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小学校 学習指導要領 【解説】 |
算数編 |
第3章 各学年の内容 |
第6節 第6学年の目標及び内容 |
2 第6学年の内容 |
D データの活用 |
D(1)データの考察 |
小学校 学習指導要領 【本文】 |
(1) データの収集とその分析に関わる数学的活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。 -------------------------------- ア 次のような知識及び技能を身に付けること。 (ア) 代表値の意味や求め方を理解すること。 (イ) 度数分布を表す表やグラフの特徴及びそれらの用い方を理解すること。 (ウ) 目的に応じてデータを収集したり適切な手法を選択したりするなど,統計的な問題解決の方法を知ること。 -------------------------------- イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。 (ア) 目的に応じてデータを集めて分類整理し,データの特徴や傾向に着目し,代表値などを用いて問題の結論について判断するとともに,その妥当性について批判的に考察すること。 |
〔用語・記号〕 ドットプロット |
小学校 学習指導要領 【解説】 |
第5学年までに文字情報として得られる「質的データ」や数値情報として得られる「量的データ」,時間変化に沿って得られた「時系列データ」について表にまとめたり,グラフに表したりすることでデータの特徴や傾向を捉えることを学習してきている。 -------------------------------- 第6学年では,目的に応じたデータの収集や分類整理,表やグラフ,代表値の適切な選択など,一連の統計的な問題解決をできるようになることや,結論について批判的に捉え妥当性について考察することができるようになることがねらいである。 その過程を通じて,量的データについて分布の中心や散らばりの様子を考察することができるようにすることをねらいとしている。 -------------------------------- ここで育成される資質・能力は中学校第1学年での度数分布を表す表やヒストグラムなどを用いて問題解決する学習の素地となるものである。 |
(イ) 度数分布を表す表やグラフの特徴と用い方 |
量的データの分布の様子や特徴を捉えるための統計的な処理の方法として,度数分布を表す表や柱状グラフがある。 第6学年では,度数分布を表す表と柱状グラフについて指導する。 度数分布を表す表は,分布の様子を数量的に捉えやすくするために,数量を幾つかの区間(階級という)に分けて,各区間に,それに入る度数を対応させた表である。 柱状グラフについては,各階級の幅を横とし,度数を縦とする長方形をかいたものという程度の理解でよい。 また,階級の幅を変えて柱状グラフを作り直すなどして,分布の様子を的確に捉えることは,中学校第1学年で扱うものとする。 -------------------------------- 柱状グラフを用いることで,資料の分布の様子を捉えることができる。 変量を幾つかの階級に分け,ある階級に属する度数を明らかにすることで,全体の形,左右の広がりの範囲,山の頂上の位置,対称性など,直観的に捉えやすくなる。 ドットプロットでも分布の様子を捉えることができるが,扱うデータが小数点など刻みが細かくなっていたり,最小値と最大値の差が著しく開いている場合などには各点がほとんど積み上がることなく,まばらに広がってしまうことがある。 そのような場合には柱状グラフを用いると考察しやすくなる。 -------------------------------- また,児童によっては第3学年で学習する棒グラフと柱状グラフを混同して捉えてしまうことがある。 棒グラフは質的データを集計した個数を高さで表していて,量的データの値をそのまま高さに対応させて表したものであり,横軸のラベルには質的な文字情報が表示される。 一方,柱状グラフは,量的データの分布の様子を分析する目的から,階級に分けて集計し,度数の多さを高さに対応させて表しているため,横軸は数値軸となっている。 柱状グラフの長方形(柱)を隙間なくつけているのは,隙間が空いているとその部分に該当する値のデータが存在しないかのような誤認を与えてしまうからである。 |
(ウ) 目的に応じた統計的な問題解決の方法 |
第5学年では,統計的な問題解決の方法を知り,考察することを学習してきている。 統計的な問題解決とは,以下に述べる「問題−計画−データ−分析−結論」という五つの段階を経て問題解決することである。 @ 身の回りの事象について,興味・関心や問題意識に基づき統計的に解決可能な問題を設定すること A 見通しを立て,どのようなデータを,どのように集めるかについて計画を立てること B データを集めて分類整理すること C 目的に応じて,観点を決めてグラフや表に表し,データの特徴や傾向をつかむこと D 問題に対する結論をまとめるとともに,さらなる問題を見いだすこと -------------------------------- 第6学年では,身の回りの事象について,統計的な問題解決の方法で考察していくことでその方法への理解を深めるとともに,目的に応じてデータを収集したり適切な手法を選択したりするなどについて理解し,このことができるようにしていく。 -------------------------------- 例えば,図書の貸し出し状況について調べたい場面があるとする。 「貸し出し状況について」といった漠然とした目的では統計的に解決していくことが難しい。 そこで,具体的な問題として目的を明確にする。 貸し出し状況の何を調べ,その結果どうしたいのかということである。 それにより,データの収集や手法の選択が異なってくるからである。 -------------------------------- 先の例では, そのような質的データに対しては, -------------------------------- また,そのようなデータを量の大小で分析するのでなく,割合の見方で分析したい場合には,それを帯グラフや円グラフに表すことも考えられるし,異なる項目間での関係について考察したい場合は,二次元の表にまとめることになる。 -------------------------------- 「毎月何冊借りられているのか。」 そのようなデータに対しては, -------------------------------- 「借りる数が -------------------------------- このように,目的に応じて収集するデータが異なることや,それに応じて分析する手法も異なることを知ることが大切である。 -------------------------------- また,統計的な問題解決の対象は不確実な事象であることから,確定的な結論は得られないため,問題解決の過程や結論についても振り返り,妥当性を考察したり,改善する余地がないかを検討したりすることの大切さについても指導する。 |
データの特徴や傾向に着目し,代表値などを用いて問題の結論について判断すること | ||||||||||||
データの特徴や傾向に着目し,代表値などを用いて問題の結論について判断するとは,代表値を求めたり,度数分布を表す表や柱状グラフからデータ全体の分布の様子を捉えたり,それらの特徴が表す意味を考察することである。 -------------------------------- 集めたデータを分析するに当たり,データの種類や項目の数を考え,目的に応じて,表やグラフに表してみる。 その際,数値データが集団の特徴や傾向をみる場合には,代表値を求めたり,度数分布を表す表や柱状グラフからデータ全体の分布の様子を捉えたりすることができるようにする。 そして分析した結果から問題の結論を見いだし,判断する。 第6学年の男子児童の50m走の記録
先ほどの例でいえば, 20年前と また柱状グラフで よって代表値の数値から |
妥当性について批判的に考察すること |
妥当性について批判的に考察するとは,自分たちが出した結論や問題解決の過程が妥当なものであるかどうかを別の観点や立場から検討してみることや,第三者によって提示された統計的な結論が信頼できるだけの根拠を伴ったものであるかどうかを検討することである。 -------------------------------- 統計的な問題解決では,解決すべき問題に対して,どのデータを用いるのかによって結論が異なることがある。 また,用いるデータが同じでも,その分析の仕方や着目する点により結論が異なることがある。 一方,データが少なすぎたり,公平でない比較をしている場合であれば,その結論は信頼しにくいものであると言える。 それらのことから,自分たちが出した結論について,また第三者によって提示された統計的な結論について,信頼できるのかどうかを検討していくことが,批判的に考察するということである。 -------------------------------- 上の例では,代表値による比較や柱状グラフの分析に誤りはなかったかを振り返ることが当てはまる。 また,20年前と今の児童の体力を比較するのに,50m走の記録だけに注目したり,6年生の男子児童だけを比較したりしたことは妥当かどうかを考えることが当てはまる。 他の種目や学年,性別なども合わせて多面的に分析する必要があると判断した際には,再度問題解決の過程を行うことになる。 -------------------------------- 統計的な問題解決の対象は不確定な事象であることから,確定的な結論は得られないため,得られた結論についてや,問題解決の方法の各段階が適切な選択に基づいたものであったかについて,振り返って考え直す態度を養うことにも留意する。 -------------------------------- また,妥当性について批判的に考察することについては,自分たちが出した結論や問題解決の過程だけでなく,新聞やニュース,雑誌など第三者による統計を用いた主張にも当てはまる。 現在の社会においては,様々な分野で統計が用いられ,データに基づいて現状の把握や政策などが決定されていく。 日々の生活においても,様々なデータとその分析に基づく主張を見聞きすることになる。 -------------------------------- 例えば,右の図はOECDによる生徒の学習到達度調査(PISA)で用いられた問題例であるが, 「あるテレビレポーターが と出題されたものである このようなデータに基づく主張を提示された際に,それを鵜呑みにすることなく,信頼できるデータに基づく妥当な判断に基づくものであるかどうかを批判的に考察することが重要である。 |
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