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(2) 二つの数量の関係に関わる数学的活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

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ア 次のような知識及び技能を身に付けること。

(ア) 簡単な場合について,ある二つの数量の関係と別の二つの数量の関係とを比べる場合に割合を用いる場合があることを知ること。

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イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

(イ) 日常の事象における数量の関係に着目し,図や式などを用いて,ある二つの数量の関係と別の二つの数量の関係との比べ方を考察すること。

 第2学年,第3学年では,「A数と計算」の領域において,乗法,除法の意味について理解する際に,整数を用いた倍の意味についても取り扱い,「基にする量の何倍」という割合の見方の基礎を指導してきた。

 分数の意味においても「もとの大きさの1/2」などを指導している。

 また,「C測定」の領域でも,測定の意味において,単位の幾つ分かを考えており,割合の見方の基礎を指導してきている。

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 第4学年では,割合が2,3,4などの整数で表される簡単な場合について,ある二つの数量の関係と別の二つの数量の関係とを比べる場合に割合を用いる場合があることを知り,図や式などを用いて,二つの数量の関係どうしの比べ方を考察する力を伸ばすことをねらいとしている。

 また,二つの数量の関係に着目することで,数量の大きさに対する感覚をより豊かにすることも大切である。

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 ここで育成される資質・能力は,第5学年の異種の二つの量の割合として捉えられる数量,割合,百分率などの考察に生かされるものである。

 
 

 二つの数量AとBの関係を,割合を用いて比べるとは,二つの数量のうちの一方,例えばBを基準にする大きさ(基準量)としたときに,もう一方の数量であるA(比較量)がどれだけに相当するのかを,A÷Bの商で比べることである。

 この表された数(商)が割合である。割合を表す数は,基準量を単位とした比較量の測定値であるともいえる。

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 ある二つの数量の関係と別の二つの数量の関係とを比べるとは,A,Bという二つの数量の関係と,C,Dという二つの数量の関係どうしを比べることである。

 比べ方には大きく分けて,差でみる場合と割合でみる場合があるが,ここでは,割合でみる場合を扱う。

 二つの数量の関係どうしを割合でみて比べる際には,二つの数量の間の比例の関係を前提としている。

 この前提のもと,個々の数量の差ではなく,数量の間の乗法的な関係でみて,二つの数量の関係どうしを比べる場合があることを知っていく。

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 第4学年では,特に,簡単な場合について,割合を用いて比べることについて指導する。

 簡単な場合とは,二つの数量の関係が,基準とする数量を1とみたときにもう一方の数量が,2倍,3倍,4倍などの整数で表される場合について,二つの数量の関係と別の二つの数量の関係とを比べることを知る程度を指している。

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 例えば,

 「ある店で,
  トマトとミニトマトを値上げしました。
  トマトは1個100円が200円に,
  ミニトマトは
  1個50円が150円になりました。

  トマトとミニトマトでは
  どちらがより多く値上がりした
  といえますか。」

 という問題場面がある。

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 ここでは,例えばトマト1個については「100円が200円に」になっているが,トマトが2個あると「200円が400円に」になっている。

 3個のとき…なども,同時に起こっているとみることが必要である。

 トマトが1個のときも2個のときも,トマトについては,「もとの値段」を基準量とし,その大きさを1とすると,それに対する「値上げした値段」はいつでも2倍になっている。

 つまりトマトは2倍に値上がりしたということができる。

 このように,1個のときでも,2個のときでもいつでも同じ関係が成り立つのは,「もとの値段」と「値上げした値段」の間には比例関係があるからである。

トマト
1個で100円が 200円に
2個で200円が 400円に
3個で300円が 600円に

ミニトマト
1個で 50円が 150円に
2個で100円が 300円に
3個で150円が 450円に

 同様に,ミニトマトは3倍に値上がりしたということができ,従ってミニトマトの方が値上がりしたといえることになる。

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 また,

 「平ゴムAと平ゴムBがあります。
  平ゴムAは,
  50pが150pまで伸びます。
  平ゴムBは,
  100pが200pまで伸びます。
  どちらがよく伸びるゴムといえますか。」

 という問題場面がある。

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 平ゴムAが,50pが150pまで伸びるということは,10pが30pまで伸び,20pが60pまで伸び,…ということである。

 平ゴムBが,100pが200pまで伸びるということは,10pが20pまで伸び,20pが40pまで伸びるということである。

 つまり,ここでも平ゴムAとBについて,「もとの長さ」と「伸びた長さ」の間の割合がいつでも変わらないので,割合で比べることができる。

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 このように,基準とする数量が異なっていても,割合が変わらないとき,割合で比べることができる。

 
 

 日常の事象において,二つの数量の関係と別の二つの数量の関係との比べ方を考察するには,一方を基準量としたときに,他方の数量がどれだけに相当するかという数量の関係に着目することが必要である。

 すなわち,比べる対象を明確にし,比べるために必要な二つの数量について,比例の関係を前提に乗法的な関係でみてよいかを判断し,基準量,比較量という数量の関係に着目する。

 第4学年では,基準量を1とみたときに,比較量が2倍,3倍,4倍などの整数で捉えられる場合について扱い,数量の関係に着目する力を伸ばす。

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 指導に当たっては,比べる際に必要な基準量,比較量に着目しやすくするために,問題としている場面を絵や図で表すことが大切である。

 また,児童は,第2学年,第3学年において,「A数と計算」の領域,「C測定」の領域で,乗法,除法の意味,分数の意味,測定の意味について理解する際に,割合の見方の基礎を学習してきている。

 これらの学習と関連付けて指導をするようにする。

 
 

 ある二つの数量の関係と別の二つの数量の関係を割合を用いて比べるには,まず,これら二つの数量が比例関係にあること確認する。

 そして,それぞれの数量の関係について基準量を決め,基準量を1とみたときに,比較量がどれだけに当たるのかを見いだしていく。

 この過程では,言葉,テープ図や数直線などの図,式などを用いて基準量と比較量を表し,また,表された表現の中から,基準量と比較量を読み取って,割合を求めていくことが必要である。

 第4学年では,基準量を1とみたときに,比較量が2倍,3倍,4倍などの整数で捉えられる場合について,図や式を用いて,数量の関係を明瞭,的確に表したり,それらから数量の関係を適切に読み取って判断したりしていく。

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 なお,児童は,ある二つの数量の関係と別の二つの数量の関係を差で比べることに親しんでいることが考えられる。

 差による比べ方と対比することで,基準とする数量を1とみると他方の数量がどれだけ当たるのかという割合を用いた比べ方の特徴に気付かせることも大切である。

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 下の図は,50pが150pに伸びた平ゴムAと,100pが200pに伸びた平ゴムBを,差でみて比べた場合と,割合でみて比べた場合を示している。

 この場合には,例えば平ゴムBを半分に切ったときのことを考えると,50pが100pに伸びることになるので比例関係が成立する。

 そこで割合で比べてよいことが分かる。

 割合では,基準とする数量が異なっても,それらを1とみて,相対的な大きさで比べていることが分かる。

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 図や式から数量の関係の特徴を読み取って問題を解決していくことを通して,児童が日常生活の中から,割合の関係にある事柄を見付け出そうとする態度が育成されることも大切である。

 
 
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