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 探究課題の解決を通して育成を目指す具体的な資質・能力とは,各学校において定める目標に記された資質・能力を各探究課題に即して具体化したものであり,児童が各探究課題の解決に取り組む中で,教師の適切な指導により実現を目指す資質・能力のことである。

 したがって,探究課題の解決を通して育成を目指す具体的な資質・能力には,各学校の目標が実現された際に現れる望ましい児童の成長の姿が示されることになる。

 各学校において定める目標と,探究課題の解決を通して育成を目指す具体的な資質・能力の二つにより,この時間の教育活動を通して「どんな児童を育てたいか」を明示することになる。

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 これまでは,総合的な学習の時間において「育てようとする資質や能力及び態度」として,育成を目指す資質・能力・態度としては,「学習方法に関すること」,「自分自身に関すること」,「他者や社会とのかかわりに関すること」の三つの視点を参考にして例示されていた。

 この視点は,全国の実践事例を整理する中で見いだされてきたものであるとともに,OECD が示した主要能力(キー・コンピテンシー)にも符合している。

 各学校においては,三つの視点を参考にして「育成を目指す資質・能力」を明らかにし,その育成に向けて取り組み,成果を上げてきた。

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 今回の改訂では,こうした趣旨を受け継ぎつつ,資質・能力の三つの柱に沿って,この時間における探究課題の解決を通して育成を目指す具体的な資質・能力について各学校で明らかにしていく。

 
 

 探究的な学習の過程において,
 それぞれの課題についての
 事実的知識や技能が獲得される。

 この「知識及び技能」は,
 各学校が設定する内容に応じて異なる。

 このため,
 学習指導要領においては,
 習得すべき知識や技能については
 示していない。

 一方,
 事実的知識は
 探究の過程が繰り返され,
 連続していく中で,
 何度も活用され
 発揮されていくことで,
 構造化され
 生きて働く概念的な知識へと
 高まっていく。

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 総合的な学習の時間では,
 各教科等の枠を超えて,
 知識や技能の統合がなされていく
 ことにより,

 概念的な知識については,
 教科や分野などを超えて,
 より一般化された概念的なものを
 学ぶことができる。

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 例えば,

・ それぞれには特徴があり,
  多種多様に存在している(多様性)

・ 互いに関わりながら
  よさを生かしている(相互性)

・ 物事には終わりがあり,
  限りがある(有限性)

 などである。

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 探究の過程により,
 どのような概念的な知識が
 獲得されるか
 ということについては,
 何を探究課題として設定するか
 等により異なる。

 例えば,
 「身近な自然と,
  そこに起きている環境問題」
 を探究課題として設定した場合は,

・ 「生物は,
  色,形,大きさなどに違いがあり,
  生育の環境が異なること (多様性)」

・ 「身近な自然において,
  生物はその周辺の環境と関わって
  生きていること (相互性)」

・ 「自然環境は,
  様々な要因で常に変化する
  可能性があり,
  一定ではないこ と(有限性)」

 などが考えられる。

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 この例では,
 直接的に学習で関わる対象は
 「身近な自然」であるが,

 それを探究的に学習すること
 を通して獲得される概念は,
 身近な自然だけに当てはまるもの
 ではなく,

 例えば
 広く持続可能な社会づくりに
 関わる様々なテーマ
 について考える際にも
 使うことができる
 概念的な知識
 ともなりうるのである。

 

 各学校が
 目標や内容を設定するに当たっては,
 どのような概念的な知識が
 形成されるか,
 どのように概念的な知識を
 明示していくか
 などについても
 検討していくことが重要である。

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 技能についても,
 探究的な学習の過程が繰り返され,
 連続していく中で,
 何度も活用され
 発揮されていくことで,
 自在に活用できる技能として
 身に付いていく。

 各学校においては,
 探究的な学習の過程に必要な技能
 の例を
 明示していくこと
 なども考えられる。

 
 

 「思考力,判断力,表現力等」の
 育成については,
 課題の解決に向けて行われる
 横断的・総合的な学習や
 探究的な学習において,

 @課題の設定,
 A情報の収集,
 B整理・分析,
 Cまとめ・表現

 の探究的な学習の過程が繰り返され,
 連続することによって実現される。

 この過程では,
 「探究的な見方・考え方」を
 働かせながら,
 それぞれの過程で期待される
 資質・能力が育成される。

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 この資質・能力については,
 これまで各学校で設定する
 「育てようとする資質や能力及び態度」
 の視点として
 「学習方法に関すること」
 としていたことに対応している。

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 こうした
 探究の過程において必要となる
 資質・能力
 を育成することは,

 総合的な学習の時間が,
 各教科等の学習過程の質的向上に
 資することを意味する。

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 重要なことは,

 課題の解決に向けて必要となる
 「思考力,判断力,表現力等」は,

 実際に
 課題の解決に向けた学習をする中で,
 探究の過程の各段階において
 必要となる
 「思考力,判断力,表現力等」
 を実際に使うような学習
 を行うことで,

 成長していくものである
 ということである。

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 総合的な学習の時間において
 育成することを目指す
 「思考力,判断力,表現力等」を,
 探究の過程の各段階で整理すると
 次のようになる。

探究の過程における
思考力,判断力,表現力等
の深まり(例)

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 こうした
 「思考力,判断力,表現力等」は,

 この探究課題ならば
 この力が育まれる
 といったような
 対応関係があるものではなく,

 複数の単元を通して,
 さらには
 学年や学校段階をまたいで,
 探究の学習の過程を繰り返すことで,
 時間を掛けながら
 徐々に育成していくものである。

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 このため,
 それぞれの過程で育成される
 資質・能力
 について,

 児童の発達の段階や,
 探究的な学習への習熟の状況,
 その他児童や学校の実態
 に応じた設定をしていくこと
 が重要である。

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 例えば,
 課題の設定については,

 学年が上がり,
 児童の探究的な学習への習熟が
 高まるにつれて,

 問題状況を
 単純なものから
 より複雑なものへとしたり,

 解決の手順等について
 教師があらかじめ示すことを
 段々と少なくし,
 児童自身が
 見通しや仮説を立てることに
 比重を移したりして,
 質を高めていくこと
 が考えられる。

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 同じように,

 情報の収集においては,
 多様な方法から
 より効率的・効果的な手段を
 選択できるようにしたり,

 整理・分析においては,
 より深く分析したり,
 より確かな根拠付けが行われるよう
 質を高めていくこと
 が考えられる。

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 まとめ・表現については,

 相手や目的に応じて
 より分かりやすく伝わるように,
 より論理的で効果的な表現を
 工夫したり,

 学習を振り返る中で,
 より物事や自分自身に関して
 深い気付きとなるよう
 内省的な考え方が深まるようにしたり
 していくことが考えられる。

 
 

 「学びに向かう力,人間性等」は,
 本解説第2章で解説したとおり,
 今回の改訂では,
 第5章第2の3の(6)のウにおいて,
 「学びに向かう力,
  人間性等については,
  自分自身に関すること及び
  他者や社会との関わりに関すること
  の両方の視点を踏まえること。」
 と示した。

 

 自分自身に関することとしては,
 主体性や自己理解,社会参画
 などに関わる心情や態度,

 他者や社会との関わりに関すること
 としては,
 協働性,他者理解,社会貢献
 などに関わる心情や態度

 が考えられる。

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 一方,
 自分自身に関することと
 他者や社会との関わりに関すること
 とは
 截然(せつぜん)と区別されるもの
 ではなく

 例えば,
 社会に参画することや
 社会への貢献のように,
 それぞれは,

 積極的に社会参画をしていこう
 という態度を育む

 という意味においては
 他者や社会との関わりに関すること
 であるが,

 探究的な活動を通して学んだことと
 自己理解とを結び付けながら
 自分の将来について
 夢や希望をもとうとすることは,

 自分自身に関することとも
 深く関わることである

 と考えることもできる。

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 重要なことは,
 自分自身に関することと
 他者や社会との関わりに関することの
 二つのバランスをとり,
 関係を意識することである。

 主体性と協働性とは
 互いに影響し合っているものであり,
 自己の理解なくして
 他者を深く理解することは難しい。

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 このように,
 各学校において育成を目指す
 「学びに向かう力,人間性等」
 を設定するに当たっては,

 従来,
 各学校が定めること
 とされてきた
 自分自身に関することと
 他者や社会との関わりに関すること
 を参考に,
 両者のつながりを検討すること
 も大切になる。

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 総合的な学習の時間において
 育成を目指す
 「学びに向かう力,人間性等」は,
 「思考力,判断力,表現力等」
 にも増して,
 様々な学習活動を通して,
 時間を掛けながら
 じっくりと養い育んでいくもの
 と考えることができる。

 すなわち,
 確かに育んでいこうとする
 心情や態度を,
 学年や学校段階に応じて,
 段階的かつ明確に設定しようとすること
 は難しい。

 

 そうした特性を踏まえた上で,
 学年が上がったり,
 難易度の高い探究的な学習を
 行ったりする中で,

 「学びに向かう力,人間性等」は,
 例えば,
 以下のような視点と方向性で
 高まりながら,
 ゆっくりと着実に育んでいくことが
 期待される。

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 一つは,
 より複雑な状況や
 多様で異なる他者との間においても
 発揮されるようになることである。

 例えば,
 他者理解という視点で言えば,
 異なる立場,
 異なる考え方をもつ相手
 のことを認め,理解しようとすること
 ができるようになること
であり,

 自己理解については,
 様々に困難な状況に挑戦する中で
 自分を客観的に見つめ,
 自分らしさを発揮できるようになること

 などが考えられる。

 状況や場面が変わる中でも,
 それらは確かに発揮できるように
 育成されることが期待される。

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 二つは,
 より自律的で,
 しかも安定的かつ継続的に
 発揮されるようになることである。

 自らの意志で
 自覚的に,
 しかも粘り強く
 発揮し続けられるようになること
 が期待される。

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 三つは,
 「自分自身に関すること」,
 「他者や社会との関わりに関すること」
 は互いにつながりのあるものとなり,
 両者が一体となった資質・能力として
 発揮され,
 育成されるようになることである。

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 このように,
 各学校において育成を目指す
 「学びに向かう力,人間性等」
 を設定するに当たっては,

 学年や
 実施する探究的な学習
 に応じて,
 先に記した視点を参考に,
 ゆるやかな高まりを意識すること
 も考えられる。

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 「学びに向かう力,人間性等」は,
 「知識及び技能」や
 「思考力,判断力,表現力等」
 と切り離して育てられるものではない。

 探究課題に
 主体的かつ協働的に取り組む中で,
 様々に思考したり,
 概念的知識を獲得したりする中でこそ,
 確実に身に付けていくことできるもの

 と考える。

 
 
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