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 各学校においては,第1の目標を踏まえ,各学校の総合的な学習の時間の目標を定め,その実現を目指さなければならない。

 この目標は,各学校が総合的な学習の時間での取組を通して,どのような児童を育てたいのか,また,どのような資質・能力を育てようとするのかなどを明確にしたものである。

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 各学校において総合的な学習の時間の目標を定めるに当たり,「第1の目標を踏まえ」とは,本解説第2章で解説した第1の目標の趣旨を適切に盛り込むということである。

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 具体的には,第1の目標の構成に従って,以下の2点を踏まえることが必要となる。

(1) 「探究的な見方・考え方を働かせ,横断的・総合的な学習を行うことを通すこと」,「よりよく課題を解決し,自己の生き方を考えていくための資質・能力を育成すること」という,目標に示された二つの基本的な考え方を踏襲すること。

(2) 育成を目指す資質・能力については,「育成すべき資質・能力の三つの柱」である「知識及び技能」,「思考力,判断力,表現力等」,「学びに向かう力,人間性等」の三つのそれぞれについて,第1の目標の趣旨を踏まえること。

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 各学校において定める総合的な学習の時間の目標は,第1の目標を適切に踏まえて,この時間全体を通して,各学校が育てたいと願う児童像や育成を目指す資質・能力,学習活動の在り方などを表現したものになることが求められる。

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 各学校においては,第1の目標の趣旨をしっかりと踏まえつつ,地域や学校,児童の実態や特性を考慮した目標を,創意工夫を生かして独自に定めていくことが望まれている。

 上記の点を適切に反映した上で,これまで各学校が取り組んできた経験を生かして,各目標の要素のいずれかを具体化したり,重点化したり,別の要素を付け加えたりして目標を設定することが考えられる。

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 目標の記述の仕方については決まった型があるわけではないが,例えば,以下のような示し方が考えられる。

 探究的な見方・考え方を働かせ,地域の人,もの,ことに関わる総合的な学習を通して,目的や根拠を明らかにしながら課題を解決し,自己の生き方を考えることができるようにするために,以下の資質・能力を育成する。

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(1) 地域の人,もの,ことに関わる探究的な学習の過程において,課題の解決に必要な知識及び技能を身に付けるとともに,地域の特徴やよさに気付き,それらが人々の努力や工夫によって支えられていることに気付く。

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(2) 地域の人,もの,ことの中から問いを見いだし,その解決に向けて仮説を立てたり,調査して得た情報を基に考えたりする力を身に付けるとともに,考えたことを,根拠を明らかにしてまとめ・表現する力を身に付ける。

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(3) 地域の人,もの,ことについての探究的な学習に主体的・協働的に取り組むとともに,互いのよさを生かしながら,持続可能な社会を実現するための行動の仕方を考え,自ら社会に参画しようとする態度を育てる。

 この例では,「地域の人,もの,ことに関わる」ことを明記することで,目標の具体化を図っている。

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 また,第1の目標における「よりよく課題を解決し」について,その中身を「目的や根拠を明らかにしながら課題を解決し」として重点化している。

 同様に(2)においても,「考えたことを,根拠を明らかにしてまとめ・表現する力を身に付ける」と対応した重点化が図られている。

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 さらに,(1)では,第1の目標における「課題に関する概念を形成し,探究的な学習のよさを理解するようにする」を「地域の特徴やよさに気付き,それらが人々の努力や工夫によって支えられていることに気付く」と具体化している。

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 また,(3)では,「学びに向かう力,人間性等」について,「持続可能な社会を実現するための行動の仕方を考え,自ら社会に参画しようとする態度を育てる」を付加している。

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 各学校における目標の設定に際しては,既に各学校において機能している目標については,第1の目標及び各学校における教育目標を踏まえ検討するところから始めることも考えられる。

 どちらにしても,各学校における実践の成果を発展させるという姿勢で取り組むことが大切である。

 実際の作業を進めていく中で多くの学校が直面するのは,詳しく書こうとすればするほど文章が長くなってしまい,全体としての意味の把握が難しくなるという問題である。

 重要なことは,適切な分量の中で各学校が大切にしたいことを,分かりやすい表現で盛り込むように工夫することである。

 そのためにも,具体的な児童の姿をイメージしながら,各学校の実態に応じた目標の記述となるよう,校内での議論を尽くしていくことが重要である。

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 ここまで述べてきた目標を作成する作業に先立って,各学校においては,総合的な学習の時間で育成したいものを明確化する必要がある。

 具体的には,各学校における教育目標ないしは育てたい児童像のうち,他教科等で実現を目指している部分を確認した上で,総合的な学習の時間で育てたい児童の姿を明らかにしていく。

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 その際,以下の点について考慮することが重要である。

・ 児童の実態

・ 地域の実態

・ 学校の実態

・ 児童の成長に寄せる保護者の願い

・ 児童の成長に寄せる地域の願い

・ 児童の成長に寄せる教職員の願い

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 これらは既に校内で明らかにされ,学校教育目標や育てたい児童像の中に盛り込まれているはずである。

 今回の改訂により,改めて示された目標の趣旨を踏まえて,その観点から検討し直す必要がある。

 
 
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