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 道徳的価値とは,よりよく生きるために必要とされるものであり,人間としての在り方や生き方の礎となるものである。

 学校教育においては,これらのうち発達の段階を考慮して,児童一人一人が道徳的価値観を形成する上で必要なものを内容項目として取り上げている。

 児童が今後,様々な問題場面に出会った際に,その状況に応じて自己の生き方を考え,主体的な判断に基づいて道徳的実践を行うためには,道徳的価値の意義及びその大切さの理解が必要になる。

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 一つは,内容項目を,人間としてよりよく生きる上で大切なことであると理解することである。

 二つは,道徳的価値は大切であってもなかなか実現することができない人間の弱さなども理解することである。

 三つは,道徳的価値を実現したり,実現できなかったりする場合の感じ方,考え方は一つではない,多様であるということを前提として理解することである。

 道徳的価値が人間らしさを表すものであることに気付き,価値理解と同時に人間理解や他者理解を深めていくようにする。

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 道徳科の中で道徳的価値の理解のための指導をどのように行うのかは,授業者の意図や工夫によるが,自立した人間として他者と共によりよく生きるための基盤となる道徳性を養うには,道徳的価値について理解する学習を欠くことはできない。

 また,指導の際には,特定の道徳的価値を絶対的なものとして指導したり,本来実感を伴って理解すべき道徳的価値のよさや大切さを観念的に理解させたりする学習に終始することのないように配慮することが大切である。

 
 

 道徳的価値の理解について,価値理解,人間理解,他者理解について前述したが,道徳的価値の理解を図るには,児童一人一人がこれらの理解を自分との関わりで捉えることが重要である。

 人間としてよりよく生きる上で大切な道徳的価値を自分のこととして感じたり考えたりすることである。

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 自己を見つめるとは,自分との関わり,つまりこれまでの自分の経験やそのときの感じ方,考え方と照らし合わせながら,更に考えを深めることである。

 このような学習を通して,児童一人一人は,道徳的価値の理解と同時に自己理解を深めることになる。

 また,児童自ら道徳性を養う中で,自らを振り返って成長を実感したり,これからの課題や目標を見付けたりすることができるようになる。

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 道徳科の指導においては,児童が道徳的価値を基に自己を見つめることができるような学習を通して,道徳性を養うことの意義について,児童自らが考え,理解できるようにすることが大切である。

 
 

 よりよく生きるための基盤となる道徳性を養うためには,児童が多様な感じ方や考え方に接することが大切であり,児童が多様な価値観の存在を前提にして,他者と対話したり協働したりしながら,物事を多面的・多角的に考えることが求められる。

 このように物事を多面的・多角的に考える学習を通して,児童一人一人は,価値理解と同時に人間理解や他者理解を深め,更に自分で考えを深め,判断し,表現する力などを育むのである。

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 道徳科においては,児童が道徳的価値の理解を基に物事を多面的・多角的に考えることができるようにすることが大切である。

 道徳的価値の理解は,道徳的価値自体を観念的に理解するのではなく,道徳的価値を含んだ事象や自分自身の体験などを通して,そのよさや意義,困難さ,多様さなどを理解することが求められる。

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 このように,道徳的価値の理解を基に,自己を見つめ,物事を多面的・多角的に考えるという道徳的価値の自覚を深める過程で,道徳的価値を自分なりに発展させていくことへの思いや課題が培われるのである。

 その中で,自己や社会の未来に夢や希望がもてるようにすることが大切である。

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 物事を多面的・多角的に考える指導のためには,物事を一面的に捉えるのではなく,児童自らが道徳的価値の理解を基に考え,様々な視点から物事を理解し,主体的に学習に取り組むことができるようにすることが大切である。

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 なお,例えば,発達の段階に応じて二つの概念が互いに矛盾,対立しているという二項対立の物事を取り扱うなど,物事を多面的・多角的に考えることができるよう指導上の工夫をすることも大切である。

 
 

 児童は,道徳的価値の理解を基に自己を見つめるなどの道徳的価値の自覚を深める過程で,同時に自己の生き方についての考えを深めているが,特にそのことを強く意識させることが重要である。

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 児童が道徳的価値の理解を基に,自己を見つめ,物事を多面的・多角的に考えることを通して形成された道徳的価値観を基盤として,自己の生き方についての考えを深めていくことができるようにすることが大切である。

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 その際,道徳的価値の理解を自分との関わりで深めたり,自分自身の体験やそれに伴う感じ方や考え方などを確かに想起したりすることができるようにするなど,特に自己の生き方についての考えを深めることを強く意識して指導することが重要である。

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 例えば,児童が道徳的価値に関わる事象を自分自身の問題として受け止められるようにする。

 また,他者の多様な感じ方や考え方に触れることで身近な集団の中で自分の特徴などを知り,伸ばしたい自己を深く見つめられるようにする。

 それとともに,これからの生き方の課題を考え,それを自己の生き方として実現していこうとする思いや願いを深めることができるようにすることなどが考えられる。

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 道徳科においては,これらのことが,児童の実態に応じて計画的になされるように様々に指導を工夫していく必要がある。

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 なお,このことは中学校段階において,人間としての生き方についての考えを深めることに発展していく。

 
 
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