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(2) 加法及び減法に関わる数学的活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

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ア 次のような知識及び技能を身に付けること。

(ア) 加法及び減法の意味について理解し,それらが用いられる場合について知ること。

(イ) 加法及び減法が用いられる場面を式に表したり,式を読み取ったりすること。

(ウ) 1位数と1位数との加法及びその逆の減法の計算が確実にできること。

(エ) 簡単な場合について,2位数などについても加法及び減法ができることを知ること。

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イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

(ア) 数量の関係に着目し,計算の意味や計算の仕方を考えたり,日常生活に生かしたりすること。

〔用語・記号〕 + − =

 第1学年では,加法及び減法の意味を考えたり,加法及び減法が用いられる場面を式に表したり,式を読み取ったりすることができるようにするとともに,1位数の加法及びその逆の減法の計算ができるようにすることをねらいとしている。

 また,数量の関係に着目し,計算の意味や計算の仕方を考えたりするとともに,それを日常生活に生かそうとする態度を養うことをねらいとしている。

 さらに,簡単な場合についての2位数などの加法及び減法の計算についても加法及び減法ができることを知り,数についての理解を深めることができるようにする。

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 ここで育成される資質・能力は,第2学年の2位数の加法及びその逆の減法などの考察に生かされるものである。

 
 

 加法や減法が用いられる場合として,次のようなものを挙げることができる。

 この学年では,それぞれ(あ),(い),(う)の場合を主として取り上げ,(え)や(お)については,児童の実態に合わせて適宜取り扱うことが考えられる。

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@ 加法が用いられる場合

(あ) ある数量に他の数量を追加したり,ある数量が増加したりしたときの数量の大きさを求める場合(増加)

(い) 同時に存在する二つの数量を合わせた大きさを求める場合(合併)

(う) ある番号や順番から,さらに何番か後の番号や順番を求める場合(順序数を含む加法)

(え) 大小二つの数量の差と小さい方の数量が分かっており,大きい方の数量を求める場合(求大)

(お) 異種のものの数量を,同種のものの数量に置き換えて,二つの数量を合わせた大きさを求める場合(異種のものの数量を含む加法)

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A 減法が用いられる場合

(あ) ある数量から,他の数量を取り去ったり,ある数量が減少したりしたときの残りの数量の大きさを求める場合(求残)

(い) 二つの数量の差を求める場合(求差)

(う) ある順番から,幾つか前の順番を求める場合や,二つの順番の違いを求める場合(順序数を含む減法)

(え) 大小二つの数量の差と大きい方の数量が分かっており,小さい方の数量を求める場合(求小)

(お) 異種のものの数量を,同種のものの数量に置き換えて,二つの数量の差を求める場合(異種のものの数量を含む減法)

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 これらの指導に当たっては,具体的な場面について,児童がどの場合も同じ加法や減法が適用される場として判断することができるようにすることが大切である。

 このように,加法や減法の用いられる場面を次第に一般化して,加法や減法の意味を具体的に捉えることができるようにすることを重視する。

 そして,加法は二つの集合を合わせた集合の要素の個数を求める演算であり,減法は一つの集合を二つの集合に分けたときの一方の集合の要素の個数を求める演算であることについて,具体物を用いた活動などを通して理解できるようにすることが大切である。

 
 

 加法や減法が用いられる具体的な場面を,+や−の記号を用いた式に表したり,それらの式を具体的な場面に即して読み取ったり,式を読み取って図や具体物を用いて表したりすることができるようにする。

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 式は,具体的な場面の数量の関係を簡潔に表現したり,答えを求める過程を表現したりするものとして捉えられ,算数・数学固有の表現として重要なものである。

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 式を読み取るとは,式からそれに対応する具体的な場面や数量の関係を捉えることである。そこから,言葉や図や具体物を用いて表すことができるようになる。

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 指導に当たっては,加法や減法の式を,教室や学校の中での具体物や実生活での具体的場面に結び付けることができるようにするために,
それらの式で表される場面を探して言葉や絵や図を用いて表したり,実生活で探した数量について式に表したり,問題づくりをしたりすることが考えられる。

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 例えば,あさがおの種について,昨日取れた個数と今日取れた個数を合わせた個数を求めることを,加法の式で表すことができる。

 また,8−3=5の式から,
 「砂場で8人の子供が遊んでいます。
  3人の子供が帰りました。
  子供は5人になりました。」
 というような場面をつくることができる。

 さらに,6−3+7の式からは,
 「りすが6ぴきいます。
  3びき帰りました。
  そこへ7ひき遊びに来ました。
  りすは全部で何びきになりましたか。」
 などの問題をつくり,
 絵を用いて表すこともできる。

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 このような指導により,式についての理解を深め,式と具体的な場面とを結び付けられるようにする。

 
 

 1位数と1位数との加法とその逆の減法については,和が10以下の加法及びその逆の減法と,和が10 より大きい数になる加法及びその逆の減法に分けて考える。

 和が10 より大きい数になる加法及びその逆の減法は,「10 とあと幾つ」という数の見方を活用して計算する。

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 いずれの場合もその後の加法や減法の計算の基礎となる重要な内容である。

 指導に当たっては,具体物を用いた活動などを通して計算の仕方の理解を確実にするとともに,計算に習熟し,活用できるようにすることが大切である。

 
 

 2位数の加法,減法についても,1位数の場合と同様に,加法,減法が用いられることを理解するとともに,数についての理解を一層深めることをねらいとしている。

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 簡単な場合とは,次のようなものである。

@ 十を単位としてみられる数の加法,減法

 ここでの十を単位としてみられる数の加法及び減法とは,例えば,20+40 や70−30 のことである。

 これらの計算は,十を単位とした数の見方に関連させると,それぞれ,2+4,7−3 を基にして求めることができる。

 なお,和が100を超えるような計算は第2学年で扱う。

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A 繰り上がりや繰り下がりのない2位数と1位数との加法,減法

 ここでの2位数と1位数との加法及び減法とは,例えば,13+4 や 20+5 のような繰り上がりのない加法,15−2 や 38−8 のような繰り下がりのない減法である。

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 このような簡単な場合について,2位数を含む加法及び減法を指導することで,1位数までの計算の理解を確実にしていくだけでなく,2位数までの数の理解もより確実にしていくようにする。

 
 

 具体的な場面に基づいて,数量の関係に着目し,計算の意味を考えることをねらいとしている。

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 指導に当たっては,アの(ア)で示した加法及び減法が用いられる場合について,具体物や図を用いて表したりすることを通して,数量の関係を捉え,児童がどの場合も,同じ加法や減法が用いられる場として,判断できるようにすることが大切である。

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 例えば,
 「太郎さんは,前から8番目にいます。
  太郎さんの後ろに7人います。
  全部で何人いるでしょう。」
 という問題について,
 図を用いて表すと次のようになる。

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 この場合,図の右のように,太郎が8番目にいるということは,太郎がいるところまでの人数は8人であり,同時に存在する二つの数量を合わせた大きさを求める場面と数量の関係が同じとみて,8+7というように加法の式に表すことができる。

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 このように,具体的な場面について,具体物や図を用いたりして表すことを通して,順序数を含む場面でも,数量の関係を捉え直すことで加法や減法が用いられる場合として判断することができるようにするとともに,日常の事象から,加法,減法の場面を見いだし,計算の意味と結び付けて解決していこうとする態度を養うことが大切である。

 
 

 加法及び減法の計算の仕方を考える場合,既習の数の見方や計算の仕方を活用することで,未習の計算の仕方を見付け出していくことができる。

 その際,今までの計算と違うところはどこか,どういう数なら今までの計算が使えるかを考えさせることが大切である。

 例えば,和が10 より大きい数になる加法及びその逆の減法は,「10 とあと幾つ」という数の見方や計算の意味に着目し,数を分解して足したり,引いたりすることで,既習の計算が使えるようになる。

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 加法の場合には様々な計算の仕方が考えられる。

 その主なものとしては,加数を分解する場合と被加数を分解する場合がある。

 例えば,8+7 の場合,加数の7を分けて(8+2)+5 としたり,被加数の8を分けて5+(3+7)としたりして,数を分解して加えて10 をつくり,10 と5で15 と計算する。

@ 7を2と5に分ける。
  8に2を足して10 になる。
  この10 と5で15 になる。

A 8を5と3に分ける。
  3に7を足して10 になる。
  この10 と5で15 になる。

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 また,減法の場合にも様々な計算の仕方が考えられる。

 その主なものとしては,被減数の分解の仕方によって二通り考えられる。

 例えば12−7の場合,減加法では(10−7)+2のように10 から7を引いて,残り2を加える。

 減々法は,(12−2)−5のように順々に引いていく方法である。

 ブロックなどを操作する活動を取り入れるならば,10 のまとまりから取っていく方法と,端数から取っていく方法の違いになる。

 どちらを主にして指導するかは,数の大きさに従い柔軟に対応できるようにすることを原則とするが,児童の実態に合わせて指導することが大切である。

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 このように,新たな計算に出合ったときに,既に知っている計算で求めることができるよう,数の見方を工夫して解決しようとする態度や問題解決した過程や結果を具体物や図などを用いて表現し伝え合い,互いの考えを理解しようとする態度を養い,第2学年以降で計算の仕方を考える際に生かしていけるようにする。

 日常生活の場面では,第1学年で学習する加法や減法が用いられる場面が多く存在する。

 このようなときに,加法や減法の式に表すことでそのよさに気付かせ,加法や減法を日常生活に活かそうとする態度を養うことが大切である。

 
 
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