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(2) 我が国の農業や水産業における食料生産について,学習の問題を追究・解決する活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

ア 次のような知識及び技能を身に付けること。

(ア) 我が国の食料生産は,自然条件を生かして営まれていることや,国民の食料を確保する重要な役割を果たしていることを理解すること。

(イ) 食料生産に関わる人々は,生産性や品質を高めるよう努力したり輸送方法や販売方法を工夫したりして,良質な食料を消費地に届けるなど,食料生産を支えていることを理解すること。

(ウ) 地図帳や地球儀,各種の資料で調べ,まとめること。

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イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

(ア) 生産物の種類や分布,生産量の変化,輸入など外国との関わりなどに着目して,食料生産の概要を捉え,食料生産が国民生活に果たす役割を考え,表現すること。

(イ) 生産の工程,人々の協力関係,技術の向上,輸送,価格や費用などに着目して,食料生産に関わる人々の工夫や努力を捉え,その働きを考え,表現すること。

 この内容は,主として「現代社会の仕組みや働きと人々の生活」に区分されるものであり,我が国の農業や水産業における食料生産についての学習で身に付ける事項を示している。我が国の農業や水産業における食料生産とは,米,野菜,果物などの農産物や畜産物を生産する農業や,魚介類を採ったり養殖したりする水産業を指している。

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 ここでは,我が国の食料生産の概要に関する内容と食料生産に関わる人々の工夫や努力に関する内容から構成されている。

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我が国の食料生産の概要に関する内容については,アの(ア)及び(ウ)とイの(ア)を関連付けて指導する。

 例えば,

生産物の種類や分布,生産量の変化,輸入など外国との関わりなどに着目して,地図帳や地球儀,各種の資料で調べ,まとめ,食料生産の概要を捉え,食料生産が国民生活に果たす役割を考え,表現することを通して,我が国の食料生産は,自然条件を生かして営まれていることや,国民の食料を確保する重要な役割を果たしていることを理解できるようにすることである。

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 また,食料生産に関わる人々の工夫や努力に関する内容については,アの(イ)及び(ウ)とイの(イ)を関連付けて指導する。

 例えば,

生産の工程,人々の協力関係,技術の向上,輸送,価格や費用などに着目して,地図帳や地球儀,各種の資料で調べ,まとめ,食料生産に関わる人々の工夫や努力を捉え,その働きを考え,表現することを通して,食料生産に関わる人々は,生産性や品質を高めるよう努力したり輸送方法や販売方法を工夫したりして,良質な食料を消費地に届けるなど,食料生産を支えていることを理解できるようにすることである。

 
 

 アは,「知識及び技能」に関わる事項である。

 アの(ア)及び(イ)は,知識に関わる事項である。

 アの(ア)の我が国の食料生産は,自然条件を生かして営まれていることを理解することとは,

我が国では様々な食料を生産していること,それぞれの土地や気候を生かして食料の生産地が広がっていることなどを基に,我が国の食料生産の概要について理解することである。

 また,(我が国の食料生産は,)国民の食料を確保する重要な役割を果たしていることを理解することとは,

食料生産は
国民の食生活を支えていること,

食料の生産量は
国民生活と関連して変化していること,

食料の中には
外国から輸入しているものがあること

などを基に,
我が国の食料生産の役割について
理解することである。

 アの(イ)の食料生産に関わる人々は,生産性や品質を高めるよう努力したり輸送方法や販売方法を工夫したりして,良質な食料を消費地に届けるなど,食料生産を支えていることを理解することとは,

農業や水産業の盛んな地域の人々が,
新鮮で良質な物を生産し出荷するために
生産性や品質を高めるなど
様々な工夫や努力を行っていること,

生産し輸送,販売する工程で
費用が発生すること,

輸送方法や販売方法を工夫する
ことにより収益を上げていること

などを基に,
食料生産に関わる人々の工夫や努力
について理解することである。

 アの(ウ)は,技能に関わる事項である。

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 地図帳や地球儀,各種の資料で調べ,まとめることとは,

我が国の農業や水産業における
食料生産について,
地図帳や地球儀を用いて,
国内の主な生産地や
輸入相手国の位置,
主な漁港や漁場の位置
などを調べ,
白地図などにまとめることや,

統計,写真などの資料や
コンピュータなどを使って,
食料生産に関わる人々の工夫や努力
を調べて,
図表などにまとめることである。

 ここでは,

統計などの資料やコンピュータなどを
適切に使って情報を集める技能,

地図帳や地球儀を用いて,
位置や経路,広がりや分布
などを読み取る技能,

仕事の工程や協力関係を
図表などにまとめる技能

などを身に付ける
ようにすることが大切である。

 
 

 イは,「思考力,判断力,表現力等」に関わる事項である。

 イの(ア)の生産物の種類や分布,生産量の変化,輸入など外国との関わりなどに着目して,食料生産の概要を捉え,食料生産が国民生活に果たす役割を考え,表現することとは,

社会的事象の見方・考え方を働かせ,
食料生産の概要について,例えば,

どこでどのようなものが生産されているか,

生産量はどのように変化しているか,

外国とどのような関わりがあるか

などの問いを設けて調べたり,

食料生産と国民生活を
関連付けて考えたりして,

調べたことや考えたことを
表現することである。

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 生産物の種類や分布に着目するとは,

我が国における主な農産物や畜産物,水産物の種類や生産量,主な生産地の分布について調べることである。

 生産量の変化に着目するとは,

主な農産物の生産量や主な水産物の漁獲量の過去から現在に至る変化について調べることである。

 輸入など外国との関わりに着目するとは,

我が国の食料の輸出入品目や相手国,食料自給率などについて調べることである。

 このようにして調べたことを手掛かりに食料生産の概要を捉えることができるようにする。

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 食料生産が国民生活に果たす役割を考え,表現するとは,例えば,

我が国の農産物や水産物の
種類や生産量,
農業や水産業が盛んな地域の分布
などの情報を総合したり,

農業や水産業における食料生産と
国民生活を
関連付けたりして,

我が国の食料生産が
国民生活に果たす役割
を考え,
文章で記述したり,
根拠や理由を明確にして
議論したりすることである。

 イの(イ)の生産の工程,人々の協力関係,技術の向上,輸送,価格や費用などに着目して,食料生産に関わる人々の工夫や努力を捉え,その働きを考え,表現することとは,

社会的事象の見方・考え方を働かせ,
食料生産に関わる人々の工夫や努力
について,例えば,

食料はどのように生産されているか,

人々はどのように協力して
生産しているか,

食料生産の技術は
どのように向上してきたか,

食料はどのように運ばれるか,

食料の価格はどのように決まるか

などの問いを設けて調べたり,

食料生産に関わる人々の工夫や努力と
その土地の自然条件や需要を
関連付けて考えたりして,

調べたことや考えたことを
表現することである。

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 生産の工程に着目するとは,

生産から出荷までの仕事の工程について調べることである。

 人々の協力関係に着目するとは,

共同経営や協働作業,農業試験場や農業協同組合,水産試験場や漁業協同組合などの働きについて調べることである。

 技術の向上に着目するとは,

機械化による効率化や省力化,収穫量の増加,品種改良や情報の活用などについて調べることである。

 輸送に着目するとは,

トラックや鉄道などによる陸上輸送や,貨物船やカーフェリーなどによる海上輸送,飛行機による航空輸送を使って鮮度を保ちながら生産物を国内外の消費地へ届ける工夫について調べることである。

 その際,主な高速道路網や鉄道網,主な海路や航路などを調べることが大切である。

 価格や費用に着目するとは,

生産や輸送,販売の過程で
掛かる費用や
販売される際の価格
について調べることである。

 ここでは,

野菜や魚など生鮮食料品の価格は,
主として市場で決められ,
時期や場所によって変わること,

市場の情報を基に
出荷する場所,量,種類,時期
を判断していること,

産地のブランド化や
いわゆる「6次産業化」など
新しい取組をしていること

などを調べることも考えられる。

 このようにして調べたことを
手掛かりにして,
食料生産に関わる人々の
工夫や努力を捉える

ことができるようにする。

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 その(食料生産に関わる人々の)働きを考え,表現するとは,例えば,

食料生産の仕事の工夫や努力とその土地の自然条件や需要を関連付けて,食料生産に関わる人々の働きを考え,文章で記述したり,白地図や図表などにまとめたことを基に説明したりすることである。

 実際の指導に当たっては,地域の実態に応じて見学を取り入れて情報を収集したり,食料生産の盛んな地域で生産に従事している人々に電話や手紙などで調査したり,さらに,インターネットなどで生産地が発信している情報を活用したりする活動などが考えられる。
 
 

(内容の取扱い)

(2) 内容の(2)については,次のとおり取り扱うものとする。

ア アの(イ)及びイの(イ)については,食料生産の盛んな地域の具体的事例を通して調べることとし,稲作のほか,野菜,果物,畜産物,水産物などの中から一つを取り上げること。

イ イの(ア)及び(イ)については,消費者や生産者の立場などから多角的に考えて,これからの農業などの発展について,自分の考えをまとめることができるよう配慮すること。

 内容の取扱いの(2)のアは,内容の(2)のアの(イ)及びイの(イ)の指導において,取り上げる対象の範囲を示したものである。

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 ここでは,食料生産に関わる人々について,農業や水産業における食料生産の盛んな地域の具体的事例を通して調べるようにする。その際,国民の主食を確保する上で重要な役割を果たしている「稲作」については必ず取り上げる。

 また,国民の食生活と関わりの深い「野菜,果物,畜産物,水産物など」については,それらの中から一つを選択して取り上げるようにする。

 事例の選択に当たっては,児童の興味・関心や学習経験の広がりなどを考慮し,第3学年の「地域に見られる生産の仕事」において取り上げた事例に配慮する必要がある。

 地域の農産物を生産する仕事として,例えば,野菜の生産を取り上げて学習してきた場合には,果物,畜産物,水産物などの生産の中から事例を選択することが考えられる。

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 なお,第3学年では,地域の農産物を生産する仕事を通して地域社会に対する理解を深めることに,第5学年では我が国の農業や水産業について理解を深めることに,それぞれのねらいがあることに留意することが大切である。

 内容の取扱いの(2)のイは,内容の(2)のイの(ア)及び(イ)の指導における配慮事項を示したものである。

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 ここでは,学習したことを基に,生産性や品質を高める工夫を消費者や生産者の立場に立って多角的に考え,これからの農業や水産業における食料生産の発展に向けて自分の考えをまとめることができるよう指導することが大切である。

 その際,生産者の立場からは,農産物の生産では,農業法人などを設立して取り組んでいること,温室等の設備により出荷時期を工夫していることや,低価格という観点だけでなく手間をかけて高品質なものや付加価値のあるものを生産し海外に輸出していること,畜産物の生産では,与える飼料により品質を高めていること,水産物の生産では,魚群探知や養殖などに最新の技術を使っていることや持続可能な漁業を目指し水産資源を保護していること,さらに,生産・加工・販売を関連付けた,いわゆる「6次産業化」の動きなど新しい取組を取り上げることが考えられる。

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 また,消費者の立場からは,安全性の確保や環境への負荷の軽減などの意識が高まっていること,低価格のものだけでなく,高品質のものや希少性のあるものを求める傾向も見られることなどを取り上げることが考えられる。

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 このようにして,今後の農業や水産業の発展について考えようとする態度を養うようにする。

 
 
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