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 単元とは,課題の解決や探究的な学習活動が発展的に繰り返される一連の学習活動のまとまりという意味である。

 単元計画の作成とは,教師が意図やねらいをもって,このまとまりを適切に生み出そうとする作業にほかならない。

 単元づくりは,教師の自律的で創造的な営みである。

 学校として既に十分な実践経験が蓄積され,毎年実施する価値のある単元計画が存在する場合でも,改めて目の前の児童の実態に即して,単元づくりを行う必要がある。

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 単元計画を立てるに当たっては,今回の改訂により,第5章第3の1の(1)において「年間や,単元など内容や時間のまとまりを見通して,その中で育む資質・能力の育成に向けて,児童の主体的・対話的で深い学びの実現を図るようにすること。

 その際,児童や学校,地域の実態等に応じて,児童が探究的な見方・考え方を働かせ,教科等の枠を超えた横断的・総合的な学習や児童の興味・関心等に基づく学習を行うなど創意工夫を生かした教育活動の充実を図ること。」とされたことを踏まえることが重要である。

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 総合的な学習の時間の学習活動については,探究的な学習であることを重要な要件の一つとしている。

 したがって,総合的な学習の時間では,児童にとって意味のある課題の解決や探究的な学習活動のまとまりとなるように単元を計画することが大切である。

 児童は,自分を取り巻く人,もの,ことについて,様々な興味・関心を抱いている。

 教師は,その中から教育的に見て価値のあるものを捉え,それを適切に生かして学習活動を組織する。

 学習活動の展開においては,育成を目指す資質・能力が育成されるように,児童が自ら課題を解決する過程を想定して単元の計画を立てる。

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 このようにして生み出された単元は,児童の興味・関心をよりどころとするため,児童の活動への意欲は高い。

 また,そこでの学習も真剣なものとなりやすく,学んだ内容も生きて働くものとなることが多い。

 その一方で,児童が主体的に進める活動の展開においては,教師が意図した内容を児童が自ら学んでいくように単元を構成する点に難しさがある。

 この点がうまくいかないと,単なる体験や活動に終始してしまう場合もある。

 いわゆる「活動あって学びなし」とは,このような状況に陥った実践を批判した表現である。

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 総合的な学習の時間の単元計画に際しては,次の二つの重要なポイントがある。

 一つは,児童による主体的で粘り強い課題の解決や探究的な学習活動を生み出すには,児童の興味や疑問を重視し,適切に取り扱うことである。

 もう一つは,課題の解決や探究的な学習活動の展開において,いかにして教師が意図した学習を効果的に生み出していくかである。

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 以下,この二つのポイントに沿って単元計画を作成する際の要点を解説する。

 
 

 総合的な学習の時間では,児童の関心や疑問が単元の源であり,単元計画を作成する際の出発点でもある。

 では,児童の関心や疑問をどのように捉え,単元計画につなげていけばよいか。

 そこには,三つの留意すべき点がある。

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 第1に,児童の関心や疑問は,その全てを本人が意識しているとは限らず,無意識の中に存在している部分も多いと捉えることである。

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 主体的で粘り強い課題の解決や探究的な学習活動を生み出すには,その出発点である児童の関心や疑問が本人にとって切実なものであることが重要である。

 しかし,何が自分にとっての関心や疑問であるか,児童が十分に自覚できていなかったり,適切に言語化できていなかったりすることも多い。

 興味・関心をもっていること,取り組んでみたいことなどについて,児童が話したことや書いたことのみを頼りに単元を計画してもうまくいかないのは,このためである。

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 単元の計画に際しては,児童の関心や疑問は何かを丁寧に見取り,把握することが求められる。

 具体的には,日常生活の中での語りやつぶやき,日記やその他の日常生活の記録,保護者から寄せられた児童の様子など,児童の関心や疑問がうかがえる各種の資料を収集し,精査することが考えられる。

 あるいは,休み時間や給食の時間など,日常の何げない機会を捉え,児童と丁寧に会話する機会を設ける工夫なども有効である。

 会話の中で自分の考えや思いを語り,無自覚だった関心や疑問を児童自身が自覚することもある。

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 第2に,児童の関心や疑問とは,児童の内に閉ざされた固定的なものではなく,環境との相互作用の中で生まれ,変化するものと捉えることである。

 今現在,児童が抱いている関心や疑問は,過去や現在における児童を取り巻く環境との相互作用の中で生まれてきたものである。そして,今後も様々な相互作用を通して変化していく。

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 このように考えると,事前に児童が抱いている関心や疑問だけで単元計画を構想する必要はない。

 教師の働きかけなどにより,新たな関心や疑問が芽生える可能性も十分あるからである。

 そうやって新たに生まれた関心や疑問をよりどころに活動を組織し,単元を生み出すことも含めて考えることで,単元計画の選択肢は広がる。

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 例えば,体験を通して児童に新たな関心や疑問が生じることは十分考えられるし,それを意図して特定の体験を設定することは,教師の意図的で計画的な指導の一環である。

 あるいは,もっと直接的に「こんなことをしてはどうだろう」と具体的な活動を提案してもよい。

 児童だけでは思い付かないが,教師に提案されれば是非ともやってみたいと思う活動もあり得る。

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 第3に,児童にとって切実な関心や疑問であれば何を取り上げてもよいというわけではなく,総合的な学習の時間において価値ある学習に結び付く見込みのあるものを取り上げ,単元を計画することである。

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 教師が選択して取り上げるという点について,児童の関心や疑問に十分に応えることにならないのではないか,との疑念をもつかもしれない。

 しかし,総合的な学習の時間において,児童の関心や疑問を大切にし,それをよりどころとして学習活動を生み出すのは,その先で価値ある学習を実現するためである。

 そのためには,何でもよいというわけにはいかない。

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 また,児童の興味・関心は一つではない。

 第2の留意点で述べた通り,尋ねれば児童は一つの関心事を挙げるかもしれないが,それが唯一の関心でも,興味の全てでもない。

 今現在,児童が興味をもつことや関心を寄せるものなどはたくさんあり,さらに周囲の環境との相互作用の中で新たな関心や疑問は生まれてくるものである。

 大切なのは,教師が教育的な意図で選択して取り上げたものが,児童にとっての関心や疑問につながっていることである。

 
 

 児童の関心や疑問を源とする児童主体の学習活動の中で,いかにすれば教師が意図する学習を効果的に生み出し,資質・能力を育成することができるかについて,以下に述べる。

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 まず,その関心や疑問から,児童はどのような活動を求め,展開していくだろうか,と考える。

 そして,活動の展開において出会う様々な問題場面と,その解決を目指して児童が行う課題の解決や探究的な学習活動の様相,さらにそれぞれの学習活動を通して児童が学ぶであろう内容について,考えられる可能性をできるだけ多面的,網羅的に予測する。

 もちろんその際には,各学校で定めた目標や内容との照らし合わせを行う。

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 例えば
 「学校の池をビオトープにしよう」
 という単元を考えてみる。

 理科の学習をきっかけに
 飼育しているメダカが増え,
 水槽では飼いきれなくなったとき,
 児童は池に放そうと考える。

 しかし,
 池の実態を調査してみると
 その池があまりメダカにとって
 よい環境でない
 ということへの気付きから,
 池を何とかしたい,
 メダカのために
 よい環境の池を作りたいと願う。

 この問題場面における
 児童の情意が
 この後の意欲的な探究的な学習活動
 につながる。

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 池の構造や
 そこに生息する動植物を
 調査し,
 メダカの生態を軸に
 生き物にとって住みよい環境を
 考える中で,

 児童は
 生命の尊さや
 昔のまちの環境,
 生態系とは何か,
 日常の中に潜む環境の問題等
 に気付く。

 その際,
 かつてのまちの自然環境や植生を
 調べる活動の中で,
 インタビューや調査活動を行うこと
 を通じて
 様々な世代の人や関係機関とつながり,
 様々な人と
 適切にコミュニケーションする力
 が求められる。

 その中で,
 まちの人の優しさや思いに触れ,
 まちへの愛着と
 地域の一員としての自覚を
 深めていくであろう。

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 そして
 池をビオトープにすることが
 メダカにとってはよい環境に違いない
 と仮説を立て,
 池をビオトープ化する計画を立て始める。

 そもそもビオトープとは何か,
 どのように作り管理するのか
 という調査や研究が始まる。

 図書やインターネット等の情報を
 収集し,整理・分析を行う。

 

 一般的なビオトープについての
 知識や作り方については
 理解が進むが,

 それだけでは
 学校にある池を
 実際にどのように改造できるのか
 分からず,
 専門的な知識や経験をもった人を
 求めるようになる。

 

 専門家に巡り合い,
 繰り返し
 自分たちの考えや設計について
 話を聞いたり
 アドバイスをもらったりする中で,
 その人の
 自然に対する考え方や生き方に触れ,
 それまで以上に深く考えながら
 ビオトープ作りに没頭していく。

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 本気になって
 本物のビオトープを作ろう
 と考える児童は
 夢が膨らむ一方で,
 児童の力ではやりきれない
 現実の問題に出会う。

 ここで教師は
 かねてからアンテナを広げ
 関わっていた
 行政やNPO,ボランティア団体等,
 児童の活動を支援してくれる社会資源
 を活用し,

 児童の必要感と
 活動の必然性に乗せて
 タイミングよく出会わせたい。

 

 そのとき得られる
 さまざまな視点や立場からの支援は,

 一つのことを通して
 社会がつながっている
 という社会構造の一端に
 気付くことになり,

 自分たちが生きていく上で
 人や社会とつながり,関わることの
 よさと心強さを
 実感することになる。

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 また,
 この先ビオトープを
 持続的・発展的に管理していく
 ためには,
 在校生をはじめ
 地域や保護者の理解と協力を
 得ることが必要
 と考えて
 ビオトープについての説明会を
 開くことになる。

 

 いかに分かりやすく,
 しかも
 その重要性を的確に
 伝えること
 が大切か
 という切実感は

 発表の工夫を生み,
 児童の思考力や表現力は
 更に高められることになる。

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 このように
 児童の目線で
 丁寧に単元を構想する中で,
 各学校が設定した目標及び内容が,
 確かに実現するかどうかを
 判断していかなければならない。

 特に,
 教師はどこでどのような
 意図的な働きかけをする
 必要があるのか,

 また
 その際に留意すべき事柄は何か
 なども,
 具体的に明らかにすべきである。

 なお,
 先の例からも分かるように,
 単元を構成するに当たっては,
 次の2点に留意することが大切である。

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 一つは,
 学習の展開における
 児童の意識や活動の向かう方向を
 的確に予測することである。

 そのための方策としては,
 まず,
 児童の立場で考えること。

 次に,
 複数の教師で予測を行い,
 意見が異なった点については
 慎重に検討すること。

 また,
 タイプの異なる児童を想定し,
 「この児童であれば
  この場面では
  こう考えるのではないか」
 などと,
 可能な限り具体に即して
 丁寧に予測すること,
 などが考えられる。

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 もう一つは,
 十分な教材研究である。

 先の例で言えば,
 ビオトープの概念やその実現性,
 活動を支援してくれそうな
 専門家や関連機関
 などについて
 教師が十分に把握していなければ,
 活動場面における学習の可能性に
 気付くことは難しい。

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 なお,
 総合的な学習の時間においては,
 児童にとって意味のある課題の解決や
 探究的な学習活動のまとまり
 を基に単元を構成するため,
 その活動の過程において
 取り扱う内容は
 一つとは限らない。

 一つの単元の中で
 複数の内容が見込まれることも
 考えられる。

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 したがって,
 教材研究においても,
 できるだけ幅広く,拡散的に
 思考を巡らせていくこと
 が重要である。

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 ビオトープの教材としての広がりを
 想定した図のように,

 特定の素材から広がる活動や対象を,
 できるだけ幅広く拡散的に
 探索する手法

 を用いることが有効

 なのは,このためである。

 

拡散的に探索する手法の例

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