「学びに向かう力,人間性等」は,
本解説第2章で解説したとおり,
今回の改訂では,
第5章第2の3の(6)のウにおいて,
「学びに向かう力,
人間性等については,
自分自身に関すること及び
他者や社会との関わりに関すること
の両方の視点を踏まえること。」
と示した。
自分自身に関することとしては,
主体性や自己理解,社会参画
などに関わる心情や態度,
他者や社会との関わりに関すること
としては,
協働性,他者理解,社会貢献
などに関わる心情や態度
が考えられる。
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一方,
自分自身に関することと
他者や社会との関わりに関すること
とは
截然(せつぜん)と区別されるもの
ではなく,
例えば,
社会に参画することや
社会への貢献のように,
それぞれは,
積極的に社会参画をしていこう
という態度を育む
という意味においては
他者や社会との関わりに関すること
であるが,
探究的な活動を通して学んだことと
自己理解とを結び付けながら
自分の将来について
夢や希望をもとうとすることは,
自分自身に関することとも
深く関わることである
と考えることもできる。
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重要なことは,
自分自身に関することと
他者や社会との関わりに関することの
二つのバランスをとり,
関係を意識することである。
主体性と協働性とは
互いに影響し合っているものであり,
自己の理解なくして
他者を深く理解することは難しい。
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このように,
各学校において育成を目指す
「学びに向かう力,人間性等」
を設定するに当たっては,
従来,
各学校が定めること
とされてきた
自分自身に関することと
他者や社会との関わりに関すること
を参考に,
両者のつながりを検討すること
も大切になる。
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総合的な学習の時間において
育成を目指す
「学びに向かう力,人間性等」は,
「思考力,判断力,表現力等」
にも増して,
様々な学習活動を通して,
時間を掛けながら
じっくりと養い育んでいくもの
と考えることができる。
すなわち,
確かに育んでいこうとする
心情や態度を,
学年や学校段階に応じて,
段階的かつ明確に設定しようとすること
は難しい。
そうした特性を踏まえた上で,
学年が上がったり,
難易度の高い探究的な学習を
行ったりする中で,
「学びに向かう力,人間性等」は,
例えば,
以下のような視点と方向性で
高まりながら,
ゆっくりと着実に育んでいくことが
期待される。
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一つは,
より複雑な状況や
多様で異なる他者との間においても
発揮されるようになることである。
例えば,
他者理解という視点で言えば,
異なる立場,
異なる考え方をもつ相手
のことを認め,理解しようとすること
ができるようになることであり,
自己理解については,
様々に困難な状況に挑戦する中で
自分を客観的に見つめ,
自分らしさを発揮できるようになること
などが考えられる。
状況や場面が変わる中でも,
それらは確かに発揮できるように
育成されることが期待される。
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二つは,
より自律的で,
しかも安定的かつ継続的に
発揮されるようになることである。
自らの意志で
自覚的に,
しかも粘り強く
発揮し続けられるようになること
が期待される。
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三つは,
「自分自身に関すること」,
「他者や社会との関わりに関すること」
は互いにつながりのあるものとなり,
両者が一体となった資質・能力として
発揮され,
育成されるようになることである。
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このように,
各学校において育成を目指す
「学びに向かう力,人間性等」
を設定するに当たっては,
学年や
実施する探究的な学習
に応じて,
先に記した視点を参考に,
ゆるやかな高まりを意識すること
も考えられる。
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「学びに向かう力,人間性等」は,
「知識及び技能」や
「思考力,判断力,表現力等」
と切り離して育てられるものではない。
探究課題に
主体的かつ協働的に取り組む中で,
様々に思考したり,
概念的知識を獲得したりする中でこそ,
確実に身に付けていくことできるもの
と考える。 |