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(3) 二つの数量の関係に関わる数学的活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

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ア 次のような知識及び技能を身に付けること。

(ア) ある二つの数量の関係と別の二つの数量の関係とを比べる場合に割合を用いる場合があることを理解すること。

(イ) 百分率を用いた表し方を理解し,割合などを求めること。

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イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

(ア) 日常の事象における数量の関係に着目し,図や式などを用いて,ある二つの数量の関係と別の二つの数量の関係との比べ方を考察し,それを日常生活に生かすこと。

〔用語・記号〕 %

(内容の取扱い)

(4) 内容の「C変化と関係」の(3)のアの(イ)については,歩合の表し方について触れるものとする。

 第4学年では,簡単な場合について,ある二つの数量の関係と別の二つの数量の関係とを比べる場合に割合を用いる場合があることを知るとともに,日常の事象において,二つの数量の関係に着目し,図や式などを用いて,二つの数量の関係どうしの比べ方を考察することを指導してきた。

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 第5学年では,割合が小数で表される場合に考察の対象を広げ,ある二つの数量の関係と別の二つの数量の関係とを比べる場合に割合を用いる場合があることや百分率について理解するとともに,二つの数量の関係に着目し,図や式などを用いて,二つの数量の関係どうしの比べ方を考察し,日常生活に生かす力を伸ばしていくことをねらいとしている。

 また,割合を用いた比べ方のよさを感じて,学習や生活に生かそうとする態度とともに,考察の方法や結果を批判的に振り返り,よりよく問題解決する態度を養うことも大切である。

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 ここで育成される資質・能力は,第6学年の比,中学校における「数と式」領域や「関数」領域などの考察,中学校の理科における考察に生かされるものである。

 
 

 二つの数量の関係を,割合を用いて比べるとは,二つの数量のうちの一方を基準にする大きさ(基準量)としたときに,もう一方の数量(比較量)がどれだけに相当するのかを,比較量を基準量で割った商で比べることである。

 この表された数(商)が割合である。

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 ある二つの数量の関係と別の二つの数量の関係において,基準にする大きさが異なる場合に,割合を用いて,数量の関係どうしを比べることができる。

 全体と部分の大きさの関係どうし,部分と部分の大きさの関係どうしを比べる場合には,割合を用いる場合が多い。

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 例えば,「シュートのうまさ」を比べる場合,全シュート数と入ったシュート数という全体と部分の関係に着目したり,入ったシュート数と入らなかったシュート数という部分と部分の関係に着目したりする。

 以下は,「シュートのうまさ」が0.6 の場合の,全シュート数と入ったシュート数の関係である。

シュートのうまさ
10回中 6回入る
20回中 12回入る
30回中 18回入る

 このように,0.6 の割合で入る「うまさ」というのは,10回中6回入る,20回中12回入る,…などを,同じ関係とみることが必要であり,「全シュート数」と「入ったシュート数」の間の比例関係が前提となる。

 従って,この比較では,シュートのうまさは,差ではなく,割合でみて比べることが必要である。

 すなわち,「全シュート数」を基準量とし,その大きさを1として,それに対する「入ったシュート数」の割合を小数で表すことで,「シュートのうまさ」を比べていく。

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 第5学年では,基準量を1として,比較量を割合として小数で表すことで,資料の全体と部分,あるいは,部分と部分の関係どうしを比べる場合があることを理解し,そのような比べ方ができるようにする。

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 なお,割合は,「Bを基にしたAの割合」,「Bの□倍がA」など,様々な表現で示されるため,割合を示す表現の中から,基準量や比較量を明確にすることも必要となる。

 
 

 割合では,基準とする数量の大きさを適宜決めて,それを単位として用いる。

 基準量を1としたときに,割合が小数で表されるとき,割合をなるべく整数で表すために,基準量を100 として,それに対する割合で表す方法が,百分率(パーセント,%)である。

 ある二つの数量の関係と別の二つの数量の関係とを割合を用いて比べる場合,百分率による割合の表し方を理解し,百分率を求めたり,用いたりすることができるようにする。

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 日常の生活では,百分率は,「欠席率が15%だった。」,「定価の20%引きで買った。」というような確定的な事象の関係を表すことに用いられる。

 また,天気予報などで「明日の降水確率は20%である。」というように不確定な事象に関して用いられることもある。

 このような場合にも百分率が用いられることについては中学校で学習する。

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 指導に当たっては,百分率が日常生活の中で用いられている割合の便利な表現であることに気付くことができるように配慮する。

 また,実際の問題の場面などでは,必要に応じて電卓等を用いて,適切に処理できるように配慮することも望ましい。

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 なお,「内容の取扱い」の(4)では,「歩合の表し方について触れるものとする」と示している。

 ここで取り扱う歩合の意味については,百分率の場合と関連付け,基準とする大きさを10 とみて,それに対する割合を「割」で表していることなどに触れるようにする。

 また,歩合も,百分率と同様,日常生活の中で用いられている割合の便利な表現であることに気付くことができるよう配慮する。

 
 

 第5学年では,日常の事象において,資料の全体と部分の関係どうし,部分と部分の関係どうしを比べる場面で,二つの数量の関係に着目する。

 すなわち,比べる対象を明確にし,比べるために必要となる二つの数量の関係を,比例関係を前提に,割合でみてよいかを判断する。

 そして,二つの数量の関係に着目し,問題の条件や割合の求め方を基に,何を基準量とし,何を比較量とするかなどを筋道を立てて考える。

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 二つの数量の関係どうしを比べるときに,基準とする数量やその大きさをどのように決めるかは,何を目的としているかによって異なってくることが考えられる。

 全体の数量を基準とするか,部分の数量を基準とするか。基準とする数量を1として,それに対する割合を小数で表すか,あるいは,基準とする数量の大きさを1ではない数にして,それに対する割合を整数で表すか。

 また,割合を整数で表す場合であっても,基準とする数量を100 として,それに対する割合で表すか,基準とする数量を10 として,それに対する割合で表すか。

 目的に照らして,基準量やその大きさの決め方について判断をすることが大切である。

 
 

 日常生活の二つの数量の関係を考察する問題場面では,全体と部分の関係どうし,あるいは,部分と部分の関係どうしの比べ方を考察して,得られた割合の大小から判断したり,割合を使って計算をした結果から問題を解決したりする。

 その際,考察によって得られた結果を日常の事象に戻してその意味を考え,必要に応じて考察の方法や表現方法を見直すことが大切である。

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 また,用いた方法や結果を振り返り,二つの数量の関係どうしを比べる場合に,どのような比べ方が適切であるかを考えることも大切である。

 例えば,差による比べ方や,一つの数量だけに着目する比べ方と比較することで,割合を用いて比べることの特徴やよさを考える活動を取り入れることができる。

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 このとき,全体と部分の関係,部分と部分の関係は,テープ図や数直線などの図,式などを用いて,明瞭,的確に表すことができる。

 ある二つの数量の関係と別の二つの数量の関係を割合を用いて比べるには,数量の関係を,これらの図や式などを用いて表したり,図や式から数量の関係を読み取ったりしていく。

 そのためには,第4学年同様,基準量と比較量をこれらの図や式に適切に表すこと,また,図や式から数量の関係を整理して捉えた上で,基準量と比較量を適切に選択し,割合を求めることが必要である。

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 なお,割合については全国学力・学習状況調査(『平成24年度全国学力・学習状況調査報告書』266ページ)などで課題が示されており,指導に当たっては,言葉と図や式を関連付けるような活動を取り入れることが大切である。

 以下は,「学級の男子と女子ではどちらの方が一輪車に乗れるかを調べた結果を表した表」から得られる数量の関係を,言葉,図,式で表したものである。

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 このように,図で表した関係を式にしたり,式に表した関係を図で表したり,図や式の意味を言葉で説明したりすることが大切である。

 
 

 日常生活では,打率やシュート率,勝率など「どちらの方が上手なのだろうか」と割合を用いて比べることがある。

 また,「10%の増量」「1割引」など割合を用いている場面も多くある。

 このように割合を用いて比べる場面などについて,児童が割合を用いて考えることができるようにする。

 
 
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