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 各学年の目標は,
小学校社会科の究極的なねらいである
公民としての資質の基礎を育成すること
を実現するため,

指導内容と児童の発達の段階を考慮し,
「知識及び技能」,
「思考力,判断力,表現力等」,
「学びに向かう力,人間性等」
の統一的な育成を目指して,

それぞれに関する目標から
構成されている。

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 すなわち,

第3学年及び第4学年では
自分たちの住んでいる地域社会
(市や県など)
の学習を通して,

第5学年では
国民生活の舞台である国土の
地理的環境と
そこで営まれている産業
に関する学習を通して,

第6学年では
我が国の政治,歴史及び国際理解に関する学習を通して,

児童に育成する
「知識及び技能」,
「思考力,判断力,表現力等」,
「学びに向かう力,人間性等」
の三つの柱に沿った目標が
掲げられている。

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 また,

問題解決的な学習による深い学び
を通して,
これらの目標を実現するよう,
冒頭には
「社会的事象の見方・考え方を働かせ,
 学習の問題を追究・解決する活動
 を通して」
と示されている

(「学習の問題」について,
 解説では「学習問題」としている。)。

 
 
 各学年の目標の系統を,「知識及び技能」,「思考力,判断力,表現力等」,「学びに向かう力,人間性等」に分けて示すと,次のようになる。
 「知識及び技能」に関する目標については,第3学年,第4学年,第5学年及び第6学年の目標の(1)にそれぞれ示されている事項が該当する。
 知識に関する目標を学年順に示すと,次のようになる。

○ 第3学年

・ 身近な地域や市区町村の地理的環境,地域の安全を守るための諸活動や地域の産業と消費生活の様子,地域の様子の移り変わりについて,人々の生活との関連を踏まえて理解する。

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○ 第4学年

・ 自分たちの都道府県の地理的環境の特色,地域の人々の健康と生活環境を支える働きや自然災害から地域の安全を守るための諸活動,地域の伝統と文化や地域の発展に尽くした先人の働きなどについて,人々の生活との関連を踏まえて理解する。

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○ 第5学年

・ 我が国の国土の地理的環境の特色や産業の現状,社会の情報化と産業の関わりについて,国民生活との関連を踏まえて理解する。

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○ 第6学年

・ 我が国の政治の考え方と仕組みや働き,国家及び社会の発展に大きな働きをした先人の業績や優れた文化遺産,我が国と関係の深い国の生活やグローバル化する国際社会における我が国の役割について理解する。

 これらのことから分かるように,

知識に関する目標については,
理解する内容が,
次のように
系統的,段階的に示されている。

 すなわち,

第3学年では
自分たちの市を中心とした地域における
地理的環境や
人々の生活や諸活動,
それらの移り変わり
について,

第4学年では
自分たちの県を中心とした地域における
地理的環境や
人々の生活や諸活動,伝統と文化や
地域の発展に尽くした先人の働き
について理解するようにし,
人々の生活舞台を
市から県へと広げるようにしている。

 第5学年では
我が国の国土に生活舞台を広げ,
国土の地理的環境と
そこで営まれている産業の様子,
情報化に伴う産業や
国民生活の変化
について理解し,

そして

第6学年では,
我が国の政治の考え方と仕組みや働き,
我が国の国家及び社会の発展に
大きな働きをした先人の業績や
優れた文化遺産
について,

我が国と関係の深い国の生活や
グローバル化する国際社会における
我が国の役割
について,

それぞれ理解を深めるようになっている。

 技能に関する目標を学年順に示すと,次のようになる。

○ 第3学年及び第4学年

・ 調査活動,地図帳や各種の具体的資料を通して,必要な情報を調べまとめる技能を身に付ける。

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○ 第5学年

・ 地図帳や地球儀,統計などの各種の基礎的資料を通して,情報を適切に調べまとめる技能を身に付ける。

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○ 第6学年

・ 地図帳や地球儀,統計や年表などの各種の基礎的資料を通して,情報を適切に調べまとめる技能を身に付ける。

 これらのことから分かるように,

技能に関する目標については,

社会的事象に関する情報を
調べてまとめる技能を,
内容に応じて
繰り返し身に付けるように
示されている。

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 すなわち,

第3学年及び第4学年では,

市や県などの地域における
社会的事象を

観察や見学,聞き取りなどの調査活動,
地図帳や各種の具体的資料
を通して集めて,

読み取り,まとめる技能を身に付ける
ことができるようにすることを
求めている。

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 第5学年では,

我が国の国土や産業
などに関する情報を
地図帳や地球儀,統計などの
各種の基礎的資料を通して
適切に集めて,
読み取り,まとめる技能を身に付ける
ようにすることを,

第6学年では,

我が国の政治や歴史,
グローバル化する国際社会
における我が国の役割
などに関する情報を,
地図帳や地球儀,統計や年表
などの各種の基礎的資料を通して
適切に集めて,
読み取り,まとめる技能を身に付ける
ようにすることを求めている。

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 なお,

「適切に」とは,

情報を集める際に,
情報手段の特性や
情報の正しさ,
資料の特性
に留意すること
などを指している。

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 また,

第3学年及び第4学年において
身に付ける
観察や見学,聞き取り
などの調査活動の技能については,

第5学年及び第6学年においても
必要に応じて取り上げて
身に付けるように
指導することが大切である。

 
 

 「思考力,判断力,表現力等」に関する目標については,第3学年,第4学年,第5学年及び第6学年の目標の(2)にそれぞれ示されている事項が該当する。

 「思考力,判断力,表現力等」に関する目標を学年順に示してみると,次のようになる。

○ 第3学年及び第4学年

・ 社会的事象の特色や相互の関連,意味を考える力,社会に見られる課題を把握して,その解決に向けて社会への関わり方を選択・判断する力,考えたことや選択・判断したことを表現する力を養う。

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○ 第5学年及び第6学年

・ 社会的事象の特色や相互の関連,意味を多角的に考える力,社会に見られる課題を把握して,その解決に向けて社会への関わり方を選択・判断する力,考えたことや選択・判断したことを説明したり,それらを基に議論したりする力を養う。

 これらのことから分かるように,

「思考力,判断力,表現力等」
に関する目標については,
児童の発達の段階を
2学年ごとのまとまりで捉えて,
系統的,段階的に示されている。

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 思考力,判断力については,

第3学年及び第4学年では,

社会的事象の
特色や相互の関連,意味
を考える力,

社会に見られる課題を把握して,
その解決に向けて
自分たちにできることなど
社会への関わり方を
選択・判断する力を,


第5学年及び第6学年では,

複数の立場や意見を踏まえて,
社会的事象の
特色や相互の関連,意味を
多角的に考える力,

社会に見られる課題を把握して,
その解決に向けて
よりよい発展を考えたり
社会への関わり方を
選択・判断したりする力

を養うことを求めている。

 表現力については,

第3学年及び第4学年では,

考えたことや選択・判断したことを
文章で記述したり

図表などに表したことを使って
説明したりして表現する力を,


第5学年及び第6学年では,

考えたことや選択・判断したことを

根拠や理由などを明確にして
論理的に説明したり,

他者の主張につなげ
立場や根拠を明確にして
議論したりする力

を養うことを求めている。

 
 

 「学びに向かう力,人間性等」に関する目標については,第3学年,第4学年,第5学年及び第6学年の目標の(3)にそれぞれ示されている事項が該当する。

 「学びに向かう力,人間性等」に関する目標は,「知識及び技能」や「思考力,判断力,表現力等」に関する目標において示されている事項と密接に関連しているものであり,児童の発達の段階を踏まえて,それとの関わりで系統的,段階的に示されている。

「学びに向かう力,人間性等」に関する目標を学年順に示すと,次のようになる。

○ 第3学年及び第4学年

・ 社会的事象について,主体的に学習の問題を解決しようとする態度や,よりよい社会を考え学習したことを社会生活に生かそうとする態度を養う。

・ 思考や理解を通して,地域社会に対する誇りと愛情,地域社会の一員としての自覚を養う。

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○ 第5学年

・ 社会的事象について,主体的に学習の問題を解決しようとする態度や,よりよい社会を考え学習したことを社会生活に生かそうとする態度を養う。

・ 多角的な思考や理解を通して,我が国の国土に対する愛情,我が国の産業の発展を願い我が国の将来を担う国民としての自覚を養う。

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○ 第6学年

・ 社会的事象について,主体的に学習の問題を解決しようとする態度や,よりよい社会を考え学習したことを社会生活に生かそうとする態度を養う。

・ 多角的な思考や理解を通して,我が国の歴史や伝統を大切にして国を愛する心情,我が国の将来を担う国民としての自覚や平和を願う日本人として世界の国々の人々と共に生きることの大切さについての自覚を養う。

 これらのことから分かるように,

「学びに向かう力,人間性等」
に関する目標については,

各学年の内容に応じて
繰り返し養う

「社会的事象について,

 主体的に学習の問題を解決しよう
 とする態度や,

 よりよい社会を考え
 学習したことを
 社会生活に生かそうとする態度」
と,

各学年の内容に関連した思考や理解
を通して涵(かん)養される
愛情や自覚

などについて示されている。

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 愛情や自覚などについては,

第3学年及び第4学年では,

学習する生活舞台が
市や県などの地域であることから,
地域社会に対する誇りと愛情,
地域社会の一員としての自覚
を養うことを,

第5学年では,

学習する生活舞台が
我が国の国土であることから,

我が国の国土に対する愛情,

我が国の産業の発展を願い
我が国の将来を担う国民
としての自覚を,


第6学年においては,

我が国の政治や歴史,
グローバル化する国際社会における
我が国の役割

を学ぶことから,

我が国の歴史や伝統を大切にして
国を愛する心情,

我が国の将来を担う国民
としての自覚や

平和を願う日本人として

世界の国々の人々と共に生きること
の大切さ
についての自覚

を養うこと

を求めている。

 なお,我が国の国土に対する愛情については,身近な地域や市,県の様子についての指導を踏まえて,我が国の国土の地理的環境とそこで営まれている産業の様子などの理解を図り,我が国の国土に対する愛情を育てることをねらいとしている。

 また,我が国の歴史に対する愛情についても,市を中心とした地域の人々の生活の変化や県を中心とした地域の伝統や文化,地域の発展に尽くした先人の働きの指導を踏まえ,我が国の歴史に対する理解を深めるとともに,我が国の歴史に対する愛情を育てることをねらいとしている。

 以上のように,我が国の国土と歴史に対する愛情は,地域社会や我が国の国土の地理的環境,産業の様子及び先人の働きなどについての学習を通して育てられるものである。

 小学校社会科は,身近な地域や市や県についての理解を深め,地域社会に対する誇りと愛情を養うとともに,我が国の国土と歴史に対する理解を深めて,それらに対する愛情を養うことをねらいとしているのである。

 
 
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