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(1) 思考力,判断力,表現力等を育成するため,各学年の内容の指導に当たっては,具体物,図,言葉,数,式,表,グラフなどを用いて考えたり,説明したり,互いに自分の考えを表現し伝え合ったり,学び合ったり,高め合ったりするなどの学習活動を積極的に取り入れるようにすること。

 今回の改訂では,数学的な見方・考え方を働かせ,知識及び技能の習得とともに,思考力・判断力・表現力等の育成と学びに向かう力・人間性の涵養が求められている。

 その一方で,全国的な調査の結果などからは,児童の思考力・判断力・表現力等に課題がみられるとの指摘がある。

 数学的な思考力,判断力,表現力等は,合理的,論理的に考えを進めるとともに,互いの知的なコミュニケーションを図るために重要な役割を果たすものであり,考えを表現し伝え合う学習活動を,全学年を通して数学的活動に内容として位置付けることとした。

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 各学年の内容の指導に当たっては,具体物,図,言葉,数,式,表,グラフを用いて考えたり,説明したり,互いに自分の考えを表現し伝え合ったりするなどの学習活動を積極的に取り入れるようにすることの必要性について示している。

 算数科の指導では,言葉による表現とともに,図,数,式,表,グラフといった数学的な表現の方法を用いることに特質がある。

 このような表現の方法について学ぶとともに,それらを活用する指導を工夫することが大切である。

 
 

(2) 数量や図形についての感覚を豊かにしたり,表やグラフを用いて表現する力を高めたりするなどのため,必要な場面においてコンピュータなどを適切に活用すること。

 また,第1章総則の第3の1の(3)のイに掲げるプログラミングを体験しながら論理的思考力を身に付けるための学習活動を行う場合には,児童の負担に配慮しつつ,例えば第2の各学年の内容の〔第5学年〕の「B図形」の(1)における正多角形の作図を行う学習に関連して,正確な繰り返し作業を行う必要があり,更に一部を変えることでいろいろな正多角形を同様に考えることができる場面などで取り扱うこと。

 算数科の指導においては,コンピュータや電卓などを用いて,データなどの情報を処理したり分類整理したり,表やグラフを用いて表現したり,図形を動的に変化させたり,数理的な実験をしたりするなど,それらがもつ機能を効果的に活用することによって,数量や図形についての感覚を豊かにしたり,表現する力を高めたりするような指導の工夫が考えられる。

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 特に,今回の改訂では,統計的な内容を各学年で充実させているが,データを表に整理した後,いろいろなグラフに表すことがコンピュータなどを用いると簡単にできる。

 目的に応じて適切にグラフの種類や表現を変えることで,結論や主張点がより明確になる。

 このようなコンピュータなどを用いてグラフを作成するよさに触れることも大切である。

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 また,身近なものにコンピュータが内蔵され,プログラミングの働きにより生活の便利さや豊かさがもたらされていることについて理解し,そうしたプログラミングを,自分の意図した活動に活用していけるようにすることもますます重要になっている。

 将来どのような職業に就くとしても,時代を超えて普遍的に求められる「プログラミング的思考」などを育むプログラミング教育の実施を,子供たちの生活や教科等の学習と関連付けつつ,発達の段階に応じて位置付けていくことが求められる。

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 その際,小・中・高等学校を見通した学びの過程の中で,「主体的・対話的で深い学び」の実現に資するプログラミング教育とすることが重要である。

 小学校においては,教科等における学習上の必要性や学習内容と関連付けながらプログラミング教育を行う単元を位置付け,身近な生活でコンピュータが活用されていることや,問題の解決には必要な手順があることに気付くことを重視する。

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 算数科において,プログラミングを体験しながら論理的思考力を身に付けるための活動を行う場合には,算数科の目標を踏まえ,数学的な思考力・判断力・表現力等を身に付ける活動の中で行うものとする。

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 算数科においては,問題解決したのち,問題解決の仕方を振り返り,問題解決の方法をより簡潔・明瞭・的確なものに高めたり,それを手順としてまとめたりするという学習活動が多く行われる。

 例えば,整数などの計算の仕方を考えた後,計算の仕方を簡潔・明瞭・的確なものとしていく中で,筆算という形式で表し,計算の仕方を筆算の手順としてまとめていく。

 筆算として計算の仕方をまとめた後は,手順通りに間違いなく筆算を行うことが大切になる。これは技能である。

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 このように算数科の学習は,問題の解決には必要な手順があることに気付くことに資するものである。

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 「プログラミング的思考」とは,自分が意図する一連の活動を実現するために,どのような動きの組み合わせが必要か,どのように改善していけばより意図した活動に近づくのかということを論理的に考えていく力の一つである。

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 算数科においては,「例えば第2の各学年の内容の〔第5学年〕の「B図形」の(1)における正多角形の作図を行う学習に関連して,正確な繰り返し作業を行う必要があり,更に一部を変えることでいろいろな正多角形を同様に考えることができる場面などで取り扱うこと。」と示されている。

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 正多角形の学習では「正多角形は円に内接すること」を基に定規とコンパスなどを用いてかくことを指導する。

 コンピュータを用いると,「正多角形は全ての辺の長さや角の大きさが等しいこと」を基に簡単にかつ正確にかくことができる。

 また,辺の長さや角の大きさを適切に変えれば,ほかの正多角形もすぐにかくことができる。

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 辺の長さ分だけ線を引き,角の大きさ分向きを変え,これらのことを繰り返すことで正多角形がかける。

 正方形は90度向きを変えればよいが,正六角形は何度にすればいいのかを考えていく。

 線の動きを示す指示として「線を引く」「○度向きを変える」「繰り返す」などの最小限の指示を指定することで,正多角形をかくことができるのである。

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 算数科ではこのような活動を行うことで,問題の解決には必要な手順があることと,正確な繰り返しが必要な作業をする際にコンピュータを用いるとよいことに気付かせることができる。

 
 

(3) 各領域の指導に当たっては,具体物を操作したり,日常の事象を観察したり,児童にとって身近な算数の問題を解決したりするなどの具体的な体験を伴う学習を通して,数量や図形について実感を伴った理解をしたり,算数を学ぶ意義を実感したりする機会を設けること。

 各領域の指導に当たっては,具体物を操作したり,日常の事象を観察したり,児童にとって身近な算数の問題を解決したりするなどの具体的な体験を伴う学習を通して,数量や図形について実感を伴った理解をしたり,算数を学ぶ意義を実感したりする機会を設けることの重要性を述べたものである。

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 算数科の内容は,児童にとって時に抽象的で分かりにくいということがある。

 例えば,式を用いて表すことはできても,表現した式を基に考えを進めることが苦手な児童がいる。

 指導に当たっては,おはじきや計算ブロックなどの具体物を用いた活動を行うなど,児童の発達の段階や個に応じた教材,教具の工夫が必要であることに留意する。

 
 

(4) 第2の各学年の内容に示す〔用語・記号〕は,当該学年で取り上げる内容の程度や範囲を明確にするために示したものであり,その指導に当たっては,各学年の内容と密接に関連させて取り上げるようにし,それらを用いて表したり考えたりすることのよさが分かるようにすること。

 各学年の内容に〔用語・記号〕の示されていることの意図と,指導に当たっての配慮事項を示している。

 用語や記号は活用することが大切であり,用語や記号を用いて表したり考えたりすることのよさが分かるよう配慮することについて示したものである。

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 用語・記号は,社会で共通に認められた内容を簡潔に表現し,それらを的確に用いることによって,思考が節約され,コミュニケーションの効率性が高まる。

 数学においては,特に記号が大きな役割を果たしている。

 記号は,抽象的で形式的であるだけに,操作がしやすく,しかも,より一般性をもっている。

 上手に記号体系を作ることにより,現実の意味を離れて形式的な操作が可能になり,思考を能率的に進めることができるようになるのである。

 このように,数学において用語や記号の使い方に慣れることで,思考を,より正確に,より的確に,より能率的に行うことができるようになることは,社会や文化の発展に貢献することにもつながる。

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 数学の用語・記号については,各領域における具体的な内容の学習を通して,用語・記号の意味や内容が十分に理解でき,用語・記号を用いることのよさ,すなわち,簡潔さ,明瞭さ,そして,的確さについて把握できるように指導する必要がある。

 つまり,用語・記号が具体的な内容から離れ,形式的な指導に陥ったりすることのないようにしなくてはならない。

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 学習指導要領において各学年段階で示した用語・記号は,その学年で指導が完結して「用いることができるようにする」というのではなく,その学年からそれらの用語・記号の使用が始まることを示しているものである。

 したがって,その学年以降において,それらの用語・記号を用いる能力をしだいに伸ばしていくように配慮して取り扱うことが必要である。

 
 

(5) 数量や図形についての豊かな感覚を育てるとともに,およその大きさや形を捉え,それらに基づいて適切に判断したり,能率的な処理の仕方を考え出したりすることができるようにすること。

 数についての感覚,量の大きさについての感覚,図形についての感覚を豊かにすることが大切であり,そのことは,各学年の指導内容に関わるものである。

 また,数量や図形についてのおよその大きさや形を捉えて,それらに基づいて適切に判断したり,能率的な処理の仕方を考え出したりすることを常に配慮した授業を展開する必要がある。

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 数量や図形についてのおよその大きさや形を捉えることによって,解決の見通しをもつことができ,大きな誤りを防ぐことができる。

 問題を解決する際に,見積りや概数などがどんな目的で用いられるかを明確にし,結果や方法をおおまかに捉えて見通しをもって考えを進めていくことを重視する必要がある。

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 そのため,低学年から,計算の結果の見通しをもつなど,見積りの指導との関連を図り,およその大きさや形を捉えることの素地を培うための指導を工夫する必要がある。

 見積りをする際には,既習の内容などを活用することが多いことから,児童の多様な考え方や表現の仕方がみられるので,指導に当たっては適切に対応することが大切である。

 
 

(6) 筆算による計算の技能を確実に身に付けることを重視するとともに,目的に応じて計算の結果の見積りをして,計算の仕方や結果について適切に判断できるようにすること。

 また,低学年の「A数と計算」の指導に当たっては,そろばんや具体物などの教具を適宜用いて,数と計算についての意味の理解を深めるよう留意すること。

 筆算による計算の技能については,算数科の基礎となる能力として確実に身に付けるようにすることが大切であることを示している。

 計算の指導においては,筆算の計算の仕方を形式的に伝えるのではなく,数の仕組みや計算の意味に基づいて考えることが大切である。

 その際,目的に応じて計算の結果の見積もりをして,計算の仕方や結果について適切に判断できるようにすることが必要であることを示している。

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 また,特に低学年においては,具体物などを用いて数と計算の意味について理解したり,自分の考えを表現したりすることが必要となるため,そろばんや具体物などの教具を適宜用いることが効果的であることを示している。

 
 
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