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 事象の変化を捉えて問題解決に生かす資質・能力の中核となるのは,関数の考えである。

 関数の考えとは,数量や図形について取り扱う際に,それらの変化や対応の規則性に着目して,事象をよりよく理解したり,問題を解決したりすることである。

 この考えの特徴は,ある数量を調べようとするときに,それと関係のある数量を見いだし,それらの数量との間にある関係を把握して,問題解決に利用するところにある。

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 関数の考えによって,伴って変わる二つの数量を見いだし,それらの関係に着目し,変化や対応の特徴や傾向を考察できるようにする。

 また,関数の考えは,この領域にとどまることなく,全ての領域の内容を理解したり,活用したりする際に用いられる汎用性を有している。

 従って,関数の考えによって,数量や図形についての内容や方法をよりよく理解したり,それらを活用したりできるようにすることも大切である。

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 関数の考えを生かしていくために,次のようなことに配慮することが大切である。

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 第一に,ある場面での数量や図形についての事柄が,ほかのどんな事柄と関係するかに着目することである。

 例えば,ある数量が変化すれば,ほかの数量が変化するのかどうか。

 ある数量が決まれば,ほかの数量が決まるのかどうか。

 ある図形の要素などが決まれば,ほかの要素や事柄が決まるのかどうか。

 そうした関係に着目することで,二つの事柄の間の依存関係を調べることができるようになる。

 これが,関数の考えの第一歩である。

 その際,考察の対象となる事柄の範囲を明確にすることも大切である。

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 第二に,二つの事柄の変化や対応の特徴を調べていくことである。

 伴って変わる二つの数量の間には,変化や対応の規則性などの関係を見付けられることがある。

 その際,数量やその関係を言葉,図,数,表,式,グラフを用いて表すことで,そのように表現されたものから,さらに詳しく変化の様子や対応の規則性を読み取ることもできるようになる。

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 第三に,上述のようにして見いだした変化や対応の特徴を,様々な問題の解決に活用するとともに,その思考過程や結果を表現したり,説明したりすることである。

 ここでは,用いた方法や結果を見直し,必要に応じて,目的により適したものに改善することもある。

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 関数の考えは,これら一連の過程を通して問題解決に生かされるものである。

 
 

 これは,ある数量の大きさを知りたいとき,その数量を直接考察することが難しい場合などに,他の関係する数量に置き換えて考察できないかと考え,ある数量が他のどんな数量と関係が付けられるかを明らかにしていくことである。

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 第4学年では,加法,減法,乗法,除法のいずれか一つの演算が用いられる具体的な場面において,伴って変わる二つの数量を見いだし,それらの関係に着目する。

 求めたい数量の大きさに対して,その数量を直接調べにくい時などに,それと関係のある他の数量を使って調べられないかと考えて,可能性のある数量を見いだしていく。

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 第5学年では,簡単な場合についての比例の関係や加法と乗法など二つの演算が必要な場面において,伴って変わる二つの数量を見いだし,それらの関係に着目する。

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 第6学年では,日常の事象における伴って変わる二つの数量の関係に考察の対象を広げ,比例の関係にあるものを中心に,伴って変わる二つの数量を見いだし,それらの関係に着目する。

 日常生活で,ある数量を直接調べることが難しい場面において,調べやすく,かつ,その数量と比例の関係にあるとみることのできる別の数量を見いだす。

 厳密に考えれば誤差があり,比例の関係ではないことも考えられるが,比例の関係にあるとみることで,問題を解決する見通しをもつことができる。

 
 

 これは,二つの数量の関係を,表や式,グラフを用いて表現し,また,読み取ることを通して,二つの数量の変化や対応の特徴を見いだしていくことである。

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 第4学年では,変化の様子を表や式,折れ線グラフを用いて表したり,変化の特徴を読み取ったりする基礎的な技能を指導する。

 そして,表や式を用いて,一方が1ずつ増えたときに,他方が1ずつ減る,2ずつ増えるなどの変化の特徴や,和が一定,差が一定,一方を定数倍すると他方になるなどの対応の特徴を見いだす。

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 第5学年では,簡単な場合について比例の関係を指導する。

 そして,簡単な場合についての比例の関係や加法と乗法など二つの演算が必要な場面に関わって,一方が2倍,3倍,…になると,他方も2倍,3倍,…になるなどの変化の特徴や,□=2×△,□=3×△+1などの式で表される対応の特徴を見いだす。

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 第6学年では,比例の関係の意味や性質,また,比例の理解を促すために反比例を指導する。

 そして,比例の関係を用いて問題を解決する場面において,目的に応じて表や式,グラフを用いて,伴って変わる二つの数量の関係を表現して,比例の関係についての変化や対応の特徴を見いだす。

 
 

 二つの数量の関係と別の二つの数量の関係を比べるとは,A,Bという二つの数量の関係と,C,Dという二つの数量の関係どうしを比べることである。

 ここで,比べ方には大きく分けて,差を用いる場合と割合を用いる場合があると考えられる。

 「A君はBさんより3歳年上である。

 CさんはD君より5歳年上である。どちらの方が年齢差があるか。」では,AとBの関係とCとDの関係という二つの数量の関係どうしを,差でみて比べている。

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 一方,比べる対象や目的によって,割合でみて比べる場合がある。

 割合でみるとは,二つの数量を,個々の数量ではなく,数量の間の乗法的な関係でみていくことである。

 例えば,全体の中で部分が占める大きさについての関係どうしや,部分と部分の大きさの関係どうしを比べる場合は,割合でみていく。

 「シュートのうまさ」を,「シュートした数」と「入った数」という全体と部分の関係に着目して比べる場合などである。

 また,速さを比べる場合のように,距離と時間などの異種の量についての関係どうしを比べる場合も,割合でみていくことになる。

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 二つの数量の関係どうしを割合でみて比べる際は,二つの数量の間に比例関係があることを前提としている。

 二つの数量の関係と別の二つの数量との関係が同じ割合,あるいは,同じ比であることは,問題にしている二つの数量について,比例の関係が成り立つことが前提となっている。

 上述の「シュートのうまさ」の例で言うと,0.6の割合で入る「うまさ」というのは,10回中6回入る,20回中12回入る,30回中18回入る…などを,「同じうまさ」という関係としてみていることを表している。

 また,二つの液体AとBを2:3の比で混ぜ合わせてできる「液体の濃さ」も同様である。

 そして,この前提に基づいて,数量の関係どうしを比べたり,知りたい数量の大きさを求めたりしている。

 このように,割合では,個々の数量そのものではなく,比例関係にある異なる数量を全て含めて,同じ関係としてみている点が特徴である。

 
 

 これは,日常の事象において,割合でみてよいかを判断し,二つの数量の関係に着目することである。

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 第4学年では,日常の事象において,比べる対象を明確にし,比べるために必要な二つの数量を,割合でみてよいかを判断する。

 そして,一方を基準量としたときに,他方の数量である比較量がどれだけに相当するかという数量の関係に着目する。

 第4学年では特に,基準量を1とみたときに,比較量が,基準量に対する割合として2,3,4などの整数で表される場合について扱う。

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 第5学年では,割合が小数で表される場合や,異種の二つの量の割合として捉えられる数量の関係の指導を通して,二つの数量の関係に着目する力を伸ばす。

 また,百分率を用いた割合の表し方,単位量当たりの大きさによる比べ方の指導を通して,基準量やその大きさの決め方について判断し,比べ方の見通しをもてるようにする。

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 第6学年では,比の意味や表し方の指導を通して,二つの数量の関係を,割合でみてよいかを判断し,どちらか一方を基準にすることなく,簡単な整数の組としての両者の関係に着目できるようにする。

 
 

 これは,図や式を用いて数量の関係を表したり,表された関係を読み取ったりしていくことで,割合や比を用いて数量の関係どうしを比べることである。

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 第4学年では,日常生活の場面で,二つの数量の組について,基準量をそれぞれ決め,基準量を1とみたときに,比較量がどれだけに当たるかを,図や式で表す。

 そして,個々の数量の大きさと混同することなく,割合を用いて,数量の関係どうしを比べ,考察していく。

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 第5学年では,日常の事象について,図や式を用いて,基準量,比較量などの数量の関係を明瞭,的確に表したり,表現されたものから,これらの数量の関係を適切に読み取ったりして,数量の関係どうしを比べていく。

 また,異種の二つの量の割合として捉えられる数量の関係を,目的に応じて,一方の量の大きさを揃えて他方の量で比べる。

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 第6学年では,比の値や比の相等,等しい比をつくることの指導を通して,図や式を用いて,比を表現し,表現された図や式から,数量の関係を読み取って比べることができるようにする。

 また,表した二つの数量の間にある比例関係を使って,数量の関係を比べたり,知りたい数量の大きさを求めたりする。

 
 

 これは,変化や対応の特徴を考察した結果,見いだされた規則性などを,問題の解決や日常生活に生かしていくことである。

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 第4学年では,加法,減法,乗法,除法のいずれか一つの演算が用いられる具体的な場面において,一方が1ずつ増えたときに,他方が1ずつ減るなどの変化の特徴,和が一定,差が一定などの対応の特徴を適用して,求めたい数量についての結果を導いていく。

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 第5学年では,簡単な場合についての比例の関係や加法と乗法など二つの演算が必要な場面について,見いだした変化や対応についての特徴を適用して,求めたい数量についての結果を導く。

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 第6学年では,日常生活で,比例の関係を用いて効率的に解決する場面において,比例の関係についての変化や対応の特徴を,問題の解決に生かす。

 また,比例の関係を用いた問題解決の方法について指導する。

 
 

 これは,二つの数量の関係どうしを割合や比で比べた結果を,日常生活での問題の解決に生かしていくことである。

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 第4学年では,基準量の異なる二つの数量の関係どうしを,2,3,4などの整数で表される割合を用いて比べる場面で,得られた割合の大小から判断をしたり,割合を用いて計算をした結果から問題を解決したりする。

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 第5学年では,全体と部分,あるいは,部分と部分の関係どうしを考察する場面,異種の二つの量の関係どうしを比べる場面で,得られた割合の大小や単位量当たりの大きさから判断をしたり,それらを使って計算をした結果から問題を解決したりする。

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 第6学年では,部分と部分の関係どうしを考察したり,数量を配分したりする場面などで,数量の関係を比で表現し,等しい比をつくるなどして考察した結果を活用して,判断をしたり,問題を解決したりする。

 
 
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