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(4) 除法に関わる数学的活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

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ア 次のような知識及び技能を身につけること。

(ア) 除法の意味について理解し,それが用いられる場合について知ること。

 また,余りについて知ること。

(イ) 除法が用いられる場面を式に表したり,式を読み取ったりすること。

(ウ) 除法と乗法や減法との関係について理解すること。

(エ) 除数と商が共に1位数である除法の計算が確実にできること。

(オ) 簡単な場合について,除数が1位数で商が2位数の除法の計算の仕方を知ること。

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イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

(ア) 数量の関係に着目し,計算の意味や計算の仕方を考えたり,計算に関して成り立つ性質を見いだしたりするとともに,その性質を活用して,計算を工夫したり計算の確かめをしたりすること。

(イ) 数量の関係に着目し,計算を日常生活に生かすこと。

〔用語・記号〕 ÷

 第2学年では,乗法について,数量の関係に着目し,乗法の意味や計算の仕方を考えたり計算に関して成り立つ性質を見いだしたりするとともに,その性質を活用して,計算を工夫したり計算の確かめをしたりすることなどを指導してきている。

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 第3学年では,第2学年での学習の上に,乗法の逆算である除法について学習する。

 除法の意味および除法と乗法や減法の意味について理解させるとともに,除数と商が共に1位数である除法の計算を学習する。

 このとき,計算の仕方を形式的に知るだけでなく,除法の計算の仕方を主体的に考えたり,計算に関して成り立つ性質を見いだし,その性質を計算の工夫や確かめに活用するとともに,日常生活に生かす態度を育むことが大切である。

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 ここで育成される資質・能力は,第4学年で学習する多数桁の除法,小数の除法,及び真分数を帯分数で表現することなどの考察に生かされるものである。

 
 

 除法が用いられる具体的な場合として,大別すると次の二つがある。

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 一つは,ある数量がもう一方の数量の幾つ分であるかを求める場合で,包含除と呼ばれるものである。

 他の一つは,ある数量を等分したときにできる一つ分の大きさを求める場合で,等分除と呼ばれるものである。

 なお,包含除は,累減の考えに基づく除法ということもできる。

 例えば,12÷3 の意味は,12個のあめを1人に3個ずつ分けて何人に分けられるかを求めること(包含除)と,12個のあめを3人に同じ数ずつ分けて一人何個になるかを求めること(等分除)がある。

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 第2学年において乗法は,(一つ分の大きさ)×(幾つ分)=(幾つ分かに当たる大きさ)と捉えていたが,このとき(一つ分の大きさ)を求める場合が等分徐で,(幾つ分)を求めることが包含徐であると捉えることができる。

 このようなことを通して,除法が乗法の逆算であることを捉えられるようにしていく。

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 包含除と等分除を比較したとき,包含除の方が操作の仕方が容易であり,「除く」という意味に合致する。

 また,「割り算」という言葉の意味からすると等分除の方が分かりやすい。

 したがって,除法の導入に当たっては,これらの特徴を踏まえて取り扱うようにする必要がある。

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 なお次に述べるように,包含徐と等分除を統合的に捉えることも大切である。

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 例えば,
 12個のものを3人に等しく分ける
 という等分除の操作において,
 まず1人に1個ずつ配ると
 3個必要になり,
 もう一度1個ずつ配ると
 3個必要になる…

 というように
 等分徐の操作を行うとき,
 この操作は,
 包含徐の12個のものを
 3個ずつ配ることができる回数
 とみることができる。

 このことから,
 どちらも同じ式で表すことができる
 ことが分かるようにする。

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 また,第2学年の乗法が用いられる場合として,倍に当たる大きさを求める場合があることを学習している。

 ここでは,倍に当たる数値などが整数である場合について,ある数量がもう一方の数量の何倍かを求める場合や基にする大きさを求める場合に除法が用いられることも指導する。

 その際,図などを基にして,何倍かを求める場合は,幾つ分を求める場合(包含徐)とも考えられ,基にする大きさを求める場合は,一つ分の大きさを求める場合(等分徐)であると考えられることから,演算として同じ除法を用いるなど,既習の除法の意味と関連付けて理解できるようにすることが大切である。

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 除法が用いられる場合として,ほかに,例えば,重さが4sで長さが2mである棒の1mの重さを求める場合,2sで400円のものの1sの値段を求める場合など,一人分を求める場合でなく,比例関係を仮定できる,伴って変わる二つの数量がある場合にも用いられる。

 第4学年などで,このような場合も図を用いるなどして等分徐や包含除とみられることに気付かせ,除法が用いられることを理解できるようにしていく。

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 また,
 除法には割り切れない場合があり,
 その場合には余りを出すことを
 指導する。

 例えば
 「13枚のカードを1人に4枚ずつ配る」
 場面や
 「13枚のカードを4人に同じ枚数ずつ
  分ける」場面で,

 13÷4 は
 4×□ や □×4 が
 13以下で13に最も近くなるときの
 整数□とそのときの余り
 を求めること,

 つまり整数の除法 13÷4 は,
 カードを分ける操作で
 最大の回数や
 1人当たりの最大の枚数
 を求めることに当たっていること,

 そしてそのときの余りの大きさは
 除数よりも
 小さくならなければならないこと
 などについて理解できるようにする。

 
 

 第3学年では,除法が用いられる場合の記号÷を用いた式について理解できるようにする。

 指導に当たっては,これまでの加法,減法及び乗法と同様に,数量の関係を式に表したり,式を読み取ったりすることを重視することが大切である。

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 式に表す指導に際しては,「12個のあめを3人に同じ数ずつ分ける」というような言葉(文章)による表現,○やテープなどの図を用いた表現,具体物を用いた操作などと関連付けながら,式の意味の理解を深めるとともに,記号÷を用いた式の簡潔さや明瞭さを味わうことができるようにする。

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 また,式を読み取るとは,式から具体的な数量の関係を捉えることである。

 例えば,15÷3 の式から「みかんが15個あります。

 一人に3個ずつ分けると何人に分けられますか。」というような問題場面を見いだすことができる。

 このように,式と具体的な場面を関連付けるようにすることが大切である。

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 また,言葉や図などと関連付けながら,「乗法における乗数や被乗数が,除法における除数に相当する」など,除法の式の意味を乗法の式の意味との関係から捉えていくことができるようにすることも大切である。

 
 

 除法は,ある数量から,一定の大きさの数量を取り去るときの最大の回数を求める場合(累減)とも考えることができる。

 例えば,
 12÷3 の答えは,
 12−3−3−3−3=0 となるときの
 3の個数
 とも考えられる。

 この考えは包含除と捉えることもできる。

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 また,除法は,乗法の逆算ともみられる。

 そこで,乗法と関連させて,被乗数,乗数のいずれを求める場合に当たっているかを明確にすることも大切である。

 等分除は,□×3=12 の□を求める場合であり,包含除は 3×□=12 の□を求める場合である。

 
 

 除数と商が1位数の場合の除法を指導する。

 例えば,48÷6 や 13÷4など,乗法九九を1回用いて商を求めることができる計算である。

 こうした計算は,今後指導する商が2位数の除法及び小数の除法の計算のためにも必要であり,確実に身に付けておく必要がある。

 
 

 除数と商が1位数の場合の除法を活用して,簡単な場合についての除数が1位数で商が2位数の除法についても指導する。ここでは次のような簡単な場合についての計算を指導する。

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 一つは,80÷4や90÷3のように,被除数が何十で,被除数の十の位の数が除数で割り切れる計算である。

 80÷4の場合,児童自らが80 を「10 が8個」と捉え,その「8個」を4で割ると答えは「10 が2個」というように単位の考えに基づいて考えることが大切である。

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 もう一つは,被除数が2位数で,69÷3のように,十の位の6と一の位の9がそれぞれ除数の3で割りきれる除法である。

 69÷3の場合,単位の考えによる60÷3 の計算の仕方の理解に立ち,児童自らが2位数の乗法と同じよう に69 を60 と9に分けて捉えた上で,60÷3=20,9÷3=3として答えは23 と考えることができる。

 こうした計算の仕方を考える指導は,除数と商が1位数の場合の除法の計算技能及び計算の意味の理解を確実なものとし,身に付けた知識及び技能を活用する力の育成を目指す上で重要である。

 
 

 等分除や包含除のそれぞれの場面の問題を,具体物,図で考え,その結果を確かめたり,それを表現し伝え合ったりする活動を通して,除法は乗法の逆算とみることができることに気付き,計算の仕方を考えることができる。

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 例えば,12個のものを3個ずつ分けて,分けられた回数を求める場合(包含除)は,分けられた回数を□とすると,3×□=12 の□を求めることと同じである。

 また,12個のものを3人で分けて,一人分の数を求める場合(等分除)は,一人分の数を□とすると,□×3=12 の□を求めることと同じである。

 先に述べたように,等分徐の操作は包含徐の操作としてもみることができるので,どちらの場合も,12÷3 の計算が3の段の乗法九九を用いて能率的に求めることができる。このようなことを考えることができるようにすることがねらいとなる。

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 また,80÷4 を 8÷4 と考えて計算したり,84÷2 を 80÷2 と 4÷2 と分けて計算したりすることは,計算に関して成り立つ性質を活用して計算を工夫することである。

 このとき,計算に関して成り立つ性質を基に式で考えるだけでなく,図などを用いて考えることは,計算に関して成り立つ性質に気付くことにつながる。

 上で述べたように,除法の計算は乗法によって求めることができる。

 除法の計算によって得られた商と除数の積が被除数に一致するかどうかを調べることによって,除法の計算の確かめができることを理解させる。

 また,こうした学習は,余りのある除法や小数の除法でも活用されるものであり,ここでの学習において,計算の結果を確かめる態度を育んでおきたい。

 
 

 日常生活において,あるものを何人かで数が等しくなるように分けたり,あるものから同じ数ずつ取り去ったり,同じ数ずつ袋に入れたりすることがある。

 こうした場面で,除法を活用して問題を能率的に解決できることに気付かせることが大切である。

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 また数学的活動で述べるとおり,余りの処理については,商をそのまま答えとできない場合があり,日常生活の場面に即してより適切な答えを考える必要がある。

 
 
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