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 学校の教育活動全体で行う道徳教育に関わる規定を,学習指導要領「第1章 総則」に示すとともに,「第3章 特別の教科 道徳」について,次のような改善を行った。

 道徳教育の目標と道徳科の目標を,各々の役割と関連性を明確にするため,道徳科の目標を「よりよく生きるための基盤となる道徳性を養う」として,学校の教育活動全体を通じて行う道徳教育の目標と同一であることが分かりやすい表現にするとともに,従前,道徳の時間の目標に定めていた「各教科等との密接な関連」や「計画的,発展的な指導による補充,深化,統合」は,「第3 指導計画の作成と内容の取扱い」に整理した上で,表現を改めた。

 また,

 道徳的価値について
 自分との関わりも含めて理解し,
 それに基づいて内省し,
 多面的・多角的に考え,判断する能力,
 道徳的心情,
 道徳的行為を行うための意欲や態度
 を育てる

という趣旨を明確化するため,

従前の
「道徳的価値の自覚及び
 自己の生き方についての考え
 を深め」ることを,
学習活動を具体化して
「道徳的諸価値についての理解を基に,
 自己を見つめ,
 物事を多面的・多角的に考え,
 自己の生き方についての考えを
 深める学習」
と改めた。

 さらに,
これらを通じて,
よりよく生きていくための
資質・能力を培う

という趣旨を明確化するため,
従前の
「道徳的実践力を育成する」ことを,
具体的に,
「道徳的な判断力,心情,実践意欲と態度を育てる」
と改めた。

 
 

 「道徳科を要として学校の教育活動全体を通じて行う道徳教育の内容は,第3章特別の教科道徳の第2に示す内容とする」との規定を総則に示し,第2に示す内容が道徳科を要とした道徳教育の内容であることを明示した。

 また,小学校から中学校までの内容の体系性を高めるとともに,構成やねらいを分かりやすく示して指導の効果を上げるなどの観点から,それぞれの内容項目に手掛かりとなる「善悪の判断,自律,自由と責任」などの言葉を付記した。

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 内容項目のまとまりを示していた視点については,四つの視点によって内容項目を構成して示すという考え方は従前どおりとしつつ,

これまで
「1 主として自分自身に関すること」
「2 主として他の人との関わりに関すること」
「3 主として自然や崇高なものとの関わりに関すること」
「4 主として集団や社会との関わりに関すること」
の順序で示していた視点を,

児童にとっての対象の広がり
に即して整理し,
「A 主として自分自身に関すること」
「B 主として人との関わりに関すること」
「C 主として集団や社会との関わりに関すること」
「D 主として生命や自然,崇高なものとの関わりに関すること」
として順序を改めた。

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 また,内容項目については主に以下のような改善を図った。

 
 

(ア) 自分のよさを生かし伸ばすことを重視して「自分の特徴に気付くこと」を新たに加えた。

(イ) より主体性をもって努力できるようにするために「自分がやらなければならない勉強や仕事」を「自分のやるべき勉強や仕事」に改めた。

(ア) 正しいと判断したことはしっかりやり抜くことができるようにするため,「勇気をもって行う」を「自信をもって行う」に改めた。

(イ) 自分の安全に気を付けて生活ができるようにするために,「よく考えて行動し,節度のある生活をする」を「安全に気を付け,よく考えて行動し,節度のある生活をする」に改めた。

(ウ) 主体性をもって個性を伸ばすことができるようにするために「よい所を伸ばす」を「長所を伸ばす」に改めた。

(エ) 目標に向かって努力できるようにすることを重視して「自分でやろうと決めたことは,粘り強くやり遂げる」を「目標に向かって,強い意志をもち,粘り強くやり抜く」に改めた。

(ア) 自分の意志に基づいて判断できるようにするために,「自律的で責任のある行動をする」を「自律的に判断し,責任のある行動をする」に改めた。

(イ) 自分の安全に気を付け,生活習慣の意義や大切さなどについての理解を深められるようにするために「生活習慣の大切さを知り」を「安全に気を付けることや,生活習慣の大切さについて理解し」に改めた。

(ウ) 個性の伸長に際して,長所及び短所を明確にするために「悪い所を改めよい所を積極的に伸ばす」を「短所を改め長所を伸ばす」に改めた。

(エ) 目標に向かって不屈の精神をもって努力することができるようにするために「より高い目標を立て,希望と勇気をもってくじけないで努力する」を「より高い目標を立て,希望と勇気をもち,困難があってもくじけずに努力して物事をやり抜く」に改めた。

(オ) 探究心を養うことを重視して「進んで新しいものを求め,工夫して生活をよりよくする」を「物事を探究しようとする心をもつ」に改めた。

 
 

(ア) 親切の対象を広げられるようにするために「幼い人や高齢者など身近にいる人」を「身近にいる人」に改めた。

(イ) 感謝の対象を具体化するために「日ごろ世話になっている人々」を「家族など日頃世話になっている人々」に改めた。

(ア) 主体的に人との関わりを捉えることができるようにするために,「生活を支えている人々や高齢者」を「家族など生活を支えてくれている人々や現在の生活を築いてくれた高齢者」に改めた。

(イ) 自分と異なる立場や考え方などを理解して,望ましい人間関係を構築できるようにすることを重視して,「自分の考えや意見を相手に伝えるとともに,相手のことを理解し,自分と異なる意見も大切にすること」を加えた。

(ア) 現在の生活への感謝の念を深められるようにするために「人々の支え合い」を「家族や過去からの多くの人々の支え合い」に改めた。

(イ) 人間関係を構築できるようにするために「男女仲よく協力し助け合う」を「異性についても理解しながら,人間関係を築いていく」に改めた。

(ウ) 自らの考えをもって他の立場や考えを受け入れることを重視して「自分の考えや意見を相手に伝えるとともに」を加え,「自分と異なる意見や立場を大切にする」を「自分と異なる意見や立場を尊重する」に改めた。

 
 

(ア) 差別や偏見をもつことなく集団や社会との関わりをもてるようにするために「自分の好き嫌いにとらわれないで接すること」を加えた。

(イ) より実感をもって公共の精神の素地を養うようにするために「働くことのよさを感じて」を「働くことのよさを知り」に改めた。

(ウ) 家族の一員として自覚が芽生えるようにするために「家族の役に立つ喜びを知る」を「家族の役に立つ」に改めた。

(エ) 国との関わりを深められるようにするために「郷土の文化や生活に親しみ」を「我が国や郷土の文化と生活に親しみ」に改めた。

(オ) これからのグローバル化に対応する素地を培うために「他国の人々や文化に親しむこと」を加えた。

(ア) 主体性をもってきまりや規則を守ることを重視して「約束や社会のきまりを守り,公徳心をもつ」を「約束や社会のきまりの意義を理解し,それらを守る」に改めた。

(イ) 差別や偏見をもつことなく,より一層集団や社会との関わりをもてるようにするために「誰に対しても分け隔てをせず,公正,公平な態度で接すること」を加えた。

(ウ) 自分と学校との関わりについても考えられるようにするために「楽しい学級をつくる」を「楽しい学級や学校をつくる」に改めた。

(エ) 郷土及び国との関わりに関する内容を統合して「我が国や郷土の伝統と文化を大切にし,国や郷土を愛する心をもつ」に改めた。

(オ) 多様な文化を尊重し,国際親善に努めることを重視して「他国の人々や文化に親しみ,関心をもつ」ことを明記した。

(ア) 主体性をもってきまりや規則を守ることをより一層重視して「公徳心をもって法やきまりを守り」を「法やきまりの意義を理解した上で進んでそれらを守り」に改めた。

(イ) 偏見や差別を許さない態度を重視して「差別をすることや偏見をもつことなく公正,公平にし」を「差別をすることや偏見をもつことなく,公正,公平な態度で接し」に改めた。

(ウ) 奉仕の精神の涵(かん)養を重視して「働くことの意義を理解し,社会に奉仕する喜びを知って公共のために役に立つことをする」を「働くことや社会に奉仕することの充実感を味わうとともに,その意義を理解し,公共のために役に立つことをする」に改めた。

(エ) 「身近な集団に進んで参加し,自分の役割を自覚し,協力して主体的に責任を果たす」ことは,集団や社会との関わりに関するいずれの内容にも関係するため,この趣旨を学校との関わりに関する内容に含めた。

(オ) 学級生活の充実及び学校の様々な集団における役割遂行を重視して「みんなで協力し合いよりよい校風をつくる」を「みんなで協力し合ってよりよい学級や学校をつくるとともに,様々な集団の中での自分の役割を自覚して集団生活の充実に努める」に改めた。

(カ) 日本人としての帰属意識及び社会的な広がりを再考して「郷土や我が国」「郷土や国」を「我が国や郷土」「国や郷土」に改めた。

(キ) 多様な文化を尊重し,国際親善に努めることを重視して「外国の人々や文化を大切にする心をもち,日本人としての自覚をもって世界の人々と親善に努める」を「他国の人々や文化について理解し,日本人としての自覚をもって国際親善に努める」に改めた。

 
 

(ア) 生きていることの証あかしを実感することで生命の尊さを考えられるようにするために「生きることを喜び」を「生きることのすばらしさを知り」に改めた。

(ア) 生命の尊さを自分との関わりで理解できるようにするために「生命の尊さを感じ取り」を「生命の尊さを知り」に改めた。

(イ) 自然との関わりを明確にするために「自然のすばらしさや不思議さに感動し」を「自然のすばらしさや不思議さを感じ取り」に改めた。

(ア) 生命のかけがえのなさについての理解を深められるようにするために「生命がかけがえのないものであることを知り,自他の生命を尊重する」を「生命が多くの生命のつながりの中にあるかけがえのないものであることを理解し,生命を尊重すること」に改めた。

(イ) 畏敬の念の対象を広く捉えられるようにするために「美しいもの」を「美しいものや気高いもの」に改めた。

(ウ) 人間としてのよさを見いだしていくことができるようにするために「よりよく生きようとする人間の強さや気高さを理解し,人間として生きる喜びを感じること」を加えた。

 
 

ア 全体計画及び指導内容の取扱いに関わる事項は「第1章 総則」に移行し,道徳科の年間指導計画に関わる事項を記載した。

 なお,指導計画の創意工夫を生かせるようにするために,一つの内容項目を複数の時間で扱う指導を取り入れるなどの工夫を加えた。

イ これまで目標に示していた各教科等との密接な関連及び補充,深化,統合に関する事項を,指導の配慮事項に移行し,分かりやすい記述に改めた。

ウ 児童が自ら道徳性を養うことへの配慮事項を,自らを振り返ること,道徳性を養うことの意義について,自らが考え,理解することなどを加えて具体的に示した。

エ 児童が多様な感じ方や考え方に接する中で,考えを深め,判断し,表現する力などを育むための言語活動の充実を具体的に示した。

オ 道徳科の特質を生かした指導を行う際の指導方法の工夫例を,問題解決的な学習,道徳的行為に関する体験的な学習等として示した。

カ 指導上の配慮事項として,情報モラルに加えて社会の持続可能な発展などの現代的な課題の取扱いを例示し,取り上げる際の配慮事項を明記した。

キ 多様な教材の開発や活用について具体的に例示するとともに,教材の具備すべき要件を示した。

ク 道徳科の評価に関して,数値などによる評価は行わない点に変わりはないが,学習状況や道徳性に係る成長の様子を継続的に把握し,指導に生かすよう努める必要があることを示した。

 
 
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