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 各学校は,第1に示された総合的な学習の時間の目標を踏まえて,各学校の総合的な学習の時間の目標や内容を適切に定めて,創意工夫を生かした特色ある教育活動を展開する必要がある。

 ここに総合的な学習の時間の大きな特質がある。

 こうした特質を踏まえ,今回の改訂では,各学校において定める目標や内容についての考え方について,「第3 指導計画の作成及び内容の取扱い」から「第2 各学校において定める目標及び内容」へと移すことで,より明確に示すこととした。

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 本章では,各学校において定める目標及び内容を設定していく際の基本的な考え方と留意すべき点について述べる。

 なお,本章及び第4章で解説する,学習指導要領第5章総合的な学習の時間の各規定の相互の関係については,下図のように示すことができる。

第5章 総合的な学習の時間の構造
イメージ(小学校)

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1 目標

 各学校においては,第1の目標を踏まえ,各学校の総合的な学習の 時間の目標を定める。

 各学校においては,第1の目標を踏まえ,各学校の総合的な学習の時間の目標を定め,その実現を目指さなければならない。

 この目標は,各学校が総合的な学習の時間での取組を通して,どのような児童を育てたいのか,また,どのような資質・能力を育てようとするのか等を明確にしたものである。

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 各学校において総合的な学習の時間の目標を定めるに当たり,第1の目標を踏まえとは,本解説第2章で解説した第1の目標の趣旨を適切に盛り込むということである。

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 具体的には,第1の目標の構成に従って,以下の二つを反映させることが,その要件となる。

(1) 「探究的な見方・考え方を働かせ,横断的・総合的な学習を行うことを通して」,「よりよく課題を解決し,自己の生き方を考えていくための資質・能力を育成することを目指す」という,目標に示された二つの基本的な考え方を踏まえること。

(2) 育成を目指す資質・能力については,「育成すべき資質・能力の三つの柱」である「知識及び技能」,「思考力,判断力,表現力等」,「学びに向かう力,人間性等」の三つのそれぞれについて,第1の目標の趣旨を踏まえること。

 各学校において定める総合的な学習の時間の目標は,第1の目標を適切に踏まえて,この時間全体を通して各学校が育てたいと願う児童の姿や育成を目指す資質・能力,学習活動の在り方などを表現したものになることが求められる。

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 その際,上記の二つの要件を適切に反映していれば,これまで各学校が取り組んできた経験を生かして,各目標の要素のいずれかを具体化したり,重点化したり,別の要素を付け加えたりして目標を設定することが考えられる。

 なお,各学校における目標の設定に当たって配慮すべき事項については,改めて本章第3節で述べる。

 また,各学校における目標の設定の手順や方法については,本解説第5章第2節で詳しく解説する。

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 各学校において目標を定めることを求めているのは,

@ 各学校が創意工夫を生かした探究的な学習や横断的・総合的な学習を実施することが期待されているからである。

 それには,地域や学校,児童の実態や特性を考慮した目標を,各学校が主体的に判断して定めることが不可欠である。

 また,

A 各学校における教育目標を踏まえ,育成を目指す資質・能力を明確に示すことが望まれているからである。

 これにより,総合的な学習の時間が各学校のカリキュラム・マネジメントの中核になることが今まで以上に明らかとなった。

 そして,

B 学校として教育課程全体の中での総合的な学習の時間の位置付けや他教科等の目標及び内容との違いに留意しつつ,この時間で取り組むにふさわしい内容を定めるためである。

 

 このように,各学校において総合的な学習の時間の目標を定めるということには,主体的かつ創造的に指導計画を作成し,学習活動を展開するという意味がある。

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 なお,総合的な学習の時間が充実するために,中学校との接続を視野に入れ,連続的かつ発展的な学習活動が行えるよう目標を設定することも重要である。

 
 

2 内容

 各学校においては,第1の目標を踏まえ,各学校の総合的な学習の時間の内容を定める。

 各学校においては,第1の目標を踏まえ,各学校の総合的な学習の時間の内容を定めることが求められている。

 総合的な学習の時間では,各教科等のように,どの学年で何を指導するのかという内容を学習指導要領に明示していない。

 これは,各学校が,第1の目標の趣旨を踏まえて,地域や学校,児童の実態に応じて,創意工夫を生かした内容を定めることが期待されているからである。

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 今回の改訂において,
 総合的な学習の時間については,
 内容の設定に際し,

 「目標を実現するにふさわしい
  探究課題」,

 「探究課題の解決を通して
  育成を目指す
  具体的な資質・能力」

 の二つを定める必要があるとされた。

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 目標を実現するにふさわしい探究課題
 とは,

 目標の実現に向けて
 学校として設定した,
 児童が探究的な学習に取り組む課題
 であり,
 従来「学習対象」として
 説明されてきたもの
 に相当する。

 

 つまり,
 探究課題とは,
 探究的に関わりを深める人・もの・こと
 を示したものである。

 具体的には,例えば

 「身近な自然環境と
  そこで起きている環境問題」,

 「地域の伝統や文化と
  その継承に力を注ぐ人々」,

 「実社会で働く人々の姿と自己の将来」

 などが考えられる。

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 一方,
 探究課題の解決を通して育成を目指す
 具体的な資質・能力とは,

 各学校において定める目標に
 記された資質・能力を
 各探究課題に即して
 具体的に示したものであり,

 教師の適切な指導の下,
 児童が各探究課題の解決に
 取り組む中で,
 育成することを目指す資質・能力
 のことである。

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 このように,

 総合的な学習の時間の内容は,

 目標を実現するにふさわしい
 探究課題と,

 探究課題の解決を通して育成を目指す
 具体的な資質・能力

 の二つによって構成される。

 

 両者の関係については,

 目標の実現に向けて,
 児童が「何について学ぶか」
 を表したものが
 探究課題であり,

 各探究課題との関わりを通して,
 具体的に
 「どのようなことができるようになるか」
 を明らかにしたものが
 具体的な資質・能力

 という関係になる。

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 また,各学校においては,内容を指導計画に適切に位置付けることが求められる。

 その際,学年間の連続性,発展性や中学校との接続,他教科等の目標及び内容との違いに留意しつつ,他教科等で育成を目指す資質・能力との関連を明らかにして,内容を定めることが重要である。

 なお,それぞれの設定に当たって配慮すべき事項等については,改めて本章第3節で述べる。

 また,各学校における内容の設定の手順や方法については,本解説第5章第3節で詳しく解説する。

 
 
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