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(2) 第2の2の(1)に示す言語能力の育成を図るため,各学校において必要な言語環境を整えるとともに,国語科を要としつつ各教科等の特質に応じて,児童の言語活動を充実すること。

 あわせて,(7)に示すとおり読書活動を充実すること。

 本項は,第1章総則第2の2(1)において学習の基盤となる資質・能力として言語能力を育成することを示していることを受けて,教育課程の編成に当たり,各学校において学校生活全体における言語環境を整えるとともに,言語能力を育成する中核的な教科である国語科を要として,各教科等の特質に応じた言語活動を充実すること,あわせて,言語能力を向上させる重要な活動である読書活動を充実させることを示している。

 前回の改訂においては,知識及び技能と思考力,判断力,表現力等をバランスよく育むため,基礎的・基本的な知識及び技能の習得とそれらを活用する学習活動やその成果を踏まえた探究活動を充実させることとし,これらの学習が全て言語により行われるものであることから,言語に関する能力の育成を重視して各教科等における言語活動を充実させることとした。

 今回の改訂においても,言語は児童の学習活動を支える重要な役割を果たすものであり,言語能力は全ての教科等における資質・能力の育成や学習の基盤となるものであると位置付けている。

 その上で,言語能力の育成を図るために,各学校において取組が求められる事項を示している。

 
 

 具体的には,言語環境を整えることである。

 児童の言語活動は,児童を取り巻く言語環境によって影響を受けることが大きいので,学校生活全体における言語環境を望ましい状態に整えておくことが大切である。

 学校生活全体における言語環境の整備としては,例えば,教師との関わりに関係することとして,

@教師は正しい言葉で話し,黒板などに正確で丁寧な文字を書くこと,

A校内の掲示板やポスター,児童に配布する印刷物において用語や文字を適正に使用すること,

B校内放送において,適切な言葉を使って簡潔に分かりやすく話すこと,

Cより適切な話し言葉や文字が用いられている教材を使用すること,

D教師と児童,児童相互の話し言葉が適切に用いられているような状況をつくること,

E児童が集団の中で安心して話ができるような教師と児童,児童相互の好ましい人間関係を築くこと

などに留意する必要がある。

 なお,言語環境をはじめ学校教育活動を通じ,色のみによる識別に頼った表示方法をしないなどの配慮も必要である。

 また,小学校段階では,教師の話し言葉などが児童の言語活動に与える影響が大きいので,それを適切にするよう留意することが大切である。

 
 

 次に,言語能力を育成する中核的な教科である国語科を要として各教科等において言語活動の充実を図ることである。

 国語科では,「知識及び技能」や「思考力,判断力,表現力等」の資質・能力をどのような言語活動を通して育成するかを言語活動例として示している。

 また,各教科等においても,

・ 「社会的事象の特色や意味,社会に見られる課題などについて,多角的に考えたことや選択・判断したことを論理的に説明したり,立場や根拠を明確にして議論したりするなど言語活動に関わる学習を一層重視すること」(社会科)

・ 「思考力,判断力,表現力等を育成するため,各学年の内容の指導に当たっては,具体物,図,言葉,数,式,表,グラフなどを用いて考えたり,説明したり,互いに自分の考えを表現し伝え合ったり,学び合ったり,高め合ったりするなどの学習活動を積極的に取り入れるようにすること」(算数科)

・ 「問題を見いだし,予想や仮説,観察,実験などの方法について考えたり説明したりする学習活動,観察,実験の結果を整理し考察する学習活動,科学的な言葉や概念を使用して考えたり説明したりする学習活動などを重視することによって,言語活動が充実するようにすること」(理科)

・ 「身近な人々,社会及び自然に関する活動の楽しさを味わうとともに,それらを通して気付いたことや楽しかったことについて,言葉,絵,動作,劇化などの多様な方法により表現し,考えられるようにすること」(生活科)

・ 「音楽によって喚起されたイメージや感情,音楽表現に対する思いや意図,音楽を聴いて感じ取ったことや想像したことなどを伝え合い共感するなど,音や音楽及び言葉によるコミュニケーションを図り,音楽科の特質に応じた言語活動を適切に位置付けられるよう指導を工夫すること」(音楽科)

・ 「感じたことや思ったこと,考えたことなどを,話したり聞いたり話し合ったりする,言葉で整理するなどの言語活動を充実すること」(図画工作科)

・ 「衣食住など生活の中の様々な言葉を実感を伴って理解する学習活動や,自分の生活における課題を解決するために言葉や図表などを用いて生活をよりよくする方法を考えたり,説明したりするなどの学習活動の充実を図ること」(家庭科)

・ 「筋道を立てて練習や作戦について話し合うことや,身近な健康の保持増進について話し合うことなど,コミュニケーション能力や論理的な思考力の育成を促すための言語活動を積極的に行うことに留意すること」(体育科)

などそれぞれの教科の特質に応じた言語活動の充実について記述されている。

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 また,外国語活動及び今回の改訂において新たに教科とした外国語科においては,実際に英語を用いた言語活動を通して,「知識及び技能」を身に付けるとともに,それらを活用して「思考力,判断力,表現力等」を育成するための言語活動の例を示すなど,言語活動を通してコミュニケーションを図る素地及び基礎となる資質・能力を育成することを目指すこととしている。

 さらに,道徳科では
「児童が多様な感じ方や考え方に接する中で,考えを深め,判断し,表現する力などを育むことができるよう,自分の考えを基に話し合ったり書いたりするなどの言語活動を充実すること」を,

総合的な学習の時間では
「探究的な学習の過程においては,他者と協働して課題を解決しようとする学習活動や,言語により分析し,まとめたり表現したりするなどの学習活動が行われるようにすること」を,

特別活動では
「体験活動を通して気付いたことなどを振り返り,まとめたり,発表し合ったりするなどの事後の活動を充実すること」を

それぞれ重視している。

 
 

 このように言語活動は,言語能力を育成するとともに,各教科等の指導を通して育成を目指す資質・能力を身に付けるために充実を図るべき学習活動である。

 前述(本解説第3章第3節1の(1))のとおり,主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善を進めるに当たっては,単元や題材など内容や時間のまとまりを見通して,各教科等の特質に応じた言語活動をどのような場面で,またどのような工夫を行い取り入れるかを考え,計画的・継続的に改善・充実を図ることが期待される。

 また,読書は,多くの語彙や多様な表現を通して様々な世界に触れ,これを疑似的に体験したり知識を獲得したりして,新たな考え方に出合うことを可能にするものであり,言語能力を向上させる重要な活動の一つである。

 そのため,本項において,読書活動の充実について規定し,具体的な充実の在り方については,学校図書館等の活用と関連付けて第1章総則第3の1(7)に規定している。

 こうした,読書活動の充実や,前述の児童の言語環境の整備のためにも,学校図書館の充実を図ることが重要である。

 
 
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