cosnavi.jp

 図形の性質の考察においては,観察や構成などの活動を通して,図形の意味を理解したり,図形の性質を見付けたり,図形の性質を確かめたりすることができるようにする。

 次の三つに分けて述べていく。

・ ものの形に着目して考察すること

・ 図形を構成する要素に着目して,図形の性質について考察すること

・ 図形を構成する要素及びそれらの位置関係に着目して,図形の性質を考察すること

 第1学年では,仲間分けしたり,形遊びをしたり,箱を積んだり,箱でものを作ったり,面を写し取ったりすることを通して,ものの形を認め,形の特徴について捉え,図形についての理解の基礎となる経験を豊かにする。

 ものの形について,児童が例えば,「さんかく」「しかく」「まる」「箱の形」「ボールの形」などと呼んだり,その特徴を調べたりできるようにする。

 また,児童は,身近にある箱等を,形に限定せず多様な視点から捉えていくことが予想される。

 例えば,箱には何が入っていたのか,箱は何色か,箱は大きいか小さいかなど,目的に応じて,色,大きさ,位置,材質,機能,形等の多様な属性に着目するわけである。

 ものを弁別する際には多様な観点があり,その中の一つに形があるのだという意識がもてるように指導することが大切である。

 
 

 次に,図形を構成する要素などに着目して図形の性質を考察することを指導する。

 辺の数,面の数,角の数などに着目させる。

 また,図形を,辺の長さや角の大きさが等しいかどうかに着目して分類できるようにする。

--------------------------------

 第2学年では,辺の数,直角に着目して三角形,四角形,直角三角形を指導する。

 また,正方形,長方形,直角三角形も指導する。

 例えば,四つの辺の長さが等しく,四つの角が直角であるような四角形を正方形と捉えられるようにする。

--------------------------------

 第3学年では,二等辺三角形,正三角形を指導する。二等辺三角形は,二つの辺の長さが等しい三角形である。

 例えば,二等辺三角形を二つに折るなどの活動を通して,二つの角の大きさが等しいという図形の性質を見いだせるようにする。

 また,中心,半径,直径に着目して円について指導するとともに,球の直径等について,平面図形の円と比べながら指導する。

--------------------------------

 第4学年では,正方形,長方形の数に着目して立方体,直方体を指導する。

--------------------------------

 第5学年では,辺の数や長さなどに着目して多角形や正多角形を,また,底面,側面に着目して,角柱,円柱を指導する。

--------------------------------

 各々の図形指導では,それを構成したり弁別したりする活動を取り入れ,その性質が発見できるように指導するとともに,図形の性質を筋道を立てて説明できるようにする。

 
 

 次に,図形を構成する要素だけでなく,図形を構成する要素の間の関係に着目する。

 辺と辺,辺と面,面と面の間にある垂直,平行といった位置関係,辺の長さや角の大きさの間にある数量的な関係を取り上げる。

--------------------------------

 第4学年では,まず直線の位置関係に着目する。

 辺の長さ,角の大きさといった量ではなく,平行,垂直といった直線どうしの位置関係から図形を特徴付け,平行四辺形,ひし形,台形を指導する。

 平行四辺形については,
「対辺の長さや対角の大きさがそれぞれ等しい」という性質,

 ひし形について,
「対辺がそれぞれ平行である,対角の大きさがそれぞれ等しい,対角線が垂直に交わり互いに他を二等分する」という性質

を指導する。

 また,直方体に関連して,直線や平面の平行や垂直の関係について理解できるようにする。

--------------------------------

 さらに,対称軸を見いだし,それに対する両側の点,辺の位置関係等を考えることにより,図形を対称といった見方から捉えることができる。

 第6学年においては,線対称,点対称な図形を指導する。

 線対称な図形とは,ある直線を折り目として折ったとき,ぴったり重なる図形をさす。

 また,点対称な図形とは,一つの点を中心にして180度回転したときにぴったり重なる図形をさす。

--------------------------------

 そして,新たな見方が獲得されると,既習の図形をその見方で統合的に捉え直すことが肝要である。

 第4学年では,これまで学習した正方形,長方形等を平行,垂直といった見方から捉え直し,

 第5学年では,角柱における底面,側面といった見方から既習の立方体,直方体を捉え直し,

 第6学年では,線対称,点対称といった見方から,正方形,長方形,平行四辺形,台形,ひし形等を捉え直すことになる。

 ここで,二等辺三角形,正三角形,正方形,長方形,ひし形は線対称な図形であり,正方形,長方形,ひし形,平行四辺形は点対称な図形である。

--------------------------------

 さらに,図形を構成する要素の数量的な関係について考察していく。

 例えば,三角形を取り上げると,図形を構成する要素である三つの辺,三つの角の間に,何か一般的な性質がないかを考えることを指導する。

 第5学年では,三角形の三つの角の大きさの和が180度であること,四角形の四つの角の大きさの和が360度であること等を取り扱う。

 既に分かっていることを基に,筋道を立てて論理的に説明できるように指導する。

 
 

 図形の構成とは,身の回りの物や色板などを使って図形を作ったり,図形を分解したりすること,紙を折ったり切ったりして図形を作ること,コンパス,定規,分度器などを使って作図すること等を意味する。

 次の二つに分けて述べる。

・ 図形を構成する要素に着目して,図形の構成の仕方について考察すること

・ 図形間の関係に着目して,図形の構成の仕方について考察すること

 ここでは,図形を構成する要素に着目して,図形を作ったり分解したりする方法を考えることを指導する。

--------------------------------

 第1学年では,身の回りのものや色板などを使って,身の回りにある具体物の形を作ったり,作った形から逆に具体物を想像したりする。

--------------------------------

 第2学年では,辺,頂点,面,直角に着目して,図形の構成の仕方を考える。

 例えば,三角形を構成するためには,3本の直線を用いる必要があること,そして,それらのうち2本で頂点を決定する必要があること等を考える。

 また,頂点,辺,面の個数に着目し,六つの正方形や長方形を組み合わせたり,12本のひごを組み合わせたりすることで,箱の形を構成する方法を考える。

--------------------------------

 第3学年では,辺の長さに着目して,二等辺三角形,正三角形等を作図する方法を考える。

 また,中心からの距離が等しいことに着目して,円を作図する。

--------------------------------

 第4学年では,平行,垂直といった2直線の位置関係に着目して,平行四辺形,台形,ひし形の作図の仕方を考える。

--------------------------------

 第5学年では,円と関連させて,図形を構成する要素である辺の長さ,角の大きさに着目して,正多角形を作図する方法を考える。

--------------------------------

 第6学年では,対称な図形の性質に着目して,対称な図形の構成の仕方を考える。

 
 

 ここでは,二つの図形の関係に着目して,合同な図形,あるいは,拡大,縮小した図形の構成の仕方などを考察していく。

--------------------------------

 二つの形が同じかどうかを判断する際,その置き方によらず,動かしてぴったり重なれば,同じ形だと判断できる。

 「置き方によらない」ことに着目することで,合同の基礎となる考えに焦点があてられる。

--------------------------------

 しかし,「ぴったり重ねる」という行為は,具体的な操作が許されない場合,作図等の構成活動を通して合同な図形を写し取ることになる。

 その際,具体的な操作における「ぴったり重ねる」という行為は,図形を構成する要素に着目して「対応する辺や角が全て等しくなるように作図する」行為に置き換えられることになる。

 これが第5学年における合同な図形の学習である。

 第6学年では,合同の考えを基に,縮小もしくは拡大してぴったり重なるかどうかが論点になり,ここでは,縮図や拡大図を指導する。

 角の大きさの相等に加えて,対応する辺の長さが同じ割合になっていることに着目して考えていくとともに,作図等の活動を振り返り,筋道を立てて論理的に説明できるように指導する。

--------------------------------

 さらに,立体図形が考察の対象になると,見取図や展開図と立体図形の関係についての考察が始まる。

 図形を構成する要素である面と面,辺と辺等の位置関係に着目しながら,立体図形を見取図や展開図で表したり,逆に,見取図や展開図から立体図形を構成したりすることになる。

 第4学年では,直方体の見取図,展開図を指導し,

 第5学年では,柱体の見取図や展開図を指導する。

 
 

 ここでは,見いだされた図形の性質を基に,図形を構成する要素に着目しながら,求積へ活用することを考えることを指導する。

 下記の二つに分けて,述べていく。

・ 図形を構成する要素に着目して,その大きさを数値化すること

・ 図形を構成する要素に着目して,面積,体積の計算による求め方を考察すること

 図形の考察では,図形を構成する要素に着目することが繰り返しなされる。

 平面図形では,点,辺,角,面が,立体図形では,点,辺,角,面,体がそれに当たり,これらの図形を構成する要素の大きさを数値化することを考えていく。

 ここで,辺については,その長さが既に数値化されており,図形の考察において活用されているが,角,面,体については,数値化されていないため,角の大きさ,平面図形における面の大きさ,立体図形における体の大きさが,長さと同じように数値化できないかが問題となる。

 そこで,長さの数値化の仕方を振り返りながら,角の大きさ,面の大きさ,体の大きさも,単位を定めることでその幾つ分かで表せることを指導する。

--------------------------------

 第4学年では,角の大きさ,面の大きさを数値化することを指導する。

 角の大きさについては,回転の大きさとして捉え,度(°)という単位を指導する。

 面積については,広がりをもつ面の大きさとして,平方センチメートル(cm2),平方メートル(u),平方キロメートル(km2)を指導する。

--------------------------------

 第5学年では,体の大きさの数値化を指導する。

 体積については,身の回りにある箱などの入れ物の大きさなどとして捉えられることや,立方センチメートル(cm3),立方メートル(m3)という単位を指導する。

 
 

 面積,体積の概念が学習されると,次に,図形を構成する要素などに着目して,その面積,体積の求め方を指導する。

--------------------------------

 第5学年では,三角形,平行四辺形,ひし形及び台形の面積の求め方を考えることを指導する。

 例えば,平行四辺形では,具体的な操作等を通して長方形に変形することで面積が求められる。

 そして,長方形に変形できることについては,操作的・感覚的な確かめに加えて,平行四辺形の性質(平行四辺形の向かい合う辺の長さは等しい等)を用いた説明も少しずつできるようにする。

--------------------------------

 第6学年では,身の回りにある図形の概形とおよその面積などとともに円の面積を指導する。

 面積などを測定しようとする身の回りにある図形については,その概形を捉え,見通しをもちその面積などを考察することが大切である。

 平面図形では,三角形や四角形のように測定しやすい形とみたり,それらに分けたりする。

 立体図形では,直方体や立方体とみたり,それらに分ける工夫をしたりする。

 円の面積では,はじめに面積の大きさの見通しをもつとともに,既習の求積が可能な図形に変形して考えていくことが大切である。

--------------------------------

 さらに,第6学年において,角柱及び円柱の体積の求め方について指導する。

 ここでは,基本的な空間図形の体積の求め方を,図形を構成する要素などに着目して,既習の求積が可能な図形の体積の求め方を基に考えたり,図形の面積の学習と関連付けたりする。

 
 

 図形を構成する要素に着目して見いだした性質を基に,それが日常生活に活用できないかを考えることを指導する。

 その際,下記の四つの観点から活用していく。

--------------------------------

 一つ目は,図形の性質を生かして,デザインすること(模様づくりなど)である。

 辺の長さの相等,角の大きさの関係等に着目することで,敷き詰め模様をつくることができる。

 第2学年では,正方形,長方形,直角三角形の敷き詰め模様,

 第3学年では,二等辺三角形,正三角形の敷き詰め模様,

 第4学年では,平行四辺形,ひし形,台形の敷き詰め模様をつくり,図形のもつ美しさが感得できるように指導する。

 また,第3学年では,円の性質を利用してこま等をつくる指導をする。

 図形の性質がどのように日常生活に利用されているのかを理解させ,算数の有用性を感得できるような指導をする。

--------------------------------

 二つ目は,図形がもつ機能的な側面である。

 円柱,球は転がるというよさがある,角柱は積み重ねることができるといった具合に,図形の機能的な側面は,低学年から取り扱われる。

--------------------------------

 三つ目は,図形の性質を利用した測量である。

 第3学年では,サッカーボール等の球の直径を求める。

 第6学年では,木の高さや校舎の高さなどを,縮図や拡大図の考えを活用して求める。

 また,湖の面積等を求める際に,その形の概形を捉え,面積を求める指導を行う。

 目的に応じて理想化して考えていることに留意する必要がある。

--------------------------------

 四つ目は,位置を決める方法である。

 平面や空間における位置を特定し表現するためには,何に着目して表現すればよいかを考えることを指導する。

 第1学年では,方向や位置について,前後,左右,上下などの言葉を用いて言い表せるようにする。

 そして,第4学年では,平面上,空間上の位置を特定し表現するために,平面であれば二つの要素で,空間であれば三つの要素で,基準点を設定しそこからの距離の組み合わせで表現できることを指導する。

 
 
→ 小学校算数編 目次
→ 中学校数学編 目次
→ 小学校学習指導要領(2017)目次
→ 学習指導要領ナビ
トップページ