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(2) 教材については,教育基本法や学校教育法その他の法令に従い,次の観点に照らし適切と判断されるものであること。

ア 児童の発達の段階に即し,ねらいを達成するのにふさわしいものであること。

イ 人間尊重の精神にかなうものであって,悩みや葛藤等の心の揺れ,人間関係の理解等の課題も含め,児童が深く考えることができ,人間としてよりよく生きる喜びや勇気を与えられるものであること。

ウ 多様な見方や考え方のできる事柄を取り扱う場合には,特定の見方や考え方に偏った取扱いがなされていないものであること。

 道徳科では,児童が様々な場面において道徳的価値を実現できるようにするための道徳性を養うことができるような指導を行うことが重要である。

 道徳科の授業は,言うまでもなく学習指導要領に基づいて行われるものであることから,授業で活用する教材は,教育基本法や学校教育法その他の法令はもとより,学習指導要領に準拠したものが求められる。

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 道徳科に生かす教材は,児童が道徳的諸価値についての理解を基に,自己を見つめ,物事を多面的・多角的に考え,自己の生き方についての考えを深める学習に資するものでなければならない。

 また,児童が人間としての在り方や生き方などについて多様に感じ,考えを深め,互いに学び合う共通の素材として重要な役割をもっている。

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 したがって,道徳科に用いられる教材の具備する要件として,次の点を満たすことが大切である。

 
 

 児童が教材の内容を把握して道徳的価値の理解を図ったり,自己を見つめたりすることができるように,児童の発達の段階に即した内容,表現であることが求められる。

 また,児童が学習に一層興味・関心を深め,意欲的に学習に取り組みたくなる内容や表現であることがふさわしい。

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 その上で,道徳科においては一定の道徳的価値を含んだねらいを達成するための授業を展開することから,教材には適切な道徳的価値に関わる事象や人物が取り上げられていることが必要である。

 なお,その際,学習指導要領に準じ,年間を通じて計画的,発展的に道徳的諸価値や児童の振り返りを指導できるように,教材が全体として調和的に開発・整備されることが必要である。

 
 

 人間尊重の精神は,
 道徳教育を推進する上での留意事項
 として
 一貫して述べられていることであり,

 生命の尊重,
 人格の尊重,
 基本的人権,
 思いやりの心
 などの根底を貫く
 国境や文化なども超えた
 普遍的な精神である。

 民主的な社会においては,

 人格の尊重は,
 自己の人格のみではなく,
 他の人々の人格をも
 尊重することであり,

 また,
 権利の尊重は,
 自他の権利の主張を認めるとともに,
 権利の尊重を自己に課す
 という意味で,
 互いに義務と責任を果たすこと
 を求めるものである。

 しかもこれらは,
 相互に人間を尊重し信頼し合う
 思いやりの心
 などによって
 支えられていなければならない。

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 道徳科の教材では,

 児童の内面に形成されていく
 自己及び他者の人格に対する認識
 を普遍的な精神へと高める

 と同時に,
 それを具体的な人間関係の中で生かし,

 それによって
 人格の内面的な充実を図る

 という趣旨に基づいて,
 国際的な視野も含めて
 広く「人間尊重の精神」という言葉を
 理解した上で,
 題材の選択等を行う必要がある。

 
 

 道徳科の授業における指導の
 目指すものは,

 個々の道徳的行為や
 日常生活の問題処理
 に終わるものではなく,

 児童自らが
 時と場に応じて
 望ましい道徳的実践が行えるような
 内面的資質
 を高めることにある。

 つまり,
 道徳科の学習では,

 道徳的価値についての
 単なる知的理解
 に終始したり,
 行為の仕方を
 一方的に指導したりする
 時間ではなく,

 ねらいとする道徳的価値について
 児童自身が
 どのように捉え,
 どのような葛藤があるのか,

 また道徳的価値を実現することに
 どのような意味を
 見いだすことができるのかなど,

 道徳的価値を
 自己との関わりにおいて捉える
 必要がある。

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 したがって,
 道徳科の教材の作成に当たっては,
 例えば,

 体験活動や日常生活を振り返り
 道徳的価値の意義や大切さを
 考えることができる教材,

 今日的な課題について
 深く考えることができる教材,

 学級や学校生活における
 具体的事柄や葛藤など
 の課題について
 深く考えることができる教材など,

 児童が道徳的価値について
 深く考え,
 道徳的価値を自覚できるよう
 題材の選択,構成の工夫等に
 努めなければならない。

 
 

 道徳科の学習は,
 「人生いかに生きるべきか」
 という生き方の問いを考える
 と言い換えることができ

 道徳科の指導においては,
 児童のよりよく生きようとする願い
 に応えるために,
 児童と教師が共に考え,
 共に探求していくことが前提となる。

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 したがって,
 道徳科の教材の作成に当たっては,
 例えば,

 先人の多様な生き方が織り込まれ,
 生きる勇気や知恵などを感じる教材,

 人間としての弱さを吐露する姿等
 にも接し,
 生きることの魅力や意味の深さ
 について
 考えを深めることができる教材,

 児童の感性に訴え,
 感動を呼ぶ教材など,

 人間としての生き方に迫ること
 ができるよう
 題材の選択,構成の工夫等に
 努めなければならない。

 
 

 道徳科では,様々な課題に対応していくために,人としての生き方や社会の在り方について,多様な価値観の存在を前提にして,他者と対話し協働しながら,物事を多面的・多角的に考えることを求めている。

 したがって,時に対立がある場合も含めて多様な見方や考え方のある事象や,多様な生き方が織り込まれ,生きる勇気や知恵などを感じられる人物などを取り扱うことは非常に有効であると考えられる。

 一方で,公教育として道徳科の指導を行う上でもっとも大切なことは,活用する教材が特定の価値観に偏しないことであり,多様な見方や考え方のある事柄を取り扱う場合には,特定の見方や考え方に偏った取扱いがなされていないか検討する必要がある。

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 なお,教科用図書以外の教材を使用するに当たっては,「学校における補助教材の適正な取扱いについて」(平成27年3月4日 初等中等教育局長通知)など,関係する法規等の趣旨を十分に理解した上で,適切に使用することが重要である。

 
 
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