総合的な学習の時間で重視する
体験活動は,
自分の身体を通して
外界の事物や事象に働きかけ
学んでいくものである。
具体的には,
視覚,聴覚,味覚,嗅覚,触覚
といった諸感覚を働かせて,
あるいは組み合わせて,
外界の事物や現象に働きかけ
学んでいく。
このように,
児童が身体全体で対象に働きかけ
実感をもって関わっていく活動
が体験活動である。
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前回の改訂において,
体験活動は
言語活動と共に重要なもの
として位置付けられた。
また,今回の改訂では,
第1章総則の第3の1の(5)において,
「児童が
生命の有限性や
自然の大切さ,
主体的に挑戦してみることや
多様な他者と協働すること
の重要性
などを実感しながら理解する
ことができるよう,
各教科等の特質に応じた体験活動
を重視し,
家庭や地域社会と連携しつつ
体系的・継続的に実施できるよう
工夫すること。」
とされた。
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児童は,
人々や社会,自然と関わる体験活動
を通して,
自分と向き合い,
他者に共感することや
社会の一員であること
を実感する。
また,
自然の偉大さや美しさに出会ったり,
文化・芸術に触れたり,
社会事象への関心を高め
問題を発見したり,
友達との信頼関係を築いて
物事を考えたりする
などして,
喜びや達成感を味わう。
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こうしたことから,
総合的な学習の時間では,
一定の知識を
覚え込ませるのではなく,
探究課題の特質や,
育成したい資質・能力を見通して,
直接的な体験を
探究的な学習の過程に,
適切に位置付ける必要がある。
例えば,
環境について学ぶ過程において
自然に関わる体験活動を行ったり,
福祉について学ぶ過程において
ボランティア活動など
社会と関わる体験活動を行ったり,
地域について学ぶ過程において
ものづくりや生産,文化や芸術
に関わる体験活動などを行うこと
が考えられる。
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同様の趣旨から,
総合的な学習の時間における
学習活動は,
以下のような学習活動を
積極的に行う必要がある。
例えば,
事象を精緻に観察すること,
科学的な見方で仮説を立て,
実験し,検証すること,
実際に事象を見学したり,
事実を確かめるために
調査したりすることなどを行い,
情報の収集を行うこと。
また,
そうした情報をまとめて整理したり,
関連付けたりする
発表や討論を行うこと。
これらの学習活動によって
学習の深まりが期待できる。
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例えば,
環境に関する探究課題を
設定した場合,
自然に対する豊かな感受性や
生命を尊重する精神,
環境に対する関心等は,
身近な自然に浸る時間を確保し,
飼育・栽培や自然観察などの活動を
実際に行わなければ培えない。
また,
ボランティア活動などの社会体験が,
環境の保全や
よりよい環境の創造
のために働く人々
への共感を生み,
主体的に行動する
実践的な資質・能力
を育成することにつながる。
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さらに,
環境問題をより科学的に認識する
ためには,
温室効果を確かめる実験や
風車をつくって発電する実験
などをしたり,
環境保全に関わる機関に
見学に行ったりする
活動が効果的である。
また,
自分たちが
深く環境問題と関わっていること
を実感するためには,
家庭や学校での
水の使用量や,
排出するゴミの種類と量
を調査するような活動
が有効である。
こうして
調べたことや
実験などで分かったことを
発表・討論させることを通して,
具体的に
どのように行動を変えればよいのか
を考えさせたり
それを深めたりすること
が実現できるのである。
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なお,
体験的な学習を展開する
に当たっては,
児童の発達の特性を踏まえ,
目標や内容に沿って
適切かつ効果的なものとなるよう
工夫するとともに,
児童をはじめ
教職員や外部の協力者などの
安全確保,
健康や衛生等の管理
に十分配慮することが求められる。 |