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(1) 学習や生活の基盤として,教師と児童との信頼関係及び児童相互のよりよい人間関係を育てるため,日頃から学級経営の充実を図ること。

 また,主に集団の場面で必要な指導や援助を行うガイダンスと,個々の児童の多様な実態を踏まえ,一人一人が抱える課題に個別に対応した指導を行うカウンセリングの双方により,児童の発達を支援すること。

 あわせて,小学校の低学年,中学年,高学年の学年の時期の特長を生かした指導の工夫を行うこと。

 学校は,児童にとって伸び伸びと過ごせる楽しい場でなければならない。児童一人一人は興味や関心などが異なることを前提に,児童が自分の特徴に気付き,よい所を伸ばし,自己肯定感をもちながら,日々の学校生活を送ることができるようにすることが重要である。

 学級は,児童にとって学習や学校生活の基盤であり,学級担任の教師の営みは重要である。学級担任の教師は,学校・学年経営を踏まえて,調和のとれた学級経営の目標を設定し,指導の方向及び内容を学級経営案として整えるなど,学級経営の全体的な構想を立てるようにする必要がある。

 学級経営を行う上で最も重要なことは学級の児童一人一人の実態を把握すること,すなわち確かな児童理解である。

 学級担任の教師の,日ごろのきめ細かい観察を基本に,面接など適切な方法を用いて,一人一人の児童を客観的かつ総合的に認識することが児童理解の第一歩である。

 日ごろから,児童の気持ちを理解しようとする学級担任の教師の姿勢は,児童との信頼関係を築く上で極めて重要であり,愛情をもって接していくことが大切である。

 また,学級を一人一人の児童にとって存在感を実感できる場としてつくりあげることが大切である。

 すなわち,児童の規範意識を育成するため,必要な場面では,学級担任の教師が毅然とした対応を行いつつ,相手の身になって考え,相手のよさを見付けようと努める学級,互いに協力し合い,自分の力を学級全体のために役立てようとする学級,言い換えれば,児童相互の好ましい人間関係を育てていく上で,学級の風土を支持的な風土につくり変えていくことが大切である。

 さらに,集団の一員として,一人一人の児童が安心して自分の力を発揮できるよう,日ごろから,児童に自己存在感や自己決定の場を与え,その時その場で何が正しいかを判断し,自ら責任をもって行動できる能力を培うことが大切である。

 なお,教師の意識しない言動や価値観が,児童に感化を及ぼすこともあり,この見えない部分での教師と児童との人間関係にも十分配慮する必要がある。

 学級経営に当たって,学級担任の教師は,校長や副校長,教頭の指導の下,学年の教師や生徒指導の主任,さらに養護教諭など他の教職員と連携しながら学級経営を進めることが大切であり,開かれた学級経営の実現を目指す必要がある。

 また,充実した学級経営を進めるに当たっては,家庭や地域社会との連携を密にすることが大切である。

 特に保護者との間で,学級通信や保護者会,家庭訪問などによる相互の交流を通して,児童理解,児童に対する指導の在り方について共通理解をしておく必要がある。

 全ての児童が学校や学級の生活によりよく適応し,豊かな人間関係の中で有意義な生活を築くことができるようにし,児童一人一人の興味や関心,発達や学習の課題等を踏まえ,児童の発達を支え,その資質・能力を高めていくことは重要なことである。

 このため,児童の発達の特性や教育活動の特性を踏まえて,あらかじめ適切な時期や機会を設定し,主に集団の場面で必要な指導や援助を行うガイダンスと,個々の児童が抱える課題を受け止めながら,その解決に向けて,主に個別の会話・面談や言葉がけを通して指導や援助を行うカウンセリングの双方により,児童の発達を支援することが重要である。

 第6章特別活動の「第3 指導計画の作成と内容の取扱い」の2(3)において「学校生活への適応や人間関係の形成などについては,主に集団の場面で必要な指導や援助を行うガイダンスと,個々の児童の多様な実態を踏まえ,一人一人が抱える課題に個別に対応した指導を行うカウンセリング(教育相談を含む。)の双方の趣旨を踏まえて指導を行うこと。」とあるが,このような特別活動における配慮をはじめ,各教科等でもその機能を生かすなど,学校の教育活動全体を通じてガイダンスとカウンセリングの機能を充実していくことが大切である。

 ガイダンスの機能の充実を図ることは,全ての児童が学校や学級の生活によりよく適応し,豊かな人間関係の中で有意義な生活を築くようにするとともに,選択や決定,主体的な活動に関して適切な指導・援助を与えることによって,現在及び将来の生き方を考え行動する態度や能力を育てる上で,極めて重要な意味をもつものである。

 具体的には,学習活動など学校生活への適応,好ましい人間関係の形成,学業等における選択,自己の生き方などに関わって,児童がよりよく適応し,主体的な選択やよりよい自己決定ができるよう,適切な情報提供や案内・説明,活動体験,各種の援助・相談活動などを学校として進めていくものであり,単なる事前の説明や資料配布に限定されるものではない。

 各学校においては,計画的・組織的な取組によってガイダンスの機能を充実させることによって,一人一人の児童に関し,学校や学級の生活によりよく適応させ,これから取り組むことになる諸活動に対して主体的な活動への意欲をもたせ,自己実現に関わって必要とされる資質や能力,態度を身に付けるようにし,共に学び,活動することを通して存在感や自己実現の喜びの感じられる生活を築かせる中でよりよい発達を促すことが重要である。

 特に,ガイダンスの機能の充実について配慮の求められる教育活動としては,例えば,次のようなものが考えられる。

ア 入学時,新学期開始時期において,教師と児童及び児童相互の好ましい人間関係が生まれるように配慮するとともに,児童自身が学校や学級における諸活動や集団の意義,内容などについて十分に理解し,自発的によりよい生活に取り組むことができるよう創意工夫すること。

イ 新たな学習や各種の学習活動の開始時期などにおいて,児童がこれから始まる学習に対して積極的な意欲をもち,主体的に活動に取り組むことができるよう各教科等において十分に配慮すること。

 また,カウンセリングの機能を充実させることによって,児童一人一人の教育上の問題等について,本人又はその保護者などにその望ましい在り方についての助言を通して,子供たちのもつ悩みや困難の解決を援助し,児童の発達に即して,好ましい人間関係を育て,生活によりよく適応させ,人格の成長への援助を図ることは重要なことである。

 カウンセリングの実施に当たっては,個々の児童の多様な実態や一人一人が抱える課題やその背景などを把握すること,早期発見・早期対応に留意すること,スクールカウンセラー等の活用や関係機関等との連携などに配慮することが必要である。

 小学校の6年間は児童の発達にとって大きな幅のある期間であり,低学年,中学年,高学年の発達の段階に応じて,それぞれの特長があることから,その特長を生かした指導の工夫を行うことが重要である。

 例えば,低学年では,自分でしなければならないことができるようになるとともに,幼児期の自己中心性は残っているが,他の児童の立場を認めたり,理解したりする能力も徐々に発達してくる。

 善悪の判断や具体的な行動については,教師や保護者の影響を受ける部分が大きいものの,行ってよいことと悪いことの理解ができるようになる。

 このため,行ってよいことと悪いことの区別がしっかりと自覚でき,社会生活上のきまりが確実に身に付くよう繰り返し指導するなどの指導上の工夫を行うことが求められる。

 中学年では,社会的な活動範囲が広がり,地域の施設や行事に興味を示し,自然等への関心も増えてくるとともに,自分の行為の善悪について,ある程度反省しながら認識できるようになる。

 このため,自分を内省できる力を身に付け,自分の特徴を自覚し,そのよい所を伸ばそうとする意識を高められるよう指導するなどの指導上の工夫を行うことが求められる。

 高学年では,相手の身になって人の心を思いやる共感能力が発達してくるとともに,自律的な態度が発達し,自分の行為を自分の判断で決定しようとすることに伴い,責任感が強くなり批判的な能力も備わってくる。

 このため,教師は児童の自律的な傾向を適切に育てるように配慮することが求められる。

 また,様々な生徒指導上の課題等が早期化しており,中学校からではなく,小学校高学年からの対応もより一層必要となっている。

 
 
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