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(3) 第2の2の(1)に示す情報活用能力の育成を図るため,各学校において,コンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段を活用するために必要な環境を整え,これらを適切に活用した学習活動の充実を図ること。また,各種の統計資料や新聞,視聴覚教材や教育機器などの教材・教具の適切な活用を図ること。

 あわせて,各教科等の特質に応じて,次の学習活動を計画的に実施すること。

ア 児童がコンピュータで文字を入力するなどの学習の基盤として必要となる情報手段の基本的な操作を習得するための学習活動

イ 児童がプログラミングを体験しながら,コンピュータに意図した処理を行わせるために必要な論理的思考力を身に付けるための学習活動

 児童に第1章総則第2の2(1)に示す情報活用能力の育成を図るためには,各学校において,コンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段及びこれらを日常的・効果的に活用するために必要な環境を整えるとともに,各教科等においてこれらを適切に活用した学習活動の充実を図ることが重要である。

 また,教師がこれらの情報手段に加えて,各種の統計資料や新聞,視聴覚教材や教育機器などの教材・教具を適切に活用することが重要である。

 今日,コンピュータ等の情報技術は急激な進展を遂げ,人々の社会生活や日常生活に浸透し,スマートフォンやタブレットPC等に見られるように情報機器の使いやすさの向上も相まって,子供たちが情報を活用したり発信したりする機会も増大している。

 将来の予測は困難であるが,情報技術は今後も飛躍的に進展し,常に新たな機器やサービスが生まれ社会に浸透していくこと,人々のあらゆる活動によって極めて膨大な情報(データ)が生み出され蓄積されていくことが予想される。

 このことにより,職業生活ばかりでなく,学校での学習や生涯学習,家庭生活,余暇生活など人々のあらゆる活動において,さらには自然災害等の非常時においても,そうした機器やサービス,情報を適切に選択・活用していくことが不可欠な社会が到来しつつある。

 そうした社会において,児童が情報を主体的に捉えながら,何が重要かを主体的に考え,見いだした情報を活用しながら他者と協働し,新たな価値の創造に挑んでいけるようにするため,情報活用能力の育成が極めて重要となっている。

 第1章総則第2の2(1)に示すとおり,情報活用能力は「学習の基盤となる資質・能力」であり,確実に身に付けさせる必要があるとともに,身に付けた情報活用能力を発揮することにより,各教科等における主体的・対話的で深い学びへとつながっていくことが期待されるものである。

 今回の改訂においては,コンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段の活用について,こうした情報活用能力の育成もそのねらいとするとともに,人々のあらゆる活動に今後一層浸透していく情報技術を,児童が手段として学習や日常生活に活用できるようにするため,各教科等においてこれらを適切に活用した学習活動の充実を図ることとしている。

 各教科等の指導に当たっては,教師がこれらの情報手段のほか,各種の統計資料や新聞,視聴覚教材や教育機器などの教材・教具の適切な活用を図ることも重要である。

 各教科等における指導が,児童の主体的・対話的で深い学びへとつながっていくようにするためには,必要な資料の選択が重要であり,とりわけ信頼性が高い情報や整理されている情報,正確な読み取りが必要な情報などを授業に活用していくことが必要であることから,今回の改訂において,各種の統計資料と新聞を特に例示している。

 これらの教材・教具を有効,適切に活用するためには,教師は機器の操作等に習熟するだけではなく,それぞれの教材・教具の特性を理解し,指導の効果を高める方法について絶えず研究することが求められる。

 また,小学校においては特に,情報手段の基本的な操作の習得に関する学習活動及びプログラミングの体験を通して論理的思考力を身に付けるための学習活動を,カリキュラム・マネジメントにより各教科等の特質に応じて計画的に実施することとしている。

 各教科等の学習においてコンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段を活用していくに当たっては,少なくとも児童が学習活動に支障のない程度にこれら情報手段の操作を身に付けている必要がある。

 このため,小学校段階ではそれらの情報手段に慣れ親しませることから始め,学習活動を円滑に進めるために必要な程度の速さでのキーボードなどによる文字の入力,電子ファイルの保存・整理,インターネット上の情報の閲覧や電子的な情報の送受信や共有などの基本的な操作を確実に身に付けさせるための学習活動を,カリキュラム・マネジメントにより各教科等の特質に応じて計画的に実施していくことが重要である。

 それとともに,文章を編集したり図表を作成したりする学習活動,様々な方法で情報を収集して調べたり比較したりする学習活動,情報手段を使った情報の共有や協働的な学習活動,情報手段を適切に活用して調べたものをまとめたり発表したりする学習活動などを充実していくことが重要である。

 その際,総合的な学習の時間の探究的な学習の過程において

「コンピュータで文字を入力するなどの学習の基盤として必要となる情報手段の基本的な操作を習得し,情報や情報手段を主体的に選択し活用できるよう配慮すること」(第5章総合的な学習の時間第3の2(3))とされていること,

さらに国語科のローマ字の指導に当たってこのこととの関連が図られるようにすること(第2章第1節国語第3の2(1)ウ)とされていること

などを踏まえる必要がある。

 また,

子供たちが将来どのような職業に就くとしても時代を越えて普遍的に求められる

「プログラミング的思考」
(自分が意図する一連の活動を実現するために,どのような動きの組合せが必要であり,一つ一つの動きに対応した記号を,どのように組み合わせたらいいのか,記号の組合せをどのように改善していけば,より意図した活動に近づくのか,といったことを論理的に考えていく力)

を育むため,小学校においては,児童がプログラミングを体験しながら,コンピュータに意図した処理を行わせるために必要な論理的思考力を身に付けるための学習活動を計画的に実施することとしている。

 その際,小学校段階において学習活動としてプログラミングに取り組むねらいは,プログラミング言語を覚えたり,プログラミングの技能を習得したりといったことではなく,論理的思考力を育むとともに,プログラムの働きやよさ,情報社会がコンピュータをはじめとする情報技術によって支えられていることなどに気付き,身近な問題の解決に主体的に取り組む態度やコンピュータ等を上手に活用してよりよい社会を築いていこうとする態度などを育むこと,さらに,教科等で学ぶ知識及び技能等をより確実に身に付けさせることにある。

 したがって,教科等における学習上の必要性や学習内容と関連付けながら計画的かつ無理なく確実に実施されるものであることに留意する必要があることを踏まえ,小学校においては,教育課程全体を見渡し,プログラミングを実施する単元を位置付けていく学年や教科等を決定する必要がある。

 なお,小学校学習指導要領では,算数科,理科,総合的な学習の時間において,児童がプログラミングを体験しながら,論理的思考力を身に付けるための学習活動を取り上げる内容やその取扱いについて例示しているが
(第2章第3節算数第3の2(2)及び同第4節理科第3の2(2),第5章総合的な学習の時間第3の2(2)),

例示以外の内容や教科等においても,プログラミングを学習活動として実施することが可能であり,プログラミングに取り組むねらいを踏まえつつ,学校の教育目標や児童の実情等に応じて工夫して取り入れていくことが求められる。

 また,こうした学習活動を実施するに当たっては,地域や民間等と連携し,それらの教育資源を効果的に活用していくことも重要である。

 
 

 第1章総則第2の2(1)においては,「情報活用能力(情報モラルを含む。)」として,情報活用能力に情報モラルが含まれることを特に示している。

 携帯電話・スマートフォンやSNSが子供たちにも急速に普及する中で,インターネット上での誹謗中傷やいじめ,インターネット上の犯罪や違法・有害情報の問題の深刻化,インターネット利用の長時間化等を踏まえ,情報モラルについて指導することが一層重要となっている。

 情報モラルとは,「情報社会で適正な活動を行うための基になる考え方と態度」であり,具体的には,他者への影響を考え,人権,知的財産権など自他の権利を尊重し情報社会での行動に責任をもつことや,犯罪被害を含む危険の回避など情報を正しく安全に利用できること,コンピュータなどの情報機器の使用による健康との関わりを理解することなどである。

 このため,情報発信による他人や社会への影響について考えさせる学習活動,ネットワーク上のルールやマナーを守ることの意味について考えさせる学習活動,情報には自他の権利があることを考えさせる学習活動,情報には誤ったものや危険なものがあることを考えさせる学習活動,健康を害するような行動について考えさせる学習活動などを通じて,児童に情報モラルを確実に身に付けさせるようにすることが必要である。

 その際,情報の収集,判断,処理,発信など情報を活用する各場面での情報モラルについて学習させることが重要である。また,情報技術やサービスの変化,児童のインターネットの使い方の変化に伴い,学校や教師はその実態や影響に係る最新の情報の入手に努め,それに基づいた適切な指導に配慮することが必要である。

 併せて児童の発達の段階に応じて,例えば,インターネット上に発信された情報は基本的には広く公開される可能性がある,どこかに記録が残り完全に消し去ることはできないといった,情報や情報技術の特性についての理解に基づく情報モラルを身に付けさせ,将来の新たな機器やサービス,あるいは危険の出現にも適切に対応できるようにすることが重要である。

 さらに,情報モラルに関する指導は,道徳科や特別活動のみで実施するものではなく,各教科等との連携や,さらに生徒指導との連携も図りながら実施することが重要である。

 情報手段を活用した学習活動を充実するためには,国において示す整備指針等を踏まえつつ,校内のICT環境の整備に努め,児童も教師もいつでも使えるようにしておくことが重要である。

 すなわち,学習者用コンピュータのみならず,例えば大型提示装置を各普通教室と特別教室に常設する,安定的に稼働するネットワーク環境を確保するなど,学校と設置者とが連携して,情報機器を適切に活用した学習活動の充実に向けた整備を進めるとともに,教室内での配置等も工夫して,児童や教師が情報機器の操作に手間取ったり時間がかかったりすることなく活用できるよう工夫することにより,日常的に活用できるようにする必要がある。

 さらに,児童が安心して情報手段を活用できるよう,情報機器にフィルタリング機能の措置を講じたり,個人情報の漏えい等の情報セキュリティ事故が生じることのないよう,学校において取り得る対策を十全に講じたりすることなどが必要である。

 加えて,情報活用能力の育成や情報手段の活用を進める上では,地域の人々や民間企業等と連携し協力を得ることが特に有効であり,プログラミング教育等の実施を支援するため官民が連携した支援体制が構築されるなどしていることから,これらも活用して学校外の人的・物的資源の適切かつ効果的な活用に配慮することも必要である。

 
 
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