cosnavi.jp

 指導計画の作成に当たっては,第2章第4節理科「第1 目標」及び「第2 各学年の目標及び内容」に照らして,各学年の目標や内容のねらいが十分達成できるように次の事項に配慮する。

(1) 単元など内容や時間のまとまりを見通して,その中で育む資質・能力の育成に向けて,児童の主体的・対話的で深い学びの実現を図るようにすること。

 その際,理科の学習過程の特質を踏まえ,理科の見方・考え方を働かせ,見通しをもって観察,実験を行うことなどの,問題を科学的に解決しようとする学習活動の充実を図ること。

 この事項は,理科の指導計画の作成に当たり,児童の主体的・対話的で深い学びの実現を目指した授業改善を進めることとし,理科の特質に応じて,効果的な学習が展開できるように配慮すべき内容を示したものである。

--------------------------------

 理科の指導に当たっては,

 (1)「知識及び技能」が習得されること,

 (2)「思考力,判断力,表現力等」
   を育成すること,

 (3)「学びに向かう力,人間性等」
   を涵(かん)養すること

 が偏りなく実現されるよう,
 単元など内容や時間のまとまりを
 見通しながら,
 主体的・対話的で深い学びの実現
 に向けた授業改善を行うこと
 が重要である。

--------------------------------

 児童に理科の指導を通して「知識及び技能」や「思考力,判断力,表現力等」の育成を目指す授業改善を行うことはこれまでも多くの実践が重ねられてきている。

 そのような着実に取り組まれてきた実践を否定し,全く異なる指導方法を導入しなければならないと捉えるのではなく,児童や学校の実態,指導の内容に応じ,「主体的な学び」,「対話的な学び」,「深い学び」の視点から授業改善を図ることが重要である。

--------------------------------

 「主体的・対話的で深い学び」は,
 必ずしも1単位時間の授業の中で
 全てが実現されるものではない。

 

 単元など内容や時間のまとまりの中で,
 例えば,

 主体的に学習に取り組めるよう
 学習の見通しを立てたり
 学習したことを振り返ったりして
 自身の学びや変容を自覚できる場面を
 どこに設定するか,

 対話によって
 自分の考えなどを
 広げたり深めたりする場面を
 どこに設定するか,

 学びの深まりをつくりだすために,
 児童が考える場面と
 教師が教える場面を
 どのように組み立てるか,

 といった視点で授業改善を進める
 ことが求められる。

 

 また,児童や学校の実態に応じ,多様な学習活動を組み合わせて授業を組み立てていくことが重要であり,単元のまとまりを見通した学習を行うに当たり基礎となる知識及び技能の習得に課題が見られる場合には,それを身に付けるために,児童の主体性を引き出すなどの工夫を重ね,確実な習得を図ることが必要である。

 主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善を進めるに当たり,特に「深い学び」の視点に関して,各教科等の学びの深まりの鍵となるのが「見方・考え方」である。

 各教科等の特質に応じた物事を捉える視点や考え方である「見方・考え方」を,習得・活用・探究という学びの過程の中で働かせることを通じて,より質の高い深い学びにつなげることが重要である。

--------------------------------

 理科においては,「理科の見方・考え方」を働かせ,見通しをもって観察,実験を行うことなどの問題解決の活動を通して,「主体的・対話的で深い学び」の実現を図るようにすることが重要である。

--------------------------------

 「主体的な学び」については,
 例えば,

 自然の事物・現象から問題を見いだし,
 見通しをもって
 観察,実験などを行っているか,

 観察,実験の結果を基に考察を行い,
 より妥当な考えをつくりだしているか,

 自らの学習活動を振り返って
 意味付けたり,
 得られた知識や技能を基に,
 次の問題を発見したり,
 新たな視点で
 自然の事物・現象を
 捉えようとしたりしているか

 などの視点から,
 授業改善を図ることが考えられる。

--------------------------------

 「対話的な学び」については,
 例えば,

 問題の設定や
 検証計画の立案,
 観察,
 実験の結果の処理,考察
 の場面などでは,

 あらかじめ個人で考え,
 その後,
 意見交換したり,
 根拠を基にして議論したりして,
 自分の考えをより妥当なものにする
 学習となっているか

 などの視点から,
 授業改善を図ることが考えられる。

--------------------------------

 「深い学び」については,
 例えば,

 「理科の見方・考え方」を働かせながら
 問題解決の過程を通して学ぶ
 ことにより,
 理科で育成を目指す資質・能力を
 獲得するようになっているか,

 様々な知識がつながって,
 より科学的な概念を形成することに
 向かっているか,

 さらに,
 新たに獲得した資質・能力に基づいた
 「理科の見方・考え方」を,
 次の学習や日常生活などにおける
 問題発見・解決の場面で
 働かせているか

 などの視点から,
 授業改善を図ることが考えられる。

--------------------------------

 以上のような授業改善の視点を踏まえ,理科で育成を目指す資質・能力及びその評価の観点との関係も十分に考慮し,指導計画等を作成することが必要である。

 
 

(2) 各学年で育成を目指す思考力,判断力,表現力等については,該当学年において育成することを目指す力のうち,主なものを示したものであり,実際の指導に当たっては,他の学年で掲げている力の育成についても十分に配慮すること。

 児童が自然の事物・現象に親しむ中で興味・関心をもち,そこから問題を見いだし,予想や仮説を基に観察,実験などを行い,結果を整理し,その結果を基に結論を導きだすといった問題解決の過程の中で,問題解決の力が育成される。

 小学校では,学年を通して育成を目指す問題解決の力が示されている。

--------------------------------

 小学校理科では,

 第3学年では,
 主に差異点や共通点を基に,
 問題を見いだす力が,

 第4学年では,
 主に既習の内容や生活経験を基に,
 根拠のある予想や仮説を
 発想する力が,

 第5学年では,
 主に予想や仮説を基に,
 解決の方法を発想する力が,

 第6学年では,
 主により妥当な考えをつくりだす力が

 問題解決の力として示されている。

--------------------------------

 これらの問題解決の力は,その学年で中心的に育成するものであるが,該当学年で示した問題解決の力を該当学年のみで育成を目指すものではなく,4年間を通して,これらの問題解決の力を意図的・計画的に育成することを目指すものである。

 したがって,実際の指導に当たっては,他の学年で掲げている問題解決の力の育成についても十分に配慮する必要がある。

 
 

(3) 障害のある児童などについては,学習活動を行う場合に生じる困難さに応じた指導内容や指導方法の工夫を計画的,組織的に行うこと。

 障害者の権利に関する条約に掲げられたインクルーシブ教育システムの構築を目指し,児童の自立と社会参加を一層推進していくためには,通常の学級,通級による指導,特別支援学級,特別支援学校において,児童の十分な学びを確保し,一人一人の児童の障害の状態や発達の段階に応じた指導や支援を一層充実させていく必要がある。

--------------------------------

 通常の学級においても,発達障害を含む障害のある児童が在籍している可能性があることを前提に,全ての教科等において,一人一人の教育的ニーズに応じたきめ細かな指導や支援ができるよう,障害種別の指導の工夫のみならず,各教科等の学びの過程において考えられる困難さに対する指導の工夫の意図,手立てを明確にすることが重要である。

--------------------------------

 これを踏まえ,
 今回の改訂では,

 障害のある児童などの指導
 に当たっては,

 個々の児童によって,

 見えにくさ,
 聞こえにくさ,
 道具の操作の困難さ,
 移動上の制約,
 健康面や安全面での制約,
 発音のしにくさ,
 心理的な不安定,
 人間関係形成の困難さ,
 読み書きや計算等の困難さ,
 注意の集中を持続することが
 苦手であることなど,

 学習活動を行う場合に生じる困難さが
 異なること

 に留意し,
 個々の児童の困難さに応じた
 指導内容や指導方法
 を工夫することを,
 各教科等において示している。

--------------------------------

 その際,理科の目標や内容の趣旨,学習活動のねらいを踏まえ,学習内容の変更や学習活動の代替を安易に行うことがないよう留意するとともに,児童の学習負担や心理面にも配慮する必要がある。

--------------------------------

 例えば,理科における配慮として,実験を行う活動において,実験の手順や方法を理解することが困難であったり,見通しがもてなかったりして,学習活動に参加することが難しい場合には,学習の見通しがもてるよう,実験の目的を明示したり,実験の手順や方法を視覚的に表したプリント等を掲示したり,配付したりするなどの配慮が考えられる。

 また,燃焼実験のように危険を伴う学習活動において,危険に気付きにくい場合には,教師が確実に様子を把握できる場所で活動できるようにするなどの配慮が考えられる。

 さらには,自然の事物・現象を観察する活動において,時間をかけて観察をすることが難しい場合には,観察するポイントを示したり,ICT教材を活用したりするなどの配慮が考えられる。

--------------------------------

 なお,学校においては,こうした点を踏まえ,個別の指導計画を作成し,必要な配慮を記載し,翌年度の担任等に引き継ぐことなどが必要である。

 
 

(4) 第1章総則の第1の2の(2)に示す道徳教育の目標に基づき,道徳科などとの関連を考慮しながら,第3章特別の教科道徳の第2に示す内容について,理科の特質に応じて適切な指導をすること。

 理科の指導においては,その特質に応じて,道徳について適切に指導する必要があることを示すものである。

--------------------------------

 第1章総則第1の2(2)においては,「学校における道徳教育は,特別の教科である道徳(以下「道徳科」という。)を要として学校の教育活動全体を通じて行うものであり,道徳科はもとより,各教科,外国語活動,総合的な学習の時間及び特別活動のそれぞれの特質に応じて,児童の発達の段階を考慮して,適切な指導を行うこと」と規定されている。

--------------------------------

 理科における道徳教育の指導においては,学習活動や学習態度への配慮,教師の態度や行動による感化とともに,以下に示すような理科と道徳教育との関連を明確に意識しながら,適切な指導を行う必要がある。

--------------------------------

 理科においては,目標を「自然に親しみ,理科の見方・考え方を働かせ,見通しをもって観察,実験を行うことなどを通して,自然の事物・現象についての問題を科学的に解決するために必要な資質・能力を次のとおり育成することを目指す。

(1) 自然の事物・現象についての理解を図り,観察,実験などに関する基本的な技能を身に付けるようにする。

(2) 観察,実験などを行い,問題解決の力を養う。

(3) 自然を愛する心情や主体的に問題解決しようとする態度を養う。」と示している。

--------------------------------

 栽培や飼育などの体験活動を通して自然を愛する心情を育てることは,生命を尊重し,自然環境の保全に寄与する態度の育成につながるものである。

 また,見通しをもって観察,実験を行うことや,問題解決の力を育てることは,道徳的判断力や真理を大切にしようとする態度の育成にも資するものである。

--------------------------------

 次に,道徳教育の要としての特別の教科である道徳科の指導との関連を考慮する必要がある。

 理科で扱った内容や教材の中で適切なものを,道徳科に活用することが効果的な場合もある。

 また,道徳科で取り上げたことに関係のある内容や教材を理科で扱う場合には,道徳科における指導の成果を生かすように工夫することも考えられる。

 そのためにも,理科の年間指導計画の作成などに際して,道徳教育の全体計画との関連,指導の内容及び時期等に配慮し,両者が相互に効果を高め合うようにすることが大切である。

 
 
→ 小学校理科編 目次
→ 中学校理科編 目次
→ 小学校学習指導要領(2017)目次
→ 学習指導要領ナビ
トップページ