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(5) 我が国の国土の自然環境と国民生活との関連について,学習の問題を追究・解決する活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

ア 次のような知識及び技能を身に付けること。

(ア) 自然災害は国土の自然条件などと関連して発生していることや,自然災害から国土を保全し国民生活を守るために国や県などが様々な対策や事業を進めていることを理解すること。

(イ) 森林は,その育成や保護に従事している人々の様々な工夫と努力により国土の保全など重要な役割を果たしていることを理解すること。

(ウ) 関係機関や地域の人々の様々な努力により公害の防止や生活環境の改善が図られてきたことを理解するとともに,公害から国土の環境や国民の健康な生活を守ることの大切さを理解すること。

(エ) 地図帳や各種の資料で調べ,まとめること。
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イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

(ア) 災害の種類や発生の位置や時期,防災対策などに着目して,国土の自然災害の状況を捉え,自然条件との関連を考え,表現すること。

(イ) 森林資源の分布や働きなどに着目して,国土の環境を捉え,森林資源が果たす役割を考え,表現すること。

(ウ)公害の発生時期や経過,人々の協力や努力などに着目して,公害防止の取組を捉え,その働きを考え,表現すること。

 この内容は,「地理的環境と人々の生活」及び「現代社会の仕組みや働きと人々の生活」に区分される内容として,我が国の国土の自然環境と国民生活との関連に関する内容を学習することで身に付ける事項を示している。

 我が国の国土の自然環境と国民生活との関連とは,自然災害への対応,森林資源の保護,公害の防止に見られる,国土の環境と人々の生活や産業との密接な関連を指している。

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 ここでは,国土の自然災害に関する内容,森林資源の働きに関する内容,公害の防止と生活環境に関する内容から構成されている。

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 国土の自然災害に関する内容については,アの(ア)及び(エ)とイの(ア)を関連付けて指導する。

 例えば,

災害の種類や発生の位置や時期,防災対策などに着目して,地図帳や各種の資料で調べ,まとめ,国土の自然災害の状況を捉え,自然条件との関連を考え,表現することを通して,
自然災害は国土の自然条件などと関連して発生していることや,自然災害から国土を保全し国民生活を守るために国や県などが様々な対策や事業を進めていることを理解できるようにすることである。

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 また,森林資源の働きに関する内容については,アの(イ)及び(エ)とイの(イ)を関連付けて指導する。

 例えば,

森林資源の分布や働きなどに着目して,地図帳や各種の資料で調べ,まとめ,国土の環境を捉え,森林資源が果たす役割を考え,表現することを通して,
森林は,その育成や保護に従事している人々の様々な工夫と努力により国土の保全など重要な役割を果たしていることを理解
できるようにすることである。

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 さらに,公害の防止と生活環境に関する内容については,アの(ウ)及び(エ)とイの(ウ)を関連付けて指導する。

 例えば,

公害の発生時期や経過,人々の協力や努力などに着目して,地図帳や各種の資料で調べ,まとめ,公害防止の取組を捉え,その働きを考え,表現することを通して,
関係機関や地域の人々の様々な努力により公害の防止や生活環境の改善が図られてきたことを理解するとともに,公害から国土の環境や国民の健康な生活を守ることの大切さを理解
できるようにすることである。

 
 

 アは,「知識及び技能」に関わる事項である。

 アの(ア)及び(イ)並びに(ウ)は,知識に関わる事項である。

 アの(ア)の自然災害は国土の自然条件などと関連して発生していることを理解することとは,

我が国では,国土の地形や気候などとの関係から地震災害,津波災害,風水害,火山災害,雪害などの様々な自然災害が起こりやすいこと,自然災害はこれまで度々発生しこれからも発生する可能性があることなどを基に,国土の自然災害の状況について理解することである。

 また,自然災害から国土を保全し国民の生活を守るために国や県などが様々な対策や事業を進めていることを理解することとは,

国や県などは,砂防ダムや堤防,防潮堤の建設,津波避難場所の整備,ハザードマップの作成など,自然災害の種類や国土の地形や気候に応じた対策や事業を進めていることなどを基に,国土の自然災害への対策や事業について理解することである。

 アの(イ)の森林は,その育成や保護に従事している人々の様々な工夫と努力により国土の保全などに重要な役割を果たしていることを理解することとは,

我が国は,国土に占める森林面積の割合が高いこと,森林は国民生活の舞台である国土の保全や水源の涵(かん)養などに大切な働きをしていること,森林はその育成や保護に従事している人々の取組により維持・管理されていることなどを基に,森林資源の役割について理解することである。

 アの(ウ)の関係機関や地域の人々の様々な努力により公害の防止や生活環境の改善が図られてきたことを理解することとは,

我が国では,産業の発展,生活様式の変化や都市化の進展により公害が発生して国民の健康や生活環境が脅かされてきたこと,関係機関をはじめ多くの人々の努力や協力により公害の防止や生活環境の改善が図られてきたことなどを基に,公害防止の取組と国民生活の関連について理解することである。

 また,公害から国土の環境や国民の健康な生活を守ることの大切さを理解することとは,

国土の環境保全の取組は国民の健康な生活を守ることにつながること,そのためには継続的な取組と様々な立場の人の協力が大切であることなどを基にして,公害防止の取組の大切さについて理解することである。

 アの(エ)は,技能に関わる事項である。

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 地図帳や各種の資料で調べ,まとめることとは,

我が国の国土の自然環境と国民生活との関連について,地図帳や衛星写真などの資料で自然災害や公害の発生位置,森林の広がりなどを調べたり,統計,写真や映像,年表などの資料で自然災害への対策や事業,森林資源の働き,公害の防止や生活環境の改善に向けた関係機関や地域の取組などを調べたりして,白地図や図表などにまとめることである。

 ここでは,

地図帳,統計や年表などの資料から
適切に情報を読み取る技能,

調べたことを白地図などにまとめる技能

などを身に付ける
ようにすることが大切である。

 
 

 イは,「思考力,判断力,表現力等」に関わる事項である

 イの(ア)の災害の種類や発生の位置や時期,防災対策などに着目して,自然災害を捉え,自然条件との関連を考え,表現することとは,

社会的事象の見方・考え方を働かせ,国土の自然災害の状況について,例えば,これまでに我が国においてどのような自然災害が,いつどこで発生したか,自然災害による被害をどのように減らす対策をとっているかなどの問いを設けて調べたり,自然災害と国土の自然条件を関連付けて考えたりして,調べたことや考えたことを表現することである。

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 災害の種類に着目するとは,

我が国で発生した主な自然災害の種類や被害の状況について調べることである。

 発生の位置や時期に着目するとは,

我が国で発生した主な自然災害の位置や発生した時期について調べることである。

 防災対策に着目するとは,

国や県などが進めてきた砂防ダムや堤防などの整備,ハザードマップの作成などの防災・減災に向けた対策や事業について調べることである。

 このようにして調べたことを手掛かりに,国土の自然災害の状況を捉えることができるようにする。

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 自然条件との関連を考え,表現するとは,例えば,

我が国で発生する様々な自然災害と国土の自然条件を関連付けて,自然災害が発生する理由や,国や県などの防災・減災に向けた対策や事業の役割を考え,文章で記述したり,白地図や年表,図表などにまとめたことを基に説明したりすることである。

 その際,自然災害が発生しやすい我が国においては,日頃から防災に関する情報に関心をもつなど,国民一人一人の防災意識を高めることが大切であることに気付くように配慮することが大切である。

 イのイの森林資源の分布や働きなどに着目して,国土の環境を捉え,森林資源が果たす役割を考え,表現することとは,

社会的事象の見方・考え方を働かせ,国土の環境について,例えば,国土における森林の面積の割合はどれくらいか,森林にはどのような働きがあるかなどの問いを設けて調べたり,森林と国土保全や国民生活を関連付けて考えたりして,調べたことや考えたことを表現することである。

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 森林資源の分布に着目するとは,

森林の種類や広がり,国土に占める割合などについて調べることである。

 (森林資源の)働きに着目するとは,

森林資源がもつ多様な機能や森林の育成や保護に関わる人々の工夫や努力について調べることである。

 なお,森林の働きによる自然災害の防止には限界があることについても触れるようにする。このようにして調べたことを手掛かりに,国土の環境を捉えることができるようにする。

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 森林資源が果たす役割を考え,表現するとは,例えば,

我が国の国土における森林の分布と国民の生活舞台である国土の保全を関連付けて,森林資源の果たす役割や森林資源を保護していくことの大切さを考え,文章で記述したり,白地図などにまとめたことを基に説明したり,根拠や理由を明確にして議論したりすることである。

 イの(ウ)の公害の発生時期や経過,人々の協力や努力などに着目して,公害防止の取組を捉え,それらの取組の働きを考え,表現することとは,

社会的事象の見方・考え方を働かせ,
公害防止の取組について,

例えば,

どのような公害がいつごろ発生したか,

それはどのように広がり,
その後どのように改善したか,

人々はどのように協力してきたか

などの問いを設けて調べたり,

公害防止の取組と
国土の環境や
国民の健康な生活
を関連付けて考えたりして,

調べたことや考えたことを
表現することである。

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 公害の発生時期や経過に着目するとは,

産業の発展や生活様式の変化,都市化の進展などにより主な公害が発生した時期や,公害により国民の健康や生活環境が脅かされてきたこと,関係の諸機関をはじめ多くの人々の努力により公害の防止や生活環境の改善が図られてきたことなどの経過について調べることである。

 人々の協力や努力に着目するとは,

関係の諸機関や人々の協力や努力によって環境改善に成果を上げてきたことについて調べることである。

 このようにして調べたことを手掛かりに,公害防止の取組を捉えることができるようにする。

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 その(公害防止の)取組の働きを考え,表現するとは,例えば,

公害防止の取組と環境改善や人々の健康な生活を関連付けて,公害防止の継続的,協力的な取組の大切さを考え,白地図や図表などにまとめたことを基に説明したり,根拠や理由を明確にして議論したりすることである。

 実際の指導に当たっては,自然災害への対応や公害の防止について,国や県などが策定した計画などの情報を,インターネットなどを活用して集めたり,関係の諸機関に従事する人に聞き取り調査をしたりする活動などが考えられる。

 
 

(内容の取扱い)

(5) 内容の(5)については,次のとおり取り扱うものとする。

ア アの(ア)については,地震災害,津波災害,風水害,火山災害,雪害などを取り上げること。

イ アの(ウ)及びイの(ウ)については,大気の汚染,水質の汚濁などの中から具体的事例を選択して取り上げること。

ウ イの(イ)及び(ウ)については,国土の環境保全について,自分たちにできることなどを考えたり選択・判断したりできるよう配慮すること。

 内容の取扱い(5)のアは,内容の(5)のアの(ア)において,自然災害を取り上げる際の配慮事項を示したものである。

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 自然災害については,我が国で過去に発生した地震災害,津波災害,風水害,火山災害,雪害などの自然災害を国土の自然条件と関連付けて取り上げることが考えられる。

 なお,風水害とは,豪雨,洪水,高潮,崖崩れや土石流などによる土砂災害,突風や竜巻などによる災害を指している。

 ここでは,第4学年の内容の(3)「自然災害から人々を守る活動」とのねらいの違いに留意する必要がある。

 第4学年では,県内などで発生した自然災害を取り上げ,地域の関係機関や人々による自然災害への対処や備えを通して地域社会について理解することに,第5学年では,国土において発生する様々な自然災害を取り上げて,自然災害と国土の自然条件との関連を通して国土の地理的環境を理解することに,それぞれねらいがあることに留意することが大切である。

 また,気象条件など,理科における学習内容との関連を図った指導を工夫することも大切である。

 内容の取扱い(5)のイは,内容の(5)のアの(ウ)及びイの(ウ)の公害についての指導において,取り上げる公害の範囲を示したものである。

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 環境基本法では,公害として,大気の汚染,水質の汚濁,騒音,振動,地盤の沈下及び悪臭が挙げられている。

 ここでは,「大気の汚染,水質の汚濁など」の中から具体的事例を一つ選択して取り上げることが考えられる。

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 事例の選択に当たっては,例えば,生活様式の変化や都市化の進展などがもたらした都市・生活型の公害,産業がもたらした公害などが考えられる。

 その際,取り上げた事例について,過去に我が国の国土で発生し改善されてきた公害を年表などで調べたり,公害の防止や環境改善に向けて成果を上げてきた関係機関や人々の努力や協力の様子などを資料で具体的に調べたりすることが考えられる。

 内容の取扱い(5)のウは,内容の(5)イの(イ)の森林資源の働きやイの(ウ)の公害の防止の指導における配慮事項を示したものである。

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 ここでは,国民の一人として,国土の自然環境,国民の健康や生活環境の維持・改善に配慮した行動が求められるなど国民一人一人の協力の必要性に気付くようにすることが大切である。

 その際,一度破壊された環境を取り戻すためには長い時間と多くの人の努力や協力が必要であることに気付くようにするともに,例えば,自分たちには何ができるかなどと,自分たちに協力できることを考えたり選択・判断したりして,国土の環境保全への関心を高めるように配慮することが大切である。

 
 

 第5学年においては,
内容の(1)から(5)までの学習を通して,

社会的事象について,

学習問題を
主体的に解決しようとする態度や,

よりよい社会を考え
学習したことを
社会生活に生かそうとする態度

を養うとともに,

多角的な思考や理解を通して,

我が国の国土に対する愛情,

我が国の産業の発展を願い
我が国の将来を担う国民
としての自覚

を養うようにすることが大切である。

 
 
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