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(1) 我が国の政治の働きについて,学習の問題を追究・解決する活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

ア 次のような知識及び技能を身に付けること。

(ア) 日本国憲法は国家の理想,天皇の地位,国民としての権利及び義務など国家や国民生活の基本を定めていることや,現在の我が国の民主政治は日本国憲法の基本的な考え方に基づいていることを理解するとともに,立法,行政,司法の三権がそれぞれの役割を果たしていることを理解すること。

(イ) 国や地方公共団体の政治は,国民主権の考え方の下,国民生活の安定と向上を図る大切な働きをしていることを理解すること。

(ウ) 見学・調査したり各種の資料で調べたりして,まとめること。

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イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

(ア) 日本国憲法の基本的な考え方に着目して,我が国の民主政治を捉え,日本国憲法が国民生活に果たす役割や,国会,内閣,裁判所と国民との関わりを考え,表現すること。

(イ) 政策の内容や計画から実施までの過程,法令や予算との関わりなどに着目して,国や地方公共団体の政治の取組を捉え,国民生活における政治の働きを考え,表現すること。

 この内容は,「現代社会の仕組みや働きと人々の生活」に区分されるものであり,我が国の政治の働きについての学習で身に付ける事項を示している。

 我が国の政治の働きとは,国家や国民生活の基本を定めている日本国憲法の下で,立法,行政,司法の三権がそれぞれ果たしている役割や,国や地方公共団体の政治が民主政治の考え方に基づいて,国民生活の安定と向上を図るために果たしている働きを指している。

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 そのためこの内容は,日本国憲法や政治の仕組みに関する内容と国や地方公共団体の政治の取組に関する内容から構成されている。

 日本国憲法や政治の仕組みに関する内容については,アの(ア)及び(ウ)とイの(ア)を関連付けて指導する。

 例えば,

日本国憲法の基本的な考え方に着目して,見学・調査したり各種の資料で調べたりして,まとめ,我が国の民主政治を捉え,日本国憲法が国民生活に果たす役割や,国会,内閣,裁判所と国民との関わりを考え,表現することを通して,
日本国憲法は国家の理想,天皇の地位,国民としての権利及び義務など国家や国民生活の基本を定めていることや,現在の我が国の民主政治は日本国憲法の基本的な考え方に基づいていることを理解するとともに,立法,行政,司法の三権がそれぞれの役割を果たしていることを理解
できるようにすることである。

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 また,国や地方公共団体の政治の取組に関する内容については,アの(イ)及び(ウ)とイの(イ)を関連付けて指導する。

 例えば,

政策の内容や計画から実施までの過程,法令や予算との関わりなどに着目して,見学・調査したり各種の資料で調べたりして,まとめ,国や地方公共団体の政治の取組を捉え,国民生活における政治の働きを考え,表現することを通して,
国や地方公共団体の政治は,国民主権の考え方の下,国民生活の安定と向上を図る大切な働きをしていることを理解
できるようにすることである。

 
 

 アは,「知識及び技能」に関わる事項である。

 アの(ア)及び(イ)は,知識に関わる事項である。

 アの(ア)の日本国憲法は国家の理想,天皇の地位,国民としての権利及び義務など国家や国民生活の基本を定めていることを理解することとは,

日本国憲法には,

国民の基本的人権は
侵すことのできない永久の権利
として保障されていること,

主権は国民にあることや

我が国が
国際紛争を解決する手段としての戦争
を永久に放棄すること

などが定められていること,

天皇は日本国の象徴であり
日本国民統合の象徴として
位置付けられていること,

生命,自由及び幸福の追求
に対する国民の権利は
侵すことのできない永久の権利として
国民に保障されたものであり,
それを保持するためには
国民の不断の努力を必要とする
ものであること,

参政権は国民主権の表れであり,
民主政治にとって
極めて重要であること,

また,
国民は権利を行使する一方で,
勤労や納税の義務などを
果たす必要があること

などの権利や義務が定められていること

などを基に,
日本国憲法の特色について
理解することである。

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 また,
現在の我が国の民主政治は日本国憲法の基本的な考え方に基づいていることを理解することとは,

現在の我が国の民主政治は
日本国憲法の基本理念である
国民主権の考え方
と深く関わっていること,

そのことは
私たちの日常生活とも
関連があること

などを基に,
日本国憲法と国民生活との関連
について理解することである。

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 立法,行政,司法の三権がそれぞれの役割を果たしていることを理解することとは,

我が国の政治には
国会に立法,
内閣に行政,
裁判所に司法
という三権があること,

それらは相互に関連し合って
それぞれの役割を果たしていること

などを基に,
我が国の政治の仕組みについて
理解することである。

 アの(イ)の国や地方公共団体の政治は,国民主権の考え方の下,国民生活の安定と向上を図る大切な働きをしていることを理解することとは,

国や地方公共団体の政治は
国民生活と密接な関係をもっていること,

それらの政治は
国民主権の考え方
を基本として,
国民の願いを実現し
国民生活の安定と向上を図るために
大切な働きをしていること

などを基に,
国や地方公共団体の
政治の働きについて
理解することである。

 アの(ウ)は,技能に関わる事項である。

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 見学・調査したり各種の資料で調べたりして,まとめることとは,

我が国の政治の働きについて,公共施設などの見学や,そこで働く人への聞き取り調査をしたり,国や県,市などが作成した広報誌などの各種資料で調べたりして,図表などにまとめることである。

 ここでは,見学・調査して適切に情報を集める技能,複数の情報を比べたり結び付けたりして読み取る技能,調べたことを図表などに適切に整理する技能などを身に付けるようにすることが大切である。

 
 
 イは,「思考力,判断力,表現力等」に関わる事項である。

 イのアの日本国憲法の基本的な考え方に着目して,我が国の民主政治を捉え,日本国憲法が国民生活に果たす役割や,国会,内閣,裁判所と国民との関わりを考え,表現することとは,

社会的事象の見方・考え方を働かせ,
我が国の民主政治について,例えば,

日本国憲法の基本的な考え方は
どのようなものか,

国会,内閣,裁判所はそれぞれ
どのような役割を果たしているか,

国会,内閣,裁判所は
どのように関連しているか

などの問いを設けて調べたり,
日本国憲法と国民生活,
国会,内閣,裁判所と国民を
それぞれ関連付けて考えたりして,

調べたことや考えたことを
表現することである。

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 日本国憲法の基本的な考え方に着目するとは,

日本国憲法に定められた基本的人権の尊重,国民主権,平和主義の原則,天皇の地位,国民の権利と義務などの基本的な考え方について,関連する条文などを根拠に調べることである。

 このようにして調べたことを手掛かりに,我が国の民主政治を捉えることができるようにする。

 なお,平和主義については,自衛隊が我が国の平和と安全を守っていることに触れるようにする。

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 日本国憲法が国民生活に果たす役割を考え,表現することとは,例えば,

日本国憲法の基本的な考え方と国民生活を関連付けて,日本国憲法の特色や役割を考え,文章で記述したり図表などにまとめたことを基に説明したりすることである。

 また,国会,内閣,裁判所と国民との関わりを考え,表現することとは,

例えば,国会,内閣,裁判所の働きと国民を関連付けて,国民としての政治への関わり方を考え,図表などにまとめたことを基に説明したり,根拠や理由を明確にして議論したりすることである。

 イの(イ)の政策の内容や計画から実施までの過程,法令や予算との関わりなどに着目して,国や地方公共団体の政治の取組を捉え,国民生活における政治の働きを考え,表現することとは,

社会的事象の見方・考え方を働かせ,
国や地方公共団体の
政治の取組について,
例えば,

どのような内容の政策か,

どのような過程を経て実施されたか,

どのような法令に基づいているか,

予算はどのように決められるか

などの問いを設けて調べたり,
それらの取組と国民生活を
関連付けて考えたりして,
調べたことや考えたことを
表現することである。

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 政策の内容や計画から実施までの過程に着目するとは,

国民の願い,国や地方公共団体の政策の内容,その計画から実施までの期間や過程などについて調べることである。

 法令や予算との関わりに着目するとは,

国や地方公共団体の政治の取組を実施するための基になる法令や予算について調べることである。

 このようにして調べたことを手掛かりに,国や地方公共団体の政治の取組を捉えることができるようにする。

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 国民生活における政治の働きを考え,表現するとは,例えば,

国や地方公共団体の政治の取組と国民生活を関連付けて,政治の働きを考え,レポートなどにまとめたり,図表などにまとめたことを基に説明したりすることである。

 実際の指導に当たっては,

我が国の政治の学習が,
抽象的になったり,
細かい用語や仕組み,数値などを
覚えるだけの指導になったり
することのないよう,

国や地方公共団体の取組についての
具体的な事例を取り上げて
調べるようにすることが大切である。

 また,
地方公共団体の政治の働きを
取り上げる際には,
国の政治との関連を
十分に踏まえて指導する
ことが大切である。

 
 

(内容の取扱い)

(1) 内容の(1)については,次のとおり取り扱うものとする。

ア アの(ア)については,国会などの議会政治や選挙の意味,国会と内閣と裁判所の三権相互の関連,裁判員制度や租税の役割などについて扱うこと。

 その際,イの(ア)に関わって,国民としての政治への関わり方について多角的に考えて,自分の考えをまとめることができるよう配慮すること。

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イ アの(ア)の「天皇の地位」については,日本国憲法に定める天皇の国事に関する行為など児童に理解しやすい事項を取り上げ,歴史に関する学習との関連も図りながら,天皇についての理解と敬愛の念を深めるようにすること。

 また,「国民としての権利及び義務」については,参政権,納税の義務などを取り上げること。

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ウ アの(イ)の「国や地方公共団体の政治」については,社会保障,自然災害からの復旧や復興,地域の開発や活性化などの取組の中から選択して取り上げること。

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エ イの(ア)の「国会」について,国民との関わりを指導する際には,各々の国民の祝日に関心をもち,我が国の社会や文化における意義を考えることができるよう配慮すること。

 内容の取扱いの(1)のアは,内容の(1)のアの(ア)及びイの(ア)について指導する際に取り上げる事柄と配慮事項を示したものである。

 ここでは,アの(ア)の指導について,国会などの議会政治や選挙の意味,国会と内閣と裁判所の三権相互の関連,裁判員制度や租税の役割などについても扱うようにすることを示している。

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 「国会など議会政治や選挙の意味」については,選挙は国民の代表者を選出する大切な仕組みであること,国民の代表者として選出された国会議員は国民生活の安定と向上に努めなければならないこと,国民は代表者を選出するため,選挙権を行使する必要があることを考えるようにする。

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 「国会と内閣と裁判所の三権相互の関連」については,国会が国権の最高機関であり,国の唯一の立法機関として法律の制定や予算の議決,条約の承認などを行っていること,内閣が国の行政権をもち,法律や予算に基づいて実際の政治を行っていること,裁判所が司法権をもち,法律に基づいて裁判を行っていることを取り上げ,三権がそれぞれ大切な役割を果たしていることや,三権が相互に関連し合っていることを理解できるようにする。

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 「裁判員制度」については,国民が裁判に参加する裁判員制度を取り上げ,法律に基づいて行われる裁判と国民との関わりについて関心をもつようにする。

 「租税の役割」については,租税が国や県,市によって行われている対策や事業などの費用として使われていること,それらは主に国民によって納められた税金であることなどを理解できるようにする。

 その際,限られた財源をどのように配分するのかを決める責任は,国会や地方議会などの制度を通して,国民や住民にあることに触れるようにする。

 また,イの(ア)の指導に関連して,調べて得た情報などに基づいて,政治への関わり方について多角的に考え,自分の考えをまとめることができるよう配慮することを求めている。

 例えば,選挙は国民の代表者を選出する大切な仕組みであること,行政に必要な予算を国民が納める税金が支えていること,国民が裁判に参加する仕組みとして裁判員制度があることなどを踏まえて,様々な立場から多角的に考え,義務や責任などと関連付けて自分の考えをまとめるように指導することが大切である。

 内容の取扱いの(1)のイは,内容の(1)のアの(ア)に示されている「天皇の地位」と「国民としての権利及び義務」について学習する際に取り上げる事例と配慮事項を示したものである。

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 「天皇の地位」については,例えば,国会の召集,栄典の授与,外国の大使等の接受などの国事行為や,国会開会式への出席,全国植樹祭・国民体育大会への出席や被災地への訪問・励ましといった各地への訪問などを通して,象徴としての天皇と国民との関係を取り上げ,天皇が日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であることを理解できるようにする。

 また,内容の(2)の歴史学習との関連に配慮し,天皇が国民に敬愛されてきたことを理解できるようにすることも大切である。

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 これらの指導を通して,天皇についての理解と敬愛の念を深めるようにする必要がある。

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 「国民としての権利及び義務」についての指導に当たっては,日本国憲法に定められた国民としての権利及び義務について,国民生活の安定と向上を図るために政治が大切な働きをしているという観点から,具体的な事例を取り上げるようにすることが大切である。

 国民の権利については,例えば,参政権を取り上げ,選挙権など,政治に参加する権利が国民に保障されていることを理解できるようにする必要がある。

 国民の義務については,例えば,納税の義務を取り上げ,税金が国民生活の向上と安定に使われていることを理解できるようにする必要がある。

 内容の取扱いの(1)のウは,内容の(1)のアの(イ)について指導する際に取り上げる事例の範囲と配慮事項を示したものである。

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 ここでは,「国や地方公共団体の政治」の取組について,具体的に調べられるように児童の関心や地域の実態に応じて,「社会保障,自然災害からの復旧や復興,地域の開発や活性化などの取組」の中から選択して取り上げる。

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 社会保障の取組を取り上げる場合には,例えば,高齢者や障害者の生活支援や介護,医療の充実,子育て支援などに関わる具体的な事業を選択して取り上げ,市役所,県庁が地域の実態や住民の意見を取り入れながら政策を決定し,国と協力して計画的に実行していることなどを具体的に調べるようにすることが考えられる。

 自然災害からの復旧や復興の取組を取り上げる場合には,災害が発生したときに市役所,県庁が,自衛隊の派遣を要請するなど国と協力しながら救援活動を行ったり災害復旧のために物流拠点を配置したり,さらに,長期的な視野に立って地域の再興に向けて様々な施策を実行したりしていることなどを具体的に調べるようにすることが考えられる。

 また,地域の開発や活性化の取組を取り上げる場合には,地域経済の活性化や地域における雇用機会の創出を,市役所,県庁が主体的に進めていることや,国はそのような地域の自立的な取組を制度や財政などの面から支援していることなどを具体的に調べるようにすることが考えられる。

 これらの取組を調べることを通して,国民生活における政治の働きを考えるようにすることが大切である。

 その際,税金が国や地方公共団体による対策や事業に使われ,国民生活の向上と安定のために重要な役割を果たしていることを理解できるようにする必要がある。

 内容の取扱いの(1)のエは,内容の(1)のイの(ア)について指導する際の配慮事項を示したものである。

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 ここでは,「「国会」について,国民との関わりを指導する」に当たり,国民生活と関わりが深い具体的な事例として各々の国民の祝日を扱い,それらに関心をもつようにする。その際,国民の祝日に関する法律に定められている内容や歴史的な由来などを取り上げながら,各々の祝日がよりよき社会,より豊かな生活を築きあげるために,全ての国民が祝い,感謝し,または記念する日として定められていることなど,我が国の社会や文化における意義を考えることができるよう配慮して指導することが大切である。

 
 
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