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 道徳科の学習指導案は,教師が年間指導計画に位置付けられた主題を指導するに当たって,児童や学級の実態に即して,教師自身の創意工夫を生かして作成する指導計画である。

 具体的には,ねらいを達成するために,道徳科の特質を生かして,何を,どのような順序,方法で指導し,評価し,さらに主題に関連する本時以外の指導にどのように生かすのかなど,学習指導の構想を一定の形式に表現したものである。

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 学習指導案は,教師の指導の意図や構想を適切に表現することが好ましく,各教師の創意工夫が期待される。

 したがって,その形式に特に決まった基準はないが,一般的には次のような事項が取り上げられている。

 
 

(ア) 主題名

 原則として年間指導計画における主題名を記述する。

(イ) ねらいと教材

 年間指導計画を踏まえてねらいを記述するとともに教材名を記述する。

(ウ) 主題設定の理由

 年間指導計画における主題構成の背景などを再確認するとともに,

@ ねらいや指導内容についての教師の捉え方,

A それに関連する児童のこれまでの学習状況や実態と教師の願い,

B 使用する教材の特質やそれを生かす具体的な活用方法

などを記述する。

 記述に当たっては,児童の肯定的な面やそれを更に伸ばしていこうとする観点からの積極的な捉え方を心掛けるようにする。

 また,抽象的な捉え方をするのではなく,児童の学習場面を予想したり,発達の段階や指導の流れを踏まえたりしながら,より具体的で積極的な教材の生かし方を記述するようにする。

(エ) 学習指導過程

 ねらいに含まれる道徳的価値について,児童が道徳的価値についての理解を基に,自己を見つめ,物事を多面的・多角的に考え,自己の生き方についての考えを深めることができるようにするための教師の指導と児童の学習の手順を示すものである。

 一般的には,学習指導過程を導入,展開,終末の各段階に区分し,児童の学習活動,主な発問と予想される児童の発言,指導上の留意点,指導の方法,評価の観点などを指導の流れに即して記述することが多い。

(オ) その他

 例えば,他の教育活動などとの関連,評価の観点,教材分析,板書計画,校長や教頭などの参加,他の教師との協力的な指導,保護者や地域の人々の参加や協力など,授業が円滑に進められるよう必要な事柄を記述する。

 
 
 学習指導案の作成の手順は,それぞれの状況に応じて異なるが,おおむね次のようなことが考えられる。

(ア) ねらいを検討する

 指導の内容や教師の指導の意図を明らかにする。

(イ) 指導の重点を明確にする

 ねらいに関する児童の実態と,それを踏まえた教師の願いを明らかにし,各教科等での指導との関連を検討して,指導の要点を明確にする。

(ウ) 教材を吟味する

 教科用図書や副読本等の教材について,授業者が児童に考えさせたい道徳的価値に関わる事項がどのように含まれているかを検討する。

(エ) 学習指導過程を構想する

 ねらい,児童の実態,教材の内容などを基に,授業全体の展開について考える。

 その際,児童がどのような問題意識をもって学習に臨み,ねらいとする道徳的価値を理解し,自己を見つめ,多様な感じ方や考え方によって学び合うことができるのかを具体的に予想しながら,それらが効果的になされるための授業全体の展開を構想する。

 また,学習指導過程の構想に当たっては,指導の流れ自体が,特定の価値観を児童に教え込むような展開となることのないよう,児童が道徳的価値に関わる事象を主体的に考え,また,児童同士の話合いを通してよりよい生き方を導き出していくというような展開も効果的である。

 
 

 学習指導案の作成に当たっては,これらの手順を基本としながらも,さらに,児童の実態,指導の内容や意図等に応じて工夫していくことが求められる。

 特に,重点的な指導や体験活動を生かす指導,複数時間にわたる指導,多様な教材の活用,校長や教頭などの参加,他の教師との協力的な指導,保護者や地域の人々の参加や協力などの工夫が求められることから,多様な学習指導案を創意工夫していくことが求められる。

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 学習指導案は,誰が見てもよく分かるように形式や記述を工夫するとともに,研修等を通じてよりよいものへと改善し,次回の指導に生かせるように学校として蓄積していくことも大切である。

 
 
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