cosnavi.jp

 先に示した中央教育審議会答申の内容を踏まえながら,学習指導要領の改訂を行った。

 今回の改訂は,小学校理科で育成を目指す資質・能力を育む観点から,自然に親しみ,見通しをもって観察,実験などを行い,その結果を基に考察し,結論を導きだすなどの問題解決の活動を充実した。

 また,理科を学ぶことの意義や有用性の実感及び理科への関心を高める観点から,日常生活や社会との関連を重視する方向で検討した。

 改訂の要点は次のとおりである。

 
 

 目標については,
 最初に,
 どのような学習過程を通して
 資質・能力を育成するかを示し,
 それを受けて,

 (1)には,
 育成を目指す資質・能力のうち,
 「知識及び技能」を,

 (2)には,
 「思考力,判断力,表現力等」を,

 (3)には,
 「学びに向かう力,人間性等」

 を示した。

--------------------------------

 各学年の目標については,
 「A物質・エネルギー」,
 「B生命・地球」
 の内容区分ごとに,
 育成を目指す資質・能力を示す
 こととし,

 @には「知識及び技能」を,
 Aには「思考力,判断力,表現力等」
   を,
 Bには「学びに向かう力,人間性等」

 を示した。

 「見方・考え方」とは,各教科等の特質に応じた物事を捉える視点や考え方である。

 理科の学習においては,この「理科の見方・考え方」を働かせながら,知識及び技能を習得したり,思考・判断・表現したりしていくものであると同時に,学習を通じて,「理科の見方・考え方」が豊かで確かなものとなっていくのである。

 そこで,各内容において,児童が自然の事物・現象を捉えるための視点や考え方を示し,それを軸とした授業改善の取組を活性化させ,理科における資質・能力の育成を図ることとした。

 
 

 これまでの各内容について,どのような資質・能力を育成することができるのかを検討し,さらに,中学校の「第1分野」,「第2分野」との整合性も加味して構成された「A物質・エネルギー」,「B生命・地球」の二つの内容区分及び学習内容の構成,配列の検討を行った。

 その結果,引き続き,「A物質・エネルギー」,「B生命・地球」の二つの内容区分で構成することとした。

 さらに,各内容において,児童が働かせる「見方・考え方」及び,育成を目指す「知識及び技能」,「思考力,判断力,表現力等」を示していくこととした。

 なお,「学びに向かう力,人間性等」については,各学年の目標に,それぞれ示すこととした。

 
 

 国際数学・理科教育動向調査(TIMSS2015)において,小学校第4学年を対象に行われた質問紙調査の結果,「理科は楽しい」と回答している児童が約9割となっており,国際平均を上回っている。

 また,理科が得意だと思っている児童の割合も増加している傾向が見られる。

 これらの現状を踏まえ,これまでも重視してきた,自然の事物・現象に働きかけ,そこから問題を見いだし,主体的に問題を解決する活動や,新たな問題を発見する活動を更に充実させていくこととした。

 そこで,育成を目指す資質・能力のうち,「思考力,判断力,表現力等」の育成の観点から,これまでも重視してきた問題解決の力を具体的に示し,より主体的に問題解決の活動を行うことができるようにした。

 

 また,
 日常生活や他教科等との関連を図った
 学習活動や,

 目的を設定し,計測して制御する
 といった考え方に基づいた
 観察,実験や,ものづくりの活動

 の充実を図ったり,

 第5学年
 「B(3)流れる水の働きと
         土地の変化」,
 「B(4)天気の変化」,

 第6学年
 「B(4)土地のつくりと変化」

 において,
 自然災害との関連を図りながら
 学習内容の理解を深めたりする
 ことにより,

 理科の面白さを感じたり,
 理科を学ぶことの意義や有用性を
 認識したりすることができるようにした。

 
 

 今回の改訂においても,従前と同様に「エネルギー」,「粒子」,「生命」,「地球」などの科学の基本的な概念等を柱として構成し,科学に関する基本的な概念等の一層の定着を図ることができるようにしている。

 その際,小学校,中学校,高等学校の一貫性に十分配慮するとともに,育成を目指す資質・能力,内容の系統性の確保,国際的な教育の流れなどにも考慮して内容の改善及び充実を図った。

--------------------------------

 小学校及び中学校の7年間を通した「エネルギー」,「粒子」,「生命」,「地球」を柱とした内容の構成を,図1(22,23ページ),図2(24,25ページ)に示す。

--------------------------------

 今回の改訂で,理科の目標である「自然の事物・現象についての問題を科学的に解決するために必要な資質・能力」を育成することを実現するために,追加,移行及び中学校への移行を行った主な内容は,以下のとおりである。

--------------------------------

○ 追加した内容

・ 音の伝わり方と大小〔第3学年〕

・ 雨水の行方と地面の様子〔第4学年〕

・ 人と環境〔第6学年〕

--------------------------------

○ 学年間で移行した内容

・ 光電池の働き〔第6学年(第4学年から移行)〕

・ 水中の小さな生物〔第6学年(第5学年から移行)〕

--------------------------------

○ 中学校へ移行した内容

・ 電気による発熱〔第6学年〕

 
 

 従来,小学校理科では,問題解決の過程を通じた学習活動を重視してきた。

 問題解決の過程として,自然の事物・現象に対する気付き,問題の設定,予想や仮説の設定,検証計画の立案,観察・実験の実施,結果の処理,考察,結論の導出といった過程が考えられる。

 この問題解決のそれぞれの過程において,どのような資質・能力の育成を目指すのかを明確にし,指導の改善を図っていくことが重要になる。

 そこで,小学校理科で育成を目指す資質・能力を「知識及び技能」,「思考力,判断力,表現力等」,「学びに向かう力,人間性等」の三つの柱に沿って整理し,より具体的なものとして示した。

 特に「思考力,判断力,表現力等」については,各学年で主に育成を目指す問題解決の力を具体的に示した。

--------------------------------

 育成を目指す「思考力,判断力,表現力等」及び「学びに向かう力,人間性等」をまとめたものを図3(26ページ)に示す。

 
 
 「主体的・対話的で深い学び」の実現とは,「主体的な学び」,「対話的な学び」,「深い学び」の三つの視点に立った授業改善を図り,学校教育における質の高い学びを実現し,資質・能力を身に付け,生涯にわたって能動的に学び続けるようにすることである。

--------------------------------

 これらの三つの視点はそれぞれ独立しているものではなく,相互に関連し合うものであるが,児童の学びの本質としての重要な視点を異なる側面から捉えたものである。

 これらの視点を基に日々の授業の改善を行い,児童の資質・能力を伸ばしていく必要がある。

--------------------------------

 そこで,第2章第4節理科「第3 指導計画の作成と内容の取扱い」において,その重要性について示し,「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善を図ることとした。

 
 
 小学校理科の特色でもある観察,実験の充実を図っていく観点から,理科教育のための設備整備の支援や,理科の観察に使用する設備の準備・調整等を行う補助員の配置に引き続き取り組むことが必要である。

--------------------------------

 そこで,第2章第4節理科「第3 指導計画の作成と内容の取扱い」において,その重要性について示し,教材や教育環境の充実を図ることとした。

 
 
→ 小学校理科編 目次
→ 中学校理科編 目次
→ 小学校学習指導要領(2017)目次
→ 学習指導要領ナビ
トップページ