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 算数科の内容は,「A数と計算」,「B図形」,「C測定」(下学年),「C変化と関係」(上学年),及び「Dデータの活用」の五つの領域で示している。

 これは,小学校における主要な学習の対象,すなわち,数・量・図形に関する内容とそれらの考察の方法を基本とする領域(「A数と計算」,「B図形」,「C測定」),さらに事象の変化や数量の関係の把握と問題解決への利用を含む領域(「C変化と関係」),不確実な事象の考察とそこで用いられる考え方や手法などを含む領域(「Dデータの活用」)を,それぞれ設定したものである。

 これらの領域は,算数科において育成を目指す「知識及び技能」,「思考力,判断力,表現力等」がより明確になり,それらを育成するための学習過程の計画が図られるようにするために設定し,内容の系統性や発展性の全体を,中学校数学科との接続をも視野に入れて整理したものである。

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 今回の改訂では,主として数・量・図形に関する内容とそれらを考察する方法の観点から整理されてきた従来の内容領域の構成を踏襲しつつ,児童の発達の段階を考慮に入れて,それぞれの内容の指導を通じて育成を目指す資質・能力を明らかにし,内容領域を設定した。

 特に,以下に述べるような事項を中心として,内容領域を再編成した。

 このことにより,児童が数学的活動を通して考察を深める内容が,それぞれの領域にまとめられることになり,教師にとって算数科の学習とその指導の趣旨が分かりやすいものになるようにすることを意図している。

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 また,児童の発達の段階を踏まえ,算数科と数学科の接続の視点から,第1学年,第2学年と第3学年,第4学年と第5学年,第6学年の四つの段階で育成を目指す資質・能力と,働かせる数学的な見方・考え方を明らかにした。

 例えば,従来の「量と測定」領域の内容を見直し,下学年に「測定」領域を設定したり,従来の「数量関係」領域における関数の考えの育成について新規に「変化と関係」領域を上学年に設定したりしたのは,この考え方によるものである。

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 「A数と計算」領域は,整数,小数,分数などの数の概念の形成や,数の表し方や計算の習得などの内容によって構成されている。

 数に関わる学習では,基礎的な計算の習得を大切にしながら,数の概念とその表記に着目し,算数の学習対象や日常の事象を数学的に表現して,数学的な見方・考え方を働かせることが大切である。

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 計算する際に用いられる加法及び減法,乗法及び除法などの式は,日常生活の場面を算数の舞台に載せる役割を果たしている。

 文章題は式に表すことができれば,あとは計算で答えを求めることができる。

 計算の学習は,算数の学習として閉じるのではなく,日常場面で生きて働くことが必要である。

 そのためには,日常の場面を式に表したり,式を読んだりする内容が欠かせない。

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 そこで,従来は「数量関係」において,第1学年から第6学年まで位置付けられていた式の表現と読みに関する内容を,「数と計算」の考察に必要な式として捉え直し,「A数と計算」領域に位置付け直すことにした。

 これにより,事象を考察する際の式の役割が一層理解しやすくなり,日常生活の場面や算数の学習の場面で,式に表現したり読んだりして問題解決することができるようになる。

 このことによって数学的活動の充実が一層図られることとなる。

 
 

 従来の「B量と測定」領域は,身の回りにあるいろいろな量の単位と測定などの内容によって構成されている。

 また,「C図形」の領域は,基本的な平面図形や立体図形の概念とその性質,図形の構成などの内容によって構成されている。

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 この「量と測定」領域では,第一に,直接比較から間接比較,任意単位による測定,普遍単位による測定という一連のプロセスを大切にし,そこで働かせる数学的な見方・考え方が育成される内容と,面積や体積のように,図形を構成する要素に着目し,図形の性質を基に,量を計算によって求める内容や,二つの数量の関係に着目し,数量の間の比例関係を基に,量を計算で求める単位量当たりの大きさや速さの内容があった。

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 下学年において量を捉えるために単位を設定して測定すること,面積や体積を公式によって求めること,単位量当たりの大きさや速さを公式によって求めることについて,実際に児童が考察する仕方は,それぞれ異なるものである。

 そこで,育成を目指す資質・能力を明確にし,児童が学習する際の考察する仕方が異なる内容をそれぞれに合う領域に移行させることで,領域ごとに指導内容の配置の趣旨がより分かりやすくなるようにした。

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 まず,従前の「B量と測定」の内容を,測定のプロセスを充実する下学年での「C測定(下学年)」領域と,計量的考察を含む図形領域としての上学年の「B図形」に再編成した。

 再編成に当たっては,第一に,新規に「C測定(下学年)」領域を設定することとした。

 これは,ものの属性に着目し,単位を設定して量を数値化して捉える過程を重視し,それぞれの量について,そこでの測定のプロセスに焦点を当てて学ぶことにしているからである。

 また,第二に,基本的な平面図形の面積や立体図形の体積などの学習を,図形の特徴を計量的に捉えて考察するという視点から位置付け直し,上学年における「図形」領域の内容に移行した。

 例えば,三角形の面積は,平行四辺形を対角線で二つに分けることで説明でき,その際に,底辺や高さを基に計算によって求めることができる。

 つまり,計量をする際は,図形の性質や図形を構成する要素などに着目している。

 そこで,図形を構成する要素に着目して,図形の性質を考察する領域としての「図形」領域の位置付けを明確にした。

 新しい「図形」の領域を「図形を構成する要素などに着目して,図形の性質を考察したり,それを活用したりする資質・能力を育む」領域として,領域の趣旨を分かりやすいものとした。

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 次に,単位量当たりの大きさや速さについては,二つの数量の関係を考察することを重視する観点から,「変化と関係」領域で扱うこととした。

 このことにより,育成を目指す資質・能力に対応する内容をまとめて示すことにした。

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 また,第5学年の「測定値の平均」は,「データの活用」領域に移動した。

 「データの活用」領域では,従来から第6学年で「資料の平均」を学習している。

 測定値の平均は,一つのものを繰り返し測定し,それらの値を平均することで真の値に近づくことが前提の平均である。

 この前提には,測定したデータの分布は正規分布になるということがある。

 一方,「資料の平均」は,データの数値を平均するのみで,前提として分布が正規分布であるかどうかを仮定せず,統計的な問題解決に用いられる。

 これらの違いの理解を深めるために同一の領域で示すことにした。

 
 

 従前の「数量関係」は,主として,関数の考え,式の表現と読み,及び資料の整理と読みの三つの下位領域からなるものであったが,今回の改訂により,従前の「数量関係」の内容を新たに設けた「変化と関係」と「データの活用」に移行した。

 これにより,数量の変化や関係に着目した考察を重視するとともに統計教育の基礎を充実することにした。

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 「変化と関係」の領域の新設については,算数科で育成を目指す資質・能力の重要な事項に,事象の変化や関係を捉えて問題解決に生かそうとすることがあり,これが従前から「関数の考え」として重視されてきたことを踏まえている。

 今回の改訂では,事象の変化や関係を捉える力の育成を一層重視し,二つの数量の関係を考察したり,変化と対応から事象を考察したりする数学的活動を一層充実するために,従来の「数量関係」領域の考え方を生かすものとして,上学年に設けた。

 この領域の内容は,中学校数学の「関数」領域につながるものであり,小学校と中学校の学習の円滑な接続をも意図している。

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 なお,「変化と関係」領域を上学年に位置付けたのは,従来の「数量関係」の領域における「関数の考え」が育成される内容が,伴って変わる二つの数量の関係(第4学年),簡単な比例(第5学年),比例と反比例(第6学年)など,上学年に位置付けられていたことを踏まえたものである。

 しかしながら,下学年においても,数や図形の等の考察において,数の関係を考察したり,変化の規則に注目したりする場面が多いことに注意が必要であり,そのような場面は「関数の考え」の素地指導をする重要な機会である。

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 さらに,第1章で述べた統計的な内容の充実を踏まえ,身の回りの事象をデータから捉え,問題解決に生かす力,データを多面的に把握し,事象を批判的に考察する力の育成を目指すとともに,小学校と中学校間との統計教育の円滑な接続のため,従前の「数量関係」領域の資料の整理と読みの内容を中心に,統計に関わる領域「データの活用」を新たに設けた。

 「データの活用」という名称を用いたことについては,平成21年の3月改訂の高等学校学習指導要領数学Tにおいて,生活の中で活用することや統計学とのつながりを重視し,一般的に使われている「データ」という用語を用いたことや,小・中・高等学校の学習のつながりを考慮したものである。

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 指導に当たっては,上述の各領域の特徴を踏まえ,教科内容の系統を見通した上で,育成を目指す資質・能力の発達の系統を意識するとともに,各領域に含まれる内容相互の関連にも十分配慮して取り扱う必要がある。

 
 
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