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(3) 児童が,学ぶことと自己の将来とのつながりを見通しながら,社会的・職業的自立に向けて必要な基盤となる資質・能力を身に付けていくことができるよう,特別活動を要としつつ各教科等の特質に応じて,キャリア教育の充実を図ること。

 本項は,児童に学校で学ぶことと社会との接続を意識させ,一人一人の社会的・職業的自立に向けて必要な基盤となる資質・能力を育み,キャリア発達を促すキャリア教育の充実を図ることを示している。

 学校教育においては,キャリア教育の理念が浸透してきている一方で,これまで学校の教育活動全体で行うとされてきた意図が十分に理解されず,指導場面が曖昧にされてしまい,また,狭義の「進路指導」との混同により,特に特別活動において進路に関連する内容が存在しない小学校においては,体系的に行われてこなかったという課題もある。

 また,将来の夢を描くことばかりに力点が置かれ,「働くこと」の現実や必要な資質・能力の育成につなげていく指導が軽視されていたりするのではないか,といった指摘もある。

 こうした指摘等を踏まえて,キャリア教育を効果的に展開していくためには,特別活動の学級活動を要としながら,総合的な学習の時間や学校行事,道徳科や各教科における学習,個別指導としての教育相談等の機会を生かしつつ,学校の教育活動全体を通じて必要な資質・能力の育成を図っていく取組が重要になる。

 また,将来の生活や社会と関連付けながら,見通しをもったり,振り返ったりする機会を設けるなど主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善を進めることがキャリア教育の視点からも求められる。

 さらに,本改訂ではキャリア教育の要となる特別活動の学級活動の内容に(3)一人一人のキャリア形成と自己実現を設けている。

 その実施に際しては次の2点に留意することが重要である。

 一つ目は,総則において,特別活動が学校教育全体で行うキャリア教育の要としての役割を担うことを位置付けた趣旨を踏まえることである。

 キャリア教育の要としての役割を担うこととは,キャリア教育が学校教育全体を通して行うものであるという前提のもと,これからの学びや自己の生き方を見通し,これまでの活動を振り返るなど,教育活動全体の取組を自己の将来や社会づくりにつなげていくための役割を果たすことである。

 この点に留意して学級活動の指導に当たることが重要である。

 二つ目は,学級活動の(3)の内容は,キャリア教育の視点からの小・中・高等学校のつながりが明確になるよう整理することにより設けたものであるということである。

 ここで扱う内容については,将来に向けた自己実現に関わるものであり,一人一人の主体的な意思決定を大切にする活動である。

 中学校,高等学校へのつながりを考慮しながら,小学校段階として適切なものを内容として設定している。

 キャリア教育は,教育活動全体の中で基礎的・汎用的能力を育むものであることから,夢を持つことや職業調べなどの固定的な活動だけに終わらないようにすることが大切である。

 学校の教育活動全体を通じて行うキャリア教育を効果的に進めていくためには,校長のリーダーシップのもと,校内の組織体制を整備し,学年や学校全体の教師が共通の認識に立って指導計画の作成に当たるなど,それぞれの役割・立場において協力して指導に当たることが重要である。

 また,キャリア教育は,児童に将来の生活や社会,職業などとの関連を意識させる学習であることから,その実施に当たっては,職場見学や社会人講話などの機会の確保が不可欠である。

 「社会に開かれた教育課程」の理念のもと,幅広い地域住民等(キャリア教育や学校との連携をコーディネートする専門人材,高齢者,若者,PTA・青少年団体,企業・NPO等)と目標やビジョンを共有し,連携・協働して児童を育てていくことが求められる。

 さらに,キャリア教育を進めるに当たり,家庭・保護者の役割やその影響の大きさを考慮し,家庭・保護者との共通理解を図りながら進めることが重要である。

 その際,各学校は,保護者が児童の進路や職業に関する情報を必ずしも十分に得られていない状況等を踏まえて,産業構造や進路を巡る環境の変化等の現実に即した情報を提供して共通理解を図った上で,将来,児童が社会の中での自分の役割を果たしながら,自分らしい生き方を実現していくための働きかけを行うことが必要である。

 
 
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