cosnavi.jp

 量とはものの大きさを表すものである。

--------------------------------

 ものの個数は,数えることなどを通して整数で表すことができる。

 一方,ひもの長さや水の重さなどのような量の大きさは,いくらでも細分することができるものであり,必ずしも整数で表せるとは限らない。

--------------------------------

 量には,基本的な量として,長さ,重さ,時間のほかに,広さ,かさ,角の大きさ,速さなどがある。

--------------------------------

 これらの量の概念の育成に当たっては,具体物などの量の大きさを比べる活動を行うことが大切である。

 児童の身の回りにあるものには,長さ,広さ,かさ,重さといった量とともに,色や材質,形状といった特徴がある。

 ものを実際に比較する活動を通して,どのようなものの量を比べようとしているのか,その量がどのような大きさであるのかが捉えやすくなり,量の概念が次第に形成されていく。

--------------------------------

 ものの大小を比較するときは,
 量の大小を表す言葉を用いる
 ようにすると,
 意味が捉えやすくなる。

 例えば,
 長さについては「長い,短い」という。

 また,
 広さでは「広い,狭い」,
 かさでは
 「大きい,小さい(多い,少ない)」,
 重さでは「重い,軽い」,
 角の大きさでは「大きい,小さい」,
 速さでは「速い,遅い」

 などといって,
 量の大きさの大小を表すことができる。

--------------------------------

 長さ,広さ,かさ,重さ,角の大きさなどの量については,次のような基本的な性質がある。

 例えば,かさは,ある容器に入っている液量を別の形をした容器に移したり,幾つかの容器に分けたりしても,総量は変わらない。

 このように,ものの形を変形したり,幾つかに分割したり,位置を動かしたりしても,そのものの量の大きさは変わらない性質を,量の保存性という。

 また,量の保存性を基にすると,例えば,300g のものと500g のものを合わせると物の重さの合計は800g になるといった量の加法性が確かめられる。

--------------------------------

 また第5学年の「B図形」の領域では,平行四辺形の一部を切り取って二つにして,それらを組み合わせて長方形を作ったとき,はじめの平行四辺形の面積と,あとの長方形の面積は同じであると説明できる。

 ここでも,量の保存性や,量の加法性が使われている。

--------------------------------

 「C測定」の領域では,これらの量の中から,長さ,広さ,かさ,時間について扱う。

 
 

 基本的な性質をもつ量の大きさを比べる際に,直接比較や間接比較,任意単位を用いた測定による比較について指導する。

--------------------------------

 直接比較では,二つの大きさを直接に比較する。

 例えば,2本の鉛筆AとBの長さを比較するとき,一方の端を揃えて,他方の端の位置によって大小判断をする。

--------------------------------

 間接比較では,AとBの大きさをそれと等しい別のものに置き換えて,間接的に比較する。

 例えば,机の縦と横の長さを紙テープの長さに置き換え,紙テープに写した長さを比較して大小判断をする。

 直接比較や間接比較をすることで,具体的なものの属性のうち,比べようとしている量は何なのかが明確になる。

--------------------------------

 任意単位による測定では,AとBの大きさを,それと同種の量の幾つ分という数値に置き換えて比較する。

 例えば,机の縦と横の長さを鉛筆の長さの幾つ分かに置き換え,縦が四つ分,横が六つ分であれば,横は縦より鉛筆二つ分だけ長いなどと大小判断をする。

 このように数値化することにより,大きさの違いを明確に表して比べることができるようになる。

--------------------------------

 量の測定とは,量Bを基準にとるとき,他の量Aがその何倍に等しいかを調べ,この何倍に当たる数pによって量Aの大きさを表現することである。

--------------------------------

 量の大きさを比べる指導においては,場面や目的及び身の回りのものの特徴に応じて量の大きさの比べ方を見いだすことができるようにすることが大切である。

 このことは,目的に応じて量の大きさの比べ方を柔軟に選択し,学習した方法を活用する資質・能力の育成を目指す上で特に重要である。

 
 

 単位とは,大きさを表すのに用いる,基になる大きさである。

--------------------------------

 ものの大きさは,単位の幾つ分(何倍)という形で表すことができる。

 例えば,長さの3mは1mの三つ分の大きさであるし,かさのLは,1Lの倍の大きさである。

--------------------------------

 「C測定」の領域においては,長さ,かさ,重さの量の単位について指導する。

 また,それぞれの単位間の関係についても指導する。

 その際,単位の意味や単位間の関係を形式的に指導するだけでなく,単位の意味や単位間の関係に基づいて,身の回りのものの大きさを適切な計器を用いて測定し,単位を用いて的確に表現しようとする態度が育成されることが大切である。

--------------------------------

 例えば,教室の長さを大まかに表現しようとする際には,oやpでは数値が大きくなりすぎ,測定した数値を実感をもって捉えることが難しい。

 しかし,mを単位として表現すれば,量の大きさを実感をもって捉えることができる。

 その際,量を測定させる前に,だいたいどのくらいの大きさになるのか見積もることや,測定する計器や方法について見通しをもつことで,目的に応じて計器や単位を選択したり,量の大きさを的確に測定したりする資質・能力を高めることができる。

--------------------------------

 このように,目的に応じた単位で量の大きさを的確に表現したり比べたりすることは,算数を実感を伴って理解する上で特に重要である。

--------------------------------

 なお,単位については,日本では計量法という法律によって定められている。

 国際的には「国際単位系」というルールによって定められている。

--------------------------------

 以下では,「C測定」領域で指導する量とその単位について述べる。

 
 

 長さは,児童にとって,これまでにも大きさを比較した経験が多い量である。

 第1学年では,これまでの経験を基に,まず,長さの直接比較を指導する。

 次に,長さを直接比較することができない曲線の長さなどの間接比較を指導し,身の回りの具体物から長さを取り出し,長さの比較ができるようにする。

 さらには,身の回りの具体物の長さを共通単位(任意単位)として設定し,身の回りの具体物の長さを数で捉え大きさを比較することを指導する。

 第2学年では,長さの普遍単位の意味を理解できるようにし,長さの単位(ミリメートル(mm),センチメートル(cm),メートル(m))と,それらを用いた測定について指導する。

 その際,測定する対象の大きさに応じた単位を選択し,測定できるようにすることが大切である。

 第3学年では,キロメートル(km)の単位について指導する。

 また,長さについて,測定する対象の大きさや形状に応じた単位や計器を適切に選んで測定できるようにすることが大切である。

 広さは,広がりをもつ面の大きさであり,長さと同様に児童が大きさを比較した経験がある量と考えられる。

 第1学年では,まず,具体物を直接重ねるなどの活動を通して,広さも長さと同様に直接比較することができる量であることを指導する。

 次に,身の回りの具体物の広さを紙などに写し取って,直接比較をすることが難しい広さを間接比較することを指導する。

 さらには,身の回りの具体物の広さを共通単位(任意単位)として設定し,身の回りの具体物の広さを数で捉え大きさを比較することを指導する。

 その際,広さは,二次元の広がりをもつものの量なので,長さだけでは大きさの判断がつかないことを理解できるようにすることが大切である。

 このような広さを比較する活動が,第4学年以降の「B図形」の領域における面積の学習の理解の基礎となる経験となる。

 かさは,三次元の広がりをもつものの量であり,児童にとっては身の回りの入れ物の大きさなどとして捉えることができる量である。

 第1学年では,具体物を重ねるなどの活動を通して,かさの直接比較などを指導する。

 第2学年では,かさの単位について理解できるようにし,かさの単位(ミリリットル(mL),デシリットル(dL),リットル(L))とそれらの単位を用いた測定について指導する。

 その際,かさは,長さや広さだけでは大きさの判断がつかないことを理解できるようにすることが大切である。

 このように,かさの大きさを比べる活動が,第5学年以降の「B 図形」の領域における図形の体積の学習の理解の基礎となる経験となる。

 重さは,ものの見かけだけでは捉えられない大きさであり,具体物を手に持ったり体に身に付けたりして,重さを実感しながら測定することで重さの概念を理解できるようにすることが大切である。

 第3学年では,重さの単位(グラム(g),キログラム(kg))とそれらの単位を用いた測定について指導する。

 時間については,日常生活との関連を大切にしながら指導することが大切である。

 第1学年では,日常生活の中で時刻を読むことができるようにする。

 第2学年では,時間の単位(日,時,分)とそれらの関係について理解できるようにする。

 第3学年では,時間の単位(秒)と,時刻や時間の計算について指導する。

 その際,長針や短針の動きを観察するなどの活動を設定し,時間の概念を実感をもって理解できるようにすることが大切である。

 
 

 今回の改訂に伴って,これまで,第6学年の「メートル法の単位と仕組み」の内容において指導してきた単位間の関係を考察することを,それぞれの量の単位及び測定の指導において取り扱うこととした。

 これは,それぞれの量の単位の指導において単位の関係を取り扱うことで,同じような仕組みに基づいて単位が構成されていることに徐々に気付き,単位間の関係を統合して捉えることができるからである。

--------------------------------

 メートル法の特徴としては,十進数の仕組みによって単位が定められていることや,基本単位を基にして組み立て単位が作られる仕組みをもっていることが挙げられる。

 メートル法では,基にしている単位に,次の表で示すような接頭語を付けて単位を作っている。

--------------------------------

 例えば,長さの指導においては,o,p,m,qといった単位を取り扱うが,このときm(ミリ)は 1/1000 を表すことや,k(キロ)は1000倍を表すことを理解すると,かさの mL や kL の単位の意味やその単位の大きさが捉えやすくなる。

 その際,長さの単位の仕組みに着目して,かさや重さの単位との共通点について捉えることから,単位間の理解を深めることが大切である。

 さらには,単位間の関係を理解することで,身の回りにある様々な単位について関心をもち,身の回りの事象を量の単位に基づいて捉えようとする態度が育成されることも大切である。

 
 

 この領域は,身の回りの量の大きさについて関わることを学習の基盤としている。

 そのため,算数科の中でも特に日常生活との関連が深く,日常生活の多くの場面で生かすことができる。

--------------------------------

 例えば,時刻や時間や長さについて,次のようなことが挙げられる。

・ 時刻と時間の読みを基に,日常生活における時間の使い方についての計画を立てたり,生活時間の目安をつくったりすること

・ 長さの見当付けを基に,本棚の1列に本をだいだい何冊程度収納することができるか見積もること

・ 身近な具体物の長さを基に,身の回りのものの大きさを概測すること

--------------------------------

 また,これ以外にも,商品の表示等で示されている単位等に関心をもったり,その単位の仕組みを長さやかさの単位と関連付けて捉えたりすることも,算数の学習と日常生活との関連を深めたり,生かしたりすることになる。

 このように,この領域の学習を日常生活に積極的に活用することで,算数への関心を高め,算数を主体的に学ぶ態度の育成へとつなげることが大切である。

--------------------------------

 その際,様々な具体物について大きさを調べたり,確かめたりする活動を積極的に取り入れて,量の大きさについての感覚を豊かにするよう配慮することや,日常生活の様々な場面と関連付けて量の大きさを比べたり測定したりする活動を行うことも大切である。

--------------------------------

 この領域で育成される資質・能力は,ほかの学年や領域の内容と密接に関わっている。

 測定という操作によって,量が数に置き換えられ,具体的な量の問題が数の計算などによって処理できる。

 つまり量の大きさを表すときは,整数,小数,分数を用いるので,数と計算と関わりがある。

 また,広さ(面積)やかさ(体積)を求める対象として,平面図形や立体図形があるので,図形領域とも関わる。

 
 
→ 小学校算数編 目次
→ 中学校数学編 目次
→ 小学校学習指導要領(2017)目次
→ 学習指導要領ナビ
トップページ