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(3) 乗法に関わる数学的活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

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ア 次のような知識及び技能を身に付けること。

(ア) 乗法の意味について理解し,それが用いられる場合について知ること。

(イ) 乗法が用いられる場面を式に表したり,式を読み取ったりすること。

(ウ) 乗法に関して成り立つ簡単な性質について理解すること。

(エ) 乗法九九について知り,1位数と1位数との乗法の計算が確実にできること。

(オ) 簡単な場合について,2位数と1位数との乗法の計算の仕方を知ること。

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イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

(ア) 数量の関係に着目し,計算の意味や計算の仕方を考えたり計算に関して成り立つ性質を見いだしたりするとともに,その性質を活用して,計算を工夫したり計算の確かめをしたりすること。

(イ) 数量の関係に着目し,計算を日常生活に生かすこと。

〔用語・記号〕   ×

(内容の取扱い)

(4) 内容の「A数と計算」の(3)のアのウについては,主に乗数が1ずつ増えるときの積の増え方や交換法則を取り扱うものとする。

 第1学年では,加法の意味について理解することや,その計算の仕方を考えることを指導してきた。

 また,第2学年では,数のまとまりに着目し,数を2ずつ,5ずつなどの同じ大きさの集まりにまとめて数えることを指導してきている。

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 第2学年では,乗法が用いられる実際の場面を通して,乗法の意味について理解できるようにする。

 また,この意味に基づいて乗法九九を構成したり,その過程で乗法九九について成り立つ性質に着目したりするなどして,乗法九九を身に付け,1位数と1位数との乗法の計算が確実にできるようにするとともに,計算を生活や学習に活用する態度を養うことをねらいとしている。

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 なお,ここでの学習の内容は,第3学年の多数桁の乗法や除法の学習の素地となるものである。

 
 

 乗法は,一つ分の大きさが決まっているときに,その幾つ分かに当たる大きさを求める場合に用いられる。

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 例えば,「1皿に5個ずつ入ったみかんの4皿分の個数」を求めることについて式で表現することを考える。

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 「5個のまとまり」の4皿分を加法で表現する場合,5+5+5+5と表現することができる。

 また,各々の皿から1個ずつ数えると,1回の操作で4個数えることができ,全てのみかんを数えるために5回の操作が必要であることから,4+4+4+4+4という表現も可能ではある。

 しかし,5個のまとまりをそのまま書き表す方が自然である。そこで,「1皿に5個ずつ入ったみかんの4皿分の個数」を乗法を用いて表そうとして,一つ分の大きさである5を先に書く場合5×4と表す。

 このように乗法は,同じ数を何回も加える加法,すなわち累加の簡潔な表現とも捉えることができる。

 言い換えると,(一つ分の大きさ)×(幾つ分)=(幾つ分かに当たる大きさ)と捉えることができる。

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 また乗法は,幾つ分といったことを何倍とみて,一つ分の大きさの何倍かに当たる大きさを求めることであるという意味も,併せて指導する。

 このときも,一つ分に当たる大きさを先に,倍を表す数を後に表す場合,「2mのテープの3倍の長さ」であれば2×3と表す。

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 なお,海外在住経験の長い児童などへの指導に当たっては,「4×100mリレー」のように,表す順序を日本と逆にする言語圏があることに留意する。

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 ここで述べた被乗数と乗数の順序は,「一つ分の大きさの幾つ分かに当たる大きさを求める」という日常生活などの問題の場面を式で表現する場合に大切にすべきことである。

 一方,乗法の計算の結果を求める場合には,交換法則を必要に応じて活用し,被乗数と乗数を逆にして計算してもよい。

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 乗法による表現は,単に表現として簡潔性があるばかりでなく,我が国で古くから伝統的に受け継がれている乗法九九の唱え方を記憶することによって,その結果を容易に求めることができるという特徴がある。

 
 

 乗法が用いられる具体的な場面を,× の記号を用いた式に表したり,その式を具体的な場面に即して読み取ったり,式を読み取って図や具体物を用いて表したりすることを重視する必要がある。

 その際,乗法の式から場面や問題をつくるような活動も,乗法についての理解を深め,式を用いる能力を伸ばすために大切である。

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 式に表す指導に際しては,「1皿に5個ずつ入ったみかん4皿分の個数」というような文章による表現,○やテープなどの図を用いた表現,具体物を用いた表現などと関連付けながら,式の意味の理解を深めるとともに,記号×を用いた式の簡潔さや明瞭さを味わうことができるようにする。

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 式を読み取る指導に際しては,例えば,3×5の式から,

 「プリンが3個ずつ入ったパックが
  5パックあります。
  プリンは全部で何個ありますか。」

という問題をつくることができる。

 このとき,上で述べた被乗数と乗数の順序が,この場面の表現において本質的な役割を果たしていることに注意が必要である。

 「プリンが5個ずつ入ったパックが
  3パックあります。
  プリンは全部で幾つありますか。」

という場面との対置によって,被乗数と乗数の順序に関する約束が必要であることやそのよさを児童が理解することが重要である。

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 このようにかけ算の式を具体的な場面と関連付けるようにすること,さらに,読み取ったことを,○などの図を用いたり,具体物を用いたりして表現することが,式を読み取る能力を伸ばすためには大切である。

 
 

 「内容の取扱い」の(4)で「主に乗数が1ずつ増えるときの積の増え方や交換法則を取り扱うものとする」と示されているように,ここでは,乗法に関して乗数が1増えれば積は被乗数分だけ増えるという性質や,乗法についての交換法則について児童が自ら調べるように指導する。

 乗法九九を構成するときに乗数が1増えれば積は被乗数分だけ増えること,乗法についての交換法則などを活用し,効率よく乗法九九などを構成したり,計算の確かめをしたりすることも大切である。

 ここで「主に」と書かれているのは,児童の実態に応じて,図などと関連付けながら,乗法についての結合法則や分配法則に基づいた考えに触れてもよいことを意味している。

 
 

 乗法九九は,以後の学年で取り扱う乗法や除法の計算の基盤となるものとして必要なものである。

 したがって,乗法九九を構成したり理解したりする際には,体験的な活動や身近な生活体験などと結び付けるなどして指導の方法を工夫することが重要である。

 また,どの段の乗法九九についても十分に習熟し,確実に計算することができるようにするとともに,それらを生活や学習に活用することが大切である。

 乗法九九を生活や学習の場面で活用することによっても,技能の習熟が図られる。

 
 

 簡単な場合についての2位数と1位数との乗法として,12 程度までの2位数と1位数との乗法を指導する。

 その計算の仕方については,乗法九九を基にして,乗数が1増えれば積は被乗数分だけ増えるという性質を用いるなどして説明することができる。

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 4に2位数をかける乗法の計算を
 例に挙げると,まず,

 4の段の乗法九九の4×9=36 から,
 4×10=40(36 より4だけ増える)
 となることが分かる。

 さらに,
 4×11=44(40 より4だけ増える),
 4×12=48(44 より4だけ増える)
 のようにして
 積を求めることができる。

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 また,
 10×4は,
 10 が4つあることから,
 40 になると分かる。

 さらに,
 11×4=11+11+11+11=44,
 12×4=12+12+12+12=48
 となることが,
 乗法の意味から求められる。

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 このような簡単な場合の2位数と1位数との乗法の計算の仕方を考えることは,第3学年において,2位数や3位数などの乗法の計算の仕方を考える上での素地的な学習となるものである。

 
 

 乗法における数量の関係に着目し,児童が自ら乗法の意味について考えたり,乗法九九を構成したりしながらそれらを身に付けていくことが大切である。

 例えば,「4皿に3個ずつみかんが乗っている」場面を式に表す際,乗法の意味に基づいて 3×4 と表すことを考えることがある。

 また,3の段の九九の計算の仕方について,3×5を3+3+3+3+3=15 のように乗法の意味に基づいて構成したり,3×4の積12 に3を加えることで求めたりするのである。

 こうした方法を後で学習する4の段などの九九の構成に生かしていくことが大切である。

 
 

 数量の関係に着目し,乗法に関して成り立つ性質などを見いだすことができるようにする。

 例えば,児童が3の段の乗法九九の構成を通して「かける数が1増えれば答えは3ずつ増える」ということを見付けることがある。

 このことについて,ほかの段の乗法九九でも同様なことが言えるのかを,乗法九九の表を構成したり,完成した乗法九九の表を観察したりして調べ,帰納的に考えて「乗数が1増えれば積は被乗数分だけ増える」という計算に関して成り立つ性質を見付けることができる。

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 また,児童が乗法九九の構成を通して「3×4」と「4×3」の答えが同じ12 になることを見付ける場合がある。

 このことについても,幾つかの場合から帰納的に考えて「乗数と被乗数を交換しても積は同じになる」という計算に関して成り立つ性質を見付けることができる。

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 なお,乗法九九の表における数量の関係に着目すると,児童が見いだすきまりは,例えば,3の段と4の段の和が7の段になること,1×1,2×2,3×3,…というように同じ数どうしをかける計算は斜めに並んでいることなど,様々である。

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 乗法九九を構成したり観察したりすることを通して,乗法九九の様々なきまりを見付けるように指導することは,児童が発見する楽しさを味わうことにつながるものである。

 
 

 乗法に関して成り立つ性質を用いると,
 計算の工夫や確かめを
 することができる。

 例えば,3×9については,
 3の9個分を求めるために,
 累加で求めてもよいが,
 交換法則を認めれば

 3×9=9×3=9+9+9=27

 と求めることもできる。

 

 また,ある九九を忘れたり曖昧だったりする場合,交換法則や乗法に関して成り立つ性質を用いて,知っている九九を手がかりに,積を再構成することができる。

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 また,図を基に5×4と3×4を合わせると8×4になることから,8×5や8×6も同じようにできるのではないかと考えて,計算の工夫をしたり確かめをしたりすることもできる。

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 こうした計算の工夫や確かめは,ここでの乗法だけでなく,後の学年で指導する乗法の計算の仕方を考えるときにも活用していくことができる。

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 このように,数量の関係に着目し計算について考えることによって,計算が簡単になったり,計算の確かめをしたりすることができるという数学のよさに気付き,これらの方法を学習に活用しようとする態度を養うことが大切である。

 
 

 身の回りには,同じ個数のものの集まりが多くある。

 これらの数を知りたいとき,乗法を活用することで,その数を簡単に知ることができる。

 靴箱の数や,教室の絵画や習字の作品の数など,長方形のように配列されたものの数は数えることによってではなく乗法で求めることができるという,乗法や乗法九九のよさを味わわせ,日常生活で生かそうとする態度を養うことが大切である。

 
 
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