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(1) 平面図形に関わる数学的活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

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ア 次のような知識及び技能を身に付けること。

(ア) 図形の形や大きさが決まる要素について理解するとともに,図形の合同について理解すること。

(イ) 三角形や四角形など多角形についての簡単な性質を理解すること。

(ウ) 円と関連させて正多角形の基本的な性質を知ること。

(エ) 円周率の意味について理解し,それを用いること。

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イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

(ア) 図形を構成する要素及び図形間の関係に着目し,構成の仕方を考察したり,図形の性質を見いだし,その性質を筋道を立てて考え説明したりすること。

(内容の取扱い)

(2) 内容の「B図形」の(1)については,平面を合同な図形で敷き詰めるなどの操作的な活動を重視するよう配慮するものとする。

(3) 内容の「B図形」の(1)のアの(エ)については,円周率は3.14 を用いるものとする。

 第4学年では,四角形を構成する要素である辺どうしの平行,垂直といった位置関係に加えて,構成する要素どうしの相等関係を基に分類し,平行四辺形,ひし形,台形について学習してきた。

 また,例えば正方形や二等辺三角形を真ん中で二つに切ると,形も大きさも同じ図形ができることを経験してきている。

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 第5学年では,図形を構成する要素及び図形間の関係に着目して,図形の構成の仕方を考えたり,図形の性質について更に考察したりすることをねらいとしている。

 図形の合同については,図形間の関係に着目し,与えられた図形と合同な図形をいかに構成すればよいかを考察する。

 多角形については,図形を構成する辺や角などの要素に着目して図形を弁別する。

 正多角形や円については,図形を構成する要素,並びに,図形を構成する要素の関係に着目することで,図形の性質を考察する。

 具体的には,円では直径と円周の長さに着目する。

 そして,見いだした性質について,筋道を立てて考え説明できるようにする。

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 図形の合同や多角形の角についての性質は,中学校第2学年において更に深めて学習することになる。

 
 

 三角形など簡単な平面図形について,図形が「決まる」という意味を理解し,合同な図形を能率的にかくことができるようにする。

 図形が決まることについては,ふつう,目的とする図形と合同な図形ができることを指している。

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 二つの図形がぴったりと重なるとき,つまり,形も大きさも同じであるとき,この二つの図形は合同であるという。

 二つの図形が合同であるとき,対応する辺や対応する角の大きさは,それぞれ等しい。

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 合同な図形を見付けたり,かいたり,つくったりする活動を通して,図形の形や大きさが一つに決まる要素について理解できるようにする。

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 例えば,
 三角形は,
 三つの辺と三つの角があるが,
 それらの要素を全て用いなくても,

 三つの辺の長さが決まれば
 三角形が一つに定まること,

 二つの辺の長さと
 その間の角の大きさが決まれば
 三角形が一つに定まること,

 一つの辺の長さと
 その両端の角の大きさが決まれば
 三角形が一つに決まること

 について気付いていけるようにする。

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 また,二つの図形が合同かどうか確かめる場合には,全ての辺や角を調べなくてもよいことに,次第に着目させるようにする。

 例えば,

 長方形は
 縦と横の長さが分かれば決まる,

 ひし形は
 二つの対角線の長さが分かれば決まる,

 円は半径の長さが分かれば決まる,

 正方形や正三角形は
 一辺の長さが分かれば決まるなど,

 図形が決まるという観点から
 既習の図形について
 見直しをすることで,
 三角形が合同になる条件に
 気付かせるようにする。

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 その際,三角形の合同条件を覚えさせたり,形式的な推論をさせたりするなど深入りすることのないよう配慮する。

 これらは,中学校第2学年で学習する。

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 また,二つの合同な図形が,ずらしたり,回したり,裏返したりして置かれた場合でも,その位置に関係なく,必要な辺と辺,角と角が対応していることが捉えられるようにする。

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 このような合同の意味を理解し,合同の観点からこれまで学習してきた図形を見直すことも大切である。

 例えば,下の図のように,平行四辺形を対角線によって二つの三角形に分けると,合同な図形ができる。

 また,二つの合同な三角形を組み合わせて平行四辺形ができるし,合同な三角形をかくことで平行四辺形を作図することもできる。

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 また,「内容の取扱い」の(2)では,「平面を合同な図形で敷き詰めるなどの操作的な活動を重視するよう配慮するものとする」と示している。

 合同な三角形,四角形によって平面を敷き詰めることができることを確かめ,敷き詰めた図形の中にほかの図形を認めたり,平行線の性質に気付いたりするなど,図形についての見方や感覚を豊かにすることを指導する。

 
 

 多角形とは,三つ以上の直線で囲まれた図形である。例えば,6本の直線で囲まれた図形を,六角形という。

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 ある図形について,いつでも成り立つような事柄がある。そうしたものを図形の性質という。

 例えば,三角形については,どんな三角形でも,三つの角の大きさを加えると180度になる。

 これは,三角形のもつ性質である。

 また,四角形については,どんな四角形でも,四つの角の大きさを加えると360度になる。

 これは,四角形のもつ性質である。

 この性質は,三角形の三つの角の大きさを加えると180度になるという性質を用いて説明することができる。

 さらに,五角形についても,三角形のこの性質を用いると,五つの角の大きさを加えると540度になることが分かる。

 このように,三角形や四角形など多角形の性質について理解できるようにする。

 
 

 辺の長さが全て等しく,角の大きさが全て等しい多角形を,正多角形という。正三角形や正方形は,正多角形である。

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 正多角形には,円の内側にぴったり入る(円に内接する),円の外側にぴったり接する(円に外接する)などの性質がある。

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 例えば,円に内接する正八角形の頂点と円の中心とを結んでできる八つの三角形は,二等辺三角形であり,全て合同である。

 また,六つの合同な正三角形を一つの頂点が共通になるように並べると,正六角形ができる。

 円周をその円の半径の長さで区切っていくことによってできる形は,半径と等しい長さを一辺にもつ正六角形になる。

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 このように,正多角形について円と組み合わせて作図をしたり,正多角形についての性質を,円の性質と関連付けて理解できるようにする。

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 なお,第3の「指導計画の作成と内容の取扱い」の2の(2)では次のように書かれている。

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 「数量や図形についての感覚を豊かにしたり,表やグラフを用いて表現する力を高めたりするなどのため,必要な場面においてコンピュータなどを適切に活用すること。

 また,第1章総則の第3の1の(3)のイに掲げるプログラミングを体験しながら論理的思考力を身に付けるための学習活動を行う場合には,児童の負担に配慮しつつ,例えば第2の各学年の内容の〔第5学年〕の「B図形」の(1)における正多角形の作図を行う学習に関連して,正確な繰り返し作業を行う必要があり,更に一部を変えることでいろいろな正多角形を同様に考えることができる場面などで取り扱うこと。」

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 これは,正多角形の学習に関連して,児童の負担に配慮し,コンピュータを活用して正多角形の作図をするプログラミングを体験することができることを示している。

 
 

 円については,第3学年で,円の中心,半径,直径などについて指導してきている。

 第5学年では,円周率の意味を指導する。

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 円について直径の長さと円周の長さとの間に何か関係がありそうだと気付かせ,円周の長さは直径の長さの何倍になるかとの見通しを立てさせる。

 例えば,円に内接する正六角形と円に外接する正方形を利用すれば,円周の長さは,正六角形の周りの長さ(半径の6倍)より大きく,正方形の周りの長さ(直径の4倍)より小さいという見通しをもつことができる。

 実際に幾つかの円について,直径の長さと円周の長さを測定するなどして帰納的に考えることにより,どんな大きさの円についても,円周の長さの直径の長さに対する割合が一定であることを理解できるようにする。

 この割合のことを円周率という。

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 円周率を指導することにより,直径の長さから円周の長さを,また,逆に円周の長さから直径の長さを計算によって求めることができるなど,直径の長さ,円周の長さ,円周率の関係について理解できるようにする。

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 また,「内容の取扱い」の(3)では,
 「円周率は3.14 を用いるものとする
 と示している。

 
 

 図形の性質を調べるには,その図形を構成する要素に着目し,それらの関係を考察していくことになる。

 第5学年では,辺の長さや角の大きさの数量的な関係について考察し,図形の性質を見いだしていく。

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 例えば,三角形の性質を見いだすには,三角形を構成する要素である三つの辺の長さや三つの角の大きさに着目し,その数量的な関係を探る。

 そこで,三角形の三つの角の大きさの和に着目すると,その和がどんな場合でも一定であるという三角形の性質を見いだすことができる。

 二つの図形の関係を考えたとき,その最も基本的な関係として,「ぴったり重なる」という図形の合同を取り上げことができる。

 低学年から具体的な操作を通して二つの図形を「ぴったり重ねる」ことを行ってきている。

 第5学年では,「ぴったり重ねる」といった具体的な操作ができない場合でも,ぴったり重なることが説明できないかを考える。

 図形を構成する要素に着目して,対応する辺の長さや角の大きさが等しいかどうかを考えていくことになる。

 ぴったり重なるという具体的な操作を,対応する辺の長さや角の大きさが等しいことに置き換えて考えている点が重要である。

 そして,条件をなるべく少なくして思考を節約しようとする考えから,図形を構成する要素のうちどの要素が定まれば図形が一つに決定するかという図形の決定条件に目を向け,一つに図形が定まることから合同な図形を作図することを導くことになる。

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 例えば,二つの三角形の合同においては,三角形を構成する要素である三つの辺の長さ,三つの角の大きさに着目し,対応する辺の長さ,角の大きさが等しいかどうかを探ることになる。

 条件をなるべく少なくするために,どの要素が定まれば三角形が一つに決定するかという三角形の決定条件に目を向け合同であることを導くことになる。

 そして,三角形の決定条件が明らかにされると,それを基に,合同な三角形を作図することが可能になる。

 筋道を立てて考えることには,ある前提を基に説明していくという演繹的な考えが代表的なものである。

 帰納的な考えや類推的な考えもまた,根拠となる事柄を示すという点で,筋道を立てた考えの一つといえる。

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 例えば,三角形の三つの角の大きさに着目し,幾つかの三角形について,三つの角の大きさの和を探ってみる。

 分度器で測ったり,合同な三角形を敷き詰めたり,三つの角の部分を寄せ集めたりするなどすると,調べた三角形の三つの角の大きさの和は,どれも180度になることが見えてくる。

 このように,幾つかの具体的な例に共通する一般的な事柄を見いだすことを帰納的に考えるという。

 一つの三角形だけで180度になることを説明するのではなく,複数の三角形で180度になることを説明することで,説明がより確かなものになることを味わえるようにする。

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 さらに,三角形の三つの角の大きさの和が180度であることが分かると,それを基に発展的に考え,四角形の四つの角の大きさの和はどうなるかを考えることができる。

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 四角形の四つの角の大きさの和は,三角形の三つの角の大きさの和が180度であることを基にして考えることができる。

 このように,既に正しいことが明らかになっている事柄を基にして別の新しい事柄を説明していくことを演繹的に考えるという。

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 四角形の四つの角の和を基に説明する方法の代表的なものとして,次の二つの方法がある。

@は四角形を1本の対角線で二つの三角形に分けて考える方法で,三角形の三つの角の大きさの和が180度であることを基にして,180度の2倍から360度を導き出す方法である。

Aは四角形の内部に点Eをとり,点Eと各頂点とを結んだ直線で四つの三角形に分けて考える方法で,三角形の三つの角の大きさの和が180度であることを基にして,180度の4倍から点Eの周りの角の大きさである360度を引いて360度を導き出す方法である。

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 これらの考え方を活用して考え説明しながら,筋道を立てて考えることに興味をもたせるようにするとともに,筋道を立てて考えることのよさについても気付かせていくようにする。

 
 
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