cosnavi.jp
 各内容の指導に当たっては,第2章第4節理科「第1 目標」及び「第2 各学年の目標及び内容」に照らして,各学年の目標や内容のねらいが十分達成できるように次の事項に配慮する。

(1) 問題を見いだし,予想や仮説,観察,実験などの方法について考えたり説明したりする学習活動,観察,実験の結果を整理し考察する学習活動,科学的な言葉や概念を使用して考えたり説明したりする学習活動などを重視することによって,言語活動が充実するようにすること。

 理科の学習においては,問題を見いだし,予想や仮説,観察,実験などの方法について考えたり説明したりする学習活動,観察,実験の結果を整理し考察する学習活動,科学的な言葉や概念を使用して考えたり説明したりする学習活動などを充実させることにより,思考力,判断力,表現力等の育成を図ることが大切である。

 自然の事物・現象から問題を見いだし,根拠のある予想や仮説を発想したり,その予想や仮説を基に,解決の方法を考えたりすることにより,見通しをもった問題解決の活動が充実する。

 また,自らの観察記録や実験データを表に整理したりグラフに処理したりすることにより,考察を充実させることができる。

 さらに,これらの表やグラフなどを活用しつつ科学的な言葉や概念を使用して考えたり説明したりするなどの学習活動により,考察を深めることができる。

 このような学習活動が,学級の中のグループや学級全体での話合いの中で行われ,繰り返されることにより言語活動が充実し,思考力,判断力,表現力等の資質・能力が育成されるように指導することが重要である。

 
 

(2) 観察,実験などの指導に当たっては,指導内容に応じてコンピュータや情報通信ネットワークなどを適切に活用できるようにすること。

 また,第1章総則の第3の1の(3)のイに掲げるプログラミングを体験しながら論理的思考力を身に付けるための学習活動を行う場合には,児童の負担に配慮しつつ,例えば第2の各学年の内容の〔第6学年〕の「A物質・エネルギー」の(4)における電気の性質や働きを利用した道具があることを捉える学習など,与えた条件に応じて動作していることを考察し,更に条件を変えることにより,動作が変化することについて考える場面で取り扱うものとする。

 観察,実験などの指導に当たっては,直接体験が基本であるが,指導内容に応じて,適宜コンピュータや情報通信ネットワークなどを適切に活用することによって学習の一層の充実を図ることができる。

--------------------------------

 コンピュータや視聴覚機器などで扱われる映像などの情報については,それぞれの特性をよく理解し,活用することが大切である。

 また,学習を深めていく過程で,児童が相互に情報を交換したり,説明したりする手段として,コンピュータをはじめとする様々な視聴覚機器を活用することが考えられる。

 これらの機器の特性を踏まえて効果的に活用することにより,理科において育成を目指す資質・能力の実現を図ることができると考えられる。

 なお,これらの機器を活用する場合は,その操作について適切な指導を心掛けることが必要である。

--------------------------------

 「プログラミングを体験しながら論理的思考力を身に付けるための学習活動」については,第1章総則第3の1(3)イに掲げられているとおり,小学校段階において体験し,その意義を理解することが求められている。

 そこでは,意図した処理を行うよう指示することができるといった体験を通して,身近な生活でコンピュータが活用されていることや,問題の解決には必要な手順があることに気付くことを重視している。

--------------------------------

 理科において,これらの活動を行う場合には,児童への負担に配慮しながら,学習上の必要性や学習内容との関連付けを考えて,プログラミング教育を行う単元を位置付けることが大切である。

 視聴覚機器の有効活用といった観点と同様に,プログラミングの特性を踏まえて,効果的に取り入れることにより,学習内容と日常生活や社会との関連を重視した学習活動や,自然の事物・現象から見いだした問題を一連の問題解決の活動を意識しながら論理的に解決していく学習活動などが充実すると考えられる。



(3) 生物,天気,川,土地などの指導に当たっては,野外に出掛け地域の自然に親しむ活動や体験的な活動を多く取り入れるとともに,生命を尊重し,自然環境の保全に寄与する態度を養うようにすること。

 理科の学習においては,自然に直接関わることが重要である。

 こうした直接体験を充実するために,それぞれの地域で自然の事物・現象を教材化し,これらの積極的な活用を図ることが求められる。

 中でも,生物,天気,川,土地,天体などの学習においては,学習の対象とする教材に地域差があることを考慮し,その地域の実情に応じて適切に教材を選び,児童が主体的な問題解決の活動ができるように指導の工夫改善を図ることが重要である。

--------------------------------

 野外での学習活動では,自然の事物・現象を断片的に捉えるのではなく,これらの相互の関係を一体的に捉えるようにすることが大切である。

 そのことが,自然を愛する心情や態度などを養うことにもつながる。

 また,野外に出掛け,地域の自然に直接触れることは,学習したことを実際の生活環境と結び付けて考えるよい機会になるとともに,自分の生活している地域を見直し理解を深め,地域の自然への関心を高めることにもなりうる。

--------------------------------

 生物の飼育,栽培活動において,野外で生物を採取する場合には,必要最小限にとどめるなど,生態系の維持に配慮するとともに,生物の体のつくりと働きの精妙さを認識し,生物を愛護しようとする態度を養うことができるようにする。

--------------------------------

 こうした体験は,生命を尊重し,自然環境の保全に寄与する態度の育成につながるものであり,持続可能な社会で重視される環境教育の基盤になるものといえる。

 また,野外での活動に限らず,学校に飼育舎やビオトープなどを設置し,その活用の充実を図る工夫が考えられる。

--------------------------------

 さらに,地域教材を扱う理科の学習では,できるだけ地域の自然と触れ合える野外での学習活動を取り入れるとともに,遠足や野外体験教室,臨海学校などの自然に触れ合う体験活動を積極的に活用することが重要である。

 
 

(4) 天気,川,土地などの指導に当たっては,災害に関する基礎的な理解が図られるようにすること。

 自然の事物・現象の働きなどが,短い期間や限られた空間で起こると,異常な自然現象が発生することがある。

 このことが原因となって,人間との関係で大きな被害をもたらしてしまうことがあり,これが自然災害となる。

 理科においては,自然の事物・現象の働きや規則性などを理解することが大切であり,そのことが自然災害に適切に対応することにつながると考える。

--------------------------------

 理科においては,第5学年「B(3)流れる水の働きと土地の変化」,「B(4)天気の変化」,第6学年「B(4)土地のつくりと変化」において,自然災害について触れることになるが,ここでは,自然災害との関連を図りながら,学習内容の理解を深めることが重要である。

 また,第4学年「B(3)雨水の行方と地面の様子」において,自然災害との関連を図ることが考えられる。

 
 

(5) 個々の児童が主体的に問題解決の活動を進めるとともに,日常生活や他教科等との関連を図った学習活動,目的を設定し,計測して制御するという考え方に基づいた学習活動が充実するようにすること。

 主体的な問題解決の活動とは,一連の問題解決の活動を,児童自らが行おうとすることである。

 理科の学習において,問題解決はこれまでも重視されてきたことであるが,今回の改訂において,小学校理科で育成を目指す資質・能力を育む観点から,自然に親しみ,見通しをもって観察,実験などを行い,その結果を基に考察し,結論を導きだすなどの問題解決の活動の,より一層の充実を図ることが大切である。

--------------------------------

 そこで,主体的な問題解決の活動を進めるために,教師は児童がこれまでにもっていた考えでは説明できない自然の事物・現象を提示するなど,児童自らが自然の事物・現象に興味・関心をもち,問題を見いだす状況をつくる工夫が必要である。

 また,問題解決に対する見通しを明確に意識させるとともに,多様な学習形態を取り入れて児童相互の情報交換も適宜行い,児童自らが問題解決を行うことができる状況をつくることが必要である。

--------------------------------

 また,児童が主体的に問題解決の活動を行う中で,既習の内容や生活経験を基に,根拠のある予想や仮説を発想したり,学習の成果を日常生活との関わりの中で捉え直したり,他教科等で学習した内容と関連付けて考えたりすることで,学習内容を深く理解することができるようになる。

 さらには,学習したことを日常生活との関わりの中で捉え直すことで,理科を学習することの有用性を感じることができ,学習に対する意欲も増進する。

 そのため教師は,各教科等の内容について「カリキュラム・マネジメント」を通じての相互の関連付けや横断を図り,必要な教育内容を組織的に配列し,関係する教科等の内容と往還できるようにすることが大切である。

--------------------------------

 さらに,目的を設定し,計測して制御するといった考え方に基づいた学習活動については,まず,観察,実験などにおいて,その目的を明確に意識することにより,観察,実験の結果を見直し,再度観察,実験を行ったり,解決方法の修正をしたりするといった学習活動の充実を図ることが考えられる。

 また,ものづくりの活動を充実させることが考えられる。

 これまでのものづくりの活動は,その活動を通して解決したい問題を見いだすことや,学習を通して得た知識を活用して,理解を深めることを主なねらいとしてきた。

 今回,学んだことの意義を実感できるような学習活動の充実を図る観点から,児童が明確な目的を設定し,その目的を達成するためにものづくりを行い,設定した目的を達成できているかを振り返り,修正するといったものづくりの活動の充実を図ることが考えられる。

 
 

(6) 博物館や科学学習センターなどと連携,協力を図りながら,それらを積極的に活用すること。

 理科の学習を効果的に行い,学習内容の深い理解を図るために,それぞれの地域にある博物館や科学学習センター,植物園,動物園,水族館,プラネタリウムなどの施設や設備を活用することが考えられる。

 これらの施設や設備は,学校では体験することが困難な自然や科学に関する豊富な情報を提供してくれる貴重な存在である。

 これらの施設や設備の活用に際しては,適切に指導計画に位置付けるとともに,実地踏査や学芸員などとの事前の打合せなどを行い,育成を目指す資質・能力を共有し,指導の充実を図ることが大切である。

 また,最近では学校教育に対して積極的に支援を行っている大学や研究機関,企業などもあり,これらと連携,協力することにより,学習活動を更に充実させていくことが考えられる。

 
 
→ 小学校理科編 目次
→ 中学校理科編 目次
→ 小学校学習指導要領(2017)目次
→ 学習指導要領ナビ
トップページ