したり,思考力,判断力,表現力等を豊かなものとしたり,社会や世界にどのように関わるかの視座を形成したりするために重要なものであり,
習得・活用・探究という学びの過程の中で働かせることを通じて,より質の高い深い学びにつなげることが重要である。

 なお,各教科等の解説において示している各教科等の特質に応じた「見方・考え方」は,当該教科等における主要なものであり,「深い学び」の視点からは,それらの「見方・考え方」を踏まえながら,学習内容等に応じて柔軟に考えることが重要である。

--------------------------------

 また,思考・判断・表現の過程には,

・ 物事の中から問題を見いだし,その問題を定義し解決の方向性を決定し,解決方法を探して計画を立て,結果を予測しながら実行し,振り返って次の問題発見・解決につなげていく過程

・ 精査した情報を基に自分の考えを形成し表現したり,目的や状況等に応じて互いの考えを伝え合い,多様な考えを理解したり,集団としての考えを形成したりしていく過程

・ 思いや考えを基に構想し,意味や価値を創造していく過程

の大きく三つがあると考えられる。

--------------------------------

 各教科等の特質に応じて,こうした学習の過程を重視して,具体的な学習内容,単元や題材の構成や学習の場面等に応じた方法について研究を重ね,ふさわしい方法を選択しながら,工夫して実践できるようにすることが重要である。

 このため,今回の改訂においては,各教科等の指導計画の作成上の配慮事項として,当該教科等の特質に応じた主体的・対話的で深い学びを実現するための授業改善について示している。

 
 

 具体的には,各教科等の「第3 指導計画の作成と内容の取扱い」の指導計画の作成に当たっての配慮事項として,共通に「単元(題材)など内容や時間のまとまりを見通して,その中で育む資質・能力の育成に向けて,児童の主体的・対話的で深い学びの実現を図るようにすること」とした上で,当該教科等の特質に応じてどのような学習活動等の充実を図るよう配慮することが求められるかを示している。

・ 「言葉による見方・考え方を働かせ,言語活動を通して,言葉の特徴や使い方などを理解し自分の思いや考えを深める学習の充実を図ること」(国語科)

・ 「問題解決への見通しをもつこと,社会的事象の見方・考え方を働かせ,事象の特色や意味などを考え概念などに関する知識を獲得すること,学習の過程や成果を振り返り学んだことを活用することなど,学習の問題を追究・解決する活動の充実を図ること」(社会科)

・ 「数学的な見方・考え方を働かせながら,日常の事象を数理的に捉え,算数の問題を見いだし,問題を自立的,協働的に解決し,学習の過程を振り返り,概念を形成するなどの学習の充実を図ること」(算数科)

・ 「理科の学習過程の特質を踏まえ,理科の見方・考え方を働かせ,見通しをもって観察,実験を行うことなどの,問題を科学的に解決しようとする学習の充実を図ること」(理科)

・ 「児童が具体的な活動や体験を通して,身近な生活に関わる見方・考え方を生かし,自分と地域の人々,社会及び自然との関わりが具体的に把握できるような学習活動の充実を図ることとし,校外での活動を積極的に取り入れること」(生活科)

・ 「音楽的な見方・考え方を働かせ,他者と協働しながら,音楽表現を生み出したり音楽を聴いてそのよさなどを見いだしたりするなど,思考,判断し,表現する一連の過程を大切にした学習の充実を図ること」(音楽科)

・ 「造形的な見方・考え方を働かせ,表現及び鑑賞に関する資質・能力を相互に関連させた学習の充実を図ること」(図画工作科)

・ 「生活の営みに係る見方・考え方を働かせ,知識を生活体験等と関連付けてより深く理解するとともに,日常生活の中から問題を見いだして様々な解決方法を考え,他者と意見交流し,実践を評価・改善して,新たな課題を見いだす過程を重視した学習の充実を図ること」(家庭科)

・ 「体育や保健の見方・考え方を働かせ,運動や健康についての自己の課題を見付け,その解決のための活動を選んだり工夫したりする活動の充実を図ること」(体育科)

・ 「具体的な課題等を設定し,児童が外国語によるコミュニケーションにおける見方・考え方を働かせながら,コミュニケーションの目的や場面,状況などを意識して活動を行い,英語の音声や語彙,表現などの知識を,五つの領域における実際のコミュニケーションにおいて活用する学習の充実を図ること」(外国語科)

・ 「具体的な課題等を設定し,児童が外国語によるコミュニケーションにおける見方・考え方を働かせながら,コミュニケーションの目的や場面,状況などを意識して活動を行い,英語の音声や語彙,表現などの知識を,三つの領域における実際のコミュニケーションにおいて活用する学習の充実を図ること」(外国語活動)

・ 「児童や学校,地域の実態等に応じて,児童が探究的な見方・考え方を働かせ,教科等の枠を超えた横断的・総合的な学習や児童の興味・関心等に基づく学習を行うなど創意工夫を生かした教育活動の充実を図ること」(総合的な学習の時間)

・ 「よりよい人間関係の形成,よりよい集団生活の構築や社会への参画及び自己実現に資するよう,児童が集団や社会の形成者としての見方・考え方を働かせ,様々な集団活動に自主的,実践的に取り組む中で,互いのよさや個性,多様な考えを認め合い,等しく合意形成に関わり役割を担うようにすることを重視すること」(特別活動)

 
 

 こうした学習は,これまでも各教科等における授業改善の取組の中で充実が図られてきたものであり,今回の改訂においてはそうした蓄積を踏まえ,各教科等において行われる学習活動の質を更に改善・充実させていくための視点として示している。

 前述のように,このような学びの質を高めるための授業改善の取組については,既に多くの実践が積み重ねられてきており,具体的な授業の在り方は,児童の発達の段階や学習課題等により様々である。

 単元や題材など内容や時間のまとまりを見通した学習を行うに当たり基礎となるような,基礎的・基本的な知識及び技能の習得に課題が見られる場合には,それを身に付けさせるために,児童の学びを深めたり主体性を引き出したりといった工夫を重ねながら,確実な習得を図ることが求められる。

 児童の実際の状況を踏まえながら,資質・能力を育成するために多様な学習活動を組み合わせて授業を組み立てていくことが重要であり,例えば高度な社会課題の解決だけを目指したり,そのための討論や対話といった学習活動を行ったりすることのみが主体的・対話的で深い学びではない点に留意が必要である。

 
 
→ 小学校総則編 目次
→ 中学校総則編 目次
→ 小学校学習指導要領(2017)目次
→ 学習指導要領ナビ
トップページ