これらの「考えるための技法」により
思考が深まる中で,
児童は,例えば
複数の軸で順序付け,
比較,分類ができるようになったり,
より多様な関連や様々な性質に
着目できるようになったり,
対象がもつ
本質的な共通点や固有の性質
に気付いたりできるようになるなど,
「考えるための技法」を用いて
効果的に思考することが
できるようになっていく
と考えられる。
特に,
比較したり分類したりする際に,
どのような性質等に着目するか
という,
視点の設定ができるようになることが
一つのポイントである
と考えられる。
最初は教師が
視点の例
(例えば,
地域の文化財を
「有形のもの」,「無形のもの」
で分類するという視点)
を示しつつ,
児童の習熟の状況に応じて,
児童自身が試行錯誤しながら
視点を考えるようにしていく
ということが考えられる。
このように,
どのような視点に着目して
比較したり分類したりするかを
児童が自在に考えることが
できるようになる
ということは,
総合的な学習の時間が,
各教科等の見方・考え方を
総合的に活用するものであること
と深く関わっていると言える。
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これらの「考えるための技法」を
意識的に使えるようにするためには,
児童の習熟の状況等を踏まえながら,
教師が声掛けをしたり,
紙などに書いて
可視化したりするような活動
を取り入れることが有効である。
例えば,
「比較する」や「分類する」を
可視化する方法としては,
例えば,
事柄を一つずつ
カードや付箋紙に書き出し,
性質の近いものを一カ所に集める
という手法などがある。
共通する性質を見いだすことは
「抽象化する」ことにつながる。
「分類する」については,
児童の発達の段階や習熟の状況
に応じて,
縦軸と横軸を設定して
4象限に書き込んだりすること
も考えられる。
また,
関連付けるを可視化する方法として,
例えば,
ある事柄を中央に置き,
関連のある言葉を次々に書き出し,
線でつないでいく
という方法
(いわゆるウェビング)など
が考えられる。
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このように
「考えるための技法」を
紙の上などで可視化することで,
いわば道具のように
意図的に使えるようになる。
児童の思考を助けるために
あらかじめワークシートの形で
用意しておくことも考えられる。
「考えるための技法」を
可視化して使うことには
次のような意義があると考えられる。
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一つには,
教科等を越えて,
児童の思考を助けることである。
抽象的な情報を扱うことが
苦手な児童にとっては,
それを書き出すことで
思考がしやすくなる。
各学校の中で,
例えば「○○小学校思考ツール」として
共通のワークシート等を
活用することが,
各教科等における
思考力,判断力,表現力等を
育成する上でも
有効であると考えられる。
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二つには,
協働的な学習,
対話的な学習
がしやすくなるということである。
紙などで可視化することにより,
複数の児童で
情報の整理,分析を
協働して行いやすくなる。
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三つには,
学習の振り返りや
指導の改善に
活用できるということである。
一人一人の児童の思考の過程を
可視化することにより,
その場で教師が助言を行ったり,
児童自身が単元の終わりに
探究の過程を振り返ったりすること
に活用できる。
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あわせて,
こうしたツールを活用すること自体が
目的化しないようにする
ということも重要である。
「考えるための技法」を使うことを
児童に促すことは,
学習の援助になる一方で,
授業が書く作業を行うことに終始
してしまったり,
児童の自由な発想を妨げるもの
になってしまったりすることもある。
活用の目的を意識しなければ,
かえってねらいを達成できない
ことも考えられる。
学習の過程において,
どのような意図で,
どのように使用するかを
計画的に考える必要がある。
「考えるための技法」を用いて
思考を可視化するということは,
言語活動の一つの形態であり,
言語活動の様々な工夫とあわせて
効果的に活用することが望まれる。 |