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 目的に応じてデータを収集,分類整理し,結果を適切に表現するとは,統計的な問題解決活動を指しているが,統計的な問題解決活動においては,

 「問題−計画−データ−分析−結論」

 というような段階からなる
 統計的探究プロセス
 と呼ばれるものがある。

問題 ・ 問題の把握
・ 問題設定
計画 ・ データの想定
・ 収集計画
データ ・ データ収集
・ 表への整理
分析 ・ グラフの作成
・ 特徴や傾向の把握
結論 ・ 結論付け
・ 振り返り

 

 統計的探究プロセスとは,

 元々の問題意識や解決すべき事柄
 に対して,
 統計的に解決可能な問題を設定し,

 設定した問題に対して
 集めるべきデータと集め方を考え,

 その計画に従って
 実際にデータを集め,
 表などに整理した上で,

 集めたデータに対して,
 目的やデータの種類に応じて
 グラフにまとめたり,
 統計量を求めるなどして
 特徴や傾向を把握し,

 見いだした特徴や傾向から
 問題に対する結論を
 まとめて表現したり,
 さらなる課題や活動全体の改善点を
 見いだしたりする

 という一連のプロセスである。

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 これら一連のプロセスは「問題」から「結論」に向けて一方向に進んでいくものではなく,計画を立てながら問題を見直して修正を加えてみたり,グラフを作り直して分析したり,ときにはデータを集め直したり,相互に関連し,行き来しながら進むものである。

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 低学年の学習においては,「問題」や「計画」,「結論」の部分はそれほど重く扱わず,児童にとって身近な題材に注目し,関係するデータを整理しながらデータの特徴を捉えることを中心に行う。

 中学年の学習から,身近な題材から問題を設定する活動や,その問題に対して集めるべきデータとその集め方などについても徐々に扱っていくものとする。

 高学年では,一連の統計的探究プロセスを意識し,自分たちで問題を設定し,調査計画を立てることや,分析を通じて判断した結論についても別の観点から妥当性を検討できるようにすることも扱う。

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 統計的な問題解決は様々な分野で用いられるようになってきており,統計は社会における必須のツールとなってきている。

 他教科の学習や児童の生活に関わる事柄でも統計的な問題解決は用いることができるため,そのよさを感じて,進んで学習や生活に生かそうとする態度も養う。

 
 

 統計において扱うデータには,性別や血液型など文字情報として得られる「質的データ」と,身長やハンドボール投げの記録のように数値情報として得られる「量的データ」,各月の平均最高気温などのように時間変化に沿って得られた「時系列データ」がある。

 データの種類によって分類整理の仕方や用いるグラフなど異なってくるため注意が必要である。

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 低学年においては,質的データを中心に扱い,各データの個数を集計する活動が主であるが,

 第3学年では,質的データを集計し表やグラフに表したり,量的データをグラフに表したりする。

 第4学年では時系列データも扱うようになり,時間経過に伴う変化や傾向についても分析を行う。

 第5学年では質的データや量的データに対して割合の観点から分析を行い,

 第6学年では量的データに対して分布の中心やばらつきの様子を分析する。

 第4学年から,データの種類や目的に応じた適切な分類整理やグラフの表し方についても扱う。

 
 

 データが集められても言葉や数値などの情報がそのまま羅列されているだけの状態からでは特徴や傾向を把握することは難しい。

 要点を端的に把握するためにも,またグラフなどに表すためにも表に整理することは大切である。

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 第2学年では,身の回りにある事柄に関する質的データを集計して表に表したり,読み取ったりすることを指導する。

 第3学年では,観点を定めてデータを分類整理し,簡単な二次元の表にまとめたり,表を読み取ったりすることを指導する。

 第4学年では,二つの観点からデータを分類整理し,二次元の表に表したり,読み取ったりすることを指導する。

 第6学年では,量的データに対して度数分布表に表したり,読み取ったりすることを指導する。

 
 

 データをグラフに表すことによって,特徴や傾向について図的表現を介して捉えやすくなるため,統計的な分析をするには欠かせないものとなっている。

 一方で,グラフによる特徴や傾向の捉えやすさから,社会においては,実態とは異なる印象を与え,誤認させるようにグラフが用いられる場合もあるため,読み取る際には注意が必要である。

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 第1学年では,一つ一つのデータを抽象的な絵で表し,それらを整理し揃えて並べることで数の大小を比較する簡単なグラフに表したり,読み取ったりすることを指導する。

 第2学年では,データを○や□などに抽象化して並べる簡単なグラフに表したり,読み取ったりすることを指導する。

 第3学年では,質的データの個数か,あるいは量的データの大きさに相当する長さの棒の長さで違いを示す棒グラフに表したり,読み取ったりすることを指導する。

 第4学年では,時系列データの変化の様子を示す折れ線グラフに表したり,読み取ったりすることを指導する。

 第5学年では,データの割合を示す円グラフや帯グラフに表したり,読み取ったりすることを指導する。

 第6学年では,量的データの分布の様子を示す柱状グラフに表したり,読み取ったりすることを指導する。

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 なお,各学年において学習するグラフは定められているが,統計的な問題解決活動においては,特定の一つのグラフを用いるだけで解決するとは限らないため,目的やデータの種類に応じて,既習のグラフも適宜合わせて用いることが望ましい。

 
 

 量的データの特徴を端的に捉える指標としては代表値が用いられる。

 その意味や求め方について理解し,適切に用いることが重要である。

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 第5学年では,ならす操作としての平均の求め方を考え,測定値の平均の意味につなげる。

 一つのものの測定値の平均は,測定する対象がもつ真の値を予測した数値である。測定には誤差が伴うため,測定した結果が真の値であるとは限らない。

 測定した誤差については,真の値より小さくなることと大きくなることが一般的に等しく起こりやすく,また真の値よりもかけ離れた値は確率的に得にくくなっている。

 このことから,複数回の測定値について平均することで,真の値より小さい値と大きい値とが相殺し合い,1回だけの測定結果よりも真の値に近い値を得ることができる。

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 第6学年では,量的データの全ての値を足し合わせ,データの数で割ることで得られる,ならす操作としての平均が,ばらつきのある対象に対して,分布の中心がどの当たりになるかを示す指標(平均値)としての意味合いをもっていることを理解させる。

 このほか,データを順番に並べた際の真ん中に当たる中央値,データの中で最も多くみられる最頻値の意味や求め方について指導する。

 
 

 算数の授業では,確定した事象を取り扱うことが多い。

 しかし社会における事象には,結果が確定的に定まっていない不確定な事象も多く,そのような事象についても考察の対象として扱っていく。

 小学校で学習する起こり得る場合は中学校で学習する確率へとつながっていくものである。

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 第2学年や第3学年で学習する簡単な表や第4学年で学習する二次元の表に整理することを通じて,どの事柄が起こりやすいのかを捉えることができる。

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 第6学年では,起こり得る場合について落ちや重なりがないように調べる方法について考察することを指導する。

 
 

 統計的な問題解決では,結果が定まっていない不確定な事象を扱うため,データの特徴や傾向を捉えても,結論を断定できない場合や立場や捉え方によって結論が異なってくる場合もある。

 そのため,自分たちが行った問題設定や集めたデータ,表やグラフを用いての分析の仕方など,問題解決の過程や結論について異なる観点や立場などから多面的に捉え直してみたり,誤りや矛盾はないかどうか妥当性について批判的に考察したりすることが重要である。

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 自分たちが行った問題解決活動と結論についてレポートやポスターなどの形式にまとめて発表する活動や,それぞれの問題解決について共有したり議論したりするなどの活動も行うとよい。

 そうすることで表現力を伸ばすことができるとともに,別の観点や立場から捉え直したり,妥当性について考察したりする契機とすることができる。

 また,問題解決活動の体験や共有を通じて統計的な問題解決のよさを感じさせ,他教科等の学習や自分たちの生活においても生かそうとする態度が育成されることも大切である。

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 一方で,統計的な主張はニュースや新聞,雑誌など社会においてもよく触れる機会があるが,調査対象が偏っていたり,本来の特徴や傾向とは異なる印象を相手にもたせるように作られたグラフが用いられたりする場合もあるため,注意深く読み取り,その妥当性について批判的に考察することも大切である。

 
 
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