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 総合的な学習の時間で育成することを目指す資質・能力については,他教科等と同様に,総則に示された「知識及び技能」,「思考力,判断力,表現力等」,「学びに向かう力,人間性等」という三つの柱から明示された。

(1) 探究的な学習の過程において,課題の解決に必要な知識及び技能を身に付け,課題に関わる概念を形成し,探究的な学習のよさを理解するようにする。

 総合的な学習の時間の内容は,後述のように各学校において定めるものである。

 このため,従来は,総合的な学習の時間において身に付ける資質・能力として,どのような知識を身に付けることが必要かということについては,具体的に示されてこなかった。

 しかし,この時間の学習を通して児童が身に付ける知識は質・量ともに大きな意味をもつ。

 探究的な見方・考え方を働かせて,教科等横断的・総合的な学習に取り組むという総合的な学習の時間だからこそ獲得できる知識は何かということに着目することが必要である。

 総合的な学習の時間における探究の過程では,児童は,教科等の枠組みを超えて,長時間じっくり課題に取り組む中で,様々な事柄を知り,様々な人の考えに出会う。

 その中で,具体的・個別的な事実だけでなく,それらが複雑に絡み合っている状況についても理解するようになる。

 その知識は,教科書や資料集に整然と整理されているものを取り込んで獲得するものではなく,探究の過程を通して,自分自身で取捨・選択し,整理し,既にもっている知識や体験と結び付けながら,構造化し,身に付けていくものである。

 こうした過程を経ることにより,獲得された知識は,実社会・実生活における様々な課題の解決に活用可能な生きて働く知識,すなわち概念が形成されるのである。

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 各教科等においても,「主体的・対話的で深い学び」を通して,事実的な知識から概念を獲得することを目指すものである。

 総合的な学習の時間では,各教科等で習得した概念を実生活の課題解決に活用することを通して,それらが統合され,より一般化されることにより,汎用的に活用できる概念を形成することがで きる。

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 技能についても同様である。

 課題の解決に必要な技能は,例えば,インタビューのときには,聞くべきことを場合分けしながら計画する技能,資料を読み取るときには,大事なことを読み取ってまとめる技能,稲刈りなどの体験をするときには,安全に気を付けて体を動かす技能などが考えられる。

 こうした技能は,各教科等の学習を通して,事前にある程度は習得されていることを前提として行われつつ,探究を進める中でより高度な技能が求められるようになる。

 このような必要感の中で,注意深く体験を積んで,徐々に自らの力でできるようになり身体化されていく。

 技能と技能が関連付けられて構造化され,統合的に活用されるようにもなる。

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 探究的な学習のよさを理解するということは,探究的な学習はよいものだというようなことを児童が観念的に説明できるようになることを目指すものではない。

 総合的な学習の時間だけではなく,様々な場面で児童自らが探究的に学習を進めるようになることが,そのよさを理解した証となる。

 そのためには,この時間で行う探究的な学習が,学習全般や生活と深く関わっていることや学びという営みの本質であることへの気付きを大事にすることが欠かせない。

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 一方で,身に付けた知識及び技能や思考力,判断力,表現力等が総合的に活用,発揮されることが,探究的な学習のよさでもある。

 学んだことの有用性を実感するためにも,他教科等とこの時間との資質・能力の関連を,児童自身が見通せるようにする必要がある。

 そのためにも,学習を進める中で,その関連を明示していくことや,学習においてどのような関連が実現されたのかを振り返ることなどが考えられる。

 
 

(2) 実社会や実生活の中から問いを見いだし,自分で課題を立て,情報を集め,整理・分析して,まとめ・表現することができるようにする。

 育成を目指す資質・能力の
 三つの柱のうち,
 主に「思考力,判断力,表現力等」に
 対応するものとしては,

 実社会や実生活の中から
 問いを見いだし,
 自分で課題を立て,
 情報を集め,整理・分析して,
 まとめ・表現するという,
 探究的な学習の過程において
 発揮される力を示している。

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 具体的には,
 身に付けた「知識及び技能」の中から,
 当面する課題の解決に必要なものを
 選択し,
 状況に応じて適用したり,
 複数の「知識及び技能」を
 組み合わせたりして,
 適切に活用できるようになっていくこと
 と考えることができる。

 

 なお,
 教科等横断的な情報活用能力や
 問題発見・解決能力
 を構成している
 個別の「知識及び技能」や,
 各種の「考えるための技法」も,

 単にそれらを習得している段階から
 更に一歩進んで,
 課題や状況に応じて
 選択したり,
 適用したり,
 組み合わせたりして
 活用できるようになっていくことが,

 「思考力,判断力,表現力等」の具体
 と考えることができる。

 

 こうしたことを通して,
 知識や技能は,
 既知の限られた状況において
 のみならず,
 未知の状況においても
 課題に応じて
 自在に駆使できるものとなっていく。

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 このように,
 「思考力,判断力,表現力等」は,
 「知識及び技能」とは
 別に存在していたり,
 「知識及び技能」を抜きにして
 育成したりできるものではない。

 いかなる課題や状況に対しても,
 「知識及び技能」が
 自在に駆使できるものとなるよう
 指導を工夫することこそが
 「思考力,判断力,表現力等」の育成
 の具体
にほかならない。

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 そのためにも,

 情報活用能力や
 問題発見・解決能力を
 構成する個別の
 「知識及び技能」,
 「考えるための技法」
 に出会い,親しみ,
 必要に応じて身に付けられる
 ような機会を,

 総合的な学習の時間や
 他教科等の中で,
 意図的・計画的・組織的に設けること
 等の配慮や工夫が重要になってくる。

 

 あるいは,
 総合的な学習の時間においては,

 探究的な学習の過程を通す
 というこの時間の趣旨を生かして,

 課題を解決したいという
 児童の必要感を前提に,

 その解決の過程に適合する
 「知識及び技能」を
 教師が指導する
 という方法もあり得る。

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 そのようにして身に付けた
 「知識及び技能」は,

 様々な課題の解決において
 活用・発揮され,
 うまくいったり
 うまくいかなかったりする
 経験を経ながら,

 学んだ当初とは異なる状況においても
 自在に駆使できるようになっていく。

 このことが,
 個別の「知識及び技能」の習得
 という段階を超えた,
 「思考力,判断力,表現力等」の育成
 という段階である。

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 このような資質・能力については,
 やり方を教えられて覚える
 ということだけでは
 育まれないものである。

 実社会や実生活の課題について

 探究のプロセス

  (@ 課題の設定

 →A情報の収集

 →B整理・分析

 →Cまとめ・表現)

 を通して,

 児童が
 実際に考え,判断し,表現すること
 を通して身に付けていく
ことが
 大切になる。

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 実社会や実生活には,解決すべき問題が多方面に広がっている。

 その問題は,複合的な要素が入り組んでいて,答えが一つに定まらず,容易には解決に至らないことが多い。

 自分で課題を立てるとは,そうした問題と向き合って,自分で取り組むべき課題を見いだすことである。

 この課題は,解決を目指して学習するためのものである。

 その意味で課題は,児童が解決への意欲を高めるとともに,解決への具体的な見通しをもてるものであり,そのことが主体的な課題の解決につながっていく。

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 課題は,問題をよく吟味して児童が自分でつくり出すことが大切である。

 例えば,日頃から解決すべきと感じていた問題を改めて見つめ直す,具体的な事象を比較したり,関連付けたりして,そこにある矛盾や理想との隔たりを認識することなどが考えられる。

 また,地域の人やその道の専門家との交流も有効である。

 そこで知らなかった事実を発見したり,その人たちの真剣な取組や生き様に共感したりして,自分にとって一層意味や価値のある課題を見いだすことも考えられる。

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 課題の解決に向けては,自分で情報を集めることが欠かせない。

 自分で,何が解決に役立つかを見通し,足を運んだり,情報手段を意図的・計画的に用いたり,他者とのコミュニケーションを通したりして情報を集めることが重要である。

 調べていく中で,探究している課題が,社会で解決が求められている切実な問題と重なり合っていることを知り,さらにそれに尽力している人と出会うことにより,問題意識は一層深まる。

 同一の学習対象でも,個別に追究する児童の課題が多様であれば,互いの情報を結び合わせて,現実の問題の複雑さや総合性に気付くこともある。

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 収集した情報は,整理・分析する。

 整理は,課題の解決にとってその情報が必要かどうかを判断し取捨選択することや,解決の見通しにしたがって情報を順序よく並べたり,書き直したりすることなどを含む。

 分析は,整理した情報を基に,比較・分類したりして傾向を読み取ったり,因果関係を見付けたりすることを含む。

 複数の情報を組み合わせて,新しい関係性を創り出すことも重要である。

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 整理・分析された情報からは,自分自身の意見や考えをまとめて,それを表現する。

 他者との相互交流や表現による振り返りを通して,課題が更新されたり,新たに調べることを見いだしたり,意見や考えが明らかになったりする。

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 これらの各プロセスで発揮される資質・能力の育成が期待されている。

 それは,探究のプロセスが何度も繰り返される中で確実に育っていくものと考えることができる。

 
 

(3) 探究的な学習に主体的・協働的に取り組むとともに,互いのよさを生かしながら,積極的に社会に参画しようとする態度を養う。

 探究的な学習では,児童が,身近な人々や社会,自然に興味・関心をもち,それらに意欲的に関わろうとする主体的,協働的な態度が欠かせない。

 探究的な学習に主体的に取り組むというのは,自らが設定した課題の解決に向けて真剣に本気になって学習活動に取り組むことを意味している。

 それは,解決のために,見通しをもって,自ら計画を立てて学習に向かう姿でもある。

 具体的には,どのように情報を集め,どのように整理・分析し,どのようにまとめ・表現を行っていくのかを考え,実際に社会と関わり,行動していく姿として表れるものと考えられる。

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 課題の解決においては,主体的に取り組むこと,協働的に取り組むことが重要である。

 なぜなら,それがよりよい課題の解決につながるからである。

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 総合的な学習の時間で育成することを目指す資質・能力は,よりよく課題を解決し,自分の生き方を考えるための資質・能力である。

 こうした資質・能力を育むためには,自ら問いを見いだし,課題を立て,よりよい解決に向けて主体的に取り組むことが重要である。

 他方,複雑な現代社会においては,いかなる問題についても,一人だけの力で何かを成し遂げることは困難である。

 これが協働的に探究を進めることが求められる理由である。

 例えば,他の児童と協働的に取り組むことで,学習活動が発展したり課題への意識が高まったりする。

 異なる見方があることで解決への糸口もつかみやすくなる。

 また,他者と協働的に学習する態度を育てることが,求められているからでもある。

 このように,探究的な学習においては,他者と協働的に取り組み,異なる意見を生かして新たな知を創造しようとする態度が欠かせない。

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 こうして探究的な学習に主体的・協働的に取り組む中で,互いの資質・能力を認め合い,相互に生かし合う関係が期待されている。

 また,探究的な学習の中で児童が感じる手応えは,一人一人の意欲や自信となり次の課題解決を推進していく。

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 このように,総合的な学習の時間を通して,自ら社会に関わり参画しようとする意志,社会を創造する主体としての自覚が,一人一人の児童の中に徐々に育成されることが期待されているのである。

 実社会や実生活の課題を探究しながら,自己の生き方を問い続ける姿が一人一人の児童に涵養されることが求められているのである。

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 この「学びに向かう力,人間性等」については,よりよい生活や社会の創造に向けて,自他を尊重すること,自ら取り組んだり異なる他者と力を合わせたりすること,社会に寄与し貢献することなどの適正かつ好ましい態度として「知識及び技能」や「思考力,判断力,表現力等」を活用・発揮しようとすることと考えることができる。

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 これら育成を目指す資質・能力の三つの柱は,個別に育成されるものではなく,探究的な学習において,よりよい課題の解決に取り組む中で,相互に関わり合いながら高められていくものとして捉えておく必要がある。

 
 
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