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(1) 各学校においては,地域の実態を生かし,児童が興味・関心をもって学習に取り組めるようにするとともに,観察や見学,聞き取りなどの調査活動を含む具体的な体験を伴う学習やそれに基づく表現活動の一層の充実を図ること。

 また,社会的事象の特色や意味,社会に見られる課題などについて,多角的に考えたことや選択・判断したことを論理的に説明したり,立場や根拠を明確にして議論したりするなど言語活動に関わる学習を一層重視すること。

 これは,各学年の内容を取り扱う際に,地域の実態を生かし,児童が興味・関心をもって学習に取り組めるようにすること,観察や見学などの調査活動を含む具体的な体験を伴う学習やそれに基づく表現活動の一層の充実を図ること,考えたことや選択・判断したことを説明したり議論したりするなど言語活動の一層の充実を図ること,という三つの配慮事項を示したものである。

 地域の実態を生かし,児童が興味・関心をもって学習に取り組めるようにすることとは,

地域にある素材を教材化すること,地域に学習活動の場を設けること,地域の人材を積極的に活用することなどに配慮した指導計画を作成し,児童が興味・関心をもって楽しく学習に取り組めるようにすることである。

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 各学校においては,まず,教師自身が各学校の置かれている地域の実態把握に努め,地域に対する理解を深めるようにする。

 そして,地域の素材をどのように受け止め,地域の人々や施設などからどのような協力が得られるかについて明確にする必要がある。

 それらを基に,地域の素材を教材化し,地域の施設を積極的に活用したり地域の人々と直接関わって学んだりする学習活動を位置付けた指導計画を作成することが大切である。

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 その際,第3学年及び第4学年については,各学校が創意工夫を生かし,地域に密着した特色ある指導計画を作成し,児童が地域社会への理解を一層深め,地域社会に対する誇りと愛情を育てるように配慮する必要がある。

 第5学年及び第6学年においては,我が国の国土や産業,政治,歴史などについての理解を深めることが目標であり,地域教材を取り上げた学習にとどまることのないよう指導計画を工夫する必要がある。

 観察や見学,聞き取りなどの調査活動を含む具体的な体験を伴う学習やそれに基づく表現活動の一層の充実を図ることとは,

観察や見学,聞き取りなどの調査活動を含む具体的な体験を伴う学習やそれに基づく表現活動を指導計画に適切に位置付けて効果的に指導することにより,具体的な体験を伴う学習や表現活動の一層の充実を図ることである。

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 具体的な体験を伴う学習を指導計画に適切に位置付けて効果的に指導するためには,まず,社会科としてのねらいを明確にすることが必要である。

 その上で事前・事後や現地における指導の充実を図り,児童が実物や本物を直接見たり触れたりすることを通して社会的事象を適切に把握し,具体的,実感的に捉えることができるようにすることが大切である。

 また,具体的な体験に基づく表現活動については,観察や見学,聞き取りなどによって分かったことや考えたことなどを適切に表現する活動を指導計画に効果的に位置付け,調べたことを基にして思考・判断したことを表現する力を育てるようにする必要がある。

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 各学校においては,児童の実態や発達の段階を考慮に入れ,観察や見学,聞き取りなどの調査活動を含む具体的な体験を伴う学習やそれに基づく表現活動の一層の充実を図る観点から指導計画を工夫することが大切である。

 また,社会的事象の特色や意味,社会に見られる課題などについて,多角的に考えたことや選択・判断したことを論理的に説明したり,立場や根拠を明確にして議論したりするなど言語活動に関わる学習を一層重視することとは,

考えたことや選択・判断したことを説明したり,それらを基に議論したりするなど言語活動を一層重視することである。

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 社会科の学習では,社会的事象について調べたことをまとめるとともに,その特色や意味を考えることが大切である。

 その際,学年の段階に応じて,生産者と消費者,情報の送り手と受け手など複数の立場から多角的に考えるようにすることが大切である。

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 また,社会科においては,主権者として求められる資質・能力を育成する観点から,社会に見られる課題を把握して,その解決に向けて,自分たちの行動や生活の仕方や,これからの社会の発展などよりよい社会の在り方などについて考えることも大切である。

 その際,考えたり選択・判断したりしたことを根拠や理由を明確にして論理的に説明したり,他者の主張を踏まえて議論したりするなど,言語活動の一層の充実を図るようにすることが大切である。

 
 

(2) 学校図書館や公共図書館,コンピュータなどを活用して,情報の収集やまとめなどを行うようにすること。

 また,全ての学年において,地図帳を活用すること。

 これは,各学年の内容を取り扱う際に,学校図書館や公立図書館,コンピュータ,地図帳,地球儀などの学習環境や教材・教具を活用するように配慮することを示したものである。

 社会科の学習においては,これまでと同様に,社会の変化に自ら対応する資質・能力の育成を図る観点から,学び方や調べ方を大切にし,児童の主体的な学習を一層重視することが必要である。

 すなわち,児童一人一人が自らの問題意識をもち,問題解決の見通しを立て,必要な情報を収集したり,収集した情報を読み取ったり,読み取った情報を分類・整理してまとめたりする学習活動を構成することが大切である。

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 このような学習を実現していくには,学校図書館などの施設やコンピュータなどの整備を進めていくことが大切である。

 特に学校図書館がもつ読書センターとしての機能に加え,児童の学習活動を支援する学習・情報センターとしての機能をもつようにしていく必要がある。

 また,主体的・対話的で深い学びの実現につながるよう,児童が情報通信機器を使える環境を整備していくことが大切である。

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 指導計画の作成に当たっては,例えば,児童一人一人が図書館やコンピュータなどを利用する必要性を感じることができるような教材や学習過程を工夫・改善すること,児童一人一人が図書館やコンピュータなどを活用し,学習問題などについて調べて考え,表現し発信できるようにするため,いつどこの場面で,どのように図書館やコンピュータなどを活用するのか,児童の活動場面を想定しておくようにする。

 また,第3学年から給与される地図帳は,地図を効果的に活用することにより,位置や空間的な広がりに着目して社会的事象を捉える見方・考え方を養うことができる教材である。

 地図帳については,日常の指導の中で,折に触れて,地図の見方や地図帳の索引の引き方,統計資料の活用の仕方などを指導し,地図帳を自由自在に活用できる知識や技能を身に付けるようにすることが大切である。

 また,地図帳を日常的に活用し,地図帳への親しみをもち,問題解決のための教材として効果的に活用する技能や意欲を育てるようにする。

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 地図帳は,第3学年から第6学年までの各学年で使用されるものであるが,特に第3学年の使い始めにおいては,地図帳の内容構成を理解できるようにする。

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 また,地図帳は,社会科の学習だけでなく,他の教科等の学習や家庭などにおいても活用することが大切であることを指導するようにする。

 
 

(3) 博物館や資料館などの施設の活用を図るとともに,身近な地域及び国土の遺跡や文化財などについての調査活動を取り入れるようにすること。

 また,内容に関わる専門家や関係者,関係の諸機関との連携を図るようにすること。

 これは,各学年の内容を取り扱う際に,地域にある教育的な施設の活用を図るとともに,身近な地域及び国土の遺跡や文化財などの観察や調査などの活動を取り入れるように留意することを示したものである。

 近年,国や地方公共団体,企業などによって,博物館やその他の施設の整備が進められている。

 これらの諸施設を積極的に活用して,社会科の見学や調査活動を行うことは,児童の意欲や学習効果を高める上で極めて重要なことである。

 社会科の学習に活用できる博物館には,歴史博物館や郷土資料館のほかに,例えば,魚や自動車などに関する博物館,水道,電気,ガス,原子力など資源・エネルギーに関する博物館,農業や漁業,林業,伝統的な工業などの地場産業に関する地域産業振興センターなど,多様なものがある。

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 地域にあるこれらの施設を積極的に活用することによって,児童の知的好奇心を高め,学習への動機付けや学習の深化を図ることができる。

 また,諸感覚を通して実物や本物に触れる感動を味わうことができる。

 学校での積極的な活用を通して,これらの施設を自ら進んで利用できるようになる。

 そのことは生涯に渡って活用する態度や能力の基礎となるものである。

 また,身近な地域や国土には,様々な遺跡や文化財が保存,管理されており,それらを観察したり調査したりする活動の場を,学習のねらいを考慮して,指導計画に位置付けることも考えられる。

 例えば,第3学年での市や人々の生活の移り変わりに関する学習や第4学年での県内の特色ある地域の人々の生活に関する学習,第6学年での我が国の歴史学習などでは,身近な地域や国土に残されている様々な遺跡や文化財,歴史博物館などを直接訪ねて観察・見学したり調査したりする活動を組み入れることができる。

 このことにより,児童は一層具体的に学習できるようになり,学習のねらいを効果的に実現するとともに,歴史に対する興味・関心を高めることができる。

 指導計画の作成に当たっては,事前に施設,遺跡や文化財などの実情を把握するとともに,関係の機関や施設などとの連携を綿密にとることが大切である。

 その際,施設の学芸員や指導員などから話を聞いたり協力して教材研究を行ったりして,指導計画を作成する手掛かりを得ることも一つの工夫である。

 また,特別活動の遠足・集団宿泊的行事や総合的な学習の時間における伝統や文化に関する学習活動などとの関連を指導計画に示すことも考えられる。

 このような学習を通して,博物館や資料館,地域や国土に残されている遺跡や文化財などの役割や活用の仕方について正しく理解させ,それらに関わっている人々の働きやそれらが大切に保存,管理されていることの意味についても気付くようにすることが大切である。

 また,学習内容や教材について,地域の専門家や関係者,関係諸機関等と円滑な連携・協働を図ることも大切である。

 例えば,地域の生産や販売の仕事に関わる人,地域の歴史を研究している人,地域の安全や健康な生活,良好な生活環境を守るための諸活動に関わる人,伝統的な文化や自然環境など地域の資源を保護・活用している人,食料生産や工業生産などの産業に従事する人,政治の働きに関わる関係諸機関の人などの協力を得て,話を聞いたり,活動の様子を見学したり,社会に見られる課題の解決に向けて意見交換をしたりすることなどが考えられる。

 その際,学校支援地域本部などの活動と連携を図ることも有効であると考えられる。

 
 
(4) 児童の発達の段階を考慮し,社会的事象については,児童の考えが深まるよう様々な見解を提示するよう配慮し,多様な見解のある事柄,未確定な事柄を取り上げる場合には,有益適切な教材に基づいて指導するとともに,特定の事柄を強調し過ぎたり,一面的な見解を十分な配慮なく取り上げたりするなどの偏った取扱いにより,児童が多角的に考えたり,事実を客観的に捉え,公正に判断したりすることを妨げることのないよう留意すること。
 これは,各学年の指導において,社会的事象について多面的に考えたり,事実を客観的に捉え,公正に判断したりすることのできる児童の育成を目指す際の留意点を示したものである。

 社会科が学習の対象にしている社会的事象の捉え方は,それを捉える観点や立場によって異なることから,これらについて,一面的な見解を十分な配慮なく取り上げた場合,ともすると恣意的な考えや判断に陥る恐れがある。

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 とりわけ,「多様な見解のある事柄,未確定な事柄」については,一つの意見が絶対的に正しく,他の意見は誤りであると断定することは困難であり,小学校社会科では学習問題の解決に向けて,一つの結論を出すこと以上に話合いの過程が大切であることを踏まえ,取り上げる教材が一方的であったり一面的であったりすることのないよう留意して指導することにより,児童が多角的に考えたり,事実を客観的に捉え,公正に判断したりできるようにすることが必要である。

 また,「有益適切な教材」である資料などに基づいて多角的に考えることを重視して,そのよりどころとなる資料に関しては,その資料の出典や用途,作成の経緯等を含め,十分に吟味した上で使用することが必要である。

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 このことに関して,平成27年3月4日付け初等中等教育局長通知「学校における補助教材の適正な取り扱いについて」(26文科初第1257号)に記されているように,諸資料を補助教材として使用することを検討する際には,その内容及び取扱いに関して,

@ 教育基本法,学校教育法,学習指導要領等の趣旨に従っていること,

A その使用される学年の児童生徒の心身の発達の段階に即していること,

B 多様な見方や考え方のできる事柄,未確定な事柄を取り上げる場合には,特定の事柄を強調し過ぎたり,一面的な見解を十分な配慮なく取り上げたりするなど,特定の見方や考え方に偏った取扱いとならないこと,

に十分留意することが必要である。

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 この通知の趣旨を踏まえ,各学年の指導においては,児童の発達の段階を考慮して,社会的事象を公正に判断できるよう配慮することが大切である。

 社会的事象を公正に判断するとは,決して独りよがりの判断ではなく,社会的事象の意味について,複数の立場や意見を踏まえて多角的に考え,総合的に理解した上で判断することである。

 これらのことに配慮して,「よりよい社会を考え主体的に問題解決しようとする態度を養うとともに,多角的な思考や理解を通して,地域社会に対する誇りと愛情,地域社会の一員としての自覚,我が国の国土や歴史に対する愛情,我が国の将来を担う国民としての自覚,世界の国々の人々と共に生きていくことの大切さについての自覚などを養う」ことをねらう小学校社会科の目標が実現できるようにすることが大切である。
 
 
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